不動産買主から突然、契約を解除されたらどうしますか?

契約解除

不動産の買主が売買契約を破棄することはよくあることですが、ここに付きものなのが「違約金」です。

当事者にとって重要な問題となる違約金は、多くの場合、不動産売買契約書にもそれに関する条項が置かれ、重要事項説明書にもその内容が記載されます。

さて、このような違約金ですが、どのような条件のもとで発生の可否や相場などが決まるのでしょうか。法的な根拠を確認しながら詳しく説明していきます。

「違約金」とはどのようなものでしょうか?

違約金

まず初めに、違約金とはどのような性質のお金なのかについて見ていきましょう。違約金は、「契約において、自身に債務不履行があった場合、相手方に支払うことをあらかじめ約束する金銭」を指します。

つまり「自分の都合で契約を破棄する場合に払うお金のこと」ということになります。では、法的にはどのように定められているのでしょうか。

その性質について規定した民法420条3項にはこのようにあります。

違約金は、賠償額の予定と推定する。

さて、「賠償額の予定」という聞きなれない言葉が出てきました。この言葉の意味を理解するには、同じく民法420条の1項を参照する必要があります。

当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を決定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。

ここからわかるのは「賠償額の予定」というのは「当事者間で債務不履行があった場合、請求できる損害賠償額をあらかじめ決めておくこと」だということです。そして、裁判になった際も、裁判所は原則的にはこの金額に口出しすることはできません。つまり、損害賠償を請求する側は、実際に受けた損害額にかかわらず、契約で定められた損害賠償の予定額を請求することができるのです。

具体的な例をあげてみましょう。ある不動産売買契約書で「違約金は1500万円」と定められていたとします。この場合、債務不履行によって実際に被った被害が800万円だとしても、請求する側は1500万円を請求することができます。もちろん逆もあり得ます。あらかじめ定められた違約金が「800万円」であれば、実際の被害額が1500万円だとしても、800万円しか請求できません。

尚、違約金を定める際、このようなシステムを採用することで、請求する方、される方双方にはどんなメリットが生じるかも紹介しましょう。

  • 請求する側:請求できる金額が定まっているので、実際の損害額がどれくらいなのかを立証しなくて済む。
  • 請求される側:違約金を支払うにしても、その上限を設定できる。

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決められた金額しか請求できない違約金も損害額別途請求条項をつけることで解決

損害賠償

前項でも紹介した通り、違約金は「賠償額の予定」とされるので、もし実際の損害があらかじめ決められた違約金の額を超えたとしても、原則、それ以上のお金を請求することはできません

しかし、不動産売買の世界は商品の単価が非常に高いので、違約金とは別に、それを超えた損害が発生した場合の損害額を請求したいと考える方も少なくありません。その場合、「違約金を超える損害賠償請求を行う場合もある」という条項を契約書に盛り込むことで、その問題の解決を図る場合があります。

例えば「違約金を超える損害が発生した場合、別途その損害額を請求できる」といった条項を加えておけば、売買当事者は、実際の損害額が違約金の額を下回っていても違約金を請求でき、逆に損害額が違約金の額を上回っていても、実際の損害額を請求することが可能となります。

違約金の契約上の効力が制限される場合

一般的な契約には民法をはじめとする私法の基本原理である「私的自治の原則」が適用されています。これは「私法的法律関係については、国家権力の干渉を受けず、各個人が自由意思に基づいて自律的に形成することができる」というものです。

契約の方法や内容、相手、契約をするかしないかは当事者同士の自由であり、そこで決まったことはきちんと守らなければいけません。もちろん不動産売買契約も同様に、その契約書に記載された内容通りの効力が発生しますが、以下のような場合はその限りではありません。代表的な例を該当する法律の条文を引用しながら紹介していきます。

宅建業者が売り主となる不動産売買契約の場合

宅建業者が自ら売り主になる契約の場合、違約金と損害賠償額の予定額を合わせた部分の合計が売買代金額の20%を超えることができず、超えた部分は無効になります。

宅地建物取引業法38条(損害賠償額の予定等の制限)

宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。

前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。

これまでもお話しした通り、違約金は「賠償額の予定」とされ、損害賠償金と懲罰金の両方の側面を持つお金ですが、不動産売買の違約金や損害賠償金は高額になる場合がありますので、不動産取引に詳しくない一般の消費者は不測の事態に陥る可能性があります。そのため、建物や土地のプロである宅建業者が売主である場合の違約金や損害賠償額の合計は、売買代金額の20%が上限となっているのです。

事業者が当事者となる不動産売買契約の場合

事業者と消費者との売買契約の場合、解除に伴って消費者が支払わなければならない違約金と損害賠償額の合計が、解除の事由などに応じて発生する平均的な損害額を超える場合には、超えた部分の金額が無効になります。

消費者契約法9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分

プロである事業者と、顧客である消費者では、商品に関する知識の量や質、交渉力に大きな差があります。その格差を是正し、弱い立場の消費者を守るためにあるのが「消費者契約法」です。

この法律があることで、消費者と事業者間で行われる契約締結の際に不適切な行為があったり、消費者にとって不利益な条項が契約書に盛り込まれていたりした場合には、それらを無効にすることができます。

上で紹介した同法の9条1号は、契約解除によって事業者が被った損害を上回る高額な違約金や損害賠償金、キャンセル料、解約料などのお金の支払いなどを定める契約条項について「被害を被った事業者に生ずる平均的な損害を上回る部分に関しては無効」と定めています。ここで言う「平均的な損害額」とは「同じ種類の事業者が同じ種類の契約を解除された場合を想定し、その場合に生じる平均的な損害額」と解釈されているとのことです。

以下に、消費者契約法9条と不動産に関連する事件の判例を「買主が勝った場合」と「売主が勝った場合」とでいくつかあげますので、参考にしてみてください。

平成24年4月17日 東京地裁判決
平成22年(ワ)第25620号手付金返還等請求事件

【事案の内容】
売り主が宅建業者であるマンション居室の売買契約後、エレベーターの設置工事において死亡事故が発生した。

買主は債務不履行解除、瑕疵担保責任による解除、事情変更による解除を主張するとともに、手付金の返還を請求した。

ここでは「手付金相当額を違約金として支払うものとする」という条項が、9条1号に違反するかが争われた。

【裁判の判断】
売り主が宅建業者であり、また、宅建業者が自ら売り主となる宅地または建物の売買契約における契約の解除に伴う違約金の額については、宅建業法38条に別段の定めがあり、この規定が9条1号に優先して採用されるとして、本件違約金条項は9条1号に違反し、無効とは言えないとした。

平成24年8月27日 東京地裁判決
平成22年(ワ)38688号損害賠償等請求反訴事件

【事案の内容】
建物賃借契約についての敷金返還等請求。「契約終了日まで部屋を明け渡さない場合、終了日の翌日から明渡し完了の日まで賃料等相当額の倍額を支払う」との合意が9条1号により無効になるかが争われた。

【判断の内容】
建物の貸主に生ずべき平均的な損害の額は賃料の限度と推認でき、これを超える損害が生じることをうかがわせる特別な事情も見当たらない。よって合意のうち月額40万円(一カ月の賃料)を超える部分は9条1号により無効として、敷金から控除する金額の一部を否定し、返還請求を認めた。

平成20年12月24日東京地裁判決
平成20年(ワ)第18864号建物明渡し請求事件

【事案の内容】
建物の定期借家契約が終了した後、明け渡しまでの遅延使用料(賃料の倍額)を支払うよう求めた事案。

「賃借人が本件契約終了と同時に本件建物を明け渡さない場合、賃貸人の請求により、終了の翌日から明け渡しに至るまで、賃料の倍額及び管理費に相当する額の使用量を支払わなければならない」との条項が9条1号、10条に反しないかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から、9条1号、10条違反ではないとして、明渡し遅延使用料の支払いを認めた。

1、9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定または違約金を定める条項に関する規定である。本件規定はそのような条項ではないので同号の適用はない。

2、明け渡しのために債務名簿取得、強制執行には時間と費用がかかること、賃借人が明渡し義務を果たさない場合に備えておくために従前の対価等以上の支払をしなければならないという経済的不利益を予定することは合理的であり、賃借人が上記義務を履行すれば不利益は実現化しないのであるから賃借人の利益を一方的に害するものではなく合理性がある。

3、賃借人が従前と同じ経済的負担をすれば目的物の使用収益を継続できるとするのは契約の終了と整合しない不合理な事態であり、賃借人に返還義務の履行を困難にさせる経済的事情等があるとしても、その事情等が解消するまで賃貸人の犠牲において同義務の履行を免れさせるべき理由はない。

4、本件規定は、契約書上に明記されており、これが賃借人の明渡し義務の適時の履行の誘引として定められたものであることは明らか。これによって賃借人が受ける不利益は、賃料相当額の負担増だけであり、しかもそれは賃借人が上記義務を履行すれば発生しないのであって、賃貸人が暴利を得るために本件規定が定められたものでないことも明らか。

5、賃借人が本件建物を居所としていたとしても、本件契約が終了すればその使用収益ができなくなるのは当然。

公序良俗に違反する違約金の場合

違約金の額が不当に大きければ、民法90条の「公序良俗違反」に該当し、無効となる場合もあります。

民法総則 第90条
 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする

違約金と手付金との違いが分かりますか?

手付金

違約金の性質についてはおよそ理解できたことと思います。ところで不動産売買契約といえば、違約金以外にも「手付金」というお金を支払いますが、これは違約金とは違うのでしょうか。

手付金とは、売買契約時に買主が売主に対して支払う契約金のようなもので、売買代金の1割くらいが相場です。手付金はそのまま売買代金に充当されるため、決済時には手付金を差し引いた残りの残代金を売主に対して支払うことになります。

手付金(解約手付といいます)の取り扱いについては、売買契約書に記載されている「手付け解除期日」までにキャンセルをする場合、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還した上で、手付金と同額を(手付倍返しといいます)買主に支払うことで売買契約を解除することができます。

そして、手付解除期日を過ぎた後に売買契約を解除する場合については、「違約金」を支払う必要が出てきます。つまり、売買契約後、一定期間までは「手付金」相当額でキャンセルができますが、その後については「違約金」を支払わなければキャンセルができなくなるということです。違約金等のトラブルが発生したらすぐに弁護士に相談し、対応策を練ることをおすすめします。

違約金の相場はどれくらいなのか

これまで、違約金の法的な立ち位置や、請求するための条件、請求できない場合についてご説明してきましたが、やはり気になるのはその相場です。

もし払わなければならなくなった時、それがだいたいどの程度の金額になるのかを知っておくだけでもその後の対応がスムーズになります。以下に、違約金の種類と発生状況、相場をまとめたのでご参照ください。しかし、あくまでもこれは「相場」なので、すべてのケースにこれが適用できるわけではありませんので充分注意してください。

媒介契約の違約金の場合
発生条件:不動産契約を期間中に破棄する
金額の相場:売買価格の3%+6万円ほど
売買契約の解除金の場合
発生条件:売買契約を自分の都合で解除する
金額の相場:手付金の倍額
売買契約の違約金
発生条件:売買契約の内容に違反する
金額の相場:売買価格の10%程度
売買契約の損害賠償
発生条件:売買契約の内容に違反し、相手に損害が発生する
金額の相場:損害賠償額と同じ

まとめ

「違約金」や「手付金」の概要、相場など分かって頂けたでしょうか?不動産に関わるお金は、非常に高額であり、またその仕組みは非常に複雑です。専門知識がない状態で違約金請求交渉をしても、相手に法的な専門知識があった場合、受け取れるはずの違約金が受け取れなかったり、自分を不利な状況に追い込んでしまったりする可能性があります

このような事態を防ぐために、トラブルが発生したらすぐに弁護士に相談し、対応策を練ることをおすすめします。

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