不動産投資家に宅建は必要か?学習メリットや注意点を解説

不動産投資 宅建

宅建は不動産業界では重要な資格なので「不動産投資を始めるなら、宅建をとるべきなのか?」と考える人もいるでしょう。

結論からいうと、不動産投資に宅建の資格は必要ありませんが、法律や税金に関する専門知識を学べるため、宅建を取ることで有利になります。

とはいえ、宅建を取るには時間や費用がかかるので、メリットやコストパフォーマンスを考慮した上で「余裕があれば取得する」程度の認識でよいでしょう。

この記事では、宅建の基本情報はもちろん、不動産投資家が宅建を学習するメリットや注意点も解説します。

「どんな不動産投資家が宅建を勉強するべきか?」もわかるので、宅建取得を目指している人だけでなく検討段階の人もぜひ参考にしてみてください。

宅建(宅地建物取引士)がなくても不動産投資は可能

先述したとおり、不動産投資に資格や免許は必要ないので、宅建がない人でも不動産投資は始められます。

入居者募集は不動産会社に、登記などの法律行為は司法書士に、建物の施工は建設会社に、といったように、不動産投資に関わる大抵の実務は専門家に任せられます。

実際に、成功している不動産投資家でも宅建を取得している人は少なく、宅建を持っていなくても不動産投資で特に困ることはありません。

宅建があれば不動産投資において有利なのは事実ですが、資格の有無が重要視される機会は少なく、あくまで資格取得のために学習した知識が役立つだけです。

宅建を取るには宅建試験に合格する必要があり、試験勉強に手間や時間もかかるので、まずは不動産投資を始めてみて、必要性を感じる人だけ取得すれば大丈夫です。

宅建とは

これから不動産投資を始める初心者のなかには「宅建という名前は聞いたことがあるが、どんな資格かは知らない」という人も多いのではないでしょうか。

宅建とは、不動産取引を公正におこなう目的で作られた国家資格「宅地建物取引士」の略称で、一言でいうと不動産取引のスペシャリストです。

宅建の資格を取得するには、国家試験に合格する必要があり、不動産の権利関係や法令上の制限などを勉強しなければなりません。

この項目では、宅建の基本情報や試験概要などをわかりやすく解説します。

宅建の基本情報

先述したとおり、宅建とは「宅地建物取引士」の略称で、宅地建物取引業法で定められた不動産取引の専門性を示す国家資格です。

宅建を取得すると、以下3つの独占業務をおこなえるようになります。

  • 物件に関する重要事項の説明
  • 重要事項説明書への記名・押印
  • 契約書(37条書面)への記名・押印

上記の独占業務は、宅建の資格を所持している人だけに認められており、資格をもたない人が独占業務をおこなうと法律違反となります。

そのため「不動産会社は従業員5人に対して1人以上は宅建士を在籍させなければならない」と宅地建物取引業法で定められています。

逆をいえば、従業員5人のうち1人が宅建を取得していれば法律上問題ないので、不動産会社の社員でも宅建を取得していない人は多いです。

不動産投資においては、宅建取引士の独占業務を投資家自身がおこなう必要はなく、必要な場合は不動産会社に任せればよいので宅建の資格は不要です。

例えば、賃貸物件の大家として第三者に建物を貸す行為は「不動産賃貸業」に該当するため、宅建の資格がなくてもおこなえます。

他にも、所有する不動産を売る場合でも、不動産会社に仲介を依頼すれば担当者が重要事項説明をおこなうので、投資家が宅建の資格を取る必要はありません。

参照:e-govポータル「宅地建物取引業法第31条の3」

宅地建物取引業と不動産業の違い

宅地建物取引業とは、宅地の取引を不特定多数に対して反復継続的におこなう職業で、宅地と建物の売買・交換・貸借の取引に関する業務です。

不動産業とは、不動産に関わる取引全般を扱う職業で、マンション管理や入居者対応・マンション管理業者の監督に関する事務などを広くおこないます。

宅地建物取引業は不動産業の一部であり、不動産の売買や貸借契約をおこなう際に重要な情報を説明するために、専門知識が必要とされます。

そのため、宅建建物取引士の資格が必要です。

宅建の試験概要

宅建の試験概要は以下のとおりです。

項目 解説
受験資格 年齢・性別・学歴・実務経験に関係なく誰でも受験可能
願書配布 7月上旬
願書受付 郵送:配布日から7月下旬まで
インターネット:配布日から7月中旬まで
受験費用 8,200円
試験時期 毎年10月第3日曜日の13時~15時
合格発表時期 11月下旬~12月上旬
科目別出題数 ・権利関係:14問
・宅建業法:20問
・法令上の制限:8問
・税、価格の評定:3問
・5問免除対象科目:5問
試験の形式 4択の回答方式
問い合わせ先 一般社団法人 不動産適正取引推進機構 試験部
〒:105-0001 東京都港区虎ノ門3-8-21 第33森ビル3階
https://www.retio.or.jp/


※期日や受験費用はあくまで予定です。

宅建試験は四肢択一のマークシート式で、記述式の問題はなく1問1点で計50問あります。

出題科目は「宅建業法」「権利関係(民法など)」「法令上の制限」「税・その他」の大きく分けて4科目です。

出題科目 解説
宅建業法 重要事項の説明・免許の効力・クーリングオフなど
権利関係(民法など) 民法・借地借家法・不動産登記法・区分所有法など
法令上の制限 都市計画法・建築基準法・土地区画整理法・農地法など
税・その他 固定資産税・登録免許税など

宅建試験は受験資格の制限がなく、学歴・性別・年齢・国籍などに関係なく誰でも受験できます。

宅建試験は年に1度しか実施されず、試験日は例年10月の第3日曜日で、7月上旬〜中旬の募集期間内に受験を申し込む必要があります。

申込み方法はインターネット・郵送の2種類ありますが、24時間利用できるインターネット申込みがおすすめです。

参照:不動産適正取引推進機構「令和5年度宅地建物取引士資格試験について」

宅建の受験データ

宅建の受験データは以下のとおりです。

項目 解説
受験者数 23万4714人(2021年度のデータ)
学習時間 平均250時間程度(独学の場合)
問題数 50問
合格ライン 31〜38点(正答率70%以上)
合格率 13%〜18%程度(2012年〜2022年のデータ)


※上記データはあくまで目安です。

宅建受験者の学習時間は独学の場合で平均250時間程度といわれており、毎日2時間ずつ勉強するとして4ヶ月かかる計算です。

宅建の試験時期は毎年10月なので、普段の仕事と平行して勉強する人なら、遅くても6月頃には学習を始める必要があるでしょう。

ただし、宅建受験者の学習時間が平均250時間というデータはあくまで平均値なので、前提知識の有無によって学習時間は100時間~500時間程度と個人差があります。

宅建の合格率は13%〜18%程度で、受験者の5人中4人は不合格となる計算なので、決して簡単に取得できる資格ではなく、合格まで数年かかるケースもあるため注意しましょう。

不動産投資家でも宅建が必要なケース

宅地建物取引業法では、宅建資格を持たない者が宅地建物取引業をおこなうことを禁止しているため、以下のケースでは不動産投資でも宅建資格が必要となります。

  • 反復継続性・事業性がある不動産売買
  • 他人の不動産売買や賃借の仲介

不特定多数を相手にして、短期間に不動産の購入・売却を繰り返している場合、取引の反復継続性があるとして、宅建資格が必要となる可能性が高いです。

他人がもつ不動産の売買や賃貸を仲介する行為も宅地建物取引業に該当するため、宅建資格が必要になります。

自分の不動産を一括で売却するケースや自分の物件を他人に貸し出すケースは、反復継続性や事業性が低いと判断されるため、宅建資格がなくても問題ありません。

反復継続性や事業性のある不動産売買をおこなう場合、自分で宅建の資格を取るか、宅建士を雇って宅建業免許を取得する必要があるため注意しましょう。

物件タイプ 自分の物件 他人の物件(代理) 他人の物件(媒介)
売買 必要 必要 必要
交換 必要 必要 必要
賃借 不要 必要 必要

不動産投資家が宅建を勉強するメリット

宅建がなくても不動産投資は可能ですが、宅建を学ぶことで次のメリットが得られます。

宅建取得のために不動産に関わる法律や権利などを学べば、売買契約や賃貸借契約の内容を正しく理解できるため、不動産投資で失敗するリスクを減らせます。

宅建の資格は不動産関係の法律や権利の知識をもつ証拠となるため、不動産投資における交渉の場や不動産業界への転職・起業時に活かせる点もメリットです。

この項目では、不動産投資家が宅建を勉強するメリットを解説します。

法的知識を習得することで失敗が減る

宅建の学習をすることで、不動産に関わる法律や権利関係・法令上の制限などの知識が得られるので、判断力が高くなり不動産投資における失敗を減らせます。

なぜなら、不動産売買時の売買契約書や賃貸経営時の賃貸借契約書はもちろん、両方のケースで必要となる重要事項説明書の内容を理解できるからです。

契約内容をみて「目の前に提示された条件が自分に有利なのか?」を判断できるため、自分に不利な取引を避けられるようになります。

土地や建物の法規制に関する知識も得られるので、既存不適格物件や再建築不可物件といったデメリットの多い違法建築物件の購入も避けられます。

交渉の場で活きることがある

宅建の資格を取得すれば社会的評価が上がるため、不動産会社や金融機関などと交渉をおこなう際に有利に働く可能性もあります。

例えば、不動産投資ローンの融資を受ける際も「宅建の知識があれば不動産投資で失敗しにくい」と判断されるため、審査に通過しやすくなることもあります。。

不動産投資をする上では、物件の売主・買主・借主はもちろん、取引を仲介する不動産会社・融資を受ける金融機関など、さまざまな相手との交渉が必要です。

宅建の資格があれば、取引相手から素人と思われにくいため、知識や情報に乏しい初心者を狙った悪意ある売主や不動産会社を避けられます。

不動産売却時にも「売主が宅建所有者なら、法令に遵守した建物である」と取引相手からの信用度が上がるので、交渉で有利に働く可能性も高いです。

宅建の資格がない人よりも不動産関連の知識に長けていることをスムーズに証明できるため、取引相手の信頼を得やすく交渉を有利に進められるでしょう。

不動産業界への転職や起業ができる

不動産投資だけでなく、反復継続性・事業性がある不動産売買をおこなう場合、宅建の資格があれば不動産業界への転職や起業ができます。

例えば、宅建の資格があれば宅地建物取引業を開業できるので、自ら不動産を売買する際に仲介手数料を支払う必要がなくなります。

前述したとおり、不動産会社の従業員でも宅建を取得している人は多くないため、宅建の資格があれば不動産業界への転職もしやすくなります。

他人の不動産売却を仲介して手数料を得たり、専門家としてライターやコンサルタント業務をおこなうなど、収入を得るための選択肢を増やせます。

宅建は一度取得すると一生有効となる資格で、将来的に不動産会社を立ち上げたり転職したりする時にも有利なので、キャリアの選択肢を広げたい人におすすめです。

不動産投資家が宅建を勉強する際の注意点

不動産投資家が宅建を勉強する際、以下の点に注意しましょう。

最大の注意点は、宅建では不動産に関わる法律などを学びますが、投資に関しては一切学べないため、不動産投資の成果に直結する可能性は低いということです。

加えて、宅建の資格を取得するには時間や費用がかかる上、合格率が低いので必ずしも時間や費用に見合う成果が得られるとは限りません。

この項目では、不動産投資家が宅建を勉強する際の注意点を解説します。

宅建は不動産投資を学べるものではない

宅建では不動産に関わる法律などを学びますが、収益の出やすい物件の選び方や損切りのタイミングなど、不動産投資そのものを学べるわけではありません。

あくまで宅地建物の売買・交換・賃貸の媒介などに関する知識を学ぶだけで、投資に関する知識が得られるわけではないので、宅建を学んでも不動産投資には直結しません。

もちろん宅建の資格があるに越したことはないですが、投資初心者が宅建を学ぶ必要はなく、先に不動産投資の知識や経験を積むべきでしょう。

投資初心者の場合、宅建の勉強に時間を費やすのではなく、不動産投資の書籍やコラムを読んだり、銀行や不動産会社と交流したりするほうが効果的です。

積極的に売買しないなら優先度が低い

不動産会社のように反復継続的な不動産売買をしない場合、原則として宅建の資格は必要ないので、不動産投資家が宅建を勉強するメリットは少ないでしょう。

宅建の資格が必要となるのは、反復継続性・事業性がある不動産売買や、他人の不動産売買や賃借を仲介するケースだけです。

例えば、短期間に不動産の購入や売却を繰り返す場合は宅建の資格が要りますが、家賃収入を目的に収益物件を保有する程度であれば宅建の資格は不要です。

将来的に不動産会社を経営するなど、本格的に不動産ビジネスをおこなう予定がなければ宅建の資格は必要ないので、無理に資格を取得しなくてもよいでしょう。

時間をかけても合格できる可能性は低い

宅建の資格を取るには膨大な勉強時間が必要な上、必ずしも合格できるとは限らないので、勉強しても時間対効果に見合わないリスクがあります。

前述したように、宅建の学習は100時間~500時間程度かかります。

不動産投資をしながらこれほどの時間を捻出するのは難しい人が多いはずです。

仮に勉強時間のある人でも、宅建試験の合格率は13〜18%程度で5人中4人は不合格となる計算なので、試験に落ちると時間が無駄になるリスクもあります。

不動産投資で大切なのは、知識を増やすことではなく投資を成功させることなので、手段と目的が逆にならないように注意しましょう。

試験に合格してもすぐ免許発行されるわけではない

宅建試験に合格しても、実務経験または講習を受ける必要があるため、すぐに免許が発行されて独占業務がおこなえるわけではありません。

宅地建物取引士として働くには、資格取得後に登録申請をおこない、宅建士証明の交付を受ける必要がありますが、実務経験の有無によって免許交付の流れが異なります。

項目 解説
宅建業の実務経験が2年以上ある場合 すぐに登録申請ができる
宅建業の実務経験が2年以上ない場合 登録実務講習が必要

宅建業の実務経験が2年以上ある人はすぐに宅建士の登録申請ができますが、宅建業の実務経験が2年以上ない人は約1ヶ月間の通信講座と2日間の座学が必要です。

それぞれのケースについて、順番に解説します。

宅建業の実務経験が2年以上ある場合

宅建業の実務経験が2年以上ある場合、実務経験の証明書類を会社に発行してもらった後、すぐに宅建士の登録申請ができます。

ただし、単に不動産会社で働いているだけで実務経験が認められるわけではなく、人事や経理などの一般的な管理業務は実務経験に含まれない点に注意が必要です。

宅地建物取引業の実務経験として認められる業務は、以下のとおりです。

  • 契約書の作成
  • 物件の内見
  • 重要事項以外の説明
  • 不動産の決済時の立会いなど

上記の業務を最低1種類でもおこなっていれば、宅建士の業務を遂行する能力があると認められるため、登録実務講習をパスできます。

参照:東京都住宅政策本部「宅地建物取引士資格登録申請 実務経験、登録実務講習」

宅建業の実務経験が2年以上ない場合

宅建業の実務経験が2年以上ない場合、約1ヶ月間の登録実務講習を修了しなければ、宅建士の登録申請ができません。

宅建登録実務講習は国土交通省が指定する不動産流通センターや資格予備校などで実施しており、全国各地で受講できます。

実施機関によって異なりますが、登録実務講習の受講料は2万2,000円の場合が多いです。

宅建登録実務講習は約1ヶ月の通信講座と2日間の座学で構成されています。

  1. 通信講座(約1か月)
  2. スクーリング(1日または2日間)
  3. 修了試験(1時間)

宅建登録実務講習は郵送やオンラインで申込み可能で、申込完了後にテキストやDVDなどの教材が自宅に郵送されるので、教材を用いて約1ヶ月間の自宅学習をおこないます。

宅建登録実務講習では、宅建試験では学習しなかった分野を学ぶため、より宅地建物取引業における実務に役立つ知識が得られます。

その後、実施期間でスクーリングを受講して修了試験に合格する必要がありますが、合格率は90%以上といわれているので、宅建試験に比べると難易度は低いでしょう。

宅建試験の合格は有効期限がないですが、登録実務講習の修了証は有効期限が10年とされており、過去10年以内に2年以上の実務経験がないと再度受講が必要になります。

どんな不動産投資家が宅建を勉強するべきか

不動産投資家が宅建を勉強するべきケースは以下のとおりです。

前提条件として、宅建の勉強に時間と労力を割ける人でなければ、不動産投資家が宅建を勉強することはおすすめしません。

加えて、不動産投資家が優先的に学ぶべきことは投資に関する知識なので、不動産投資を理解した上で時間と体力に余裕がある人のみ宅建を勉強しましょう。

この項目では、不動産投資家が宅建を勉強するべきケースを解説します。

宅建の勉強に時間と労力をかけられる

宅建の勉強に時間と労力をかけられる人は、不動産に関する知識を増やすために宅建を勉強するのもよいでしょう。

先述のとおり、宅建の学習には独学で平均250時間ほど必要なので、毎日2時間ずつの勉強を約4ヶ月続けられる人でなければ宅建試験の合格はむずかしいでしょう。

ただし、宅建試験の合格率は13〜18%程度といわれており、時間をかけても合格できるとは限らないため、時間対効果が低いケースもあるため注意が必要です。

勉強時間のせいで本業や不動産投資がおろそかになっては本末転倒ですが、時間と労力に余裕がある人は宅建の勉強をすることをおすすめします。

不動産投資リスクについて自分で判断したい

不動産投資リスクについて自分で判断したい人は、宅建を勉強して不動産の知識を身につけるとよいでしょう。

なぜなら、法令上の制限や建物の構造といった不動産の知識を覚えれば、契約内容をより深く理解できるため、自分に不利な契約を事前に察知できるからです。

宅建の学習で得た知識があれば、自分に不利な契約内容や問題を抱えている物件も見分けられるので、不動産投資で失敗するリスクを下げられます。

不動産売買の手続き自体は不動産会社に仲介してもらえば問題ないですが、不動産投資のリスクを自分で判断したい人は宅建について学ぶことをおすすめします。

すでに不動産投資の知識と経験がある

すでに不動産投資の知識と経験がある人は、ビジネスをより安定させるために宅建を勉強するのもおすすめです。

なぜなら、不動産投資家が最初に学ぶべきことは投資自体の知識ですが、既に不動産投資の経験がある場合、勉強時間を宅建資格取得に充てる方が効果的だからです。

不動産投資に関しては、学ぶだけでなく経験を積むことも非常に重要です。

そのため、すでに一定の不動産投資の知識を持つ人がさらに勉強をしても、成長の余地は限られています。

不動産投資に詳しい人であれば、宅建を学ぶことで不動産に関する知識を増やすだけでなく、自分で不動産の売買を行う能力も身につけられるため、ビジネスをより安定させることができます。

継続的に売買益の増加を検討している

継続的に売買益の増加を検討している人は、個人で不動産売買をおこなうために宅建を取得するとよいでしょう。

なぜなら、宅建の資格を取れば、仲介業者を挟まずに自分で不動産売買を直接おこなえるため、不動産会社に仲介手数料を払わずに済むからです。

売買益を増やすために不動産売買を繰り返す投資家も多いですが、反復継続性・事業性がある不動産売買を個人でおこなう場合は宅建の資格が必要です。

例えば、不動産の売買を毎月10件も繰り返している場合は、宅地建物取引業と見なされるため、不動産投資家でも宅建の資格が必要になります。

今度、不動産売買を本格的におこなって売買益を獲得したい人は、仲介手数料といったコストを節約するためにも宅建を取得するとよいでしょう。

宅建の学習方法

宅建の資格取得を目指す場合、以下3種類の学習方法があります。

学習方法 金銭面の負担 時間的な負担 学習効果
独学 1万円程度 負担が少ない 効果は少ない
スクール(資格学校) 10万円超 負担が大きい 効果が期待できる
通信教育 10万円以下 負担が少ない 効果が期待できる

宅建は時間をかければ独学でも合格できますが、短期間で確実に合格を目指したい人は資格学校に通う方法をおすすめします。

とはいえ、資格学校で宅建を学ぶ場合は通学時間や授業料がかかるため、まとまった時間や費用を確保できない人には独学や通信教育がおすすめです。

独学と通信教育で悩んだ場合、費用を抑えたい人は独学で問題ないですが、独学ではモチベーションを維持できない人は通信教育を選ぶとよいでしょう。

この項目では、3種類ある宅建の学習方法を解説します。

独学

お金をかけず宅建に合格したい場合、独学が1番向いているでしょう。

3種類の学習方法のなかで金銭的・時間的な負担がもっとも少なく、テキスト・過去問題集・予想問題集をすべて購入しても教材費は1万円程度で済みます。

自分の好きな時間・場所で学べるので、仕事が忙しい社会人でも時間の融通が効きやすい反面、自己管理が必要かつノウハウも習得しにくいため合格できる確率は低いです。

自発的に学習できる人でなければ成果が出にくいですが、学生時代に自分から勉強を進められていた人であれば、独学が1番コストパフォーマンスのよい方法といえます。

スクール(資格学校)

宅建試験の合格率を高めたい人には、資格学校に通う方法がおすすめです。

資格学校は授業時間が決められていて通学の手間がある上、料金相場が高いなどのデメリットはありますが、3種類の学習方法のなかでは1番学習効果が期待できます。

教室で授業をおこなうため勉強に集中できますし、講師から直接ノウハウを教わったり、他の受講生の存在がモチベーション維持に繋がるメリットは大きいです。

宅建試験のために資格学校へ通う場合、一定要件を満たせば教育訓練給付制度で受講料の一部が支給されるので、ハローワークで受給資格の有無を確認するとよいでしょう。

参照:厚生労働省「雇用・労働教育訓練給付制度」

通信教育

3種類の学習方法で迷う場合、費用・時間的にバランスのよい通信教育がよいでしょう。

通信教育は通学する必要がないので、自分の好きな時間と場所で学べる独学のメリットがあります。

また、独学よりも勉強のモチベーションを維持しやすい点も魅力です。

プロが作成したカリキュラムと教材で学習するので、独学に比べて学習が滞りにくい上、内容がわからない場合は講師に質問できる通信教育もあります。

通信教育の勉強にかかる費用は独学より高額ですが、基本的には資格学校よりは価格が安いケースが多いので、金銭的負担を抑えたい人にも適しています。

独学と資格学校のいいとこ取りともいえるので「資格学校に通う時間やお金はないけれど、独学だと合格できるか心配」という人には、通信教育がおすすめです。

宅建(宅地建物取引士)以外の不動産投資に役立つ資格

不動産投資に役立つ資格には、宅建以外にも以下のような種類があります。

上記の資格はいずれも不動産投資で役立つものですが、宅建と同じく資格がなくても不動産投資はできますし、不動産投資家であっても資格をもつ人は少ないです。

不動産投資で必要な場面が発生しても、それぞれの専門家に依頼できます。

したがって、自分の人生設計において必要性を感じる人のみ学習すればよいでしょう。

この項目では、宅建以外の不動産投資に役立つ資格を紹介します。

不動産実務検定(大家検定)

不動産実務検定(大家検定)とは、賃貸経営に精通していることを示す民間資格です。

不動産に関わる法律知識はもちろん、空室対策・家賃の滞納問題への対処法など、賃貸経営における実践的な知識を網羅的に学べる資格で、1級・2級の2種類があります。

年齢・学歴に関係なく受験可能で、不動産実務検定の合格率は2級で60%程度・1級が40%程度といわれており、宅建に比べると取得しやすい資格です。

宅建は宅地建物取引業に関する法律を幅広く学びますが、不動産実務検定はアパート・マンション経営に役立つ知識だけを学べるので、賃貸経営をおこなう人におすすめです。

参照:一般財団法人日本不動産コミュニティー「不動産実務検定」

不動産鑑定士

不動産鑑定士とは、土地や建物の正確な経済的価値を鑑定できる国家資格です。

不動産の鑑定評価は法律で不動産鑑定士の独占業務と定められており、国や自治体が公表している公示地価や都道府県地価評価なども不動産鑑定士が算出しています。

不動産鑑定士になるには、短答式試験と論文式試験に合格しなければならず、例年の合格率は短答式試験が32%前後・論文式試験が14%前後といわれています。

不動産関係の資格のなかでは難易度が高いですが、取得すれば国や民間から鑑定評価を依頼されるなど活躍の場が広がるため、将来性の高い資格です。

不動産投資においては、取引する物件の経済的価値を正しく判断できるので、不動産売買をおこなう投資家におすすめの資格です。

参照:国土交通省「不動産鑑定士試験」
参照:e-govポータル「不動産の鑑定評価に関する法律」

マンション管理士

マンション管理士とは、マンションの維持管理に必要な専門知識をもつ国家資格です。

マンションに関する法律や建物構造上の技術的問題などに精通しており、管理組合に対して維持管理に関するアドバイスをおこなうコンサルタントが主な業務です。

マンション管理士になるには、マンション管理士試験に合格しなければならず、合格率は毎年8〜9%前後で推移しており、宅建より難易度が高い資格といえます。

所有するマンションでトラブルが起きても自分で解決する知識が得られるため、マンション経営をしている不動産投資家におすすめの資格です。

参照:公益財団法人マンション管理センター「マンション管理士試験」

賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産経営管理士とは、賃貸物件の管理や運営に精通した国家資格です。

マンションやアパートといった賃貸物件において、賃貸借契約後に必要な設備の維持・点検や住民間のトラブル対応などをおこないます。

賃貸不動産経営管理士になるには、賃貸不動産経営管理士試験に合格する必要があります。

合格率は30%程度で推移しているため、宅建より難易度は低い資格といえます。

賃貸住宅管理業をおこなう際に必要な業務管理者となれるため、賃貸経営だけでなく賃貸住宅の管理まで自分でおこないたい不動産投資家におすすめの資格です。

参照:賃貸不動産経営管理士協議会「賃貸不動産経営管理士(賃貸不動産における専門家の資格)」

ホームインスペクター(住宅診断士)

ホームインスペクター(住宅診断士)とは、建物の劣化や欠陥の診断に精通している民間資格です。

素人にはわかりにくい建物の傾き・雨漏り・シロアリ被害など、建物の劣化や欠陥の有無を診断して、修繕の必要箇所や費用などを見極めるための知識をもっています。

ホームインスペクターになるには資格試験に合格する必要があります。

実施する年によりますが、合格率は30〜40%程度なので、宅建より難易度は低い資格といえます。

不動産投資においては、修繕箇所や費用を把握して物件の適正価値を判断できるので、不動産売買をする人・賃貸経営をする人どちらにもおすすめの資格です。

参照:日本ホームインスペクターズ協会「ホームインスペクター(住宅診断士)になるには」

FP(ファイナンシャルプランナー)

FP(ファイナンシャルプランナー)とは、税金・金融・不動産といったお金に関する知識をもつ専門家です。

FPの資格には、国家資格である「FP技能士」と民間資格である「AFP」と「CFP®」の3種類があり、FP技能士の場合は難易度ごとに3級・2級・1級に分けられます。

FP技能士3級であれば誰でも受験できる上、合格率は約70〜80%程度なので、宅建より難易度は低く国家資格の中でも取得しやすい資格といえます。

FP資格の学習では、不動産に関わる法制度に加えてキャッシュフローなど投資に関する知識も得られるため、不動産投資家にもっとも適している資格です。

参照:日本FP協会「ファイナンシャル・プランナー(FP)とは」

まとめ

不動産投資そのものに宅建は要りません。

宅建の資格を取得するには費用や時間がかかるため、コストパフォーマンスを考えて学習しましょう。

個人で不動産売買を頻繁におこなう人なら、宅建を取れば不動産会社に仲介を依頼する必要がなくなり、仲介手数料などのコストを削減できるのでおすすめです。

一方、賃貸物件の経営をおこなうだけで不動産売買を頻繁におこなわない人であれば、宅建を取得するメリットが少ないので、そのままでも不動産投資に支障はありません。

不動産投資家でも宅建を持っている人は少ないように、わざわざ宅建を取る必要はなく、専門的な業務や知識が必要な際は不動産投資会社に相談すれば大丈夫です。

最終更新日:
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