不動産の資産組み換えは相続税節税に有効!節税パターンと特例制度を紹介

資産組み換え

不動産を持つ人の相続税対策というと「所有している不動産を賃貸する」、「更地の土地にアパートやマンションを建てて家賃収入を得る」といったものが思い浮かぶかもしれません。

「資産組み換え」も積極的に検討したい相続税対策の一つです。

この記事では、相続税対策に有効である不動産の資産組み換えの節税パターンと特例制度についてご紹介します。

資産組み換えと、相続税節税の深い関係

相続税節税
資産組み換えとは、ある資産を他の種類の資産に換えたり、より価値の高い同種の資産へ換えるなどして、資産の形を変えていくことを言います。

例えば、現金を不動産へ、老朽化した不動産を新築不動産へ、空き地を不動産へ、などです。組み換えることによって活用範囲が拡大したり価値が高まったりするのは、多くの場合不動産です。そのため、資産組み換えには不動産が関わるケースが多くなります。

資産組み換えは、資産の有効活用による収益向上を実現するだけでなく、相続税の節税という面でも影響を及ぼします。相続税の税額を左右する「相続税評価額」は、資産の種類や条件によって大きく異なるものだからです。

相続税評価額は、必ずしも市場価値と比例しません。市場価値が低くても、相続税評価額だけは高いという現象も起こります。これは、相続税を支払うことになる相続人にとっては軽視できない問題です。

例として、以下のようなマイナス点のある不動産を所有しているなら、資産組み換えを具体的に検討した方が良いでしょう。

1.狭い道路に面している、面積が狭小、形が悪いなど、市場価値の乏しい不動産
2.収益不動産ではあっても、空き室や経年劣化が著しい不動産
3.相続人が使用する予定がなく、賃貸にもできない不動産

ほんの一例ではありますが、上記のような不動産は相続税評価額がそれなりに高くても実際の市場価値は低く、相続人にとってはデメリットが目立つものです。

相続人が「厄介な遺産を相続してしまった」と嘆くことのないよう、被相続人となる人は生前に必要な準備をしておくべきです。

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資産組み換えによる相続税節税の具体例を紹介

リフォーム
ここからは、不動産の資産組み換えによる相続税節税の例をご紹介します。

1.古い不動産をリフォーム・リノベーションする

売却や賃貸にできる余地はあるものの、古いために市場価値が低い不動産があるなら、生前にリフォームやリノベーションを行っておくことをお勧めします。

リフォームとリノベーションは意味を混同されがちな言葉ですが、厳密に言うとリフォームには「原状回復」、リノベーションには「付加価値をプラスする」という意味合いがあります。

新築時の状態を目指して原状回復させるだけで十分な不動産もあれば、人気の間取りや設備を取り入れ、新築時の状態にプラスαの価値を添えた方が取引において有利になる不動産もあるでしょう。

このような工夫により、売却時には利益を大きくできる可能性が高まりますし、賃貸にする場合でも早期に入居者を見つけ、長く住んでもらうことが容易になるでしょう。

ちなみに、リフォームやリノベーションを行うことで市場価値は上がっても、増改築を伴うほど大がかりなものでない限り固定資産税などの評価額はまず上がりません。相続対策としては、まさに理想的な資産組み換えとなります。

金融資産も多く所有している場合は、改装費用を支出することによって相続財産を減少させ、相続税額を抑えることにも繋がります。有意義な仕方で相続財産を減らしつつも、価値の高い不動産を相続財産として遺すことができる方法です。

2.空き地に賃貸物件を建てる、または貸し出す

空き地には、相続税評価額の軽減が一切ありません。そのため、空き地のままにしておくのではなく、賃貸物件を建てることを検討した方がいいでしょう。

空き地はそのままだと「自用地」として評価されますが、アパートやマンションなどの賃貸物件(貸家)を建てると「貸家建付地」となり、土地も建物も大幅に相続税評価額が下がります

どれだけ貸家建付地に節税効果があるか、以下の式で分かります。

土地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)
建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合)

評価額1億円の空き地をそのまま相続させた場合と、5000万円の建築費をかけてアパートを建てた場合の相続税評価額を比較してみましょう。借地権割合が60%、借家権割合が30%であり、固定資産税評価額が建築費の60%と仮定して計算します。

  空き地のまま アパート建築後
土地の評価額 1億円 8,200万円
建物の評価額 2,100万円
建築費 △5,000万円
評価額合計 1億円 5,300万円

このケースでは、4,700万円もの評価減ができます。貸家建付地とした場合には「小規模宅地等の特例」も適用可能になるため、さらなる評価減が期待できます。

空き地は持っているが建物を建てるほどの金銭的余裕がない場合や、賃貸経営のリスクを取るのは不安という場合には、空き地を貸駐車場にするのもいいでしょう。貸駐車場は初期投資が抑えられる反面、賃貸物件を建てる場合ほどの節税効果や収益は期待できません。

しかし、運営のための維持管理が容易であることや、将来用途を変更したり売却したくなった際の扱いも比較的簡単なことを考えると、検討する価値はあると言えるでしょう。

貸駐車場として使用している土地も、小規模宅地等の特例を適用可能です。ただし、アスファルト舗装をした駐車場であること、または塀などの構築物を設けていることなどが要件となっています。地面をロープなどで区画割りをしただけのいわゆる「青空駐車場」では適用になりません。

3.土地とマンションの等価交換を行う

相続の準備をしている人自らが住居の新築や購入を検討しており、かつ土地を所有しているなら等価交換も選択肢に含めることができます。等価交換とは、所有している不動産と同等の価値を持つ別の不動産とを物々交換するという方法です。

等価交換はたいていの場合、土地を所有している人とマンション建設業者との間で成立します。土地の所有者は土地を提供する代わりに、新しく建つマンションのうち自分が提供した土地の価格に見合う分の部屋と土地を得ることができます。

利便性の高い地域に土地を持っており、土地を手放すことに抵抗がなく、マンションを建設しても差し支えない地域であれば、等価交換を検討できるでしょう。

自宅として使用する場合は、自分が老後に暮らすための快適な家を手に入れると同時に、相続後に遺される配偶者の住まいを確保することもできます。相続開始後も、様々な税制優遇措置を受けることが可能です。

等価交換で複数の部屋を取得できる場合には、自分が住まない部屋は賃貸にして家賃収入を得ることも可能になります。

自分で住むにしろ賃貸にするにしろ、土地をそのままにしておくよりも等価交換をした方が相続税評価額を大幅に抑えることができます

資産組み換えにおいて適用できる特例制度

特例制度
不動産の資産組み換えでは、ケースごとに様々な税制優遇措置が設けられています。

ここでは、主な特例制度を3つご紹介します。

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1.小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた宅地や事業のために使用していた土地について、一定の要件を満たす場合に相続税評価額を減額するという制度です。

特例を適用できる宅地の種類は、次の4つです。

・特定居住用宅地
・特定事業用宅地
・貸付事業用宅地
・特定同族会社事業用宅地

宅地の種類別に細かい要件が定められていますが、おおまかに説明すると次のようになります。

特定居住用宅地

被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が居住する宅地のことです。被相続人の配偶者が宅地を相続する場合は特に要件の指定がありませんが、それ以外の相続人が相続した場合には、相続税の申告期限までその宅地に住んでいるか、所有し続けているかなどの要件があります。

特定事業用宅地

被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が、事業(貸付事業を除く)のために使用していた宅地のことです。相続した人が、被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎかつ事業を継続して行っていること、当該宅地を相続税の申告期限まで保有していることなどが要件です。居住用宅地の要件に比べると、かなりゆるやかな要件になっています。

貸付事業用宅地

被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が、アパートやマンションなどの賃貸住宅の貸付事業のために使用していた宅地のことです。要件は特定事業用宅地とほぼ一緒で、相続した人が被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎかつ事業を継続して行っていること、当該宅地を相続税の申告期限まで保有していることが要件です。

特定同族会社事業用宅地

被相続人、または被相続人の親族が出資金または発行済み株式の50%以上を保有するなどして、事実上の支配下に置いている法人の事業のために使用していた宅地のことです。当該法人から相当の対価を得て賃貸している宅地であることや、宅地を取得した親族が相続税の申告期限において当該法人の役員であること、宅地を相続税の申告期限まで保有することなどが要件です。

小規模宅地等の特例については、平成25年度の改正で限度面積が一部変更されました。

平成26年12月31日以前に発生した相続については、以下の限度面積および減額割合が適用されます。

  限度面積 減額割合
特定居住用宅地 240㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%

平成27年1月1日以降に発生した相続については、以下の限度面積および減額割合が適用されます。

  限度面積 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%

特定居住用宅地の限度面積が大幅に拡大されたことが分かります。

なお、相続開始前3年以内の贈与によって取得した宅地や、相続時精算課税を利用した贈与で取得した宅地については、小規模宅地等の特例の適用は受けることができません。

2.特定居住用財産の買換特例

一定要件を満たすマイホームの買換えを行った場合、譲渡したマイホームに対する譲渡所得税のうち、マイホームの買換えに充てた金額に相当する部分の納税が繰り延べられるという制度です。

譲渡するマイホームの要件

(1) 2019年12月31日までに譲渡すること(期間が延長される可能性もあります)

(2) 自分が居住している日本国内の家屋とその敷地および借地権を譲渡すること。以前に住んでいた家屋や敷地の場合、居住しなくなってから3年目の12月31日までに譲渡すること

(3) 譲渡する年の1月1日時点で、所有期間が土地家屋共に10年を超えていること

(4) 譲渡する家屋に居住していた期間が通算して10年以上であること

新たに取得するマイホームの要件

(1) 旧家屋を譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までの3年間の間に買い換え、かつ旧家屋を譲渡した年の翌年12月31日までに新家屋での居住を開始していること

(2) 土地面積が500㎡以下であり、家屋の登記上の床面積が50㎡以上であること

(3) 新しく取得するのが中古住宅の場合、取得日の時点において建築後25年以内、もしくは耐震基準適合証明書や住宅性能評価書などによって、一定の耐震基準に適合することが証明されていること

その他の要件

(1) 配偶者や親、子、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人など、名義人と特別な関係にある相手への譲渡ではないこと

(2) 譲渡した年の前年、前々年に、マイホームの3000万円特別控除や分離課税の特例など、他の居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと

(3) 譲渡資産の価額が1億円以下であること

3.固定資産の交換の特例

等価交換をする際に適用できる特例です。税務上、固定資産の交換は譲渡(売却)として扱われ、譲渡所得税の課税対象になります。

固定資産の交換の特例は、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換した時に、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べるという特例です。

この特例の適用を受けるには、次のような細かい要件をすべて満たす必要があります。

(1) 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること(不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産は「棚卸資産」のため、特例の対象になりません)

(2) 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること(借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます)

(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること

(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと

(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること(資産が土地の場合はその用途について、宅地、田畑、山林、鉱泉地、池または沼、牧場または原野、その他という具合に細かく区分されています。建物の場合は、居住用、店舗または事務所用、工場用、倉庫用、その他の用に区分されています)

(6) 交換取得資産の時価と交換譲渡資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること

まとめ

相続税が減額できても、不動産の維持に多額の資金がかかったら資産組み換えが上手くいったとは言えません。

そんな時は、相続や資産組み換え問題に詳しい不動産会社に相談してみることをお勧めします。きっと良いプランを提示してくれるはずです。

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