居抜き物件を売却するメリット・デメリットと高く売るための4つのコツ

居抜き物件

店舗をそのままの状態で譲渡する、居抜き物件の売却。一般的な閉店や移転よりも、撤去費用を抑えることができます。

しかし、正しい知識のもと決められた手順で売却しなければ、引き渡し後にトラブルが発生してしまうことも。

リスクなく売却するためには、メリット・デメリットについてしっかり学んでおく必要があります。

この記事では、居抜き物件を売却するメリット・デメリットと高く売るための4つのコツを解説いたします。

居抜き物件とは?売却相場はどうやって決まるのか

空き店舗

居抜きとは「すぐに営業できる状況で売買または貸出されている物件」のことです。厨房やテーブル、空調などの営業設備を残したまま取引されるため、設備を処分することなく売却できます。

そのため、一般的な売却よりもお得に売却が可能です。では、居抜き物件の売却相場はどのようにして決まるのでしょうか。

居抜き物件の価値を決める要素について詳しく解説していきます。

居抜き物件の相場と売却許可について

通常、閉店や営業停止をすると、撤去費用や解体費用がかかってしまいます。閉店作業には、以下のような費用が必要です。

・解体費用
・原状回復工事費用
・空家賃
・保証金の返却

居抜き物件として売却することでこれらの費用を節約させることが可能です。通常よりも100万~300万円ほどお得に売却可能です。

また、買主に設備を買い取ってもらうこともできるかもしれません。

貸店舗の場合は大家の許可が必要

貸店舗でも所有権者の許可さえあれば売却可能です。この場合、建物を売るのではなく、造作つまり内装や設備を売却することになります。

しかし、テナントを借りている場合は、独断で居抜き売却ができない点に注意してください。

現在の店舗を賃貸している場合は、原状回復義務があるため、勝手に内装や設備の譲渡ができません。

そのため、賃借人の立場であるオーナーは居抜き売却が可能かどうかを考えるよりも先に、契約書を確認し「内装・造作の売買」が可能かどうか確認する、または所有権者である大家に「居抜きで譲渡してもいいですか」と許可を得なければいけません。

賃借人が負担する原状回復義務とは?

原状回復工事とは「使用により発生した建物価値の復旧」をおこなうことです。つまり、テナントを借りているオーナーは、退去時に故意に破損や損傷した部分を修繕する義務を負います。

原状回復工事は、国土交通省が取り決めている「原状回復ガイドライン」により修繕範囲が定められています。

閉店時、現店舗のオーナーつまり賃借人が負担すべき箇所は賃借人の「故意・過失、善管注意義務違反により損傷した箇所」と「通常の使用を超えるような使用による損耗」に関するところです。具体的な例を以下にあげます。

修繕が必要な劣化 修繕が不要な劣化
・お店のイメージアップのため質のいいクロスに張り替えた

・カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ

・ペットによる柱や壁のキズ

・引越作業で生じたひっかきキズ

・落書き

・タバコ等のヤニ・臭い

・生い茂った雑草

・ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ

・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ

・ワックスがけ

・家具の設置によるへこみや跡

・フローリングや畳の色落ち

・家電設置跡の電気ヤケ(黒ずみ)

・ポスターや値札跡の日焼け

・壁のピンの穴

・自然に発生したガラスの亀裂

・鍵の取り換え

 

普通に使用する上で劣化した箇所においては、修繕せずとも退去できます。

しかし、不注意のためキズや損傷してしまった部分は、修繕費用を請求されます。これが原状回復工事です。元の状態に戻して建物を返却するということではありません。

売却価格を決める3つの要素

居抜きの価値は以下の3つの要素で決まります。

立地 ・人通りが多いエリアか

・周辺には多くのテナントが出店しているか

規模 ・開口が広いか

・適切な広さか

清潔感 ・グリーストラップにヘドロはないか

・排水管や排気ダクトに油汚れはないか

やはり「使いやすさ」が物件の価値を決めます。駅チカ物件や大通りに面した立地というような「ここにお店を出したい」と思わせる立地にある物件は、たとえ設備が古くても価値は高くなるのです。

また、必ずしも大規模な店舗が必要とされている訳でもありません。

30~50坪のような広い店舗よりも、10~20坪程度の小規模タイプの方が「少人数で切り盛りしやすい」「開業資金が少なくてすむ」というメリットがあるため、買い手が付きやすくなります。

このように居抜き物件の価格は、設備のグレードだけで決まるのではありません。買い手に「使いやすさ」をアピールできれば、価値を高めることができるでしょう。

居抜き物件を売却することのメリット・デメリット

居抜き物件

居抜き物件は、売り手のみならず買い手にもメリットが大きい契約形態です。

しかし、少なからずデメリットも存在するため、双方の視点を踏まえて居抜き売却を検討する必要があります。それでは、メリットとデメリットを続けて説明していきます。

居抜き物件を売却することのメリット

居抜き物件は、売却リスクを減らすことができるという点が最大の魅力です。「すぐに閉店したい」「撤退費用を節約したい」という場合におすすめです。

具体的には、以下の3つのメリットが得られます。

・造作譲渡料を得ることができる
・スケルトン解体工事費用がかからない
・撤退する直前まで営業を続けられる

それでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

メリット1.造作譲渡料を得ることができる

売主は、居抜き物件を売却すると買主から造作譲渡料を受け取れます。造作譲渡料とは、店舗に設置している設備費用を譲渡したときに受け取るお金のことです。

厨房設備・エアコン・照明・排気ダクト・椅子・テーブル・看板などすべて造作譲渡に含まれます。

リース設備の場合は、設備の所有権者であるリース会社と交渉する必要がありますので、まずはリース会社に造作譲渡の可否について確認しましょう。

造作譲渡料を決めるのは、設備のグレードだけではありません。前述したように立地や店舗の規模、集客力も大きく関係します。

造作譲渡する場合は、設備の種類を選ぶことも可能です。すべての設備を売却したり、売主が必要なものは譲渡一覧から外したりできます。

ただし、売主買主間で「売る、売らない」とトラブルにならないよう、契約書に造作譲渡物に関する項目を設けましょう。

メリット2.スケルトン解体工事費用がかからない

居抜き物件では、スケルトン解体工事費用がかかりません。クロスや給排水管などすべての設備などを撤去し、コンクリート打ちっぱなしの状態にすることをスケルトン解体といいます。

店舗の場合、スケルトンの状態で契約をして、スケルトンにして退去することが基本です。つまりは、物件を契約したときに内装工事をおこなった場合は、工事する前の段階に戻さなければいけません。

これが原状回復工事です。スケルトン解体費用は施工時期や時間、材質や坪面積によって大きく左右されます。

他の店舗との兼ね合い上、夜間の工事に限定されていたり、アスベスト撤去が必要であったりする場合には、より費用がかかると考えておいてください。

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メリット3.撤退する直前まで営業を続けられる

居抜きで売却する場合、買い手に譲渡する直前まで営業を続けられます。通常、売主が撤退してから買主に引き渡すまで、撤去工事がおこなわれます。

この工事が終了するまでの期間を考慮して、撤去日を計画していかなければいけません。賃貸の場合は、工期中も賃料が発生し続けることになります。

しかし、居抜き物件は撤去工事期間を考慮する必要がありませんので、閉店後すぐに受け渡すことが可能です。

「閉店ギリギリまで営業したい」「空家賃を支払いたくない」というオーナーにとって大きなメリットといえます。

居抜き物件を売却することのデメリット

一方で、居抜き物件の売却は、考慮すべきリスクもあります。以下のようなデメリットも踏まえながら、売却するかどうかを検討しましょう。

・売却できないと営業赤字が長引く
・マイナスのイメージをぬぐえないことも
・スタッフに閉店計画を知られてしまう可能性がある

続いて、居抜き物件の3つのデメリットについて解説していきます。

デメリット1.売却できないと営業赤字が長引く

営業赤字が続いていた場合、売却するまで赤字状態が続きます。同業者にしか売却することができない居抜き物件は、どうしても買主が限定される点が大きなデメリットです。

また、転用しにくい内容や設備であった場合は、売れ残ってしまう恐れもあります。

このような場合は、次の買主が現れるまで引き続き営業を続けるか、居抜き売却を諦めて撤去工事した方が売却できる可能性が高まります。

デメリット2.マイナスのイメージをぬぐえないことも

何らかの原因によってお店のイメージが低下していた場合、買主が見つかりにくいこともあります。

店名や従業員は別でも、内装や設備がそのままだと、お客さんはリニューアルや系列店の開店だと勘違いしてしまうかもしれません。

そのため、マイナスなイメージを拭いさることができず、買主が購入をためらうのです。このように、これまでの店の評判が売却に大きく左右することを念頭に入れておきましょう。

マイナスイメージが大きい場合は「閉店」「オープン」などの告知を十分におこなうことや、居抜き売却ではなくスケルトン解体後の売却がよいです。

デメリット3.スタッフに閉店計画を知られてしまう可能性がある

スタッフへの閉店告知のタイミングが、大きく狂ってしまうことも、ひとつのデメリットといえます。

スタッフに閉店告知をするよりも先に、居抜き物件売却の募集広告を打ち出してしまうと、経営者と従業員との信頼関係にキズがついてしまうかもしれません。

居抜き物件を売却するにあたっては、広く募集広告を出すことがほとんどですが、閉店告知よりも先にスタッフに感づかれてしまった場合、早期退職や給与の支払いの件で詰め寄られてしまう恐れもあります。

労働基準法では、飲食店舗を閉店する場合は閉店の30日前までに閉店告知をしなければいけないと定められています。

しかしながら、閉店ギリギリまで営業する居抜き物件では、早めに閉店告知をすることで、従業員の士気が下がることも考慮しなければいけません。

また、取引先への告知の配慮に欠けてしまったため、系列店へ迷惑をかけたというケースも多々あります。

買主を探すときは、プライバシーを保護してくれる不動産会社に依頼したり、信頼のおけるスタッフだけに相談しておくなど、綿密に閉店計画を立てていくことが大切です。

高く売却する4つのコツと注意点

居抜き物件を少しでも高く売却するためには、4つのコツがあります。撤退コストを削減するために、それぞれのコツと注意点について詳しく解説いたします。

コツ1.他のテナント様が使いやすい造作がある

次のテナント様が使いやすい設備や内装であれば、物件の価値が高まります。汚れが目立ったものや機能的に劣化したものは、買主に良い印象を与えません。

清掃が行き届いているものや不具合がなく比較的新しい設備は、売却金額が上乗せされることもあります。日ごろから丁寧に扱い、隅々まで掃除するように心がけましょう。

コツ2.買い手の業種と既存の造作がマッチしていること

居抜き物件は同業者に売ってこそ、価値が高まると考えられます。同じ飲食店でも、サービス内容が違えばお得感は生まれないのです。

たとえば、ファミレスとバーでは、同じ飲食店でも椅子やテーブルなど、内装の雰囲気は随分と異なります。居抜きの価値は「いかに前店舗の状況を次に活かすか」に尽きます。

できるだけ壊さずに、現状のまま営業するためには、いかに買い手の業種と既存の造作がマッチしているかどうかなのです。

販売活動をおこなうときは、買い手の業種やニーズを配慮し、選別しながら慎重に打診していくようにしましょう。

コツ3.解約を出す前に相談する

解約のタイミングを見極めることも、高く売るための重要なポイントです。解約する前に買主を決めてしまいましょう。

買主を探すよりも先に解約を申し出ると、買主が決まらないまま退去日が確定してしまいます。さらに、退去日が迫っていることを口実に、買主から値下げ交渉が入るかもしれません。

閉店予定があっても、売却のメドが立つまでは、焦らずに解約予告は出さないようにしておきましょう。

買主が見つからなかったり、納得する価格で売却できなかったりするときは、そのまま営業を続けるということもできます。

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コツ4.専門業者への相談

ほとんどの不動産会社で居抜き物件の売却をおこなっていますが、できるだけお得に売却したいときは「専門的な知識を持った会社」を選びましょう。

居抜き物件売却の場合、大家との交渉や造作譲渡契約、原状回復義務など、さまざまな問題が関わってきます。売却後のリスクを軽減させるためには、居抜き物件の売却に長けた業者に売買契約をお任せしましょう。

居抜き物件売却の流れ

計画立案
業種によって多少違いが出てくるかもしれませんが、ここからは基本的な居抜き物件を売却する流れを解説していきます。

ファーストヒアリングと現地調査

まずは、査定を申し込むことから始まります。査定日を決め、売却担当者が現地を訪れ店舗状況を調査します。査定額は「売却条件」「立地」「設備状況」「周辺店舗」などを考慮して算出されます。

ほとんどの不動産会社で、査定料は無料で実施されています。

売却計画の立案

ヒアリング後は、オーナーと担当者が図面を見ながら売却に向けて打ち合わせをします。貸店舗の場合は、貸主の承諾を得るための話し合いが必要です。

また、従業員への閉店告知・店舗の売上・造作の価格などを考慮しながら、売却戦略を考えていきます。

募集

売却戦略を立てたら、店舗の写真を撮影し、募集広告を作成しましょう。どの程度公開するのか、事前に希望を伝えましょう。

ウェブサイトを使い広範囲に幅広く募集するのか、特定の顧客だけに絞り限定的に広告するのか、売主の事情に合わせた募集をおこないます。

内見と申込

内見希望者が現れたら、閉店後など営業に支障がでない時間帯に店舗の内見がおこなわれます。内見では、造作の確認や価格交渉、入居日の調整を話し合います。

居抜き物件は買主が限定されているため、立地によっては頻繁に購入希望者が現れることはありませんが、いつ内見がおこなわれてもいいように、店舗内は清潔にしておきましょう。

契約と入金

買主が決まったら売買契約を締結します。契約書は不動産会社が用意してくれるため、売主は造作の状態や価格が正しく記載されているか確認しましょう。

賃貸物件の場合は、所有権者と新オーナー間で賃貸借契約を交わします。

引渡し

売買契約後はテナントの受け渡しをおこないます。旧オーナーから新オーナーに鍵と売買代金を引き渡し、引き渡しが完了となります。

居抜きにしないで売る場合

売却を進めていく中で、居抜き売却が難しいと判断することもあると思います。その場合、居抜きにしないで売る方向に転換することも可能です。

前述したように、設備や内装を撤去してから売却することを、スケルトン物件売却と呼びます。スケルトン物件として売却するときは、撤去工事が必要です。

設備や内装を完全に撤去することもできますし、空調やトイレだけを残すという一部撤去工事も可能です。売主・買主の希望に合わせて工事をおこなえます。

スケルトン物件は、一からレイアウトを考えやすく、以前のテナントイメージを引き継ぐこともないことから、居抜き物件より買主候補者が多い傾向にあります。

一方で、撤退工事が必要になるため、工賃や空家賃などコストがかかるというデメリットもあります。

スケルトン物件の売却に切り替えるときは、退去日から逆算し「いつまでに撤去を行えばいいのか」「いつまで店舗を借りていればいいのか」など、しっかりスケジュール調整をしていきましょう。

まとめ

居抜き物件として売却する場合、設備を処分する必要がありません。撤去工事が不要なうえ、買主から造作譲渡料を受け取れることから、うまくいけば一般的な売却よりも100万~300万円ほどお得に売却が可能です。

買主が限定されてしまうことや閉店告知のタイミングが難しいという点を除けば、売主にとってメリットが大きい売却スタイルと言えます。

ただし、貸し物件の場合は大家の承諾が必要になりますので、独断で売却しないように注意してください。

居抜き物件の売却は、スケジュール調整・買主と貸主との交渉がとても重要です。専門的なノウハウを熟知する不動産会社と連携し、売却を成功させましょう。

最終更新日:
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