競売で事故・訳あり物件を落札した場合、売買契約の解除はできるのか?

競売物件瑕疵

購入した建物に設備や傾きなどの不具合、つまり瑕疵があった場合、買主は売主に対して損害賠償を請求することができます。

また、不具合によって契約時の目的を達成することができない場合には、売買契約自体を解除することができるとされています。

そこで裁判所が実施する競売によって購入した物件に瑕疵があった場合、売買契約の解除ができるかどうかを見ていきましょう。

競売では事故・訳あり物件と気付かずに売られることもある

訳あり物件
売買の目的物に何らかの不具合、つまり物理的な瑕疵があった場合、それらの不具合(瑕疵)について売主が負担する責任を「瑕疵担保責任」と言います。
これは民法第570条によって定められています

第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。(売主の担保責任と同時履行)

参照:電子政府の総合窓口

ただし、競売による不動産の購入は、個人と個人によって行われる売買契約とは異なります

裁判所が競売によって債務者から差押えなどを行った不動産を落札しているので、裁判所と個人の取引になり、民法は適用されません

所有権を取得した時点で目的物にこのような不具合・瑕疵があった場合、落札人は誰にどのような主張を行うことができるのでしょうか。
それとも、できないのでしょうか。

そのような競売によって取得した目的物に隠れた瑕疵があった場合、どのような取り扱いになるのか、整理してみます。

競売とは

まずは競売という制度について確認しておきましょう。

競売とは、債務者等が所有する財産等を裁判所が競り(せり)売り等にかけ、最も高い値をつけた人に売却する法的手続を指します。

競売には、債権者から提起された請求訴訟において債務者等に対する確定判決にもとづいてなされる「強制競売」と抵当権等の担保権にもとづいてなされる「任意競売(担保権の実行としての競売)」の2種類があります。

競売によって目的物が落札され、落札者がその代金の支払いを行うと、目的物の所有権は債務者から落札者に移転し、以後は落札者が目的物の所有者となります。

従来の競売による物件の所有権の取得は、不動産会社や不動産ブローカーなどの専門家が行うというイメージがありました。

しかし今日では、市場価格よりもかなり安価に不動産を購入できることから、一般の方が直接競売手続に参加することも増えています。

競売の手続きの流れ

次に競売の大まかな流れを確認しておきましょう。

①強制競売の場合
債権者等による訴訟提起→債務者に支払いを命ずる判決(給付判決)
債権者による強制執行の申立
競売開始決定→差押登記
公告
入札
開札→落札者決定
売却許可決定
代金の納付→所有権移転
物件の落札者への引き渡しおよび落札代金の債権者への配当
②任意競売(担保権の実行としての競売)
抵当権等の設定契約・登記
競売申立
競売開始決定→差押
公告
入札
開札→落札者決定
売却許可決定
代金の納付→所有権移転
物件の落札者への引き渡しおよび抵当権者への配当実施

競売はこのような流れになっています。

一般的には不動産を売却するときには、不動産業者が売りたい個人と買いたい個人の仲介に入ります。

内覧の斡旋などを行いますし、売買契約の場では、同じ場所に宅地建物取引主任者が同席します。

通常は物件に関する問題などを全て伝える重要事項説明の場を設け、重要事項の告知を行うことが義務付けられています。
しかし、競売に関しては重要事項説明の必要はなく、物件を買いたい人も購入前の内覧ができません

事故物件や訳あり物件が競売にかけられる段階で判明しない理由

競売は、裁判所が債務者の所有する不動産を売却によって処分し、資産を債権者に譲渡する手続きになっています。

この競売の過程において事故物件や訳あり物件が見逃され、そのまま問題がない物件として競売の場に出ることがあります

それは調査が不十分であることが多いからです。

競売では不動産鑑定士が調査結果にもとづく報告書を作成します。

調査結果は、いわゆる3点セットと呼ばれる以下の3つの書類に記載されます

・物件明細書
・評価書
・現況調査報告書

競売にかけられた物件は入札者が内見することができないため、外から建物や土地を見る以外にこの3点セットを見てから入札するかどうかを判断します

しかし、これらの書類を作成する過程にかけられる人件費や時間には、どうしても限界があります。

裁判所は年間数万点の不動産を競売にかけています。

それら一点一点を調査するのに必要な不動産鑑定士の人件費、調査のための時間をどのように捻出するかは裁判所の悩みの一つです。

競売で不動産を売却した場合、その売却代金は金融機関や保証会社などの債権者に配当されますが、調査費用も売却代金から捻出されます。

債権者の取り分を可能な限り多くするためには、調査費用を抑える必要があるのです。
また、不動産鑑定士などが現地で競売物件を調査する場合にも、競売物件の元の持ち主である債務者から積極的な協力が得られるケースは少ないです。

調査に行ってもトラブルになることもあるのです。
債務者がいない場合もあるため、建物の内部などをチェックできないこともありますし、聞き取り調査を行っても、しっかりと回答してくれない可能性もあります。

そのため、時間をかけても満足な調査結果が得られないケースもあるのです。

さらに、競売物件の調査を行ってから実際に裁判所が競売に出すまで、3カ月から半年ほどのタイムラグが発生してしまいます

その間に物件の内部の腐敗や損傷といった、新しい物理的瑕疵が発生する可能性もあります。

もっとひどいケースでは、期間中に債務者が競売物件の中で病気による自然死や事故死、さらには、自殺したり、殺人事件が起きたりする可能性もゼロではないです。

調査後に物件がすぐに競売に掛けられるわけではなく、タイムラグにあたる期間中に何らかの問題が発生するリスクも高くなってしまうのです。

こういった理由により、競売物件は居住者や入居者の事故死や遺体が放置されるなど、訳あり物件が含まれている可能性が高くなり、物理的な瑕疵だけでなく、心理的瑕疵物件になるおそれがあるのです。

そうなると購入後にリフォームなどを施さないと、自分が住むことも、賃貸に出すことも大変難しくなってしまいます。
また、大島てるのような事故物件情報サイトに掲載されるおそれがあります。

競売は一般的な売買と異なり、「瑕疵担保責任」が適用されない

瑕疵担保責任
競売で売買される物件には、不動産売買で設定されることが一般的な「瑕疵担保責任」が適用されません。その内容も確認しましょう。

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競売の場合の瑕疵担保責任とは

民法第570条は、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」について、買主がそのことを知らなかった場合で、かつ、その瑕疵のせいで契約時の目的を達成することができない場合には、買主は売買契約の解除および損害賠償を請求できるとしています

いっぽうで、その但書きは、「強制競売の場合は、この限りではない」として、強制競売によって目的物を落札した場合には、その物件に瑕疵が存在したとしても、瑕疵を理由に元の所有者に対して損害賠償を請求すること、競売による所有権取得行為そのものを解除することはできないとしています

なぜ強制競売では、瑕疵担保責任が否定されるのでしょうか。以下の二つの理由が挙げられています

①競売物件というのは基本的に中古物件となるため、何らかの瑕疵が存在することがはじめから想定されている。にもかかわらず、すべて瑕疵担保責任を追及でき、競売の解除等を主張できるとすると、裁判所が行う強制競売の信頼性が失われる。

②競売の場合には、もともと何らかの瑕疵があることが想定され、市場価格よりもおおむね3割程度物件を安く取得できるとされている。したがって、瑕疵担保責任を追及できないとしても、やむを得ないと考えられている。

代金納付前なら「売却許可決定の取消の申立」が可能

それでは、競売によって落札した物件に瑕疵があると判明した場合、落札者は何も言えないのでしょうか。

これについて、その瑕疵が判明したタイミングと内容によって異なります

競売の場合には、代金の納付によって所有権が落札者に移転することに伴って、一切のリスクも落札者に移転します。

逆に言うと、代金の納付前であれば、民事執行法の落札者保護の規定によって、落札者が保護される可能性があるのです。

売却基準価格が不適切であった場合、物件明細書への記載がかけていた場合

売却基準価額の決定、物件明細書の作成に誤りがあった場合に該当し、民事執行法第71条第6号によって売却不許可となる場合があります

第71条第6号 売却基準価額若しくは一括売却の決定、物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがあること。

参照:電子政府の総合窓口

上記以外の場合

この場合、落札者は民事執行法第75条第1項により、売却不許可の申出を行うことができると考えられています。

第75条第1項 最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあっては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあっては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。

本来の民事執行法第75条は、買受けの申出をした後に天災等によって物件が損傷した場合についての規定ですが、判例では、当初からあった瑕疵が落札後に判明した場合にも同規定を類推して適用することを認めています
参照:電子政府の総合窓口

代金納付後は、原則、救済されない

代金納付
代金の納付後は、物件の所有権もリスクも競落人に移転してしまいます
その結果、代金納付以降に瑕疵が判明したとしても、原則として競落人は瑕疵担保責任等を主張することができなくなります

残念ながら代金の納付後は、裁判所に納めたお金が返還されることはないのです。

そのため、競売物件を購入する際には慎重な判断を期すために、住宅診断のホームインスペクションなどを実施して本当の価値を見定めたほうが良いかもしれません。

ただし、例外的に競売の効力が否定されることがあります

具体的には物件の状況について作成された物件明細書・現況調査報告書・評価書に大きなミスがあったにもかかわらず、買受人が内容を信用して競落したケースです。

そのまま競売の効力を認めたのでは公平性に欠け、落札者に著しい不利益を与えることになってしまいます。

妥当ではないと認められるような場合には、競落人を保護する必要がありますので、例外的に売約の不許可の決定や売却許可決定の取消が認められるとされています。

具体的には、以下の場合、売約の不許可の決定や売却許可決定の取消が検討されることになります。

①瑕疵の存在を予測することが困難と認められる場合
②公平性の観点から瑕疵の程度が著しくひどく、調整が必要だと認められない場合

結論としては、競売では低価格で物件を取得できる分、瑕疵等については基本的に自己責任となっていることを理解する必要があります。

そのためにも、入札の前に裁判所が開示している3つの報告書の内容をしっかりと確認するとともに、現地を確認する必要があります(ただし、基本的に外観を確認できるのみで、内覧はできません)。

ただし、競売物件について得られる情報は限定されますので、瑕疵等について完全に把握することは現実的に困難であると言わざるを得ません。
その意味では、一定の瑕疵の存在を織込んだうえで入札するという認識が必要です。

ところで、ここまで「瑕疵担保責任」について考えてきました。いっぽうで、物自体の瑕疵ではなく、競売の目的物に関する権利に問題があった場合については、競売の場合といえども民法第568条で担保責任が認められています

第568条 強制競売における買受人は、第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
3 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。(債権の売主の担保責任)

参照:電子政府の総合窓口

また物件に抵当権がついていた場合(民法第567条)には、競落人は契約の解除または代金の減額を請求できます

第567条 売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3 前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。(強制競売における担保責任)

この場合、売主に当たる債務者が無資力の場合には、配当を受けた債権者に対して返還等を請求できることになります。
参照:電子政府の総合窓口

まとめ

競売物件は不動産を安く購入できる手段として人気が高まっています

インターネットが普及する以前は競売物件の情報を集めることは、専門知識を持たない不動産業者以外はなかなか難しい状況でした。

しかし、最近では競売物件を専門に取り扱うサイト、競売物件購入サポートを行う不動産会社が増えています。
相場よりも安く不動産を買いたい個人投資家にとって、ポピュラーな不動産購入の手段になってきています。

しかし、競売物件は内見ができないうえに現地調査が満足にできていない、現地調査後にタイムラグが発生するなどの理由から、瑕疵物件や訳あり物件が含まれる可能性が高くなっています
購入者としては、入札前に慎重に情報を集めておく必要があります。

仮に競売物件の購入後に瑕疵が発覚しても、すでに入金していれば、基本的には裁判所から返金されません

そのような自分にとって不本意かつ取扱いにくい物件を購入してしまった場合は、クランピーリアルエステートまでお問い合わせください

当社はそのような訳あり物件の買取りも行っております

お客様にとって取り扱いにくい訳あり物件で何かお困りでしたら、ぜひ当社にご相談、ご一報ください

最終更新日:

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