親族間での不動産売却は贈与税に注意!デメリットや売却の流れも解説

親族 不動産 売却

親の不動産を子供に譲る「生前贈与」や、兄弟で共有名義になっている不動産の「持分売買」など、不動産を親族間で売買することは珍しくありません。

しかし、不動産の親族間売買では売却価格と税金に注意しましょう。

親族間だからといって、市場価格より安い価格で不動産を売ると、贈与とみなされて「贈与税」を支払わなければなりません。

基本的に、市場価格の80%を下回る価格で不動産を売らなければ、親族間売買で贈与税が課税される可能性は低いです。

まずは贈与税を避けるためにも、一括査定サイトを利用して、親族間売買したい不動産の市場価格を無料確認してみることをおすすめします。

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不動産を親族間売買するときの注意点

不動産売却

「親族間売買」とは、親族同士で不動産を売買する、不動産売買の1種です。

「親族間売買」における「親族」とは、民法における以下の範囲を指します。

  • 配偶者
  • 6親等以内の血族
  • 3親等以内の姻族

不動産の親族間売買は、脱税として税務署の摘発を受けやすいため注意しましょう。

不動産を親族間売買する場合、以下の3点に注意する必要があります。

  1. 安すぎる価格で売却すると贈与税が課税される
  2. 親族間であれば贈与より売却した方が節税できる
  3. 6親等以内の親戚への売却も親族間売買に該当する

具体的に何を注意するべきか、1つずつ解説していきます。

1.安すぎる価格で売却すると贈与税が課税される

市場価格より極端に安い価格で不動産を売却した場合、市場価格との差額分は「贈与」とみなされて、贈与税の対象となってしまいます。

わかりやすいように具体例を使って解説します。

例えば、市場価格が5,000万円の不動産を1万円で親から子へ売却したとします。

このとき、1万円は「著しく低い価額」といえるので、差額分の4,999万円は贈与とみなされて、基礎控除の110万円を引いた4,889万円が贈与税の課税対象となります。

この金額の贈与税率は55%、控除額は640万円なので、約2,049万円の贈与税が課されてしまいます。

贈与税の税率は相続税や所得税に比べても非常に高いため、親族間での不動産売却は市場価格に近い金額でおこなう必要があります。

売却したい不動産の市場価格を算定する場合、以下のような情報が参考になります。

  • 売却したい不動産の固定資産税評価額や路線価公示価格
  • 条件の近い不動産の売却価格
  • 売却したい不動産の土地の形状や利用状況
  • 売却したい不動産の建物の状態など

税務署に売却価格の妥当性を証明するためにも、売却したい不動産の市場価格は事前に調べておきましょう。

参照:「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」国税庁

市場価格の80%以下で売却すると贈与扱いされやすい

不動産を親族間売買する場合は「著しく低い価額で売却したか?」が、贈与税の課税に関する判断基準になります。

この「著しく低い」というのは、具体的にどれくらいなのでしょうか。

市場価格5,000万円の不動産を4,700万円で売却したとしても、通常の不動産売買でも値引き交渉で売却価格が多少下がることは多いので、贈与税は課されないでしょう。

しかし、市場価格5,000万円の不動産を3,500万円で売却した場合、贈与税を課される恐れがあります。

とはいえ、不動産の市場価格が明確でない点と同じように「著しく低い」価額にも明確な規定はありません。

税務署が不動産のみなし贈与を摘発する際は「市場価格の80%を下回るか?」を判断基準にしています。

その証拠として「親族間で土地を相続税評価額(地価公示価格の80%)で売買した場合に、相続税法第7条の規定する「著しく低い価額」にあたらない」とした東京地裁の平成19年8月23日の判決があります。

【東京地裁の判決の要点】
・相続税評価額は時価とおおむね一致すると考えられる地価公示価格の約80%とされている
・80%という割合は、社会通念上、基準となるべき数値と比べて一般に著しく低い割合とはみられていない
・相続税評価額を基準として土地の譲渡の対価とすることが経済合理性のないことが明らかとはいえない

相続税評価額を基準に売買したとき「著しく低い価額」の対価による譲渡とはいえないとして、この判決に国は控訴せず、納税者の勝訴で確定となりました。

そのため現在でも「市場価格の80%以下で親族間売買しなければ、贈与とみなされない」と認識されています。

不動産の相場は一括査定サイトで無料確認しよう

不動産の価額は不動産鑑定士に鑑定してもらうのが正確ですが、最終的に贈与か判断するのは税務署なので、依頼費用が無駄になってしまう恐れもあります。

ですので、親族間売買をおこなう場合、まずは「一括査定サイト」を利用して、実際の不動産の売却価格を無料で調べてみるとよいでしょう。

「一括査定サイト」を用いれば、複数の不動産業者による査定額が一気に確認できるので、すぐに売却価格相場がわかります。

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2.親族間であれば贈与より売却した方が節税できる

親族間で不動産を引き渡す場合、贈与と売却では、必要となる税金の種類・金額も大きく異なります。

贈与では不動産を受け取る側に「贈与税」が、売却では不動産を売った側に「譲渡税」が課されます。

そして、贈与税と譲渡税では、贈与税の方がはるかに高い税率です。

弟から兄へ、所有期間が10年、時価が5,000万円の不動産を譲渡した場合を例に、それぞれの納税額を解説します。

贈与した場合の贈与税は税率が高い

弟から兄へ不動産を贈与した場合、贈与税は一般税率が適用されます。

不動産の時価が5000万円なので、課税価格は基礎控除を引いた4890万円です。

課税価格が3000万円超のとき、税率は55%、控除額は400万円なので、不動産を親族間で贈与した場合の贈与税は2289万5000円です。

売却した場合の譲渡所得税は税率が安い

不動産を売却しても、利益が出なければ譲渡所得税は課税されません。

もし、不動産の取得費が5000万円を超えていた場合、5000万円で売却しても利益は0円なので、譲渡所得税はかかりません。

とくに親族間での取引であれば、売却価格を安く抑えたい人が多いので、不動産の売却価格が取得費より高くなるケースは少ないです。

もし不動産の取得時期が古く、取得費がわからないような場合には、売却価格の5%相当額を取得費とすることができると定められています。

今回の例でいえば、取得費がわからないときには5000万円の5%、250万円を取得費とすることができます。

このとき、譲渡所得税の課税価格は5000万円から取得費相当額の250万円を引いた4750万円で、適用される税率は所得税で15%、住民税で5%です。

また2037年までの譲渡には、復興特別所得税の2.1%も加算されるので、不動産を親族間売買した場合、譲渡所得税の合計は約965万円です。

方法 税額
(時価5,000万円の場合)
贈与 約2289万5000円
(贈与税)
売買 約965万円
(譲渡所得税)

このように、親族間で不動産の名義を移す場合、贈与より売買の方が税金面でお得なのです。

参照:国税庁

3.親戚への売却も親族間売買に該当するため注意

親族間の不動産売買は贈与税を回避するために取られることが多いので、税務署も親族間売買に目を光らせています。

しかし「親族間」というのは、具体的にどこまでを指すのでしょうか。

  • 自分の配偶者の兄
  • 自分の子供の配偶者
  • 自分の甥っ子の配偶者

このような相手と不動産を売買した際も親族間とみなされるのでしょうか。

民法第725条では、親族の範囲を次のように定めています。

  1. 6親等内の血族
  2. 配偶者
  3. 3親等内の姻族

つまり、先述した3つの例「自分の配偶者の兄」「自分の子供の配偶者」「自分の甥っ子の配偶者」は、民法上でも「親族」して扱われます。

参照:厚生労働省 親族の範囲

親族間で不動産を売却する場合のデメリット

ローン審査

親族間での不動産売却では、価格設定によっては贈与税が課税される以外にも以下のデメリットに注意しましょう。

  1. 住宅ローン審査が通りにくい
  2. 3,000万円の特別控除が受けられない
  3. 不動産会社を介さないとトラブルが起きやすい

それぞれのデメリットについて、1つずつ確認していきましょう。

1.住宅ローンの審査が通りにくい

親族間の中でも特に、親子間で不動産売却をするときに住宅ローンの審査が通りにくいです。

なぜなら「どうして、わざわざ生前に親族間売買をするのか?」と疑問を持たれた結果、融資した住宅ローンが犯罪などの不正に使われることを懸念されてしまうからです。

そのほか、法定相続人のうち特定の1人に権利を引き継がせようとしている場合、他の相続人から親族間売買は無効だと訴訟を起こされて、住宅ローンの返済が滞ってしまう心配もあります。

このように融資後のトラブルにつながる可能性が通常の不動産売買よりも高いので、金融機関の審査が厳しくなりやすいです。

住信SBIネット銀行でも、住宅ローン(フラット35)の貸出条件を下記のように定めています。

第三者(事業者)を媒介とした売買契約を締結し、且つ所有権移転登記の登記原因が売買となるものは対象となります。

ただし、申込者が申込前に購入物件に既に入居している場合で、次のいずれかに該当する場合は対象となりませんのでご留意ください。
(1)売主も同居している場合
(2)売主は同居していないが、申込人が使用貸借(賃貸借契約書を締結せずに居住している)の場合出典:住宅ローン〈フラット35〉

不動産を親族間売買する場合、すでに買主が物件に住んでいると、基本的に住宅ローンを利用できないため注意しましょう。

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2.3,000万円の特別控除が受けられない

譲渡所得税は不動産を売却して利益が出た場合に課せられる税金です。マイホームを売却する場合、通常であれば3,000万円の特別控除の特例を受けられます。

しかし、親子や夫婦、生計を一にする親族など特別な関係である場合、特別控除が適用されません。

そのため、不動産売却後の譲渡所得税が高額になる可能性があります。

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3.不動産会社を介さないとトラブルが起きやすい

親族間での不動産売買であれば、すでに買主も見つかっていて、価格も直接話し合って決めることができるので、不動産会社や司法書士などの専門家は必要ないように思えます。

必要書類の書式をインターネットで見つけることもできますが、そのようなテンプレートはあくまで汎用的な物で、対象となる不動産の条件や契約内容に適していない場合も多いです。

また親族間のみで不動産売買を進めると、契約内容に関する誤解が生じたり、引き渡された物件に問題が見つかったりするトラブルが起こりやすいです。

未然にトラブルを防ぐためにも、親族間売買であっても不動産業者や弁護士に相談することをおすすめします。

一括査定サイトで不動産会社を探すのがおすすめ

トラブルを防ぐために不動産会社を利用する場合、どの業者を選ぶべきか悩む人も多いでしょう。

不動産を売るときは複数の不動産会社に査定を依頼し、価格や条件を比べることをおすすめします。

しかし、不動産会社に何度も査定を依頼すると時間も手間もかかってしまいます。

そうした場合、複数の不動産会社に査定してもらえるオンラインの一括査定を利用するとよいでしょう。

一括査定を利用すれば、大手から地元密着型まで、全国1,600以上のさまざまな不動産会社へ一気に査定を申し込めます。

査定結果は2分でわかるので、その中から気になった業者へ直接相談して、信頼できそうな不動産会社に仲介を依頼しましょう。

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親族間のみで不動産を売却する流れ

親族間売却

親族間で不動産売却をする方法は、当事者のみで行うか、不動産会社や司法書士などの専門家に間に入ってもらうかのどちらかです。

そして、売却方法がどちらであっても売却の流れは基本的に同じで、次のように進めます。

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1.不動産を調査する

親族間の不動産売却であっても、まずは対象不動産の調査から始めます。

まずは建物や設備の状況や過去の修繕・リフォーム履歴、隣地との境界線、住宅ローンの残債といった不動産そのものについてです。

そして、権利証や登記簿謄本の権利関係や対象不動産を購入したときの売買契約書や重要事項説明書も忘れずに探して、必要なものは役所で取得してください。

2.売買価格・条件を決める

不動産を調査して得た情報をもとに、売買価格を決めていきます。できるだけ安く譲りたいというときには、贈与税とみなされないような適正価格にすることが大切です。

また価格以外にも不動産の引き渡し条件や瑕疵担保責任、解約事項など不動産売却に必要な条件も話し合います。

親族間だからと価格や条件を大雑把に決めて取引される方もいますが、トラブルのもとなのでおすすめしません。しっかりと確認しておきましょう。

3.必要書類を準備する

売買価格・条件が決まったら、その内容を反映させた売買契約書を作成します。民法上、契約書はなくても売買契約は成立するので親族間で、当事者間で売買するときには省略しがちです。

ですが、トラブルが起きたときや確定申告をするとき、税務署から親族間での不動産売買について指摘があったときなど様々な場面で必要になります。

その他、権利証と固定資産税評価証明書、マンションであれば管理規約や使用細則も準備します。これらの書類は不動産名義を変更したあと、第三者へ売却するときに必要です。

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4.契約を結ぶ・決済する

必要書類を準備したあとは、契約書に署名捺印を行い、代金を支払います。捺印は認印でも構いませんが、できるなら実印で押したほうがいいです。

また契約書を交わすときには収入印紙も貼る必要があるので、忘れないようにしましょう。

親族間での不動産売却で贈与とみなされないように、代金の支払いが完了したら領収書を発行することも大切です。

銀行振込であれば履歴に残りますが、親族間ということで現金でやり取りすることもあるでしょう。このとき、契約書だけで領収書がなければ、税務署から贈与の指摘を受けたときに、売買の証拠として弱いです。

売主が個人のとき、領収書に収入印紙を貼る必要はなく、印紙税が二重にかかることはないので安心してください。

5.登記申請する

不動産の購入代金の支払いを終えたら、そのまま所有権移転の登記申請を行います。

通常は、登記申請して2週間~3週間で登記が完了します。

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まとめ

不動産を親族間売買する場合、贈与税対策として市場価格の80%以上で売却しましょう。

売却価格を低価格にしがちな不動産の親族間売買ですが、価格設定を間違えると高額な贈与税を課される恐れがあります。

また、売却トラブルを避けるには、親族間でも売買契約書の作成が必要です。

親族間売買のせいで贈与税や親族トラブルを起こさないためにも、不動産業者などに相談しながら進めるようにしましょう。

親族間で不動産を売却する場合のよくある質問

親族間で不動産を売却する場合、通常と異なる点はありますか?

親族間で不動産を売却した場合、通常の譲渡所得税よりも高額な贈与税を課税される恐れがあるため注意しましょう。

どの血縁者までの売却が親族間売買に該当しますか?

6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族への売却が親族間売買に該当します。つまり自分の配偶者の兄や自分の子供の配偶者、自分の甥っ子の配偶者への売却も親族間売買とみなされます。

どうすれば親族間売買における贈与税を回避できますか?

市場価格の80%を超える金額で売却すれば、贈与と扱われずに贈与税が課税されない可能性が高いです。

親族間で不動産を売却する場合、注意点はありますか?

「住宅ローンの審査が通りにくい」「3,000万円の特別控除が受けられない」「不動産会社を介さないとトラブルが起きやすい」といったデメリットに注意しましょう。

親族間のみで不動産を売却する場合、どのような流れでおこないますか?

通常の不動産売却と同じく、不動産を調査して売買価格・条件を決めた後、必要書類を準備してから売買契約を結び、登記申請をおこないます。

最終更新日:
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