あなたの不動産を売却する場合、広告などに掲載する売り出し価格を決める必要がありますが「売り出し価格の決め方がわからない」という人も多いのではないでしょうか。
売り出し価格とは、あくまで「この金額で不動産を売りたい」という売主側の希望価格であり、売買契約が成立する最終的な成約価格とは異なる点に注意しましょう。
売り出し価格を決めるコツは、不動産会社が算出した査定価格をベースにして、多くの購入希望者を集めるために、高過ぎず低過ぎない適正価格に設定することです。
この記事では、これから不動産売却をする人に向けて、売り出し価格の決め方をメインに解説していきます。
不動産会社が査定価格を算出する仕組み・3種類ある売却価格の違いもわかるので、不動産の売り出し価格で悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
不動産の売り出し価格の決め方と手順
不動産売却においては「いくらで物件を売却したいか?」を示す希望価格として、売主自身が売り出し価格を決めなければなりません。
一括査定で複数の不動産会社の査定額を比較することで売却価格の相場を把握した上で、あらためて訪問査定を申込み、より実際の売却価格に近い金額を算出してもらいます。
訪問査定で算出してもらった査定価格をベースに、値下げ交渉も視野に入れて上限価格・下限価格を定めた後、最終的な売り出し価格を決定して不動産市場に売り出しましょう。
まずは、不動産の売り出し価格の決め方を手順どおりに解説します。
①一括査定サービスで「おおまかな売却価格相場」を把握
まずは不動産一括査定サイトを利用して、おおまかな売却価格の相場を把握します。
なぜなら、不動産の売却価格は素人では予測できないので不動産会社に見積もりを出してもらいますが、価格相場を掴むには複数の査定価格を比較する必要があるからです。
具体的には、一括査定サイトにアクセスして、1分程度で済む簡単な物件情報の入力・送信をおこなうことで、平均6社以上の査定結果が最短30分程度で届きます。
いつでもどこでもインターネット上から無料査定を申し込める上、1社ずつ査定依頼するより時間・手間もかからないので、まずは一括査定を依頼するところから始めましょう。
②不動産会社に「訪問査定」を依頼し正確な売却価格を算出
一括査定でわかるのは売却価格の目安であり、実際の売却価格ではありません。
なるべく正確な売却価格を算出するには、不動産会社に訪問査定を依頼しましょう。
例えば、建物が傾いている物件は購入希望者が少なく売却価格が安くなりやすいですが、机上査定では物件の瑕疵に気付けないため査定価格に反映されないケースも多いです。
訪問査定では専門家が現地調査を実施した上で価格を算出するので、物件の状態も査定価格に反映されるため、実際の売却価格との差が生じにくいメリットがあります。
とはいえ、訪問査定には時間や手間がかかるデメリットもあるので、一括査定で条件のよい不動産会社を絞り込んでから、あらためて訪問査定を申し込むとよいでしょう。
③査定結果を加味し上限価格・下限価格を設定
訪問査定の査定結果が出たら、値下げ交渉を加味した上限価格・下限価格を設定します。
上限価格は売主が自由に決められますが、不動産会社が算出した査定価格と離れ過ぎていると、購入希望者が割高に感じて物件が売れ残る恐れがあります。
もし、不動産会社の査定価格よりも上限価格を高くしたい場合は、担当者に査定価格の算出方法や根拠を尋ねて、値上げしても問題ないかを確認しましょう。
下限価格を低く設定するほど、魅力的な物件として購入希望者が見つかりやすいので、早く不動産を売却できる可能性が高いです。
ただし、下限価格を低めに設定してしまうと、売主の得られる利益が減ってしまい、不動産売却ができても赤字になるリスクがあるため注意が必要です。
住み替え目的で不動産売却をおこなう場合、売却価格で住宅ローン残債を完済できなかったり新居の購入資金が足りなくなる恐れがあるので、下限価格は慎重に決定しましょう。
④最終的な売り出し価格を決定
上限価格・下限価格を設定したら、実際に不動産を売り出す価格を決定します。
売り出し価格は「安くてもいいから早く売りたい」や「お金が必要なので高く売りたい」といった売主の希望や事情などを加味して、売主自身が金額を決められます。
例えば、相続時の遺産分割や固定資産税の支払いなどが原因で「不動産を早く売りたい」と考えている場合、売り出し価格は査定価格よりも低い金額がおすすめです。
基本的には、購入希望者からの値下げ交渉を受けた際に下限価格での売却になるケースも視野に入れて、売り出し価格を上限価格に設定しておくとよいでしょう。
適正価格も意識して売り出し価格を決めよう
不動産の売り出し価格を決める際、高過ぎると購入希望者が集まりませんし、低過ぎても売主の得られる利益が少なく損をしてしまうので、適正価格で売りに出しましょう。
東日本不動産流通機構の調査によれば、売却活動の開始〜売買契約の締結までにかかる日数は、首都圏にある物件の場合はマンション71.5日・戸建て88.9日・土地95.9日というデータがあります。
売り出し価格が低いほど販売期間は短くなり、高く設定するほど販売期間が長期化しますが、平均日数である約3ヶ月で売却できるように適正価格で売り出すとよいでしょう。
以下に東日本不動産流通機構が調べた、首都圏におけるマンション・戸建て・土地の売り出し価格と成約価格の平均を掲載するので、売り出し価格を決める際の参考にしてみてください。
種類 | 売り出し価格 | 成約価格 |
---|---|---|
マンション | 平均3,440万円 | 平均3,547万円 |
戸建て | 平均4,213万円 | 平均3,443万円 |
土地(100~200m²) | 平均3,439万円 | 平均3,174万円 |
※2012年〜2022年の平均
※東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県にある物件の場合
首都圏以外の物件に関する成約価格については、国土交通省が提供している「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」で近隣にある類似物件の価格を調べてみてください。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」
参照:国土交通省「地価公示・地価調査・取引価格情報 | 土地総合情報システム」
売主・買主間の交渉で「売却価格」が決定されることもある
不動産売却では売り出し価格のまま売買契約が成立するとは限らず、売主・買主間の交渉で最終的な売却価格が決められるケースも少なくありません。
基本的に売主側から値上げを要求することは少なく、売り出し価格に対して購入希望者から5%〜10%程度の値下げを求められる場合が大半です。
売主は必ずしも値下げ交渉に応じる義務はないので、売主が希望した売り出し価格で売買契約が成立することもあれば、多少値下げした価格で成約するケースもあります。
このように最終的な売却価格は売主・買主間の交渉で決まりますが、売主本人が交渉に応じるとトラブルが起こりやすいので、必ず不動産会社を間に入れて交渉しましょう。
不動産の売り出し価格決めで失敗しないコツ
不動産を売り出す際、売り出し価格を高くし過ぎると売れ残ってしまいますし、売り出し価格が安過ぎても、得られる利益が少なくて損をしてしまいます。
不動産売却の売り出し価格を決める際、失敗しないコツは以下のとおりです。
- 一括査定で売却価格の相場を知り依頼すべき会社を見極める
- 売却物件の適正価格や成約価格も意識して価格を決める
- 価格交渉も念頭に値下げできる下限価格を決めておく
- マンションの場合は過去の成約価格をよく調べ把握しておく
一括査定を利用すれば、平均6社程度の査定額を一気に確認できるので、売却価格の相場を意識して売り出し価格を決めると、損をせずに適正価格で売却できます。
不動産売却時は購入希望者から値下げ交渉を受けるケースも多いので、過去の成約価格も参考にして、いくらで売り出せば売れ残らずに売却益が得られるかを考えましょう。
一括査定で売却価格の相場を知り依頼すべき会社を見極める
不動産売却で実際に媒介契約を依頼する不動産会社を選ぶ判断材料として、一括査定を利用して売却価格の相場を把握しておく必要があります。
一括査定を一度受けることで複数の不動産会社の査定額から売却価格の相場を確認できるので「この査定額は高い・安い」という適正価格を判断できるからです。
3種類ある媒介契約の種類にもよりますが、一度契約してしまうと通常3ヶ月は同じ不動産会社で売却活動をおこなわなければなりません。
契約の種類 | 解説 |
---|---|
一般媒介契約 | 複数の不動産会社に依頼できる |
専任媒介契約 | 不動産会社1社だけに依頼する |
自分で探した買主にも売却可能 | |
専属専任媒介契約 | 不動産会社1社だけに依頼する |
不動産会社の見つけた買主にしか売却できない |
営業力の低い不動産会社と媒介契約を結ぶと、いくら良い物件でも買主が見つからず、売却に時間がかかったり売れ残ってしまうリスクが高くなります。
不動産売却に1年以上もかかると、毎年の固定資産税の支払いが発生して損をしてしまうので、相場に近い査定価格を提示する不動産会社と媒介契約を結ぶようにしましょう。
むやみに高い査定価格を提示する不動産会社は避ける
一括査定で売却価格の相場を知っておくべき理由として、媒介契約を獲得する目的で著しく高い査定価格を提示してくる不動産会社が存在するからです。
査定価格の算出方法には法的なルールがなく、あくまで不動産会社の私見でしかないので、実際の売却価格とかけ離れていても特に罰則を受けることはありません。
一部の不動産会社が極端に高い査定価格を提示する場合「査定価格が高い=高く売れる」と誤認させて、売主と媒介契約を結ぼうとしている恐れがあります。
例えば、他社の平均価格が3,000万円の物件について、1社だけ査定額が5,000万円の場合、価格相場とかけ離れた極端に高い査定価格を提示されている可能性が高いです。
査定価格の高い不動産会社と媒介契約を結んでも、一向に買主が見つからず固定資産税の支払いが発生してしまうなど、結果的に査定価格の低い不動産会社を選んだ方がよいケースもあります。
売却価格の相場を把握しておけば「この査定価格は非現実的だろう」と判断できるので、一括査定で他の不動産会社の査定価格を比較しておくことをおすすめします。
売却物件の適正価格や成約価格も意識して価格を決める
不動産売却で買主を見つけるためには、売却物件の適正価格や成約価格も意識して、高過ぎず安過ぎない妥当な売り出し価格を決めましょう。
購入希望者も不動産会社を利用するため、適正価格よりも高過ぎる金額で売り出し価格に設定しても「この物件は割高である」と見抜かれて、物件が売れ残りやすいからです。
媒介契約を結んだ不動産会社の担当者に相談すれば、過去の不動産取引における類似物件の成約価格を教えてもらえたり、適正価格も予測してもらえるでしょう。
類似物件の成約価格を把握しておけば、自分の不動産も近い金額・条件で売却できる可能性が高く、売却活動の参考にもできるので一度確認することをおすすめします。
インターネットで適正価格や成約価格を調べる方法もある
インターネットを利用すれば、適正価格や成約価格を自分で調べることも可能です。
首都圏にある物件の適正価格を調べる場合、公益財団法人東日本不動産流通機構が発表している「首都圏不動産流通市場の動向」を確認しましょう。
マンション・戸建て・土地ごとに、売り出し価格と成約価格の平均値・成約価格や成約件数の前年比など、売り出し価格を決める際の参考になるデータも見れます。
種類 | 解説 |
---|---|
マンション | 売り出し価格と成約価格がほぼ同じ推移 |
戸建て | 成約価格が売り出し価格より20%ほど低い |
土地 | 成約価格が売り出し価格より10%ほど低い |
首都圏ではない物件の成約価格を調べる場合、国土交通省が提供している「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」を利用するとよいでしょう。
時期・種類・地域を選択すると、過去に取引された不動産売買の実勢価格を確認できるので、類似物件の実勢価格を調べることで適正価格の目安にできます。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」
参照:国土交通省「地価公示・地価調査・取引価格情報 | 土地総合情報システム」
価格交渉も念頭に値下げできる下限価格を決めておく
不動産売却においては、売主が高値で売りたいように安値で購入したい買主が大半なので、基本的に購入希望者から値下げ交渉を受けるものと考えておきましょう。
値引き交渉は売り出し価格から10万円単位の端数を差し引いた額が多く、売り出し価格が2,450万円の場合は50万円、売り出し価格が3,580万円の場合は80万円と予測されます。
購入希望者からの値下げ交渉に応じる場合の下限金額を決めておき、売り出し価格を下限価格よりも50~100万円高く設定しておくとよいでしょう。
値段を下げるほどインパクトがありますが、値段を下げ過ぎても売れ残り物件というイメージを与えてしまうので、まずは50万円から値下げすることをおすすめします。
マンションの場合は過去の成約価格をよく調べ把握しておく
不動産売却の中でも、マンション売却時は過去の成約価格をよく調べる必要があります。
なぜなら、公益財団法人東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向」というデータによれば、マンションは売り出し価格と成約価格の乖離率が少ないからです。
つまり、過去の不動産取引で類似物件の成約価格を調べておけば、自分のマンションも比較的近い金額で売却できる可能性が高いので、見積もりを立てやすいです。
同じマンションの別室が売却されているケースもあり、リフォームなどで差別化を図らない限り比較的近い価格で売買されるので、類似物件の成約価格は把握しておきましょう。
不動産会社による査定方法と売却価格の決め方
不動産売却で売り出し価格を決める前には不動産会社に査定価格を算出してもらいますが「どんな根拠で査定価格を決めているのか?」と疑問に感じる人も多いでしょう。
不動産の査定方法には机上査定・訪問査定の2種類があり、かかる時間・手間が異なるだけでなく、訪問査定のほうが実際の売却価格に近い査定価格を算出できます。
査定価格を決める算出方法にも取引事例比較法・原価法・収益還元法の3種類があり、それぞれ別の視点から算出をおこなうため、査定価格にも違いが生じます。
この項目では「不動産会社がどんな方法で査定価格を決めているのか?」を解説します。
不動産の査定方法は主に2種類
不動産査定には2種類の方法があり、選ぶ方法によって査定価格が多少変動します。
査定方法 | 特徴 |
---|---|
机上査定 | 実際の売却価格と乖離しやすい |
訪問査定 | 実際の売却価格に近い |
文字情報だけで査定する机上査定は査定額と実際の売却価格と差が生じやすく、不動産会社の担当者が現地調査をおこなう訪問査定のほうが実際の売却価格に近い傾向にあります。
一見すると、査定精度の高い訪問査定のほうが優れているように思えますが、現地調査のスケジュール調整が必要な上、査定結果が出るまで時間がかかるので一長一短です。
そのため、査定方法で迷った場合、先に時間のかからない机上査定で条件のよい不動産会社を厳選した後、あらためて精度の高い訪問査定を申し込む方法がおすすめです。
売却価格と乖離しやすい「机上査定」
机上査定は申込者が申告した物件情報だけで査定価格を算出するため、訪問査定よりも時間や手間はかかりませんが、実際の売却価格と査定価格に差が生まれやすいです。
机上査定のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
時間・手間がかからない | 査定の根拠や精度が曖昧 |
査定額がすぐわかる |
不動産の所在地・面積や類似物件の成約価格などの情報だけで査定額を算出するので、最短30分程度で大まかな査定結果を知れる気軽さが机上査定のメリットです。
現地調査をおこなわない都合上、建物の劣化具合・土地の凹凸といった物件の現状が反映されないので、実際の売却価格と査定額に差が生まれやすいデメリットもあります。
一言でいうと、時間や手間が少ない代わりに査定精度の低い査定方法が机上査定です。
実際の売却価格に近い「訪問査定」
訪問査定は不動産会社の担当者が現地調査をおこない査定価格を算出するので、机上査定よりも時間や手間は必要ですが、実際の売却価格に近い査定価格を予測できます。
訪問査定のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
正確な査定額がわかる | 現地調査の立会いが必要 |
査定に時間がかかる |
不動産会社の担当者が物件を直接訪問して現地調査をおこなうため、机上査定ではわからない物件の状態も価格に反映されるので、査定精度が高い点が訪問査定のメリットです。
しかし、現地調査をおこなうスケジュール調整をしなければならず、査定結果が通知されるまでに1週間程度かかるなど、机上査定より時間や手間がかかる点がデメリットです。
要約すると、時間や手間がかかる代わりに査定精度の高い査定方法が訪問査定です。
不動産鑑定による査定価格の算出方法
複数の不動産会社に査定依頼をすると、同じ物件を査定しているのに査定価格がバラバラになりますが、これは不動産会社によって査定価格の算出方法などが異なるからです。
不動産会社が査定価格を計算する場合、以下3種類の算出方法を用います。
土地やマンションの場合は取引事例法・戸建ての場合は原価法・アパートなど収益物件の場合は収益還元法で査定価格を算出するケースが多いです。
過去取引事例を参考に決める「取引事例比較法」
取引事例比較法とは「査定対象と近い条件をもつ物件が、いくらで売買されているか?」を参考にして、類似物件の成約価格から査定価格を算出する方法です。
売却したい物件と条件の近い類似物件における過去の取引事例を集めて比較する方法で、立地・築年数・面積といった条件の近い物件を集めるほど査定精度が高まります。
例えば、売りたい物件の近隣エリアに類似物件A・B・Cの取引事例がある場合、類似物件の成約価格の平均額を出してから、Aのもつ条件で調整をして査定価格を算出します。
類似物件Aの成約価格:3,000万円
類似物件Bの成約価格:3,500万円
類似物件Cの成約価格:3,200万円
取引事例比較法による査定価格
(3,000+3,500+3,200)÷3=3,233万円
上記の3,222万円をベースにして、売りたい物件にプラス要素があれば3,222万円よりも査定価格が上がり、マイナス要素があれば3,222万円よりも査定価格が下がります。
物件の原価をベースに決める「原価法」
原価法とは「査定対象と同じ物件を取得する場合、いくら必要なのか?」という観点で、土地や建物の原価から査定価格を算出する方法です。
原価法による不動産査定は、以下の手順で査定価格を算出します。
- 中古住宅の築年と構造を調査する
- 同じ物件を新築した場合の価格を調査する
- 再調達原価から老朽化などで目減りした価値を差し引く
木造・築30年・スレート屋根・モルタル壁・2階建てなど、中古住宅の築年数や構造を調べて、同じ家を新築した際にかかる材料費・人件費である再調達価格を算出します。
再調達原価をベースに、築年数などの目減りしている価値を差し引いて査定価格を算出しますが、目減り分は基本的に法定耐用年数と不動産の減価償却率を採用します。
原価法での査定は不動産鑑定士がおこなうので、すべての不動産会社が戸建ての査定を原価法で実施している訳ではなく、取引事例法で算出をしている場合も多いです。
物件の将来的な収益性で決める「収益還元法」
収益還元法とは「査定対象の物件が将来どのくらいの利益を産むか?」という発想で、収益物件の利回りから査定価格を算出する方法です。
収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。
方法 | 解説 |
---|---|
直接還元法 | 対象物件から1年間で得られる純利益を収益性で割る |
DCF法 | 対象物件が将来的に産む利益を現在の価格に変換する |
直接還元法では、対象物件で1年間に発生する収益から経費などを差し引いた純利益へ、投資額に対して1年間で得られる利益の割合を掛けた金額が査定価格となります。
DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略であり、将来的に得られる利益・将来売却する際の予想価格を現在価値に割り引いた価格の合計を査定価格とします。
不動産査定価格・売り出し価格・成約価格の違い
不動産売却では、査定価格・売り出し価格・成約価格といった複雑な専門用語が出てくるため「どの金額を示す価格なのか?」がわからない人も多いのではないでしょうか。
不動産売却における、査定価格・売り出し価格・成約価格の違いは以下のとおりです。
種類 | 解説 |
---|---|
査定価格 | 不動産会社ごとの参考価格 |
売り出し価格 | 売主が希望する売却価格 |
成約価格 | 売買契約で実際に取引された価格 |
実際の不動産売却の流れで解説すると、まず不動産会社に査定価格を算出してもらい、売主自身が売り出し価格を決めて、最終的に売主・買主間で決めた成約価格で売却します。
つまり、不動産売却における最終的な成約価格は売主と買主間の交渉によって決まるので、査定額・売り出し価格より高いケースもあれば安いケースもあります。
あくまで査定価格や売り出し価格は不動産会社の予測や売主の希望額に過ぎず、不動産売却における売却価格とは最終的に売買契約が成立した成約価格を示すことが多いです。
査定価格はあくまで不動産会社ごとの参考価格
査定価格とは、物件情報や現地調査をもとに不動産会社の担当者が予測した参考価格で、不動産会社によって金額が異なります。
不動産の種類・立地・面積などの物件情報や現地調査で状態を確認した上で、類似物件の成約価格や不動産市場の動向などを参考に売却価格を予測したものです。
- 不動産の広さ
- 不動産の間取り
- 建物の状態
- 建物の築年数
- 設備の充実度
- 土地の形状
- 土地の方角
- 物件が抱える欠陥
- 不動産の周辺環境
- 不動産市場の動向
わかりやすくいうと、不動産会社の担当者が「あなたの物件はこの程度の金額で売却できるでしょう」と予測した価格に過ぎないので、実際の売却価格とは異なります。
不動産会社によって査定価格は異なるので、1つの査定価格を鵜呑みにするのではなく、多くの不動産会社に査定依頼して複数の査定価格を比較することをおすすめします。
一括査定サイトを利用すれば、1分程度で済む物件情報の入力をおこなうだけで、複数の不動産会社の査定価格を一度に確認できるので、一度利用してみるとよいでしょう。
売り出し価格は売主が最終決定する売却希望価格
売り出し価格とは、物件を売り出す際に「いくらで売却したい」と売主側の希望価格として提示する金額です。
売り出し価格は不動産を売り出す際における売主側の希望価格なので、購入希望者の提示した金額が売り出し価格に届かない場合は取引を断ることも可能です。
売り出し価格は売主が希望する売却価格であり、購入希望者との価格交渉のベースとなるので、以下の要素を考慮した上で売主の裁量で決定されます。
- 売却する目的や状況
- 競合物件の価格
例えば、相続における遺産分割のせいで急いで売却したい場合や、競合物件がより低い価格で売りに出ている場合など、当初より売り出し価格を下げることもあります。
不動産市場の動向や競合物件の価格も参考にしながら、購入希望者の関心を引くような売り出し価格を設定することが、不動産をスムーズに売却するコツです。
成約価格は売買契約で実際に取引された価格
成約価格とは、実際に売買契約を結んで取引された価格で、売主・買主間で話し合って決定される最終的な売却価格です。
成約価格は実際に売買契約が成立した際の最終的な物件の価格で、売主と買主の話し合いで合意した金額で契約書が交わされることで確定します。
売主側が希望する売り出し価格をベースにして、買主側の予算といった事情も加味した上で、売主と買主がお互いに納得する妥協点を探して成約価格を決めます。
価格交渉では買主から値下げを求められるケースが多く、大幅な値下げに応じてしまうと不動産を売却できても、売主の得られる利益が少なくなってしまう点に注意しましょう。
取引価格から仲介手数料などの経費を差し引いた金額が売主の利益となるので「最低でもいくらで売却したい」という下限価格を決めておくことをおすすめします。
売り出し価格を適正に決めるなら不動産会社に依頼相談しよう
不動産売却では、物件が売れるまでのスピード・最終的な成約価格にも影響するため、適正な売り出し価格を決めることが大切です。
なぜなら、売り出し価格が高いと購入希望者が集まらずに物件が売れ残ってしまいますし、売り出し価格が安くても売主の得られる利益が少なくなるので損をするからです。
適正な売り出し価格を決めるには、不動産会社に査定価格を算出してもらい、購入希望者からの値下げ交渉も想定して、上限価格・下限価格を幅広く定めておきましょう。
売り出し価格を決める際は、不動産市場の動向や類似物件の成約価格も参考になるので、無料査定を利用して不動産会社の担当者からアドバイスを受けることをおすすめします。