地代滞納における借地契約の解除方法と手順!時効防止法や無催告解除の方法も解説

地代 滞納

地主にとって最大のリスクは、借地権者の地代滞納トラブルです。

地代を滞納されると、固定資産税やその他管理費の分だけ赤字になってしまいます。

地代を滞納された場合は借地契約を解除できますが、正しい手順を踏んで手続きをしないと契約解除が認められません。

地代滞納のような不動産トラブルは、個々の事情によって適切な対応が異なります。そのため、解決には不動産問題に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。

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地主は地代滞納による借地契約の解除が可能

借地権者に地代を滞納された場合、借地契約を解除可能です。

ただし、裁判によって契約解除の正当性が認められた場合のみ、借地契約を確実に解除できます。

そのため、地主はトラブルが発生したからといって、一方的に契約を解除することはできません。

地主と借地人の信頼関係に着目される

もし裁判に発展した場合「地代を滞納した」という事実そのものよりも「滞納によって地主と借地権者の信頼関係が破壊されたか?」が争点となります。

次の観点から「信頼関係の破壊といえるほどではない」と判断された場合、借地契約の解除が認められない場合もあります。

  • 借地権者が滞納した理由
  • 借地権者が滞納した金額
  • 借地権者が滞納した期間
  • 借地権者の支払いの意志など

過去の判例では、次のような場合に借地契約の解除が認められる可能性が高いです。

  • 借地契約書の契約解除条項に記載されている滞納期間等を超過して滞納が発生している
  • 地代の支払い催告をしたけれど催告期間内に支払いがない

つまり、地代の滞納期間が長期であったり、支払いの意志が見えないなどのケースであれば、借地契約解除の正当性を主張できます。

無催告でも借地契約を解除できる場合がある

地代を滞納されている場合、地主は借地権者へ支払いの催告をしようと考えることでしょう。

しかし、催告をしなくても借地契約が解除できる「無催告解除特約」という制度があります。

借地契約の契約書などに「○カ月分の賃料滞納があった場合、催告をすることなく契約を解除することができる。」などの特約が取り決められている場合、地主は催告せずに借地契約を解除できる場合があるのです。

ただし、無催告解除特約は絶対的に認められるわけではなく、特約を付した場合でも原則として前の項目でも説明した「信頼関係が破壊されたか?」が重要視されます。

信頼関係破壊の法理

賃貸借契約において、なぜここまで当事者同士の信頼関係に着目されるのか不思議に思う人もいるでしょう。

人と人が結ぶ契約において、契約内容の決まりごとが必ずしも絶対的に正しいというわけではなく「人道的理念上においてどうなのか?」という点も重要とされています。

例えば、当事者が決まりごとを盾に好き勝手に契約解除できてしまうと、解除された相手の意思を一切考えないことになり、契約自体が合理性のないものとなってしまう恐れがあります。

そこで裁判所は、信頼関係を基礎とする賃貸借契約において、当事者同士の信頼関係を破壊するような行為であったのかという点も客観的な判断材料としているのです。

このことを「信頼関係破壊の法理」といい、法律の根底にある規則のひとつでもあります。

人の主張に対して人が判決を下すのですから、その信頼関係破壊の行為がどの程度のものなのかという基準は存在せず、ケースバイケースということになります。

地代滞納トラブルの基本的な対応策

地代が滞納されると、得られるはずの収益が得られなくなってしまいます。

しかし、地代を滞納されたとしても、強制的に契約解除することはできません。

次の項目から、地代トラブルが発生したときに、どのような対応策が考えられるのか説明します。

書面で契約解除についての催告状を送る

地代滞納が発生したときは、まず滞納している借地権者に書面で催告状を送りましょう。

口頭での催告よりも催告をした事実が残る書面のほうがよいといえます。また、相手に催告状を送ったことが記録される配達証明郵便を利用しましょう。

なぜ催告の事実が大事なのかというと、債務不履行(今回の場合は地代を支払わないこと)などで契約解除を相手に求める場合、不利益を被った当事者が催告という行為をする必要があると民法で定められているためです。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。出典:e-Govポータル「民法第541条」

催告状には「いつまでに支払ってくだい」などの具体的な期間に加えて、「催告に従わなかった場合は契約解除します」という意思も記載しておくことが重要です。

また、催告と契約解除通知を一緒にしてしまったほうが無駄な手間を省くことができ、相手に危機感を与えることもできます。

借地権者が話し合いや交渉に応じた場合

滞納している借地権者が、書面等の催告や契約解除通知によって話し合いや交渉に応じた場合はできるだけ穏便に解決を図ることが大事です。

滞納が続いている理由や今後の支払い計画、借地契約などについて、冷静に話し合うことができるような空気を作ることを心がけましょう。

また、相手から「地代を分割で支払いたい」「来月まで待ってほしい」などの交渉をされることもあります。

交渉の上、再度約束を取り交わす場合はしっかりと合意書(示談書)などの書面で残し、合意の証明印なども忘れないようにしましょう。

契約解除通知に応じない場合は法的手段を検討する

催告状と契約解除通知を送ったのにもかかわらず、支払いに応じない、返答も一切なく無視されているなどの場合は法的手段を検討するのもよいでしょう。

法的手段では、裁判所に訴訟の提起をすることになります。

この時点で賃貸借契約解除の効力が発生し、あとは借地権者の退去と滞納地代の支払いを請求することになります。

不動産明渡請求訴訟

借地からの退去と滞納地代を請求する場合、不動産明渡請求訴訟を裁判所に提起します。

不動産明渡請求とは、名前の通り不動産の明け渡しを求める訴訟です。

この際、借地権者が所有する建物が借地上にある場合は「建物の撤去」も同時に請求しなくてはなりません。

裁判では、賃貸借契約における契約書や合意書、催告をおこなった事実がわかる催告書や解除通知書など、地主の主張を裏付けるものを全て提出することになります。

これにより、再三に渡る催告にも応じなかったなどの地主側の主張が立証されれば、信頼関係の破壊があったと認められ、借地契約の解除請求と滞納地代の請求が有効とされます。

もしも、不動産明渡請求訴訟で主張を認めさせたい場合、不動産トラブルに強い弁護士へ相談するとよいでしょう。

土地明け渡しの強制執行

不動産明渡請求の判決が確定した後、借地権者は土地を明け渡すことになります。

素直に借地権者が明け渡しに応じればよいですが、裁判の判決が出たのにもかかわらず借地を明け渡さずに住み続ける人も存在します。

判決後においても住み続ける借地権者を退去させるには、裁判所に土地明け渡しの強制執行の申立をおこない対処しなくてはいけません。

土地明け渡しの強制執行は国が権力を行使し、借地上から建物などを取り去り強制的に退去させる最終手段ともいえます。

建物の解体費用などは地主が負担しなくてはならない場合があるということを前もって認識しておきましょう。

また、費用をかけたくない場合は自主的に退去してもらうよう交渉を重ねるのもよいでしょう。

地代滞納による借地契約解除の手順

借地人の地代滞納トラブルが続いているなど、借地契約を解除したい場合は以下の手順に沿って手続きをおこないましょう。

  1. 地代の支払いを催告する
  2. 借地契約を解除することを通知する
  3. 建物収去土地明渡請求訴訟を起こす

契約内容によっては上記の手順でなくても解除が認められるケースもあります。

しかし、基本的にはこの流れに沿って解約手続きをおこなった方が確実だといえるでしょう。

1.地代の支払いを催告する

地代の支払い期日から数日〜数週間が経過しても滞納が続いている場合、電話や催促状で地代を請求します。

電話に応じてもらうことができれば、借主の経済状況や滞納の理由などについて直接話し合えるため、支払いについて冷静にやりとりできるかもしれません。

もし何度も電話したり留守電を残しても折り返しの電話が来ないのであれば、催告状を作成して送付しましょう。

電話したり催告状を送付しても連絡がないときは借地契約を解除することを書面で通知するとよいです。

2.借地契約を解除することを通知する

「地代を支払ってくれない」「数週間以上も滞納が続いている」など借主に対して信用を失った場合「契約解除通知」を送付しましょう。

契約解除通知を送付する前に、まず電話や催告状で地代を請求していなければいけません。

繰り返し催告したにも関わらず地代が支払われない場合に、契約解除の通知が可能になるというわけです。

なぜなら、事前の催告もなしにいきなり契約解除を求めるのは借主の権利を侵害していると考えられることもあるからです。

契約解除を通知するのであれば、一般的に繰り返しの催告をした上で3カ月以上の滞納が続いていることが目安だといわれています。

任意での明け渡しも請求する

契約解除通知を送付する際に、任意での明け渡し請求も同時におこなっておくとよいかもしれません。

仮に借主が地代を支払えない状況であり立ち退きを自ら検討している場合、任意で土地を明け渡してもらえる可能性もゼロとは限りません。

また、任意であれば訴訟や裁判など大きなトラブルに発展することも少ないため、スムーズに土地を返還してもらえるでしょう。

3.建物収去土地明渡請求訴訟を起こす

契約解除の通知や明け渡し請求に対しても借主から連絡がない場合、最終手段として「建物収去土地明渡請求訴訟」を裁判所に申し立てましょう。

建物収去土地明渡請求訴訟・・・建物を解体して更地の状態で土地を明け渡してもらうためにおこなう法的手段のことです。

申立をおこなう際は訴状や答弁書などの必要書類を用意して地方裁判所に提出します。訴訟の申立が認められれば和解での解決や訴訟の判決など裁判所によって判断されます。

借地契約解除が難しい場合は合意解約で明け渡してもらう

地主側から借地契約解除をおこなうには契約内容に契約解除に関する規定があることに加え、解除の申立に正当な事由が認められなければなりません。

そこで、地主と借地人の「合意解約」で借地契約を終了させるという手段もあります。

合意解約・・・借地契約を結ぶの当事者が、契約を解約することに合意して契約終了とするものです。

借地権者が地代を滞納している時点で、解約に合意をとる必要はありません。

しかし、借地権者と余計な争いをしたくない場合や、借地権者側の事情を知って同情の余地があると判断した場合、当事者同士の和解として合意解約という手段を選択するケースもあります。

この方法が最も穏便に契約を解除できるといえますが、地主と借地権者の双方が合意しなければいけません。

そのため、地主は借地権者が借地契約の解約に合意できるように交渉の仕方を工夫する必要があります。

合意を強要するような行為をすると、借地権者が合意に応じなかった場合に法的手段に出ようと思っても不利になってしまう恐れがあるので注意が必要です。

ケースごとの地代滞納対応策

地代を滞納する理由は人それぞれです。

ただ単に支払いの管理ができていない人もいれば、何か理由があって支払うことができなくなっている人もいるでしょう。

地代滞納のケースごとに、地主としてどのような対応を心がけるとよいのか説明します。

滞納理由が同情に値する場合は借地権の売却や返還を提案

借地権者が失業中だったり、病気をして収入が減っているなどの事情がある場合は、借地権の売却を提案するのも一つです。

どうしても払えない事情があることはわかるけれど、地主としても地代が貰えなければ生活に支障が出てしまうことも考えられます。

だからといって、滞納地代の一括支払いや借地契約の解除を借地権者に求めても、一層相手を追い詰めてしまい音信不通になったり、余計な争いを生んでしまう危険性があります。

これにより、問題の解消が長期化するなど地主にとっても大きな損失となることが懸念されます。

それよりも借地権者に借地権の売却を提案し、譲渡承諾料と新しい借地権者を獲得するほうがメリットのある方法ともいえます。

また、借地権を地主側で買取るという提案をするのもよいかもしれません。

借地権者が地代請求権の時効を主張している場合

昔から借地契約を結んでいるようなケースでは、過去に未払いだった地代が発覚することも珍しくありません。

相続などで借地権者が変わり、過去に滞納があったことを現借地権者が知らないということもあるでしょう。

このような場合、現借地権者に過去滞納分を請求したときに「その地代請求は時効なので支払う義務はない」と主張されることがあります。(時効の援用)

時効の援用は民法で定められる「消滅時効」という制度を根拠としているため、有効とされた場合は地代回収が困難になります。

地代の消滅時効は5~10年

消滅時効とはどのようなものかわかりやすく説明すると「債権者が債務者に対して請求などの権利を一定期間行使しなかった場合、その権利を消滅させる」という民法によって定められた制度です。

今回の記事のテーマに置き換えると「借地権者が地代の滞納をしているにもかかわらず、地主側で請求を一定期間おこなわなかったため地代請求権は消滅してしまい、借地権者は支払う義務がなくなる」という解釈ができます。

また、2020年の民法改正により消滅時効のルールが変わりました。改正前は債権の種類ごとに年数がわかれていましたが、改正によりこれが統一されています。

下記に説明する内容は改正後の情報であり、改正前の契約については旧制度が適用されますので、詳細は弁護士に相談しましょう。

債権の消滅時効が認められる期間は、債権者が「権利を行使できるかどうか」をどのように認識していたかで変わります。

  • 権利行使ができることを知っていて行使していない場合・・・5年
  • 権利行使ができることを知らずに行使していなかった場合・・・10年

また、債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないと時効が消滅します。

参照:e-Govポータル「民法第166条」

消滅時効を主張されたら一部弁済の交渉をする

地代の滞納において借地権者から時効を主張された場合、一部弁済をしてもらうよう交渉しましょう。

本当に5年以上経過し消滅時効が完成したのか確認することも大切ですが、時効完成か否かにかかわらず一部弁済をして受けることで、「借地権者が時効の利益を放棄した」と判断される可能性があります。

消滅時効が完成していた場合ついて補足すると、時効完成後の一部弁済は債務者にとって債務を認めることと同じことで、時効の援用は認められないとされたケースがあります。
(昭和41年4月20日判決)

滞納している地代が判明した場合は、最初から一括請求をするのではなく、一部のみ先に支払ってもらえるような方向に話を進めるのが良い方法です。

少しでも支払いがされた場合、その時点で一部弁済をした扱いになり時効の完成や援用を阻止することが可能になります。

参照:裁判所「昭和41年4月20日判決」

借地権者の地代滞納を防ぐためには

地代滞納を防ぐためには、契約書をしっかりと確認させ契約内容に双方が同意したという事実を確実に残しておく事が大事です。

とくに、滞納した場合の措置内容や特約については具体的に話をしておきましょう。

また、借地契約を結ぶ際に地代の重要性を話しておくのもよいかもしれません。

滞納すると地主側も生活が大変になるということを何となく理解してもらうことで、地代滞納をしてはいけないという気持ちが借地権者に生まれます。

地主と借地権者が日々さまざまなことを話し合い、信頼関係を強固なものにしていくことも大切です。

まとめ

地代滞納トラブルで借地契約を解除する場合、裁判では地主と借地人の信頼関係が破壊されたか否かが着目されます。

過去の判例から、長期滞納や支払い催告の無視などの行為は信頼関係の破壊とみなされることが多いようです。これらの行為を借地契約解除の判断基準にするのもよいかもしれません。

地代滞納トラブルが発生した場合は必ず催告状を送付しましょう。借地契約を解除したい場合は催告をした事実が残ることが後々重要となります。

法的手段をとる場合は借地契約解除の正当性が問われるので、催告書や解除通知書などの主張を裏付ける証明物を前もって準備しておくとよいでしょう。

また、借地権者が時効を主張してきた場合は地代の一部弁済をしてもらう方向で交渉しましょう。これにより時効の援用を無効にできる可能性があります。

滞納トラブルを未然に防ぐためには、地主が日常的に借地権者との信頼関係を築いていくことも大切です。

地代の滞納でよくある質問

地代が滞納されたら借地契約は解消できる?

借地権者に地代を滞納された場合、借地契約を解除可能です。ただし、裁判によって契約解除の正当性が認められた場合のみ、借地契約を確実に解除できます。

地代滞納トラブルがおこったらどうすべき?

書面で契約解除についての催告状を送るとよいです。話し合いや交渉に応じた場合は便に解決を図りましょう。なお、契約解除通知に応じない場合は、訴訟の提起が必要かもしれません。

地代滞納による借地契約解除の手順は?

「地代の支払いを催告する」「借地契約を解除することを通知する」「建物収去土地明渡請求訴訟を起こす」

借地契約解除が困難な場合はどうすべき?

地主と借地人の「合意解約」で借地契約を終了させるという手段もあります。借地権者が借地契約の解約に合意できるよう、交渉の仕方を工夫する必要があります。

地代の滞納を対策するためには?

「滞納理由が同情に値する場合は借地権の売却や返還を提案」「契約内容に双方が同意した事実を残しておく」ことが大切です。

最終更新日:
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