海外不動産投資のメリットとデメリットは?

海外不動産 メリット デメリット

日本国内の不動産市場はほぼ成熟しており、今以上の発展や値上がりの見込みは薄いと考えられている近年、投資の対象を海外不動産へ向ける投資家も少なくありません。海外不動産は魅力の多いものであると同時に、熟知しておくべきデメリットもあります。

この記事では、海外不動産のメリットとデメリットについて、また海外不動産投資における人気国の詳細について解説していきます。

海外不動産投資のメリットとは?

海外不動産メリット

1.大きな収益を得られる可能性

日本国内の不動産を相手にしていてはまず得られないようなリターンを得られる可能性があるのは、海外不動産投資ならではのメリットです。不動産投資の収益はおもにキャピタルゲインとインカムゲインによるものですが、国内での不動産投資の収益はインカムゲインによるものがほとんどでしょう。海外不動産の場合、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を大きく取れる可能性があります。経済成長によって国民の生活水準が上昇することで、地価をはじめとした物価や、国民の所得も上がっていくことが期待できるためです。

海外諸国の中でも「新興国」と呼ばれる、物価が上がる途上にある国の不動産には、今後何倍にも価値が膨れ上がる可能性が秘められています。いまだ経済成長の途上であることと、日本とは逆に労働人口が年々増加しつつあることが理由です。このようなわけで、新興国の不動産は値上がりの期待値が高いにもかかわらず、現時点では日本国内の投資用不動産よりはるかに安い価格で購入可能な物件が多くなっています。新興国の海外不動産は今後の成長が未知数であり、先進国では考えられないほどの価格高騰が起こる可能性があります。

2.投資利回りの高さ

日本国内の投資用不動産の利回りについては、都心や地方都市部で平均2~4%、特別に高いところでも10%に届くかどうか、というところが精一杯でしょう。国内レベルで見ると高い利回りを実現している物件でも、少子高齢化や人口減少の影響を受けないとは言えません。時間が経つにつれて国内の住宅ニーズは減少し、やがて不動産市場が飽和状態になることは想像に難くありません。事実、総務省統計局が集計した住宅・土地統計調査を見ると、平成25年10月1日時点での総住宅戸数増加率が5年前の統計と比べて5.3%であったのに対し、空き家数は5年前の統計と比べて13.5%と増加しています。平成25年の統計では、空き家数、空き家率共に過去最高を更新しています。

住宅ニーズの枯渇が見られている日本においては、都心の一等地などごく一部の地域を除き、地価が緩やかに下落していくことが予想されます。そこで、今から国内不動産に投資しても先が見えていると考え、海外不動産への投資に切り替える投資家もいます。経済成長目覚ましい新興国の利回りは、非常に高く10%を下回ることはほとんどなく、国や物件次第では30%を超えるようなことも利回りが大きいため、キャッシュフローが良いことが海外不動産投資のメリットです。

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3.建物の寿命の長さ・中古物件価格の安さ

文化や治安、衛生などの面で他国を大きくリードしていると言われる日本も、住宅の寿命という面では極端に劣っています。とりわけ、木造住宅はその筆頭です。日本の木造住宅は、不動産関係者から見れば「新築から10年経った木造住宅に資産価値無し」で、市場価値を保てる年数が非常に短いのが現実です。木造よりも鉄骨造などの方が耐用年数が長いとは言え、建築コストなどの種々の理由によって、現在に至るまで新築住宅の大多数は木造住宅が占めています。

しかし海外では、木造住宅でも築50年程度は当たり前、管理状況やロケーションさえ良ければ築100年前後の木造住宅でも普通に取引されています。日本人の感覚からすれば、驚くのではないでしょうか。日本の場合の築50年以上と言うと、状態によっては「古民家」と呼ばれ、リフォームや修繕を前提として取引されることが多いものです。この点については、日本は終戦からまだ70年程度しか経過していませんし、それ以降に建てられた家が大部分を占めているため、仕方のない点ではあります。

しかも終戦直後は人手や物資の不足により、「とりあえず雨風がしのげる建物を」という意識で建てられた建物が多いはずです。高い耐久性は期待できないとしても無理はありません。このような要素に加え、建物を建ててある程度時間が経ったら壊して新しいものを建てた方が良い、マイホームを購入するなら当然新築でなくては、などの考えが定着したことにより、日本の住宅寿命は短くなっていったと考えられます。さらに言えば、日本は地震大国です。地震によって大きな損傷を受けた建物は、直すよりも建て替える方があらゆる面で効率が良いケースもあり、建て替えが進みやすくなります。

海外の場合は、新築当初から経年劣化対策のメンテナンスを念入りに行うため、日本とは比べ物にならないほど長い期間に渡り市場価値を保つ場合が多いです。そのため海外の築古不動産は、価格は手頃でも建物としての状態は健全で、まだまだ十分使用できるものも多くあります。初期投資を抑えつつ、一度購入すれば収益物件として長く稼働させられるのが海外不動産のメリットのひとつです。

海外不動産投資のデメリットとは?

海外不動産デメリット

1.通貨の相違による変動リスク

海外不動産投資の収益は、現地の通貨で得ることになります。円安となれば利益アップに拍車をかけることができますが、円高が進めば為替差損が大きくなります。為替の変動幅は、新興国ほど大きくなる傾向にあります。新興国での不動産投資を検討しているなら、資金に十分なゆとりを持って臨まなければならないでしょう。

2.法律、政治情勢、社会情勢の変化によるトラブル

海外不動産投資を行う場合、その国の法律に従う必要があります。一部の国では、法律の変更が度々なされたり、急な政権交代によって法律が大きく変化することも珍しくありません。その土地で不動産投資をしている以上、どのように法律が変化したとしても従わなければならないため、最悪のケースでは投資物件を手放さなければならなくなることも考えられます。

政治情勢も、日本と同じ感覚で考えることはできません。おもに新興国の場合、何かの理由で平和が脅かされた際に、先進国よりもあっさりと戦争に踏み切る可能性が高くなるでしょう。それほどクローズアップされないとしても、いまだに国のどこかで常に暴動や内紛が起きているような新興国は少なくありません。有事になれば、不動産投資どころではなくなってしまいます。

突然の経済危機などによって急激なデフレが起こり、収益が大幅に圧縮されるリスクも想定しなければなりません。物価はまだまだ上がると思われている新興国でも、今が絶頂期であり、ここから下がっていく可能性もあります。

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3.日本とは異なる常識・習慣・環境に対応する

当然ですが、投資国が変わる以上は投資に関係する要素すべてが180度変わるという認識を持たなければなりません。不動産についてだけでなく、現地の人のものの考え方や生活習慣といったすべてにおいて、常識も習慣も環境もがらっと変わることを覚悟しておく必要があります。

例えば、日本であればほとんど問題にならないようなことで、裁判沙汰になることもあります。逆に、日本人なら絶対に許容できないような問題が、現地では何とも思われないこともあるでしょう。投資家自身も現地に住むのではない限り、物件の管理については現地の管理会社と契約する必要があります。ただし海外では「業務」や「契約」ということに対して、日本人とは温度差のあるとらえ方をしている場合もあります。

例えば国によっては、仕事の始業時間や約束の時間に遅れることは珍しくありません。地域によっては何時間も遅れたとしても、それほど目くじらを立てる人がいないこともあります。「あの時はこれで良かったが、今は事情が変わったので履行できない」と言って、契約書で取り交わした内容や約束事を簡単に覆してくることもあります。日本人の感覚だと、少し考えにくいことかもしれません。

物件のある国が違うということは、湿度や気温、気候などが違うことになりますから、日本の不動産に必要なもの以外のメンテナンスが必要になることもあります。思いのほか、初期投資や維持費用がかさむ可能性もあるでしょう。現地の情報を知り尽くしていないと、当初は戸惑うことばかりです。何かあればその都度フレキシブルに対応していくことや、カルチャーショックを感じても寛容に対応していく適応能力が大いに求められます。

4.ローンを組むのが難しい

日本の場合、不動産投資に数千万単位の資金が必要であれば、金融機関でローンを組んでまかなうのが一般的です。頭金として多少の自己資金を入れることは少なくありませんが、場合によってはフルローンを組んでしまうことも可能です。海外不動産投資のための資金について、日本の金融機関でローンを組むことはとても難しくなります。ごく一部の金融機関でのみ海外不動産投資のためのローンを取り扱ってはいますが、審査基準はかなり厳しいものになっているようです。

もちろん海外にも金融機関はありますが、国によっては外国人に対する融資は原則として取り扱いません。幸いローンが組めたとしても、日本のようなフルローンは期待できません。せいぜい物件価格の半分程度、しかも日本の金利よりはるかに高い金利で借り入れることになります。ローンを組んで海外不動産投資を始めようと考えているなら、少なくとも物件価格の半分以上の自己資金を用意してからでなければ難しいでしょう。

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海外の投資用不動産を購入するには?

では、いざ海外の投資用不動産を購入する段階になったら、どうすれば良いのでしょうか。おもな方法は次の2つです。

1.自分で現地に赴いて購入する
2.代行業者を介して購入する

投資用不動産を購入したい国や地域がもう決まっており、現地の情報に詳しく、言語面での問題がないのであれば、自分ひとりで物件を選定することも可能ではあります。ただ、物件に対する観察眼はもちろんのこと、現地の言語または英語で契約書などをやり取りできる言語力や、現地の法律や税金に関連する知識を豊富に持っていることが最低条件です。

日本人だけでなく、先進国の不動産投資家は何かと詐欺の標的にされがちです。比較的警戒心が薄い上、お金を持っていることが多いためと考えられます。現地の仲介業者へお金を払った途端音信不通になるとか、建築中のはずだった物件がいつの間にか消滅していたなどは、よくある話です。自分ひとりで購入するのであれば、詐欺やトラブルから身を守れるのも自分ひとりです。対策を万全にしておかなくてはなりません。

ほとんどの投資家は、海外不動産に投資する際、日本国内の代行業者か信頼の置ける現地の代行業者に依頼します。投資プランの相談や物件情報の提供、税金面でのアドバイスなどで力になってくれるだけでなく、現地の管理会社のあっせんや物件選びのための現地ツアーを開催しているところもあります。業者による差は多少あるとしても、代行業者は海外の不動産事情を知り尽くしており、不動産投資のプロでもあります。リスクと労力を最低限に抑えて海外不動産投資を始めたいのであれば、代行業者に頼るのが賢明でしょう。

海外不動産投資における人気国は?

シンガポール
海外とは言うものの、どんな国が人気なのでしょうか。主な人気国をご紹介します。

アメリカ

世界一の経済大国であるアメリカは、安定した不動産投資が期待できる国です。日本と違い、生産人口や個人消費は拡大しており、今度も緩やかに増加することが見込まれています。基本的に外国人の受け入れに寛容なため、世界中からたくさんの投資家がビジネスチャンスを求めてアメリカに集まっています。

アメリカでは、日本のように人口推移に見合わない住宅建設は行われていませんし、空き家率も5%~10%前後と低くなっています。その上、持ち家を持つよりは賃貸に住むことを望む人が多いため、賃貸住宅市場は安定したニーズを抱えています。そのため、外国人投資家が今から参入したとしてもある程度安定した収益が期待できるのがメリットです。また、最近ではハワイの不動産が人気で、世界的にも注目されています。価格についてはすでに高騰している状況ですが、日本人観光客が多い場所でもありますので、今後の一つの選択肢として検討するとよいでしょう。

中国

近年著しい経済成長を遂げている中国では、不動産市場もすでにある程度成熟しており、これ以上の値上がりはあまり期待できないと考えられています。それでも、人口推移や国民経済を考慮すると賃貸住宅のニーズは継続していると思われるため、優良物件を見つけて投資する価値はあるでしょう。

中国への不動産投資は、中国通貨「元」もカギになります。中国経済の発展に伴い、「元」の価値は今後上昇していくことが予想されているためです。世界の主要通貨であるアメリカドル、また円などの為替レートに見合うよう段階的に切り上げられると考えられており、比較的「元」が安い今がチャンスと見て「元」を買う投資家も多くいます。早くから中国での不動産投資を始めておけば、「元」の価値が上昇した時に物件の価値は購入時の何倍にも膨らむ可能性があります。中国語を使えるのなら、中国での不動産投資も検討してみるべきでしょう。

シンガポール

中国と同様に経済成長が著しいですが、その分、物価は高騰を続けています。シンガポール国内の一部の不動産に関しては、銀座や六本木など東京の一等地の数倍の価格で取引されるほどの高騰ぶりで、一般の不動産投資家が今から参入するのはかなりハードルが高いと言えます。さらに、シンガポールの不動産は投資人気が過熱しているため、利回りも低くなっています。外国人がシンガポール国内の不動産を購入する際の規制も厳しく、特定の条件に該当する物件でなければ購入できません。

シンガポールでは外国人でもローンが組める場合もありますが、借り入れ可能な金額は物件価格もしくは評価額の、どちらか高額な方の半分程度にとどめられており、相当額の自己資金が必要であることが分かります。シンガポールの不動産投資は、資金面でかなりゆとりを持つ投資家や富裕層にのみ門戸が開かれていると言えるでしょう。

まとめ

解説してきた通り、海外不動産投資には大きなメリットと大きなデメリットが共存することがお分かりいただけたと思います。投資の世界に、ローリスクでありながらハイリターンなどということは有り得ません。現地に行く機会はほとんどなく、現地の言葉は分からないし今後習得する予定もないという状態ならば、現地の不動産業者もしくは日本国内の海外不動産投資代行業者に丸投げする他ありません。本当に信頼できる代行業者を見つけられなければ、海外の不動産へ投資することは難しいでしょう。

海外不動産投資は無限の可能性を秘めた投資案件ですが、成功したいのであればそれなりの初期投資や投資家としての努力が必要です。少なくとも、現地の公用語を問題なく理解できる程度の言語力は必要だと考えましょう。通訳を介せば問題ないと思われるかもしれませんが、通訳がいつでも正確な意思伝達を手伝ってくれるとは限りません。投資家が支払うお金や負う責任、義務についての話題であればなおのこと、投資家自身が理解できていなくてはなりません。実際、現地の不動産会社と口裏を合わせて、都合の悪いことを伝えないようにする通訳もいます。現地の言葉が分からなければ、売買契約書さえ読めないでしょう。投資家にとって、その投資が成功するかどうかを大きく左右するのが売買契約書です。当事者である投資家自身が読めないのでは、その契約書にはほとんど意味がありません。

物件のオーナーである以上、一から十まですべてを現地の業者に任せることはできませんし、何かあれば責任を問われるのですから、少なからず言語力は必要です。海外不動産投資はハイリスク・ハイリターンの投資です。何のリスクもなく海外不動産投資を成功させられるなどと謳う不動産業者があれば、一度立ち止まって詐欺を疑うべきでしょう。

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