【生産緑地】固定資産税の軽減措置と指定解除後の対処法5つを詳しく解説!

生産緑地

土地が生産緑地に指定されることで農地経営に必要な建物以外は建築できないという行為制限を受ける代わりに、固定資産税の軽減・相続税の納税猶予の特例が適用されます。

固定資産税が減額されることはメリットですが、生産緑地を解除すると納税額は高騰してしまうので注意しなければいけません。

この記事では、生産緑地における固定資産税の仕組みと計算例をわかりやすく解説していきます。

また、生産緑地の指定を解除したときの影響と対策なども詳しく説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

生産緑地では固定資産税が軽減される

軽減
固定資産税は、固定資産税評価額と課税率の2つの要素で決定されます。そして、固定資産税評価額も課税率も農地の方が宅地に比べて低いです。

また、市街化区域農地において生産緑地以外の農地は「宅地並評価・農地に準じた課税」または「宅地並評価・宅地並課税」となります。

そのため、農地評価・農地課税となる生産緑地の固定資産税は非常に大きく軽減された税額です。

生産緑地の固定資産税は農地評価・農地課税

農地に対する固定資産税は以下のように分類されて課税されます。

農地分類 小分類 評価 課税 税額の目安
一般農地 農地評価 農地課税 千円/10a
市街化区域農地 生産緑地 農地評価 農地課税 数千円/10a
市街化区域農地 一般市街化区域農地 宅地並評価 農地に準じた課税 数万円/10a
市街化区域農地 特定市街化区域農地 宅地並評価 宅地並課税 数十万円/10a

農地は「市街化区域にある農地」と「それ以外の農地」の2つに大きく分類されます。さらに、市街化区域農地は「生産緑地」「一般市街化区域農地」「特定市街化区域農地」の3つに分かれます。

「農地評価」とは、農地利用を目的とした売買価格を基準として評価する方法です。「農地課税」は、一般農地の負担調整措置が適用された税率です。

負担調整措置とは、固定資産税の急激な上昇を防ぐために設けられた措置です。負担水準に応じて定められた負担調整率を前年度の課税標準額に掛けた金額が本年度の課税標準額となります。

負担水準の算出方法

■負担水準の算出方法

一般農地における負担水準=前年度の課税標準額 / 当該年度の評価額
市街化区域農地における負担水準=前年度の課税標準額 / (当該年度の評価額×1/3)

農地課税における負担調整率は次の通りです。

負担水準 負担調整率
0.9以上のもの 1.025
0.8以上0.9未満ものも 1.05
0.7以上0.8未満のもの 1.075
0.7未満のもの 1.1

したがって、生産緑地における固定資産税額の計算式は以下の通りです

生産緑地の固定資産税額=前年度の課税標準額×負担調整率×税率

生産緑地における固定資産税の計算例と、生産緑地でなかった場合に課税される固定資産税額を具体的な計算例を次の項目で解説します。

参照:国土交通省「Ⅰ.市街化区域内農地の資産価値の整理  p.Ⅰ-2」

生産緑地の固定資産税の計算例

生産緑地の固定資産税額を計算するために前提条件を以下のように設定します。

・一般市街化区域
・当年度の宅地並評価:8,000万円
・一般市街化農地は本則税額
・前年度の農地評価:100万円
・生産緑地は調整税額
・負担水準:0.9

このケースにおける一般市街化区域農地と生産緑地の固定資産税はそれぞれ以下の計算となります。

■一般市街化区域農地の固定資産税
8,000万円×1/3×1.4%=約37万円
■生産緑地の固定資産税
100万円×1.025×1.4%=約1.4万円

同じ農地だとしても、生産緑地かどうかで固定資産税に約26倍の差が生じます。計算例からもわかるとおり、生産緑地に対する固定資産税の軽減措置は非常に大きいといえるでしょう。

生産緑地を解除すると固定資産税は高騰するので注意

高騰
軽減措置の適用はあくまで生産緑地に指定されている間だけです。指定を解除すると、営農義務がなくなる代わりに、固定資産税の軽減措置も適用されなくなるので注意しましょう。

次の項目から、軽減措置が適用されなくなった場合の評価について解説します。

生産緑地を解除すると宅地並評価になる

生産緑地の指定を解除すると、評価は宅地並評価となります。

宅地並評価・・・近隣で該当する農地に近い宅地の価格から農地を宅地に転用するために必要と考えられる造成費用相当額を除く評価方法です。

農地か宅地かの違いだけで、評価額が数十倍から百倍ほど変わるケースもあります。生産緑地の指定を解除することで、納めるべき固定資産税額が上昇します。

さらに、一般市街化区域農地は「宅地並評価・農地に準じた課税」ですが、三大都市圏の特定市の市街化区域農地は「宅地並評価・宅地並課税」です。

この場合、今まで数千円だった固定資産税額が数十万円に増えてしまうわけです。

しかし、それでは農地所有者の負担が増大してしまいます。農地所有者の税負担を緩和させるための施策として激変緩和措置が準備されています。

固定資産税の急激な高騰に対する激変緩和措置

三大都市圏特定市の農地に適用される激変緩和措置では、年度ごとに指定された軽減率が課税標準額に掛けられます。その軽減税率が以下の通りです。

初年度・・・0.2
2年目・・・0.4
3年目・・・0.6
4年目・・・0.8

つまり、5年かけて本来の固定資産税額まで徐々に引き上げられます。そのため、生産緑地の指定を解除した初年度で納税額を用意できないということを避けられるかもしれません。

しかし、必ず本来の宅地並評価・宅地並課税となるので、生産緑地の指定を解除したなら、次の項目で説明する具体的な対処法を検討してみてください。

特定生産緑地に指定しない場合も税制の特例措置はなくなるので注意

固定資産税の上昇は、生産緑地の指定解除だけではありません。生産緑地の指定から30年が経過し、特定生産緑地に指定されなかった場合も、宅地並評価・宅地並課税となります。

特定生産緑地は、平成30年4月1日より施行している新しい制度です。生産緑地の指定期間である30年を経過する前に特定生産緑地の指定を受けることで、買取申出が可能となる期日が10年延期されます。

30年経過しても買取の依頼を出せない不便さはありますが、固定資産税の軽減措置は引き続き適用されるメリットもあります。

一方で、三大都市圏特定市で生産緑地の指定を解除せず、特定生産緑地の指定も受けなければ、いつでも買取申出が可能なかわりに固定資産税が宅地並評価・宅地並課税となるので注意が必要です。

30年経過すると、それ以降は特定生産緑地の指定を受けられず、固定資産税の軽減措置がなくなります。ただし、激変緩和措置の対象となるので、急に負担が大きくなるということはないでしょう。

特定生産緑地の指定を受けられる期間を超えて特定生産緑地指定の申出をおこなった場合、指定を受けることは今のところ認められていないので十分に注意してください。

少しでも分からないところや気になるところがあれば、専門家である不動産会社や不動産に関する法律に詳しい弁護士に相談することが大切です。

生産緑地の税制特例措置がなくなった場合の対処法

対処
ここまで生産緑地の固定資産税の軽減措置と、生産緑地の指定を解除したときの税額の高騰について説明しました。

最後に、固定資産税の軽減を含む税制特例措置がなくなった場合の対処法を5つ解説します。

  1. 市区町村に買い取ってもらう
  2. マンション・アパートを建築して賃貸経営する
  3. マイホームを希望する個人に売却する
  4. 個人投資家に売却する
  5. 不動産業者に買い取ってもらう

次の項目から、それぞれ解説するので、自分に合った対処法を検討してみてください。

①市区町村に買い取ってもらう

一般的に市区町村に買い取ってもらって対処します。なぜなら、生産緑地は指定を解除するとき、原則、自治体が買取ることになっているからです。

このときの買取価格は時価で算出されますが、自治体予算の都合によっては買取りを拒否されてしまうこともあります。

その場合、市は農林漁業希望者へあっせんをおこない、自分の代わりに農業を続けてくれる人を探します。希望者へあっせんする場合の価格は、宅地並み評価を基準とした時価になることが一般的です。

このときに必要となる主な書類は以下の通りです・

・生産緑地買取申出書
・同意書
・印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
・土地登記簿謄本・公図
・生産緑地買取申出地の位置図および区域図
・農業従事者証明

また、書類の様式や必要書類の一覧は市の窓口やホームページでも確認できます。

次からの対処法は、市から買取りを拒否され、農林漁業希望者へのあっせんも不調となり、自分が所有者のまま、生産緑地の指定と行為制限が解除された状態でのものになります。

②マンション・アパートを建築して賃貸経営する

生産緑地の指定を解除するということは、農業を続けないケースといえます。その場合、高騰した固定資産税を納税するためにも、マンション・アパートを建築して賃貸経営することも選択肢の一つです。

生産緑地に指定される地域の地価は高く、駐車場としての土地活用のみでは十分な収益を見込めない可能性があります。

しかし、市街化区域は人口も多く、人口が増え続けることも期待できるかもしれません。そのため、生産緑地だった土地を整地し、マンション・アパート経営に活用することは1つの対処法です。

③マイホームを希望する個人に売却する

自分で賃貸経営するのではなく、マイホームを希望する個人に売却する方法も有効です。ただし、生産緑地は最低でも500㎡(市によっては300㎡)以上の面積があります。

戸建てでも1家族あたりの土地面積は約100㎡~125㎡が多いといわれています。そのため、1つの生産緑地だった土地に4家族分、戸建てを建築できることになります。

1家族がそれだけ広大な土地を宅地として購入することは稀です。買主を見つけやすくするには分筆して使いやすい土地にするとよいでしょう。

分筆する際は「どのような形がよいか」「何戸分の土地として売り出すのか」不動産会社に相談すると具体的なアドバイスがもらえるでしょう。

④個人投資家に売却する

分筆すると費用もかかり、手続きも手間です。また、分筆して戸建て用の土地として売却活動をしたとしても、必ずしも買主が見つかるとは限りません。

分筆する前に土地を売り出して様子を見たいのであれば、オーナーや投資家にそのまま売却する方法も検討してみましょう。

投資家へ売却するには所有する土地がどれだけの収益を生み出せるかが重要な要素となります。そのため、高値で売却するためにも、その土地の周辺環境や人口の推移などの情報をできる限り集めるとよいです。

また、どの不動産会社に仲介を依頼するかによっても売却価格が変わります。

売り出し価格はどのくらいが妥当か、査定額はどのくらいになるのかを把握するためにも、複数の不動産会社に査定を依頼してみましょう。

⑤不動産業者に買い取ってもらう

個人投資家へ売却する場合、買主が見つかるまでに時間がかかることもあります。また、価格交渉などがおこなわれるなど労力もかかるでしょう。

そのような手間をかけられなかったり、できる限り早く現金化したいのであれば、不動産業者に直接買い取ってもらうとよいです。

買取であれば、査定額がそのまま買取額になります。査定結果に納得するかどうかで、売却先が早ければ1日で決まります。

ただし、居住目的の個人や個人投資家に売却するよりも、売却価格が低くなる傾向にあります。

そして、買取価格も不動産業者によって異なるので、複数の不動産業者に査定を依頼し、金額と条件、担当者を信頼できるかという観点から判断するようにしてください。

まとめ

生産緑地に適用されている固定資産税の軽減措置のメリットは大きいです。生産緑地として農業を継続するのであれば、固定資産税が負担になることはないでしょう。

しかし、生産緑地を解除したり、農業は継続するつもりでも特定生産緑地の指定を受け忘れたりすると、固定資産税の軽減措置は適用されなくなります。

激変緩和措置もありますが、5年後には本来の固定資産税額となって高騰します。

そのため、農業を続けるのであれば、特定生産緑地の指定を忘れずに受けるましょう。

もし生産緑地の指定を解除するのであれば、さまざまな買主をターゲットにして売却活動を進めることも検討してみてください。

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