土地を貸すメリット・デメリット!賃料相場や賃貸借契約書の内容も解説

土地を貸す

土地の活用方法としてもっともシンプルなのは、そのまま貸し出すことです。

土地を貸すという方法は、建物投資に比べて初期費用や維持管理費用がかからず、安定した地代収入を得られます。また、なにもせず放置しておくより節税につながるのもメリットです。

一方で、土地の利用制限を長期間受けたり、返還されなかったりなどトラブルの恐れもあります。加えて、土地活用の中では収益性が低めであることもデメリットです。

土地を貸す場合は、メリット・デメリットのほか、主に2種類に分けられる契約方法の違いや、具体的な貸し方、賃料相場について把握しておくことが大切です。

この記事では、上記のような「土地を貸すときの基礎知識」を紹介し、土地活用に役立つ内容を解説しています。所有している土地の処遇で悩んでいるのであれば、ぜひ参考にしてください。

目次

土地を貸すメリット

土地のオーナーとしてまず気になるのは、土地を貸すことでどのようなメリットが得られるかです。

主なメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 安定した地代収入を得られる
  • 初期費用や維持管理費用の負担がない
  • 節税できる

低コストで安定した収入が得られるうえ、節税にもつながることが主なメリットです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

安定した地代収入を得られる

土地を貸す最大のメリットは、長期的かつ安定した地代収入を得られることです。

土地を借りる目的は、その土地上に家屋や事業用建物を建てるなどのケースが多くなります。一時的な目的で借りる人は少ないので、数十年単位の長期契約になりやすく、地代収入が途切れません。

後ほど詳しく解説しますが、普通借地契約という契約の種類なら貸主・借主のどちらかが拒絶しなければ契約更新できるので、数世代にわたって地代収入を得られる可能性があります。

初期費用や維持管理費用の負担がない

土地を貸す2つ目のメリットは、初期費用や維持管理費用の負担がないことです。建物を貸す場合と比べて、低コストで運用できます。

アパートや戸建などを建てて貸そうとすると、建設費や設備などの初期費用がかかります。しかし、土地を貸すだけなら建物や設備は借地人が用意するため、初期費用がかかりません。

また、草刈りや不法投棄への対応など、日々の維持管理にかかる費用も借地人が行うため、メンテナンス費用が不要になります。

土地以外に必要なものが少ないため、まとまった資金を用意しなくても運用を始められます。

節税できる

土地を貸す3つ目のメリットは、節税になることです。固定資産税なら最大1/6(都市計画税は最大1/3)まで、相続税は最大1/10ほど安くなります。

固定資産税・都市計画税は土地の評価額に応じて課税されますが、土地上に住宅(戸建・マンション・アパートなど)があると、「住宅用地の特例」という制度が適用され、評価額が最大1/6まで減額されます。

住宅用地の特例による軽減額
区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 評価額×1/6 評価額×1/3
一般住宅用地 小規模住宅用地を超える部分 評価額×1/3 評価額×2/3

参照:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋) 【土地】2 住宅用地及びその特例措置について 2.住宅用地の特例措置」

相続税も土地の評価額を基準に課税されますが、貸し出している土地の場合、「借地権割合」という制度によって減額されます。

借地権割合・・・借地権の評価額を算出するための割合で、土地ごとに30~90%の範囲(10%刻み)で定められる。国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認可能。

例えば、本来の土地評価額が500万円で、借地権割合が60%の場合、相続税の評価額は「500万円×(100-60%)%=200万円」となります。

参照:総務省「固定資産税の概要」
参照:国税庁「土地家屋の評価」

土地を貸すデメリット

ここまで土地を貸すメリットを紹介しましたが、オーナーとしては貸し出したときのデメリットも気になるところです。

主なデメリットとしては、以下に挙げるものが代表的です。

  • 土地活用の中では収益性が低め
  • 土地の利用制限を長期間受け、返還されない恐れもあり
  • 土地の特徴によって貸しにくい

収益性や利便性という点では、オーナーにとって不利となる部分があります。それぞれ詳しく解説します。

土地活用の中では収益性が低め

土地をそのまま貸す場合、その収益性は土地活用の中では低くなります。これは、借地料が他の土地活用と比べて低いことが要因です。

初期費用や維持管理費を借地人が負担する分、地代はどうしても低水準になります。コストや手間がかからない分、得られる収入が少ないのは自然なことです。

地代の値上げも、以下に挙げるような正当事由がなければできません。

  • 土地の租税公課が上昇している
  • 地価や物価が上昇している
  • いまの地代が周辺相場と比べて低い

参照:e-Govポータル「借地借家法第11条第1項」

また、上記の正当事由があっても借地人に同意を得る必要があるため、地代変更はなかなか実現しにくいのが実情です。

収益の改善方法としては、次のような方法が挙げられます。

  • 建て貸し(建物を建ててから貸し出す方法)にして賃料単価を上げる
  • ハウスメーカーに相談する

建て貸しにすれば、土地のまま貸し出すより賃料の相場が高くなります。ある程度資金があれば検討してみましょう。

ハウスメーカーの場合は、活用プランや資金調達など、個々の事情に応じたコンサルティングをしてもらえます。「自分で活用したいけど、なにからすればわからない」という人におすすめです。

土地の利用制限を長期間受け、返還されない恐れもあり

土地を貸す2つ目のデメリットは、土地の利用が制限され、長期間にわたって自己利用ができないという点です。場合によっては、いつまで経っても返還されない恐れがあります。

土地を貸し出している期間中は、当然ながら自分で利用できなくなります。また、「土地を貸したら乗っ取られる」と言われるくらい借地人の権利は強く、契約の範囲内であればどのように使われようが地主は関与できません。

加えて、契約内容が普通借地契約の場合、地主から契約を終了させるのは非常に難しくなります。契約の更新拒絶(契約期間が満了するタイミングでの契約終了)でさえ、正当な事由が必要となります。

借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

引用:e-Govポータル「借地借家法第5条第1項」

前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

引用:e-Govポータル「借地借家法第6条」

確実に土地を返還してもらいたい場合は「定期借地契約で貸す」という対策を取りましょう。詳しくは後述しますが、定期借地契約は更新しないことを前提にした契約なので、契約終了と同時に土地を返還してもらえます。

また、どのような契約方法であっても、契約内容を書面でしっかり取り決めておくことが重要です。契約書の作成については後ほど詳しく解説しますが、使用目的や契約期間、禁止事項などを明記しましょう。

数十年単位の契約だと、相続で次世代まで引き継がれる可能性もあるので、誰が読んでも誤解のないよう細かく記載することが大切です。

土地の特徴によって貸しにくい

土地を貸すデメリット3つ目は、土地の特徴によっては貸しにくい場合があることです。土地を貸し出そうと思っても、場所や形状によっては誰も借りてくれないかもしれません。

例えば、自治体が定める用途地域の一部や市街化調整区域は、建築できる建物の用途や高さ、容積率などの制限があります。建築制限が厳しい地域だと、土地の需要が下がり、貸し出すのも難しくなるでしょう。

また、不整形地(形が歪な土地)や袋地(周囲を囲まれ道路に接していない土地)なども、活用の幅が狭い土地です。これらの土地は、建物の設計や施工が難しかったり、そもそも家の建築を禁止されている土地だったりします。

以上のことから、土地を貸すときは「なにに利用できるのか」「どのような制限があるのか」を調べ、それに見合った土地活用を考えることが大切です。

どう考えても活用が不可能で、借地人がまったく見つからないような場合は、訳あり物件専門の買取業者に売ってしまうのも1つの方法です。訳あり物件専門の買取業者なら、使いみちが見つからないような土地でも買い取ってもらえる可能性があります。

土地を貸すための契約方法

土地を貸すための契約方法は、「普通借地契約」と「定期借地契約」の2種類があります。また、定期借地契約はさらにいくつかの種類に分けられます。

どちらの契約方法を選ぶかは、地主の目的やニーズ次第です。長期貸し出しで安定した収入を得たい場合は普通借地契約がおすすめですし、将来的に自己利用をしたい場合は定期借地権契約にすべきです。

以下は、普通借地契約と定期借地契約の特徴や違いについてまとめたものです。

普通借地契約 一般定期借地権 建物譲渡特約付借地権 事業用定期借地権 一時使用目的
契約期間 30年以上 50年以上 30年以上 10年以上50年未満 制限なし
契約形式 指定なし 公正証書などの書面 指定なし 公正証書のみ 指定なし
利用目的 指定なし 指定なし 事業用のみ 指定なし 指定なし
契約更新 あり
(更新後の契約期間は、1回目は20年以上、 2回目以降は10年以上)
なし なし なし なし
契約終了 原則更新
(借主が更新しない場合のみ終了)
期間満了による 期間満了による 期間満了による 期間満了による
特記事項 ・正当事由がなければオーナー側から解約、契約終了ができない。
・正当事由は解約理由やそれまでの経緯などからケースバイケースで判断。
・契約終了後は更地にして返還。 ・土地オーナーが建物を買い取る。 ・事業用にのみ貸出可。
・契約終了後は更地にして返還。
・契約形式に指定はないが、契約書に一時使用である旨や理由を明記すると良い。

それぞれ詳しく解説していきます。

普通借地契約|契約更新ができる

普通借地契約とは、期間が満了しても、借地人が希望すれば原則として更新される契約です。借地人が希望すれば、契約が永遠に存続する可能性もあります。

契約期間は30年以上にしなければならず、当事者の合意で短く設定したり、そもそも期間を定めなかったりした場合も30年とみなされます。また、1回目の更新後は20年以上、2回目以降の更新後は10年以上の契約期間を定めなければいけません。

貸主が更新を拒絶するためには、正当事由を備えたうえで、契約期間満了日の1年前~6ヶ月前までに通知する必要があります。

正当事由を満たしているかどうかは個々のケースごとに判断しますが、以下のポイントが見られます。

  • 貸主・借主それぞれの土地を必要とする理由
  • 借地契約に関するこれまでの経緯
  • 現在の利用状況
  • 立ち退き料の提供がある場合はその金額など

「〇〇だから正当事由になる」という一律の基準はなく、基本的には借地人側に有利になる傾向があります。

貸主からの中途解約はさらに厳しく、3ヶ月以上の地代滞納や、契約にない用途で使われる(資材置き場として貸したのに建物を建てられたなど)といった借地人の契約違反がなければできません。

定期借地契約|契約更新ができない

定期借地契約とは、あらかじめ契約期間を定め、期間満了後の更新はしない契約です。契約期間が終了すると、土地は必ず返還されます。

定期借地権は、さらに以下の4種類に分けられ、期間や内容がそれぞれ異なります。

  • 一般定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 事業用定期借地権
  • 一時使用目的

一般定期借地権

一般定期借地権は、定期借地契約のなかではもっとも契約期間が長い契約です。50年以上の期間を設ける必要があります。

利用目的や建物買取といった制限がなく、定期借地契約としてはオーナー側も借地人側も自由度の高い契約方法です。

契約にあたっては「公正証書などの書面を作成」とされていますが、必ずしも公正証書が必要というわけではありません。しかし、50年以上という長期契約になるため、基本的には原本が確実に保存される公正証書を作成したほうが良いでしょう。

公正証書・・・国が認定する公証人のもと、契約などの法的行為の内容を公文書として作成したもので、証明書として強い証拠力がある。期間のある契約の場合、公正証書の原本は期間満了後10年まで保存される。
参照:e-Govポータル「公証人法施行規則第27条第1項」

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権とは、借地人が借地上に建てた建物を、地主が契約終了時に買い取るという契約です。契約期間は30年以上となります。

土地の返還を受けるためには建物を買い取らなければいけなくなりますが、その建物に活用の目処があるなら有効な契約です。

契約に書面作成の義務はなく、口頭でも有効とされますが、トラブルを防ぐためにも一般的には契約書を作成します。

なお、買取時に建物を使っている人(借地人本人か、借地人から建物を借りていた人)がいる場合、その建物について地主と賃貸借契約を結んだものとされます。

つまり、買い取ったからといって建物の使用者をすぐに追い出せるわけではありません。買取後の活用方法に影響するため覚えておきましょう。

事業用定期借地権

事業用定期借地権とは、事業のために使用する定期借地契約です。契約期間は10年以上50年未満で、公正証書の作成が必要となります。

居住用建物(戸建・アパート・マンション)のためには貸せず、工場や倉庫、大型店舗やホテルといった大規模な用途のときに結ぶ契約です。

事業用途という関係上、地代相場が高くなりやすい傾向にあります。また、社会的信用が重要な事業者が相手なので、経営破綻などがない限り滞納リスクも低いと言えます。

広大な土地や郊外の土地など、居住用に向いていない土地を所有している場合におすすめの契約方法です。

一時使用目的

一時使用目的は、契約期間の制限がない借地契約です。主な事例では、工事用のプレハブ事務所やイベント用の仮設テントなど、解体・移動が容易な建物を建てる際に使われます。

期間について明確なルールはありませんが、過去の判例から10年未満を目安とすることが一般的です。

一時使用目的に関する判例
判例 期間 一時使用目的の認否 判例詳細(裁判所HP)
最高裁昭和36年7月6日 10年 クリックでジャンプ
最高裁昭和43年11月19日 当初3年の契約を10年に延長 クリックでジャンプ
最高裁昭和45年7月21日 20年 クリックでジャンプ

ただし、期間の長短より、総合的な観点から一時使用目的とみなせるかが重要です。

つまり、一時使用目的で土地を貸すときは、契約の内容や経緯などから客観的・合理的に一時使用目的とわかる状況が必要となります。

建て貸しと更地貸し

土地を貸す方法には、「建て貸し」と「更地貸し」の2種類があります。どちらも文字通りの意味で、建て貸しは土地に建物を建ててから貸すことを、更地貸しは建物がない状態で貸すことを指します。

それぞれの活用方法やメリット・デメリットをまとめると、以下の表のようになります。

方法 考えられる土地活用 メリット デメリット
建て貸し 賃貸住宅の運営、事務所・倉庫・店舗などの業務用施設の提供、ホテル・旅館・民泊などの宿泊施設の提供など ・節税ができる(固定資産税や相続税などの評価額が減額される)
・長期的な安定収入が見込める(賃料単価が高く、空室率が低い場合)
・建物や設備の改良工事や修繕工事によって賃料を見直すことができる
・土地の有効利用ができる(土地の形状や規制に問題がない場合)
・初期費用がかかる(建物や設備の建築費や設置費など)
・維持管理費がかかる(建物や設備の修繕費や更新費など)
・リスクが高い(空室率が高くなったり、建物や設備が老朽化したりする場合)
・土地の利用制限を長期間受ける(借主に対して土地の利用に関する制限を設けることができない場合)
更地貸し 駐車場、事業用地(太陽光発電など)、自動販売機、広告看板など ・初期費用がかからない(建物や設備を建てる必要がない)
・維持管理費がかからない(建物や設備を修繕する必要がない)
・リスクが低い(空室率や老朽化の影響を受けにくい)
・不整形地や建築制限のある土地でも貸しやすい
・土地の利用制限を長期間受けない(借主に対して土地の利用に関する制限を設けることができる場合)
・収益性が低い(賃料単価が低く、市場価格や物価の変動に対応できない場合)
・土地の有効利用ができない(形状や規制に問題がなく、用途の選択肢がある土地の場合)

資金が潤沢で、自分で積極的に土地を運用したい場合は、建て貸しを検討しましょう。建て貸しのほうが自分の好きなように活用できて、収益性も高くなります。

一方、「手間なく土地を活用したい」「資金を用意できない」という場合は、更地貸しのほうがおすすめです。特別なことをせずとも、土地を有効活用できます。

土地を貸す際の地代相場

土地を貸すにあたって重要なのは、地代をいくらで設定するかです。高すぎると借りられにくくなりますし、低すぎると収益が下がります。

しかし、地代相場は一律的なものではなく、立地や活用方法、地域のニーズによって異なります。算出方法も複数あるため、土地の特性に合った方法を使うことが大切です。

ここでは、地代相場の考え方と、具体的な算出方法について解説します。

土地活用方法によって相場は異なる

地代相場を把握するときは、ただ近隣の土地と比べるだけでは正確性に欠けてしまいます。なぜなら、土地によって用途や建物の有無が異なるからです。

用途の面から考えると、事業用のほうが居住用よりも高くなる傾向にあります。あくまで目安ですが、事業用なら土地価格の4~5%、居住用なら2~3%程度がおおまかな相場です。

一方、建物の有無については、建物を建てるほうが高くなりやすい傾向にあります。他の条件にもよりますが、建物を建てることで土地そのものの価値も上がり、地代が上がる可能性もあります。

ただし、実際には「土地価格の◯%」という単純な決め方はせず、その土地がもつ特殊性や収益性も踏まえて算出します。個人で見極めるのは難しいので、不動産会社と相談しながら決めていくと良いでしょう。

地代相場の算出方法

地代相場の算出方法にはいくつか種類があり、土地の特徴によって適切な方法も変わります。

具体的な算出方法は、以下の通りです。

  • 公租公課から算出
  • 積算法(利回り法)から算出
  • 路線価から算出
  • 賃貸事例比較法(取引事例比較法)から算出
  • 収益分析法から算出

これらのなかでは、公租公課による算出がシンプルで、使用頻度も高い傾向にあります。

ただし、どの計算方法も若干の差異があるため、より公平に地代を設定するなら、複数の計算方法を併用して平均値を求めると良いでしょう。

各方法の計算について詳しく解説していきます。

公租公課から算出

公租公課から算出する方法では、土地の固定資産税や都市計画税に一定の倍率を乗じます。

固定資産税や都市計画税は土地所有にかかる最低限のコストなので、基準にすることで地主の利益を確保できますし、借地人の理解も得やすい算出方法です。

計算式にすると、次のようになります。

地代相場=(固定資産税+都市計画税)×一定の倍率
※都市計画税は市街化区域内のみ課税。

まず、固定資産税と都市計画税を確認しなければいけませんが、こちらは毎年4月ごろに市区町村から通知が届きます。計算式は以下の通りです。

・固定資産税=課税標準額×税率(1.4%)
・都市計画税=課税標準額×税率(0.3%)
※課税標準額・・・土地の評価額に、住宅用地の特例など軽減措置を適用させた価額。
※税率は各自治体が決定する。上記の税率は、固定資産税は標準税率(目安となる税率)、都市計画税は制限税率(上限となる税率)。

地代計算で乗じる倍率に決まりはありませんが、東京都23区における平均倍率は「商業地系で4.05倍」「住宅地系で4.32倍」という調査があります。

参照:日税不動産鑑定士会「令和3年版 継続地代の実態調べ 本文(一部) (3)継続地代(支払ベース)の公租公課に対する倍率」

実際にこの方法で地代を決める場合、倍率は地主と借地人の交渉次第となります。合意さえできれば、2倍以下に抑えても良いですし、10倍以上にすることも可能です。

積算法(利回り法)から算出

積算法(利回り法)は、土地の価値と収益性を考慮して地代相場を算出する方法です。この方法では、土地価格に期待利回りを乗じて算出します。

具体的な計算式は以下の通りです。

地代相場=土地価格×期待利回り+必要経費

土地価格は更地で売却したときの価格、必要経費は税金・維持管理費・保険金などが当てはまります。

期待利回りは、その土地から得られるであろう利益の割合から算出しますが、目安として2%とするのが一般的です。その土地に応じた正確な数値を出したい場合は、不動産鑑定士への依頼が必要になります。

不動産鑑定士に依頼しない場合は、目安の2%で算出したうえで、他の計算方法と併せて検討・判断しましょう。

路線価から算出

路線価とは、国税庁が定める土地の評価基準です。道路ごとに1㎡単位の価額を設定し、その道路に面する土地の評価額を決定します。

※路線価には市町村の定めるものと、国税庁の定めるものがありますが、ここでは国税庁の路線価を基準にします。なお、国税庁のWebサイトで各地の路線価を確認可能です。
国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(クリックでジャンプ)

例えば、1万円の価額が設定されている道路に、100㎡の土地が接していれば、その土地の評価額は100万円です。

路線価による土地評価額は「時価の8割程度」になるよう設定されているので、先述した地代の一般的な割合(事業用なら土地価格の4~5%、居住なら2~3%)を乗じれば、地代相場を把握できます。

以上を計算式になおすと、以下の通りです。

地代=(路線価に土地評価額×0.8)×2~5%

注意点として、特殊な土地(不整形地など)の場合は別途補正をかける必要があり、計算が複雑になります。

特殊な事情がない土地であれば、国が定める路線価を基準とするので、納得感の高い計算方法です。

賃貸事例比較法(取引事例比較法)から算出

賃貸事例比較法(取引事例比較法)とは、近隣エリアや似た条件の土地の賃貸事例や取引事例を参考に、地代相場を算出する方法です。

具体例を挙げると、以下のような計算になります。

150㎡の土地で地代を算出するにあたって、下記の土地の事例を参照。
・100㎡で年間120万円(1㎡あたり1万2,000円)
・180㎡で年間225万円(1㎡あたり1万2,500円)
・130㎡で年間169万円(1㎡あたり1万3,000円)
それぞれの平均を取ると「1万2,000円+1万2,500円+1万3,000円=1万2,500円」なので、自分の土地の地代は
「1万2,500円×150㎡=年間187万5,000円」となる。

正確性を保つためには、複数の土地を参考にする必要があります。また、比較する土地選びは、さまざまな観点から類似性の高いものを選ばなければいけません。

不動産鑑定士が賃貸事例比較法を用いる場合、以下のような基準があります。

(1)次の不動産に係るものであること
① 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には
近隣地域の周辺の地域(以下「同一需給圏内の類似地域等」という。)に存
する不動産
② 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏
内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動
産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。)。
(2)取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又
は正常なものに補正することができるものであること。
(3)時点修正をすることが可能なものであること。
(4)地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。

引用:国土交通省「不動産鑑定評価基準 第7章 鑑定評価の方式」

要点をまとめると、以下のようになります。

  • 近隣地域および地域の特性が類似している地域であること
  • 取引に特殊な事情がないもの、もしくは事情の補正が可能であること
  • 最新の取引事例、もしくは時間経過による不動産市場の変化を補正できること
  • 対象の地域・土地に固有の要因を補正できること

実例を参考にすることで現実に即した地代相場を把握できますが、形状や経歴に特殊な事情がある土地だと、正確な算出が難しくなります。

どれだけ多くのサンプルを見つけられるかが、正確な算出に重要です。不動産情報サイトなどから自分で調べるほか、地元の不動産会社に相談するのも良いでしょう。

収益分析法から算出

収益分析法とは、事業用途で土地を貸す場合、その土地がどれほど企業の収益に貢献するかで地代を算出する方法です。商業施設や病院、ホテルなどの用途で貸す場合に使われます。

簡単に計算式を表すと、次のようになります。

地代相場=収益純賃料+必要諸経費

収益純賃料は、事業の売上から土地以外の経費(原価や販売費など)を差し引いたものです。必要経費は、税金や保険料、減価償却費などが当てはまります。

正確に計算するのは企業財務の知識が必要なので、個人で計算するのには不向きな方法です。収益分析法による地代算出が必要な場合は、不動産鑑定士などの専門家に相談しましょう。

土地を貸す際の税金はどうなる?

先の解説で、土地を貸すと固定資産税や相続税などの節税につながると説明しました。

しかし、土地を貸して地代収入を得た場合、所得税や住民税などがかかります。また、規模によっては事業税がかかる場合もあります。

安心して土地を貸すために、ここからは土地を貸す行為と各種税金の関わりを整理していきましょう。

消費税は地代にかからない

消費税は、商品やサービスの提供に対して課される間接税です。土地活用初心者だと、「土地の貸し出しで消費税が発生するの?」と気になる人も多いでしょう。

しかし、土地の貸し出しは非課税取引とみなされ、地代は消費税の対象にならないとされています。土地を貸すにあたって、消費税を気にする必要はありません。

ただし、貸し出す期間が1ヶ月未満の場合や、駐車場・野球場・プール・テニスコートといった用途で使用される場合は、例外的に課税されるので注意しましょう。

参照:国税庁「地代、家賃や権利金、敷金など」

参照:国税庁「駐車場の使用料など」

固定資産税は変わらず地主が支払う

地主のなかには、「土地を使うのは借地人だから、固定資産税も借地人が払うものだ」と思う人もいるかもしれません。

しかし、固定資産税は所有者に対する課税であり、納税義務は地主にあります。どのような用途・契約であっても、税金を納めるのは地主自身です。

先述した通り、居住用建物を建てて「住宅用地の特例」が適用されれば、評価額は最大1/6まで減額されます。しかし、税率については自治体が定める数値から下がることはありません。

自治体が税率を定めるにあたっては基準があり、固定資産税は1.4%が標準税率とされています。「標準」なので、地域によって多少高かったり低かったりします。

一方、市街化区域(市街地として栄えている、もしくは今後開発が進められる地域)で課せられる都市計画税は、0.3%が上限税率です。「上限」なので、0.3%を超えることはありません。

参照:総務省「固定資産税の概要」
参照:総務省「都市計画税」

固定資産税の課税は、毎年1月1日時点の状況によって決定します。つまり、課税対象者の判断基準は「1月1日時点の所有者」であり、住宅用地の特例の適用も「1月1日時点で建物があるかないか」がポイントになります。

相続税は減額できる

相続税については、先に解説した通り借地権割合によって評価額が下がるため、節税になります。

また、自分で貸家やアパート・マンションを建てて貸し出す場合、その敷地となる土地の相続税はさらに軽減されます。

どのような建物かで軽減率も変わるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

貸家(戸建)の場合

貸家がある土地は「貸家建付地」と呼ばれ、「借家権割合」という軽減率が適用されます。評価額の計算式は次の通りです。

貸家建付地の相続税評価額=土地本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)

借家権割合は2023年現在、全国で30%に統一されています。ただし、決定権は各地域を管轄する国税局にあるため、将来的に変わる可能性もあります。

アパート・マンションの場合

アパート・マンションの敷地となっている土地は、借家権割合に加えて賃貸割合(全床面積に対する賃貸部分の床面積の割合)を乗じます。計算式は以下の通りです。

アパート・マンションの敷地の相続税評価額=土地本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

例えば、全床面積が1,000㎡に対して、賃貸されている部分の床面積が合計500㎡の場合、賃貸割合は50%となります。

参照:国税庁「貸家建付地の評価」

賃貸経営が黒字なら所得税・住民税がかかる

所得税と住民税は、個人が1年間に得た所得に対して課される直接税です。地代収入も所得に含まれるので課税されます。

土地や建物を貸して得た収益は「不動産所得」とされ、給与などと別に申告が必要です。不動産所得が20万円を超える場合、もしくは損益通算をする場合に、確定申告を行います。

※損益通算・・・不動産運用の損失を給与所得などから控除する制度。

計算するときは、まず年間の不動産所得を計算します。

不動産所得=総収入金額-経費

総収入金額には地代のほか、更新料や礼金なども含まれます。経費は、固定資産税や保険料、修繕費などが対象です。課税対象の所得に対して、所得税・住民税それぞれを計算します。

所得税の計算式は以下の通りです。

所得税=課税対象の所得×税率-控除額

なお、所得税の税率と控除額は以下にまとめた通りです。

課税対象の所得 税率 控除額
1,000円超~195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超~695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超~900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超~1,800万円以下 33% 153万,6000円
1,800万円超~4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

※2037年までは復興特別所得税が併せて課税され、所得税額の2.1%が加算。
参照:国税庁「所得税の税率」

一方、住民税のほうは自治体によって異なりますが、基本は以下のように計算します。

住民税=所得割+均等割

参照:板橋区「住民税の計算方法」

所得割は課税対象となる所得の10%、均等割は自治体によって異なりますが1,500~3,500円程度です。

規模や賃貸収入等により個人でも事業税がかかる

土地の貸付規模が一定を超えると、事業税という税金がかかるようになります。

基準となる規模は以下の通りで、都道府県がケースごとに判断します。

不動産貸付業の認定基準
区分 基準
戸建以外の住宅(アパートなど) 10室以上
戸建住宅 10棟以上
独立家屋以外の建物(貸店舗など) 10室以上
独立家屋(倉庫など) 5棟以上
住宅用の土地 貸付件数が10件以上もしくは貸付総面積が2,000㎡以上
住宅用以外の土地 貸付件数が10件以上もしくは貸付総面積が2,000㎡以上
複数の区分が混在している場合 棟数、室数、契約件数の合計が10以上
駐車場業の認定基準
区分 基準
建築物ではない駐車場(青空駐車場) 収容台数10台以上
建築物である駐車場 収容台数の規定なし(1台から認定)

参照:大阪府「個人事業税における不動産貸付業・駐車場業の認定基準」

基準を超えた対象者に対して、8月頃に納税通知書が送られてきます。

なお、事業税の計算式は、以下の通りです。

事業税=(不動産所得-290万円 )×税率

税率は業種ごとに定められており、不動産貸付業と駐車場業は5%です。

参照:大阪府「個人事業税」

土地を貸す際には賃貸借契約書が必要

土地を貸す際には、地主と借主との間で結ぶ契約の内容を書面にした「賃貸借契約書」を作成します。

口約束でも賃貸借契約は成立しますが、トラブルの元になるため書面に起こすのが普通です。法的な作成義務がないとはいえ、しっかりとした内容での作成が必要となります。

主な記載項目は以下の通りです。

  • 契約日
  • 契約当事者(地主と借主)の氏名や住所
  • 土地の所在地や面積
  • 使用目的
  • 地代の金額や支払方法
  • 契約期間や更新方法
  • 禁止事項
  • 契約解除の条件や違約金
  • 原状回復義務

一般的に地主側が作成し、借主に提示します。実際は、弁護士などの専門家に作成を依頼すると良いでしょう。

土地賃貸借契約書の有効期間

土地賃貸借契約書の有効期間は、先に解説した契約方法の通りです。

  • 普通借地権・・・30年以上
  • 一般定期借地権・・・50年以上
  • 建物譲渡特約付借地権・・・30年以上
  • 事業用定期借地権・・・10年以上50年未満
  • 一時使用目的・・・制限なし(一般的に10年未満)

普通借地権の場合、有効期間が切れたら借地人から解約の申し出があるか、地主が正当事由をもって更新拒絶の意思表示をしない限り、契約は更新されます。

更新後の期間は、1回目なら20年以上、2回目以降なら10年以上で設定しなければいけません。

なお、1992年7月31日以前に結ばれた賃貸借契約の場合、現行の借地借家法が施行される前の法律(旧借地法)が適用されるため、期間満了時のルールが若干変わります。

要点だけまとめると以下のような違いがあるため、該当する賃貸借契約がある場合は押さえておきましょう。

【旧借地法における更新後の最低契約期間】

  • 土地上に堅固建物(鉄骨造りや石造りなど)がある場合・・・30年
  • 土地上に非堅固建物がある場合・・・20年
  • 土地上に建物がない場合・・・50年(民法の規定を適用)

参照:弁護士法人みずほ中央法律事務所「旧借地法の条文(全文)第5条第2項」
参照:e-Govポータル「民法第604条第2項」

【旧借地法における解約・更新拒絶】
基本的には現行の借地借家法と同じ。ただし、民法が適用される(土地上に建物がない)ケースで、契約の期限を定めていなかった場合は地主からも解約可能であり、申し入れから1年経過で終了する。
参照:e-Govポータル「民法第617条第2項」

土地賃貸借契約書の作成にかかる費用

賃貸借契約書の作成費用は、自分で作成する場合と、専門家に依頼する場合で異なります。

自分で作成する場合、費用がかからないため節約できますが、内容が不十分になってしまう恐れがあるため、注意が必要です。

専門家に依頼する場合は、不動産会社か、不動産業界に詳しい専門家(弁護士・司法書士・行政書士)に相談しましょう。専門家への報酬は依頼先や依頼内容によりますが、5万~10万円程度が目安です。

なお、作成費用とは別に「印紙税」が必要です。印紙税は、文書に課せられる税金で、契約書に収入印紙を直接貼り付けることで納付します。

印紙税額は、土地を貸す場合「契約金額」を基準に決定します。契約金額とは「契約にあたって授受される金銭で、返還しないもの」で、具体的には以下が当てはまります。

  • 名義変更料
  • 権利金
  • 礼金

上記の金銭がない場合、「契約金額がないもの」として税額は最低基準のものになります。具体的な印紙税額は以下の通りです。

契約金額 印紙税
10万円および契約金額の記載のないもの 200円
10万円超~50万円 400円
50万円超~100万円 1,000円
100万円超~500万円 2,000円
500万円超~1,000万円 1万円
1,000万円超~5,000万円 2万円
5,000万円超~1億円 6万円
1億円超~5億円 10万円
5億円超~10億円 20万円
10億円超~50億円 40万円
50億円超~ 60万円

参照:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

土地賃貸借契約書の注意点

土地賃貸借契約書に法的な書式のルールはありませんが、だからこそ契約内容を細かく盛り込み、トラブルを防ぐことが大切です。

まず、契約期間や更新の有無、地代や支払方法など、基本的な事項を明記する必要があります。これらが不明瞭だと、契約書としての役割を果たせません。

次に、禁止事項を明確に記載することも大切です。「されたくないこと」を明確に記載することでトラブルを防げますし、規約違反で契約解除を請求することも可能になります。

土地賃貸借契約は借地人に有利な契約なので、何も対策しなければ、トラブルになっても泣き寝入りになるかもしれません。最初の契約段階でしっかりルールを定め、誰から見ても取り決めがわかるようにしておきましょう。

土地を貸す流れ

実際に土地を貸すとき、何から手を付け、どのように動けば良いかわからず不安な人も多いでしょう。ここからは、土地を貸すときの具体的な流れを解説します。

土地を貸す流れを段階分けすると、以下のようになります。ステップごとに詳しく見ていきましょう。

  1. 土地活用の専門業者に相談
  2. 賃貸借契約書を作成して借主と契約
  3. 確定申告

土地活用の専門業者に相談

まず、土地活用の専門業者に相談しましょう。土地活用の専門業者なら、土地の特徴に応じて最適なプランを提案してくれます。

土地活用の専門業者に相談した場合、まず行われるのは「ヒアリング」と「実地調査」です。地主の希望を把握したうえで、土地の面積や形状、周辺環境や法令上の制限などを調査し、特徴や可能性を把握します。

その後、具体的な活用案が提案され、地主が納得すれば借主探しに移ります。地代や契約方法など細かい条件も考えてもらえるので、地主はスムーズな判断・意思決定が可能です。

賃貸借契約書を作成して借主と契約

借主が決まれば、賃貸借契約書を作成して契約を結びます。専門業者に相談しているなら、そのまま契約書作成もしてもらえるでしょう。

契約書の作成後、借主に内容を確認してもらい、双方が署名捺印をすれば契約成立となります。成立後の契約内容変更は原則としてできないので、署名捺印前にしっかり内容を読み込むことが大切です。

その後は契約内容に従い、借地人が土地の利用を開始します。大きなトラブル(災害など)がない限り維持管理も借地人が行うので、地主としては地代が支払われているか確認したり、使用状況を時折確認するといったことを意識しておきましょう。

確定申告

確定申告とは、1年間の所得や経費を申告し、税額を確定させる手続きです。先述の通り、不動産所得が20万円を超える場合か、損益通算をする場合は、確定申告が必要です。

確定申告には2つの方法があり、それぞれの主な違いは以下の通りです。

青色申告 白色申告
特別控除 最大65万円 なし
赤字の繰越 3年間の繰越可能 不可
記帳方法 複式簿記 単式簿記
申告の条件 事前の申請と開業届が必要 申請・開業届は不要

青色申告は税制上の優遇措置がある反面、事前の承認や提出する書類が多くなり、手間がかかります。節税重視なら青色申告、手間を省きたいなら白色申告がおすすめです。

確定申告は、対象となる年の翌年2月16日~3月15日までに行います。居住地を管轄する税務署に直接行くか、インターネットでの申告(e-Tax)をします。

自分で申告するのが基本ですが、税理士に依頼すれば書類作成から申告まで代行してもらうことも可能です。期間中に慌てて申告するとミスする可能性もあるので、早めに準備を始めるようにしましょう。

土地を「貸す」「売却」の判断基準は?

土地を所有している場合、貸すほかに「売却」という選択肢もあります。地主のなかには、土地を貸して活用するか、売却して現金化するかで悩んでいる人も多いと思います。

「貸す」「売却」のどちらが有利なのかは、一人ひとりの状況によって異なります。ここからは、どのようなポイントで「貸す」「売却」を判断すれば良いか、基準を見ていきましょう。

定期収入を得たいなら「貸す」

土地を貸す最大のメリットは、地代という収入が得られることです。土地賃貸借契約は基本的に長い期間を設定するので、安定した定期収入を確保できます。

安定した収入源があれば、日々の家計が楽になりますし、老後は年金とのダブルインカムで不安のない生活を送れます。また、土地の所有権は自分に残るため、将来的に自己使用に切り替えたり、値上がりしたタイミングで売却したりといった選択も可能です。

まとまった資金が必要な状況でもなければ、賃貸で長く定期収入を得ることを検討してみましょう。

売れない・値段がつかないなら「貸す」

土地によっては、そもそも売却が難しい場合もあります。郊外の土地や不整形地など、使い勝手の悪い土地は値段がつかない可能性もあります。

土地は、ただ所有しているだけだと税金や管理費でマイナスになるため、売れなくても何らかの活用方法を考えるべきです。

売れないような土地を貸せるのか不安に思うかもしれませんが、「自分で所有するのはリスキーだけど使える土地を探している」という需要もあるため、売れなくても借主を見つけられるケースは少なくありません。

また、賃貸で収入実績を作れば、その収益を狙った買主が現れることもあります。土地を貸すことで、「売れない土地」が「売れる土地」になるかもしれません。

土地の管理を誰にも任せられないなら「売る」

借主が長期間見つからず、周りに管理を任せられる人もいない状態であれば、売却することをおすすめします。

すでに解説した通り、土地の維持管理にはコストがかかります。また、放置していた土地で事故や犯罪が起こると、管理責任を問われるかもしれません。

不要で利益を生まない土地なら、トラブルになる前に処分しましょう。

定期借地契約で貸してから売るという手もある

土地の運用方法として、定期借地契約で貸し出し、契約満了後に売るという手段があります。これは、地代収入を得つつ、売却時の節税をするという方法です。

土地を売ると、その売却益に対して譲渡所得税がかかります。この税率は所有期間によって変わり、5年以下だと39.63%、5年超だと20.315%です。

つまり、譲渡所得税が安くなる5年後まで、定期借地契約で地代収入を得ようというのが、この方法の目的です。

一時使用目的なら5年の賃貸借契約も可能なので、ちょうど税率が下がるタイミングで返還してもらえます。収益化の実績もあるため、賃貸借契約を結んだままより高く売れる可能性があります。

土地を貸したい時の相談先

土地を貸すにあたって、プロのアドバイスは重要です。専門的な知識をもとにアドバイスしてもらえば、効率的な土地活用が可能になります。

しかし、一口にプロといっても様々な種類があるため、自分の状況や希望に合った相談先を見つけることが大切です。

以下は、土地を貸したいときに相談できる専門家の一例です。

相談先 相談できる内容 相談した方が良い人
土地活用専門会社 活用の初期費用や収益シミュレーションなど 土地活用をすることは決めている人
不動産会社 土地の売却や賃貸・管理について 貸すか売るか迷っている人
工務店 建物等の工事について 活用方法を建て貸しに決めた人
ファイナンシャルプランナー 資産運用全般 土地活用の収支計画をしっかり立てたい人
金融機関 融資全般について 具体的な活用方法が決まっており、建物や設備の導入に資金が必要な人
税理士 土地を貸す・活用する際の税金等について 税金対策・税金込みの収支計画について知りたい人
弁護士 土地を貸す際の契約書作成や法的トラブルの対処など 賃貸借契約を結ぶ人・更新する人や、何らかの法的トラブルを抱えている人

自分のなかで方向性が何も定まっていないなら、まず土地活用専門会社に相談しましょう。そこで納得のいく土地活用方法を提案されれば次のアクションが定まりますし、良い提案がなければ売却に舵を切るという判断ができます。

関連記事では、土地活用の相談先をより詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

土地を貸す方法は、定期借地契約か普通借地契約かといった基準があります。どの契約で貸すかは、事前に用途を定めながら決めることが必要です。

また、契約の取り決めは些細なことでも書面に残し、誰がいつ読んでも誤解がないようにすることが大切です。

自身や土地の状況によって貸すべきか売却すべきかは変わりますが、大切なのは放置しないことです。税金や維持管理費が出ていくだけの状況を作らず、土地を有効活用していきましょう。

土地を貸すときに良くある質問

土地を貸すメリットとデメリットはなんですか?

土地を貸すメリットは、少ないコストで安定した地代収入を得られることが挙げられます。また、固定資産税や相続税の節税にもつながります。
デメリットとしては、更地で貸す場合収益性が低くなることや、長期間自分で利用できなくなることです。また、土地によっては、貸し出すこと自体難しい場合もあります。

土地を貸すのにかかる費用はいくらですか?

更地貸しの場合、費用は契約書の作成費用や、仲介を依頼した場合の手数料程度です。契約書の費用は5万~10万円(自分で作成した場合は無料)、仲介手数料は賃料の0.5~1ヶ月分(権利金の授受がある場合は別途計算)です。

土地を貸した場合どのような税金がかかりますか?

固定資産税は賃貸後も地主が支払います。その他、賃貸経営が黒字の場合は所得税・住民税がかかり、一定の規模を超えた場合は個人でも事業税がかかります。

土地を貸すことで、具体的にどう節税になりますか?

固定資産税・都市計画税は土地の評価額に応じて課税されますが、土地上に住宅(戸建・マンション・アパートなど)があると、「住宅用地の特例」という制度が適用され、評価額が最大1/6まで減額されます。
相続税のほうも、借地権割合や賃貸割合が差し引かれるので、評価額が下がります。

土地貸しは本当に儲かるのでしょうか?

土地貸しは長期の契約になることが多く、安定的な収益を得られます。ただし更地貸しの場合、建て貸し(建物を建てて貸し出す)より収益性は落ちるでしょう。
土地を貸す目的は、収益を上げることのほかに、税金や維持管理費を節約し、賄うという部分もあります。「貸したくても借主が見つからない」というような状況の場合は、買取業者などに売却することも検討してみましょう。

最終更新日:
不動産売却の専門家が、あなたの疑問に回答します!プロだけがお答えする信頼性の高い掲示板です。不動産お悩み相談所。質問はこちら。