【親族間の不動産売却】適正価格から注意点や売却方法を詳しく解説

不動産売却

これからの相続のことを考えて親名義の不動産を自分名義に変更したり、共有持分の状態になっている不動産を他の共有者から購入したりなど、親族間で不動産を売買することはよくあります。

しかし、親族間での不動産取引では、第三者に売却するときとは異なる点に注意が必要です。

この記事をご覧のあなたも「親族に不動産を売却するときはどういう手順で進めればいいのだろうか」と疑問に思われているのではないでしょうか。

親族間で特に注意すべきことは、不動産の売却価格です。適正価格に設定しなければ贈与とみなされて、贈与税が課される可能性もあります。

では、適正価格はどうやって決めればいいのか。不動産売却はどのような流れになっているのか。以下で具体的に解説します。

これを読めば、親族間で不動産売却をするときに気をつけるポイントと正しい流れを理解でき、予想外の税金などで損することはなくなるでしょう。

親族間で不動産売却するときの適正価格

不動産売却
通常の不動産売却でいう適正価格は、一般的な売却活動期間である3カ月~6カ月以内に買主が見つかる価格のことです。しかし最初から買主が決まっている親族間での不動産売却では、適正価格の意味が異なります。この場合の適正価格は、税務署から贈与とみなされない価格のことです。目安は、市場価格の80%程度です。その理由を順に説明します。

親族間での不動産売却であれば、自由に価格を決められる

親子、夫婦、兄弟姉妹間のような親族間で不動産売却をするときには、すでに買主が決まっています。
そのため、通常の不動産売却のように「この値付けで買主が見つかるか」という心配をする必要がありません。すでに誰に売るのかは決まっているので、当事者間で合意した金額で売却できます。

さらに、親族間、特に親子間や夫婦間での不動産売却においては、売主の目的は売却益を得ることではなく名義変更のことがほとんどです。
その結果、売却価格はできるだけ負担をかけないように安くしようとします

売買取引は、買主と売主の合意があれば成立しますので、極端の場合、1万円で不動産を売却することもできます。そして、その取引を禁止する法律はありません。1万円であっても不動産売却という売買取引ですから、贈与することなく名義変更ができると考えられるでしょう。しかし現実はそれほど甘くありません。

安すぎる価格での売買は贈与とみなされる

不動産を市場価格よりはるかに安い価格で売却したときには、市場価格との差額分は「贈与した」とみなされて、贈与税の対象となってしまいます。

これは、国税庁のホームページでも掲載されているとおりです。

個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます。著しく低い価額の対価であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定することになります。(中略)また、時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。出典:国税庁

たとえば市場価格が5,000万円の不動産を1万円で親から子ども(1月1日時点で20歳以上)に売却したとします。このとき、1万円は「著しく低い価額」といえるので、差額分の4,999万円は贈与とみなされます。そのため、課税価格は基礎控除の110万円を引いた4,889万円です。この金額の贈与税率は55%、控除額は640万円なので、約2,049万円の贈与税が課される計算です。

贈与税の税率は相続税や所得税に比べても非常に高いので、大きな負担となるでしょう。ですので、親族間での不動産売却ではまず、その不動産の市場価格を調査することが重要になります。

ただ、不動産には1つとして同じものはありません。また通常は、買主と売主の交渉を通じて最終的な売却金額が決まるので、明確な市場価格が存在しないことも事実です。

そのため、売却しようとしている不動産の市場価格は固定資産税評価額や路線価、公示価格などを参考に、条件の近い不動産の売却価格、不動産の土地の形状や利用状況、建物の状態などの個別要素の影響などをすべて考慮して算定する必要があります。

しかし、これらの情報を専門知識のない個人の方が調べるのは大変です。また税務署から贈与ではないのか、と指摘されたときの根拠としても弱いです。

税務署に売却価格の妥当性を証明するためにも、費用はかかりますが、不動産鑑定士に評価してもらうことをおすすめします。

「著しく低い価額」の目安は、市場価格の80%

先ほどお伝えしたように、親族間で不動産売却したときには、「著しく低い価額」で売却したかどうかが贈与とみなされるかどうかのポイントになります。この「著しく低い」というのは、具体的にどれくらいなのでしょうか。

市場価格5,000万円の不動産をそれよりも安い4,700万円で売却したとしても、「著しく低い」とは言えないでしょう。通常の不動産売却でも交渉の結果、市場価格より価格が下がることはよくあります。

それでは、4,700万円ではなく、3,500万円だったらどうでしょうか。「著しく低い」と言われたら、「そうかもしれない」と思える価格です。

実際のところ、不動産の市場価格が明確に決まらないことと同じように、「著しく低い」ということにも明確な規定はありません。それでも税務署は贈与かどうか判断しなければならないので、目安となる基準は持っています。それが、市場価格の80%です。

基準の元となっているのは、「親族間で土地を相続税評価額(地価公示価格の80%)で売買した場合に、相続税法第7条の規定する「著しく低い価額」にあたらない」とした東京地裁の平成19年8月23日の判決です。

・相続税評価額は時価とおおむね一致すると考えられる地価公示価格の約80%とされている
・80%という割合は、社会通念上、基準となるべき数値と比べて一般に著しく低い割合とはみられていない
・相続税評価額を基準として土地の譲渡の対価とすることが経済合理性のないことが明らかとはいえない

したがって、相続税評価額を基準に売買したとき、「著しく低い価額」の対価による譲渡ということはできないとされ、この判決に国は控訴せず、納税者の勝訴で確定となりました。

そのため現在でも、市場価格の80%が贈与かどうかの判断基準の一つになっています。

不動産鑑定士に鑑定してもらう費用をかけたくない、かけられない場合には、贈与とみなされる可能性はゼロとは言えないですが、路線価を売却価格とすることが一般的です。

ただし、最終的に贈与とみなされるかどうかは税務署の判断によるので、やはり、安心して親族間で不動産売却したいのであれば不動産鑑定士に鑑定を依頼することがおすすめです。

親族間の不動産売却の注意点

ローン審査
親族間での不動産売却には、贈与とみなされないような価格設定をする以外にも注意点が3つほどあります。

  • (1)親子間での不動産売却はローン審査が通りにくい
  • (2)譲渡所得税が高額になる可能性がある
  • (3)当事者間で直接売買契約を交わすとトラブルが起きやすい

(1)親子間で不動産を売買するときにはローンの審査が通りにくい

親族間の中でも特に、親子間で不動産売却をするときに住宅ローンの審査が通りにくいです。なぜなら、相続が発生すれば不動産の所有権は子供に移転するため、売買で所有権を移転させることは融資の審査をする金融機関から見ると不自然です。なぜわざわざ売買するのか、と疑問を持たれます。

特に金融機関が心配しているのは、融資した住宅ローンが犯罪などの不正に使われることです。親子間であれば、たとえ子どもが親に不動産の売却代金を支払ったとしても、そのお金を子どもが自由に使える可能性が残されています。

そのほか、法定相続人第一順位の兄弟姉妹間で仲が悪く、その中でも特別可愛がっている特定の1人に権利を引き継がせようとしているとも考えられます。すると、他の相続人に気づかれたときに売買は無効だと訴訟を起こされて、住宅ローンの返済まで滞ってしまう不安があります。

このように融資したあとのトラブルにつながる可能性が通常の不動産売買よりも高いことから、金融機関の審査も厳しくなりがちです。

また親族間で売買するときに、すでに買主がその物件に住んでいる場合もあるでしょう。この場合は、基本的に住宅ローンを利用できないので注意してください。

住信SBIネット銀行では、住宅ローン(フラット35)の貸出条件を下記のように定めています。

第三者(事業者)を媒介とした売買契約を締結し、且つ所有権移転登記の登記原因が売買となるものは対象となります。但し、申込者が申込前に購入物件に既に入居している場合で、次のいずれかに該当する場合は対象となりませんのでご留意ください。
(1)売主も同居している場合
(2)売主は同居していないが、申込人が使用貸借(賃貸借契約書を締結せずに居住している)の場合出典:住宅ローン〈フラット35〉

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(2)譲渡所得税が高額になる可能性がある

譲渡所得税は不動産を売却して利益が出た場合に課せられる税金です。マイホームを売却する場合、通常であれば3,000万円の特別控除の特例を受けられます

しかし、親子や夫婦、生計を一にする親族など特別な関係である場合、特別控除が適用されません

そのため、不動産売却後の譲渡所得税が高額になる可能性があります。

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(3)当事者間で直接売買契約を交わすとトラブルが起きやすい

親族間での不動産売買であれば、すでに買主も見つかっていて、価格も直接話し合って決めることができるので、不動産会社や司法書士などの専門家は必要ないように思えます。契約書などの必要書類のテンプレートもインターネットで今は見つけることもできます。ですが、そのようなテンプレートはあくまでテンプレートなので、対象となる不動産の条件や契約内容に合っていない場合も多いです。

また当事者間で不動産売却を進めると、契約内容の理解に齟齬があったり、引き渡された物件に瑕疵が見つかったりといったトラブルが起こりやすいです。

未然にトラブルを防ぐためにも、親族間売買であっても不動産会社や司法書士に依頼することをおすすめします。

親族間の不動産売却方法と流れ

親族間売却
親族間で不動産売却をする方法は、当事者のみで行うか、不動産会社や司法書士などの専門家に間に入ってもらうかのどちらかです。

そして、売却方法がどちらであっても売却の流れは基本的に同じで、次のように進めます。

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1.不動産を調査する

親族間の不動産売却であっても、まずは対象不動産の調査から始めます

まずは建物や設備の状況や過去の修繕・リフォーム履歴、隣地との境界線、住宅ローンの残債といった不動産そのものについてです。そして、権利証や登記簿謄本の権利関係や対象不動産を購入したときの売買契約書や重要事項説明書も忘れずに探して、必要なものは役所で取得してください。

2.売買価格・売買条件を決める

不動産を調査して得た情報をもとに、売買価格を決めていきます。できるだけ安く譲りたいというときには、贈与税とみなされないような適正価格にすることが大切です。

また価格以外にも不動産の引き渡し条件や瑕疵担保責任、解約事項など不動産売却に必要な条件も話し合います。

親族間だからと価格や条件を大雑把に決めて取引される方もいますが、トラブルのもとなのでおすすめしません。しっかりと確認しておきましょう。

3.必要書類を準備する

売買価格・条件が決まったら、その内容を反映させた売買契約書を作成します。民法上、契約書はなくても売買契約は成立するので親族間で、当事者間で売買するときには省略しがちです。ですが、トラブルが起きたときや確定申告をするとき、税務署から親族間での不動産売買について指摘があったときなど様々な場面で必要になります。

その他、権利証と固定資産税評価証明書、マンションであれば管理規約や使用細則も準備します。これらの書類は不動産名義を変更したあと、第三者へ売却するときに必要です。

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4.契約を結ぶ・決済する

必要書類を準備したあとは、契約書に署名捺印を行い、代金を支払います。捺印は認印でも構いませんが、できるなら実印で押したほうがいいです。

また契約書を交わすときには収入印紙も貼る必要があるので、忘れないようにしましょう。

親族間での不動産売却で贈与とみなされないように、代金の支払いが完了したら領収書を発行することも大切です。

銀行振込であれば履歴に残りますが、親族間ということで現金でやり取りすることもあるでしょう。このとき、契約書だけで領収書がなければ、税務署から贈与の指摘を受けたときに、売買の証拠として弱いです。売主が個人のとき、領収書に収入印紙を貼る必要はなく、印紙税が二重にかかることはないので安心してください。

5.登記申請する

不動産の購入代金の支払いを終えたら、そのまま所有権移転の登記申請を行います。通常は、登記申請して2週間~3週間で登記が完了します。

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弟から兄へ、所有期間が10年、時価(売却価額)が5,000万円の不動産を譲渡した場合を例に、それぞれの納税額を解説します。

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贈与税額:2289万5000円

「売買」した場合

譲渡税の課税対象かどうかは、不動産を売却したときに利益が出たかどうかが問題になります。もし、不動産の取得費が5000万円を超えていた場合、5000万円で売却しても利益は0円なので、譲渡税もかかりません。

通常、不動産の資産価値は新築から年を経るごとにどんどん下がっていきます。そのため、不動産の売却価格が取得費より高くなることはほとんどありません。特に売却価格を安く抑えたい方が多い親族間での取引であれば、取得費が分かっているときに譲渡税がかかることはまずないです。

また不動産を購入したときが古く、取得費がわからないような場合には、売却価格の5%相当額を取得費とすることができると定められています。

今回の例でいえば、取得費がわからないときには5000万円の5%、250万円を取得費することができます。

このとき、譲渡税の課税価格は5000万円から取得費相当額の250万円を引いた4750万円です。所有期間が10年の不動産なので、適用される税率は所得税で15%、住民税で5%です。また2037年までの譲渡には、復興特別所得税の2.1%も加算されるので、譲渡税の合計は約965万円です。

譲渡税額:965万円

このように、同じ不動産の譲渡でも納めなければならない税額は圧倒的に贈与税の方が高くなることがわかります。

また、不動産取得税は不動産の譲渡方法によらず、取得した方に納める義務があります。不動産取得税は固定資産税評価額を基準に決まるので、納税額は贈与でも売買でも同じです。

つまり、親族間で不動産の名義変更をするのであれば、贈与より売買の方が税額の面でお得だといえます。

参照:国税庁

親族間売買に該当する親族の範囲について

親族間の不動産売買は贈与税を回避するために取られることが多い不動産の譲渡方法です。そのため、税務署も親族間売買に目を光らせています。

では、この「親族間」というのは具体的にどこまでを言うのでしょうか

・自分の配偶者の兄
・自分の子供の配偶者
・自分の甥っ子の配偶者

このような方たちと不動産を売買したときにも親族間とみなされるのでしょうか。

親族の範囲は民法第725条で次のように規定されています。

民法 第725条(親族の範囲)
(1)6親等内の血族
(2)配偶者
(3)3親等内の姻族

参照:厚生労働省 親族の範囲

つまり、先ほど挙げた3つの例、「自分の配偶者の兄」、「自分の子供の配偶者」、「自分の甥っ子の配偶者」は、民法上でも「親族」ということです。

まとめ

以上、親族間で不動産売却するときの適正価格と注意点、売却方法について解説してきました。

まとめると、以下のようになります。

  • 親族間での不動産売却の適正価格は市場価格の80%
  • 親族間での不動産売却では購入資金として住宅ローンを使えない可能性が高い
  • 親族間での不動産売買でも契約書の作成は必要

すでに関係性ができている親族間での不動産売買は簡単そうに見えますが、価格設定を間違えると高額な贈与税を課される可能性があります。また、不動産売却後のトラブルを避けるためにも不動産会社などの専門家に相談、依頼しながら進めるようにしましょう。

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