遺産分割協議前に相続不動産を売却する方法!トラブルの対処法も解説

遺産分割協議

相続が発生する際に遺言書が残されていない場合は、遺産の分け方を決めるために遺産分割協議をおこなうのが一般的です。

しかし、遺産分割協議がなかなかまとまらないこともあります。このような場合「遺産分割協議前に相続した不動産を早めに売却できないのか」と疑問を抱く人も少なくありません。

この記事では、遺産分割協議前に相続不動産を売却する手順を詳しく解説していきます。

また、相続不動産を売却した後に遺言者が見つかった場合や相続人の代表者が売却代金を分割しようとしない場合などのトラブルについても説明します。

遺産分割協議前に相続不動産を売却する手順

売却
遺産分割協議前に相続不動産を売却するためには、いくつかの手順を踏まなければいけません。主な手順としては以下の通りです。

①相続人を確定する
②相続人全員の同意をもらう
③代表者を選び売却を委任する
④相続登記をおこなう

次の項目から一つずつ解説をしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

①相続人を確定する

遺産分割協議前であれば誰が相続人となるのか確定しなければいけません。

なぜなら、被相続人が離婚や再婚をしている場合、家族形態が複雑化している可能性が高いからです。そのため、思いもしない相続人が現れるということも考えられます。

例えば、離婚した夫婦の間に子どもがいる場合、その子どもには相続権が認められます。

相続人を確定するためには「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」を取得する必要があります。

取得できたら「誰と結婚したのか」「子どもが何人いるのか」などの情報が記録されているため誰が相続人になるのかを調査しましょう。これで相続人の確定が完了します。

次の項目では戸籍謄本の入手方法について解説します。

戸籍謄本の入手方法

入手するためには、被相続人の本籍地を管轄している役所の窓口で申請しましょう。相続手続きで必要であることを伝えるとスムーズに発行できる場合があります。

また、郵送での申請も可能なため窓口に行く時間がないという場合は利用するとよいでしょう。郵送申請するのであれば「申請書」「定額小為替」「返信切手を貼った返信用封筒」「身分証のコピー」を同封するのが一般的です。

ただし、申請書類や手数料などは各自治体によって異なります。申請先の役所に電話で問い合わせたりホームページを参照してみましょう。

②相続人全員の同意をもらう

相続人を確定したら全員から売却の同意をもらう必要があります。これは民法で以下のように規定されています。

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。出典:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#848、民法第251条

条文に記載されている「共有物の変更」とは売却するお金に変える)ことも含まれます。

また、不動産会社と媒介契約を結ぶ際に、相続人全員が契約書に署名捺印しなければならないことも同意をもらう理由の一つです。

そのため、相続人全員と不動産売却についてじっくりと話し合うことが大切です。

同意をもらえなかった場合

時間をかけて話し合ったとしても必ずしも全員から売却の同意をもらえるわけではありません。例えば、思い出のある家や土地を手放したくないと考える人もいます。

ただし、相続した不動産を利用する相続人がいなかった場合、空き地・空き家などになってしまいます。そのまま放置してしまうと税金や管理費だけがかかる負の遺産となってしまうでしょう。

売却の同意を得られるようにこのような事実を伝えることも大切です。

それでも相続人との交渉や説得が苦手という人は不動産関係に詳しい弁護士に相談するとよいかもしれません。

不動産に関する知識や法律に詳しい専門家に依頼することでトラブルなく話し合いを円滑に進めることができる場合もあります。

③代表者を選び売却を委任する

無事に相続人全員から売却の同意をもらえたのであれば、相続人の中から代表者を選び売却を委任するとよいです。

代表者を立てない場合、買主と売買契約を交わすときに共有者(相続人)全員が実印と印鑑証明書を用意して、その場で署名しなければいけません。

遠方に住んでいたり忙しくて立ち会えないという理由で相続人が一人でも欠けてしまうと売却できなくなってしまいます。

しかし、代表者を立てれば、他の相続人は印鑑証明付きの「委任状」を用意するだけで契約時に立ち会う必要がなくなります。

そのため、買主と契約や引き渡しなどの日程を調整しやすくなり、スムーズに相続不動産を売却できるでしょう。

④相続登記をおこなう

代表者を選任したら相続登記をおこないましょう。被相続人名義のままだと相続した不動産を売ることができません。

その理由は、所有権を移転させないままだと不動産の権利を主張できないからです。また、被相続人から買主へ所有権を直接移転させることも不可能なため、相続登記は必須です。

相続登記は「単独名義」または「共有名義」のどちらかで手続きをおこないます。次の項目で単独名義と共有名義について解説しますので参考にしてみてください。

単独名義で登記する

相続登記前に代表者が決定していれば単独名義での登記が一般的だとされています。

その理由は代表者の単独名義にすることで代表者のみで契約手続きなどを進めることができるからです。そのため、スムーズに相続不動産を売却できるでしょう。

また、他の相続人からの委任状なども受け取る必要がないため、相続登記が完了してすぐに売却を進められることもメリットの一つです。

相続不動産を売却することが決まっているのであれば、早めに代表者を選任して単独名義による相続登記をおこなっておくことで売却しやすくなるでしょう。

共有名義で登記する

「代表者が決まっていなくても売却準備のために相続登記を済ませておきたい」という場合は、共有名義で相続登記をおこなうとよいかもしれません。

共有名義であれば相続が発生した時点ですぐに登記手続きをおこなうことができます。

ただし、共有名義の不動産を売却する際は相続人全員が契約締結時に立ち会わなければならないこともあります。

また、共有名義登記後に代表者を立てたとしても、必ず相続人全員の委任状が必要です。一人でも委任状の準備が間に合わなかったときは売却できなくなるので注意しなければなりません。

スムーズな売却を目指すのであれば、できる限り単独名義で相続登記をおこなった方がよいといえます。

不動産売却後に遺言書が見つかった場合の所有権

遺言書

もし相続した不動産を売却したあとに遺言書が見つかった場合、その不動産の所有権は誰のものになるのでしょうか?

例えば、遺言書に不動産を特定の人(配偶者や長男など)に遺贈するという内容が書かれていたとします。

しかし、その不動産はすでに第三者に売却しています。

結論から言って、このようなケースでは売却した不動産を取り戻すことはできません。その理由については次の項目で解説します。

売買契約は白紙にできない

「第三者への所有権移転登記がすでに完了している場合、受遺者は遺贈による所有権取得の権利を主張できない」という判例があります。(最判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁

つまり、売却後に遺言書が見つかったとしても、第三者と交わした売買契約が優先されるということです。

このようなケースでは本来、相続するはずだったのにそれが不可能となってしまうため、受遺者はその損害を賠償請求できるといわれています。

正しく遺贈・相続をおこなうためには、遺言書が書き残されていないかしっかりと確認することが大切です。

また、被相続人の遺贈に関する発言などがなかったか思い出してみることで、遺言書の有無を判断する手がかりになるかもしれません。

売却代金の分割請求

遺産分割

相続人の中から代表者を立てて相続不動産を売却した場合、売却代金の全額はまず代表者に支払われます。

しかし、なぜか代表者がこの売却代金を他の相続人に分割しようとしないというケースも全く無いわけではありません。

このような場合、遺産分割を請求することで代表者から遺産を受け取ることができます。

もしそれでも分割しようとしないのであれば民事訴訟を起こす必要もあるかもしれません。

それぞれの対処について解説しますので参考にしてみてください。

遺産分割を請求する

代表者がいつになっても売却代金を分割しようとしないのであれば、遺産分割するように請求しましょう。

売却代金における遺産分割協議をおこなわない場合は、法定相続分の金額を受け取ることができます。

請求する際に書面などを作成する必要はないため、口頭のみでの請求で十分だといえるでしょう。

しかし、代表者が請求を無視して売却代金の分割に応じないというトラブルも起こり得ます。それでも解決しない場合は次の対処法として民事訴訟を起こすこともあります。

民事訴訟を起こす

民事訴訟を起こす場合、原告または弁護士(訴訟代理人)が裁判所に「訴状」という書面を提出する必要があります。

訴状には請求の目的や請求に至った経緯などを記載します。また、裁判を起こすための手数料として法律で規定された金額の収入印紙を貼り付けます。

収入印紙の金額については裁判所が公開している「手数料額早見表」を参照するとよいでしょう。

遺産分割の請求金額が140万円以下については「簡易裁判所」、超える場合は「地方裁判所」へ訴訟を提起します。

民事訴訟に関する疑問や不安がある人は不動産にまつわる法律に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

不動産関係に強い弁護士であれば有利に交渉を進めてくれることもあり、トラブルを大きくせずに遺産分割を終わらせることができるかもしれません。

まとめ

所定の手続きをおこなえば遺産分割協議前でも相続不動産を売却できます。

必ずおこなわなければならないのは「相続人を確定すること」「全員から売却の同意をもらうこと」「相続登記をおこなうこと」の3点です。

もしスムーズに売却したいのであれば、なるべく登記前に代表者を決定して単独名義にしたほうがよいでしょう。

ただし、売却後に遺言書が見つかったり、代表者が売却代金を分割しようとしないなどのトラブルも考えられます。

遺産分割協議前における相続不動産の売却に関する疑問やトラブルの対処法などは、不動産関係に詳しい弁護士に相談することが大切です。

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