相続税を抑えられる資産組み換えとは?節税に使える特例制度も紹介

資産組み換え 相続税 特例

不動産を所有している人にとって、相続税対策は大きな問題です。

資産として価値の大きい不動産ですから、なにもせず相続になれば大きな負担が発生します。

そこで、資産を交換して価値を高める「資産組み換え」を検討してみましょう。

資産組み換えとあわせて使える税制度の特例を活用すれば、大幅な節税が見込めます。

また、資産組み換えにあたって不動産の売却も考えたい場合は、まとめて相談できるよう「弁護士や税理士と連携した不動産買取業者」に相談することをおすすめします。

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資産組み換えとは「資産を交換」して価値を高めること

相続税節税
資産組み換えとは、ある資産を他の種類の資産に換えたり、より価値の高い同種の資産へ換えることをいいます。

例えば「現金を不動産に換える」「老朽化した建物を建て替える」などが、資産組み換えにあたります。

組み換えることによって活用範囲が拡大したり、価値が高まったりするのは、多くの場合不動産です。そのため、資産組み換えには不動産が関わるケースが多くなります。

資産組み換えは、資産の有効活用による収益向上を実現するだけでなく、相続税の節税という面でも影響を及ぼします。

相続税の税額を左右する「相続税評価額」は、資産の種類や条件によって大きく異なるものだからです。

相続前に資産組み換えを検討すべきケースの例

例えば、下記のようにデメリットのある不動産を所有しているなら、資産組み換えを具体的に検討した方が良いでしょう。

  • 「狭い道路に面している」「面積が狭小・形が悪い」など、市場価値の乏しい不動産
  • 収益不動産ではあっても、空き室や経年劣化が著しい不動産
  • 相続人が使用する予定もなく、賃貸にもできない不動産

ほんの一例ではありますが、上記のような不動産は相続税評価額がそれなりに高くても実際の市場価値は低く、利益よりコストが大きい状態です。

相続発生前に資産組み換えをしておけば、相続人が「厄介な遺産を相続してしまった」と嘆くことを防げます。

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資産組み換えに伴う不動産売却は「税理士と連携した買取業者」に相談

資産組み換えのために不動産を売却するなら、不動産売却と節税・税申告をまとめて相談できる不動産業者に相談しましょう。

一貫したサポートを受けられるため、スムーズに資産組み換えをおこなえます。

当サイトを運営するクランピーリアルエステートも、全国の税理士と連携する不動産買取業者です。無料相談も承っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

弁護士とも連携しているので、権利関係の複雑な不動産でも円滑に資産組み換えが可能です。

資産組み換えによる相続税の節税方法

リフォーム

不動産の資産組み換えによる相続税の節税方法を、3つ紹介していきます。

  • 1.古い不動産をリフォーム・リノベーションする
  • 2.空き地に賃貸物件を建てる
  • 3.土地とマンションの等価交換をおこなう

一定の費用が発生する場合もあるので、状況にあわせて最適な方法を選択しましょう。

方法1.古い不動産をリフォーム・リノベーションする

売却や賃貸にできる余地はあるものの、古いために市場価値の低い不動産があるなら、リフォームやリノベーションをおこなっておくことをお勧めします。

リフォームとリノベーションは意味を混同されがちですが、厳密にいうとリフォームは「原状回復」のことをいい、リノベーションは「付加価値をプラスする改装」です。

原状回復させるだけで十分な不動産もあれば、人気の間取りや設備を取り入れ、新築時の状態にプラスαの価値を添えた方が取引しやすい不動産もあります。

このような工夫により、売却時には利益を大きくできる可能性が高まりますし、賃貸にする場合でも早期に入居者を見つけ、長く住んでもらいやすくなります。

増改築をしなければ固定資産税も据え置き

ちなみに、リフォームやリノベーションをおこなうことで市場価値は上がっても、増改築を伴うほど大がかりなものでない限り、固定資産税などの評価額はまず上がりません。

金融資産も多く所有している場合は、改装費用を支出することによって相続財産を減少させ、相続税額を抑えることにも繋がります。

金融資産を有効活用しつつ減額し、価値の高い不動産を相続財産として遺せるため、リフォームやリノベーションは理想的な資産組み換えといえるでしょう。

方法2.空き地に賃貸物件を建てる

空き地はそのままだと「自用地(自分で使用する土地)」として評価されますが、賃貸物件(貸家)を建てると「貸家建付地」となり、大幅に相続税評価額が下がります。

借地は自分で使えない分、自用地より評価額が低くなるよう設定されているためです。

貸家建付地の評価額は、以下の式で算出します。

貸家建付地の評価
自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合)

借地権割合は30%~90%の間で設定されます。借家権割合は入居率に比例し、貸家が満室なら100%となります。

空き地のまま相続するより、貸家を建てたほうが相続税評価額を抑えられるのです。

賃貸物件を建てたときの土地の評価例

具体例をあげて、土地の評価額を計算してみましょう。

自用地としての評価額1億円の空き地を「そのまま相続させた場合」と「5,000万円をかけてアパートを建てた場合」で比較してみます。

借地権割合は60%、借家権割合は30%として、建物の相続税評価額(原則として固定資産税評価額と同額)は一般的な価額である「建築費の60%」と仮定します。

空き地のまま アパート建築後
土地の評価額 1億円 8,200万円
建物の評価額 2,100万円
建築費 △5,000万円
評価額合計 1億円 5,300万円

空き地のまま相続するより、アパートを建てたほうが、4,700万円もの評価減になります。

貸家建付地とした場合には、後で解説する「小規模宅地等の特例」も適用可能になるため、さらなる評価減が期待できます。

参照:国税庁「貸家建付地の評価」

賃貸物件の建築が困難なら駐車場にするのもおすすめ

空き地に貸家を建てるほどの金銭的余裕がない場合や、賃貸経営のリスクを取るのは不安という場合には、空き地を貸駐車場にするのもいいでしょう。

貸駐車場は初期投資が抑えられる反面、賃貸物件を建てる場合ほどの節税効果や収益は期待できません。

しかし、運営のための維持管理が容易であることや、将来用途を変更したり売却したくなった際の扱いも比較的簡単なことを考えると、検討する価値はあります。

貸駐車場として使用している土地も、小規模宅地等の特例を適用可能です。

ただし、アスファルト舗装をした駐車場であること、または塀などの構築物を設けていることなどが要件となっています。

方法3.土地とマンションの等価交換をおこなう

等価交換とは、所有している不動産と同等の価値を持つ別の不動産とを物々交換するという方法です。

例えば、所有する土地をマンション建設業者に提供し、建てられたマンションのうち「提供した土地の価格」に見合う部屋を取得する、という方法です。

利便性の高い地域に土地を持っており、土地を手放すことに抵抗がなく、マンションを建設しても差し支えない地域であれば、等価交換を検討できるでしょう。

取得した部屋を自宅として使用する場合は、自分が老後に暮らすための快適な家を手に入れると同時に、相続後に遺される配偶者の住まいを確保することもできます。

等価交換で複数の部屋を取得できる場合には、自分が住まない部屋は賃貸にして家賃収入を得ることも可能になります。

資産組み換えにおいて適用できる特例制度

特例制度
不動産の資産組み換えでは、ケースごとに様々な税制優遇措置が設けられています。

ここでは、下記3つの特例制度を紹介します。

  • 1.小規模宅地等の特例
  • 2.特定居住用財産の買換特例
  • 3.固定資産の交換の特例

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特例1.小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた宅地や事業のために使用していた土地について、一定の要件を満たす場合に相続税評価額を減額する制度です。

特例を適用できる宅地の種類は、次の4つです。

  • 特定居住用宅地
  • 特定事業用宅地
  • 貸付事業用宅地
  • 特定同族会社事業用宅地

どの宅地も、限度面積と減額割合が設定されています。

限度面積 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%

なお、相続開始前3年以内の贈与によって取得した宅地や、相続時精算課税を利用した贈与で取得した宅地については、小規模宅地等の特例の適用は受けることができません。

宅地の種類別にも細かい要件が定められているため、それぞれ解説していきます。

参照:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

特定居住用宅地

被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が居住する宅地のことです。

被相続人の配偶者が宅地を相続する場合は、要件の指定はありません。

それ以外の相続人が相続した場合には、相続税の申告期限までその宅地に住んでいるか、もしくは所有し続けていることなどの要件があります。

特定事業用宅地

被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が、事業(貸付事業を除く)のために使用していた宅地のことです。

相続した人が、被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継いで事業を継続していること、当該宅地を相続税の申告期限まで保有していることなどが要件です。

居住用宅地の要件に比べると、かなりゆるやかな要件になっています。

貸付事業用宅地

貸付事業用宅地とは、被相続人、および被相続人と生計を共にしていた親族が、アパートやマンションなどの賃貸住宅の貸付事業のために使用していた宅地のことです。

要件は特定事業用宅地とほぼ一緒で、相続した人が被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継いで事業を継続していることが要件です。

また、当該宅地を相続税の申告期限まで保有していることも必要となります。

特定同族会社事業用宅地

一定の法人の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業以外)のために使用されていた宅地のことです。

法人は、被相続人、または被相続人の親族が出資金または発行済み株式の50%以上を保有するなどして、事実上の支配下に置いていることが要件になります。

また、当該法人から相当の対価を得て賃貸している宅地であることや、宅地を取得した親族が当該法人の役員であること、宅地を相続税の申告期限まで保有することなども要件です。

特例2.特定居住用財産の買換特例

一定要件を満たすマイホームの買換えをおこなった場合、譲渡したマイホームに対する譲渡所得税のうち、買換えに充てた金額に相当する部分の納税が繰り延べられるという制度です。

要件は「譲渡するマイホーム」「新たに取得するマイホーム」「その他」の3つに分けられます。

■譲渡するマイホームの要件

(1)自分が居住している日本国内の家屋とその敷地および借地権を譲渡すること。以前に住んでいた家屋や敷地の場合、居住しなくなってから3年目の12月31日までに譲渡すること。

(2)譲渡する年の1月1日時点で、所有期間が土地家屋共に10年を超えていること。

(3)譲渡する家屋に居住していた期間が通算して10年以上であること。

■新たに取得するマイホームの要件

(1)旧家屋を譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までの3年間の間に買い換え、かつ旧家屋を譲渡した年の翌年12月31日までに新家屋での居住を開始していること。

(2)土地面積が500㎡以下であり、家屋の登記上の床面積が50㎡以上であること。

(3)新しく取得するのが中古住宅の場合、取得日の時点において建築後25年以内、もしくは耐震基準適合証明書や住宅性能評価書などによって、一定の耐震基準に適合することが証明されていること。

■その他の要件

(1)配偶者や親、子、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人など、名義人と特別な関係にある相手への譲渡ではないこと

(2)譲渡した年の前年、前々年に、マイホームの3,000万円特別控除や分離課税の特例など、他の居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと

(3)譲渡資産の価額が1億円以下であること

参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」

特例3.事業用資産の買換の特例

マイホームではなく賃貸物件の資産組み換えでは「事業用資産の買換の特例」があります。

個人が特定地域内で事業用不動産の資産組み換えをおこなった場合、譲渡益のうち買換え資産の80%に対して、課税を繰り延べられるという制度です。

つまり、事業用資産の買換特例が適用になれば、不動産取得時の相続税は「買換え資産額の20%相当額」に対してのみ課税されます。

ただし、残りの80%は非課税になるわけではなく、買換資産を売却する際に課税されるので注意しましょう。

事業用資産の買換特例を適用するには、買い替え資産の取得日から1年以内に、その不動産を事業のために使用するなどの要件があります。詳しくは、国税庁のWebサイトを参照しましょう。

参照:国税庁「事業用の資産を買い換えたときの特例」

特例4.固定資産の交換の特例

等価交換をする際に適用できる特例です。税務上、固定資産の交換は譲渡(売却)として扱われ、譲渡所得税の課税対象になります。

固定資産の交換の特例は、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換した時に、譲渡がなかったものとして課税されなくなる特例です。

この特例の適用を受けるには、非常に細かい要件をすべて満たす必要があります。要件については、国税庁のWebサイトを参照しましょう。

参照:国税庁「土地建物の交換をしたときの特例」

まとめ

相続税が減額できても、不動産の維持に多額の資金がかかってしまえば、資産組み換えが上手くいったとはいえません。

そのため、まずは相続や資産組み換え問題に詳しい不動産会社へ相談してみることをお勧めします。

税理士や弁護士と連携した不動産業者なら、個々の状況にあわせて最適なアドバイスが可能です。

資産組み換えと税金についてよくある質問

資産組み換えとはなんですか?

資産組み換えとは、ある資産を他の種類の資産に換えたり、より価値の高い同種の資産へ換えることをいいます。「現金を不動産に換える」「老朽化した建物を建て替える」といったことをおこない、資産価値を高めつつ節税効果を得る方法です。

どのようなときに資産組み換えを検討すべきですか?

市場価値が乏しい不動産や、経年劣化が著しい不動産、空き室の多い賃貸物件など「コストパフォーマンスの低い物件」を所有しているときは、資産組み換えを検討する余地があるでしょう。

資産組み換えは、具体的にどんな方法がありますか?

「古い不動産をリフォーム・リノベーションする」「空き地に賃貸物件を建てる」「土地とマンションの等価交換をおこなう」といった方法があります。個々の資産状況で最適な方法は異なるので、税理士や不動産業者などの専門家に相談しましょう。

相続税を節税できる制度を知りたいです。

「小規模宅地等の特例」や「特定居住用財産の買換特例」「固定資産の交換の特例」など、節税に活用できる制度は多数あります。細かい要件があり、個々の状況によって最適な特例も異なるので、税金の専門家である税理士に相談してみましょう。

不動産売却も含めて資産組み換えを検討したいのですが、どこに相談すべき?

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