不動産投資は、オーナーが稼働することの少ないビジネスのようで、基礎的な知識を押さえないと失敗する例も数多くあります。
逆に、以下に書かれていることに注意すれば、成功・規模拡大の道が拓けるとも言えます。
本記事では不動産投資に不慣れな方に向けて、不動産投資に失敗する5つの原因と対策、失敗する人の共通点3つの類型を通じて、うまくいく不動産投資のコツをお伝えします。
不動産投資に失敗する原因5つ
まず不動産投資に失敗するおもな点ですが、事前の知識不足や見込み違いで起きる5つの原因をご紹介します。
- 表面利回りのみで判断してしまった
- 都合のいい言葉に惑わされた
- 投資目的に合ってない物件を買ってしまった
- 節税のためだけに物件を買ってしまった
- 返済額の設定が高すぎた
1.表面利回りのみで判断してしまった
一般的に、公表される投資物件情報に記載される利回りは「表面利回り」と言い、以下で表します。
この数字が高いほど早く利益が出せるのには違いありませんが、表面利回りの計算の中には、かかる経費や税金が含まれていません。
また、運用中にはほぼ必ず空室期間が生まれることも見落としてはいけません。
よって、諸々の支出も勘定にいれた「実質利回り」、さらには空室もある程度生じる見立てでシミュレーションしないと、正確な収益の見通しは立てられません。
では、どのような諸費用を検討しなければならないのか、具体的には以下の通りです。
分類 | 内容 |
---|---|
租税公課 (税金関連) |
●所得税 経費計上不可 ●住民税 経費計上不可 ●固定資産税 ●都市計画税 ●個人事業税 (一定の事業規模を超え、不動産貸付業と認定された場合) |
手数料 | ●管理委託手数料 (不動産管理会社に支払う) ●広告費 (空室募集の際の経費) |
建物の償却 | ●減価償却費 (実際には支払いなし。なくなると所得税が増える) |
借り入れ | ●頭金(自己資金) ●ローン返済元金 経費計上不可 ●ローン金利 |
修繕関連 | ●修繕費 ●リフォーム費用 ●修繕積立金 |
保険料 | ●火災・地震のための損害保険料 |
代理の依頼など | ●税理士・弁護士への報酬 (会計業務や訴訟などで支払う) |
その他 | ●交通費 ●新聞・書籍代 ●セミナー参加費 ●パソコン代 ●通信費 |
年間収入に対する一般的な経費率の目安は、15~20%程度といわれますので、この時点で表面利回りの8割程度が実質的な利回りになり、また空室を考えると、おおよそ表面利回りの5割程度ででシミュレーションするのがよろしいかと思います。
ただし、上記はあくまで目安であり、築年数やローンの残債などの要素によって変動する点に注意が必要です。
この他に、購入時の物件価格以外に以下の初期費用がかかるため、それも利回り計算の一環となります。
分類 | 内容 |
---|---|
物件仲介 | ●不動産仲介手数料 経費計上不可 (不動産会社へ支払う) |
租税公課 (税金関連) |
●登録免許税 ●印紙税 ●不動産取得税 |
所有権移転 | ●司法書士報酬 (所有権移転などの登記で発生) ●売り主からの清算金 経費計上不可 (固定資産税・都市計画税など) |
借入れ | ●ローン事務手数料 ●ローン保証料 ●団体信用生命保険料 経費計上不可 |
保険料 | ●火災・地震のための損害保険料 |
購入前に、諸費用を含んだなるべく具体的な実質利回りを算出するほか、後述する空室や滞納、大規模な修繕など、様々なリスクに備えた資金力や内部留保の蓄えを進めましょう。
2.都合のいい言葉に惑わされた
投資物件を選ぶ際に「掘り出し物件」「なかなか出ない物件」「高利回り」「早い者勝ち」など、甘い言葉に惑わされて買い急いでしまった結果、実は収支の良くない物件であるケースがあります。
瑕疵物件や需要が低い地域など経営の難しい、買うべきでない物件を掴んでしまわないよう、注意が必要です。
物件によほど大きな問題がある場合、売主の契約不適合責任を問う訴えをすることになりますが、やはり時間とお金の無駄が生じます。
本当にお買い得な物件がないわけではありませんが、基本的には安い物件には安い理由があり、その理由を把握して克服できるメドがなくては、購入はNGです。
3.投資目的に合ってない物件を買ってしまった
不動産投資は単に収益事業というだけでなく、老後資金・投機・節税・相続対策などの目的によって、選ぶ物件や経営の仕方に方向性の違いがあります。
目的に合わない物件を取得すると、十分にメリットを享受できず、以下のように失敗となってしまうケースがあります。
年金対策なのに、賃貸条件の悪い物件を買う
老後2,000万円問題でリタイヤ後の生活資金不足が言われる中、家賃収入で生活費を補っていくための不動産投資が増えています。
ここで要注意なのは、手元の資金の持ち出しや借り入れを低く抑えたいと考えるあまりに、賃貸条件の悪い物件を買うことです。
年金対策の物件は、毎月の生活費を補うインカムゲインを着実に生んでくれるのが理想ですが、賃貸条件の悪い物件は、空室リスクに目をつぶってしまいがちで、収支が悪化しやすいです。
(用語解説:インカムゲインとは?)
資産を保有していることで得られる収入のことです。不動産投資の場合は家賃収入やそれに付随する入金を指します。
高収入を狙えなくとも、確実にお部屋の埋まる物件を探すのが正解ではないでしょうか。
売却目的なのに、地価が上がりづらい地方の物件を買う
売却の差益、いわゆるキャピタルゲインを目的とした不動産投資を、上向きの値動きの少ない地方で行う場合は、注意が必要です。
(用語解説:キャピタルゲインとは?)
資産を売却することによって得られる売買差益(譲渡益)のことです。不動産投資の場合は物件を売却した際の販売価格から、購入価格や諸経費を差し引いて出た利益を指します。
立地の良い物件は値下がりはしにくいのですが、上昇に転ずるかどうかは経済の動向しだいで、現在値上がり傾向だと言っても、売る際にそれが持続しているとは限りません。
売却した差益を念頭に物件を購入する場合は、値上がりの予想される物件を買わなければ意味がないことになります。
値上がりの見込みづらい地方で売却益目的の物件を買うなら少なくとも、安く買って高く売るために物件のエリアの今後の区画整理、道路、鉄道、大規模生活施設などの開発予定を調査しておきましょう。
また、賃貸用途の物件を売却した際の売却益にかかる譲渡所得税・住民税は、居住用のような控除の特例がありませんので、注意してください。
所有期間が5年を超えると長期譲渡扱いとなって所得税率が下がる点は居住用物件と同じなので、事前に購入後5年を超えてから売却することを想定します。
節税目的なのに新築や築浅アパートを一棟買いする
節税目的の不動産投資は、別の事業で生じてしまう所得税をなるべく圧縮するのが目的です。
節税は、建物の減価償却などから生じた不動産投資の税法上の赤字を、他の収入と損益通算することで生じさせることができます。
つまり、新築や築浅で立地も良いアパート1棟など、多額の黒字を生む優良物件を買っていては、所得税の節税自体はできないことになります。
また、不動産投資による節税効果を生むことができるのは、他の事業の課税前の収入が約1200万円を超える場合であることも付け加えます。
※税制は年度によって改変されますので、国税庁のホームページなどで最新情報をご確認下さい。
相続対策なのに、価格下落が予想される物件を買う
相続税評価額はその不動産の時価の3割~6割程度が多く、現金に比べ相続税の対象となる評価額が小さくなります。
しかし、築20年以上の古い物件や立地の良くない物件を購入した場合、価格の下落で圧縮できる価額が減り、さらに赤字経営で節税分が目減りしてしまうという事が起こります。
4.節税のためだけに物件を買ってしまった
節税に関する説明は前項のとおりですが、かといって節税目的とはいえ、キャッシュフローが生じていない場合、資金不足や収支の悪化から、節税額を超えたマイナスが出ないとは限りません。
また、社会通念上、度を過ぎた節税が続いた場合、税務署の調査官から目を付けられ、税務調査を受けることも考えられます。
節税目的の投資でも、家賃収入に対して常に返済分、経費、内部留保、利得のバランスを考える必要はあります。
5.返済額の設定が高すぎた
運用中に空室が続いてしまったり、突発的な出費の発生は十分ありえます。
たとえば毎年安定して需要のあるはずの学生街で何年に一回か、なぜかどの物件もなかなか成約しないという年があります。
また、物件全体に費用のかかる要補修箇所が見つかったり、給湯など同時期に新設や更新された設備は、同時期に不調が出ることが多いです。
なるべく短期間で返済を終わらせるために、月々の返済額を高くしすぎると、上記のような理由で返済が滞ることになる場合があります。
想定された賃料収入のうちの返済額の比率は、以下の式で計算します。
返済比率(%)=借り入れ返済額÷満室時の家賃・駐車場などの収入合計×100
返済比率が一定基準を保っているのであれば、返済が滞ってしまうリスクを下げることができます。
初めて不動産投資を行う場合は、返済比率は50%以下を目安にすべきとされています。
たとえば満室時の毎月の賃料収入が100万円の物件の場合、借入れの返済は毎月50万円以下にします。
返済比率が50%であれば、収入全体に対して固定資産税や建物管理費などの賃貸経営に必要な諸経費が20%、空室率が10%発生していても、20%相当の収入を残すことができます。
早期の返済を狙うのであれば、収入の中から内部留保を作り、一定のタイミングで繰上げ返済することもできます。
不動産投資に失敗する人の共通点3つ
ここまでの失敗の類例を起こしがちな人には、共通する3つの特徴があります。
しかしその3つの点は事前に克服可能なので、以下をぜひしっかり覚えておいてください。
1.不動産投資の勉強を怠る
不動産投資について基礎的な勉強や調査をしなければ、以下の2点でつまづくことになります。
- 物件選び
- 満室の維持
自分で物件の良し悪しが判断できない状況では、売主や仲介業者のおすすめに対して鵜呑みとなったり、判断を誤って物件選びに失敗します。
物件に対する鑑定眼まで養う必要はありませんが、後述するようなことがらについては基礎的な知識を持ち、必要な点について質問ができる必要があります。
また、物件の購入後もオーナー自身がそこに住む賃借人の方の立場に立って、喜んでもらうサービスを意識し、研究する姿勢が必要です。
たとえば、あまり経費をかけないで可能な、時流に合わせたリフォームや、物件の弱点をカバーするサービスなどを試すなどの行動です。
2.リスクを考慮せず考えがち
不動産投資には、予期しないような形の様々なリスクがあります。
(例)
- 空室リスク
- 滞納リスク
- 老朽化リスク
- 物件価値下落リスク
また、不可抗力なリスクとして、以下があります。
- 災害リスク
- 金利上昇リスク
これらのリスクが原因となる、中長期的な減収を考慮しない経営のシミュレーションは、目論見を外すことになります。
「家賃が遅れても、払ってもらえればいい」と考えがちですが、滞納は、契約解除・立ち退きに発展する可能性があり、手間と新規募集出来ない空白の時間を生みます。
不可抗力のリスクも含めて収支のシミュレーションを行い、対処のためのノウハウを学んでおくことが大切です。
3.ストックを作らない
上記に関連して、資金の余裕を作っていくことも必要です。
運用中は突発的な出費はあると思っておいた方が良いのですが、ストックがなければ持ち出しで対応することになります。
最初のうちは潤沢でないストックとしての資金も、徐々に蓄えが増えることでリスクへの安心材料となるとともに、募集時に喜んでもらえる改修費用に使うなど、攻めの運用の原資となってきます。
少し話はそれますが、「不動産 ストックビジネス」で検索すると紛らわしいのは、不動産賃貸業のこと自体もストックビジネスと表現する点です。
賃貸・売買・開発など多岐にわたる不動産業の中で、投資のインカムゲインビジネス・賃貸業はストックビジネスとして、今後主流となる方向にあるというのが、国土交通省の見解です。
出典:不動産業のストックビジネス強化とは(国土交通省)
不動産投資に失敗しないための対策5つ
ここまでは不動産投資の失敗要因について整理してきましたが、失敗しない5つの対策のお話に切り替えてご説明します。
対策といっても決して難しいことではなく、基本的な知識に基づき、ひとつづつ確認を進める作業と考えてください。
1.物件購入は慎重に行う
最初が肝心といいますが、物件も一度買ったら簡単に買い替えはできず、不利な要素はのちのちまで尾を引くこととなるので、慎重に選んで購入しましょう。
物件で見るべきポイント
物件を購入する際に見るべきチェックポイントは、大きく分類して以下の点です。
- どのくらい利益が出るか
- 強みや弱みはそれぞれどこか
- 不利な点が隠れていないか
さらに細かくご説明します。
A.利回り
前述のとおり、単純利回りでは物件の収益状態は分かりません。
最低限以下の点を確認し、月にいくら残るのか、実質の利回りに近い数字を計算しましょう。
- 空室数
- 現状設定されている月額賃料・管理費
- 固定資産税、都市計画税
- 管理費と修繕積立(マンションの区分所有の場合)
- 管理委託費用
- その他、月単位でかかる費用
併せて、修繕を要する箇所や、更新時期の近い設備などについても確認しましょう。
このほかにオーナーが変わって新たな設定で発生する費用として、管理委託費用、火災保険、地震保険、所得税、住民税などがあります。
B.エリア・立地
購入する候補として挙がっている物件の交通の便、周辺の生活施設(スーパー・医療機関ほか)、企業や大学など賃貸需要を支える組織があるかなどを確認します。
エリアは人口が多く状況が良いけれど、駅から遠い、買い物に不便など、立地が良くないという場合も考えられるため、実際に現地に足を運んでみましょう。
C.築年数
築年数は物件の人気度、間取りなどの流行、減価償却の残存年数を左右する要素です。
ただ、よく管理されていた状態の良い建物は、築年数に関わらず空室が少なく運用できることもありますし、周辺の環境との兼ね合いで人気度は差があります。
D.間取り・設備
間取りや設備は、築年によって平均的な仕様が変遷しており、フルリフォームを行っていない限り、古くなった部分は手を入れる必要があります。
たとえば玄関を開けたらいきなりダイニングキッチンであったり、バストイレ同室、バランス窯給湯などの物件は、現在では不人気とされています。
玄関にアコーディオンカーテンを付けるなどの工夫をするか、徐々にバストイレを改修してゆくか、家賃を安く設定するなどを検討します。
E.瑕疵等マイナス要素
物件に関わる瑕疵(かし)は入居をためらう要素のことですが、物理的瑕疵と心理的瑕疵に分けられます。
物理的瑕疵は、近くにゴミ処理施設があり臭気がある、近くに深夜まで人の出入りする施設があり音や光が気になるなどの要素です。
心理的瑕疵は目に見えない忌避要素で、人が亡くなった事故物件などを指します。
瑕疵物件を運用する難易度については、次項でご説明します。
難易度の高い物件の特徴
とくに初心者の方が投資用の物件選びをする上で、「難易度の高い物件」は避けた方が良いです。
客付けを行い、満室を維持し続けるうえで難易度の高い物件とはどのようなものををご説明します。
A.瑕疵物件
瑕疵(かし)物件は前述のように募集時のハードルになるような要素のある物件です。
心理的瑕疵について、近年はいわゆる事故物件が増え、国のガイドラインでも自然死は事故物件扱いにしないなど、基準の緩和が進んでいます。
出典:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(国土交通省)
しかし、事故物件の問題点は告知に関してだけではなく、ご遺体の発見が遅れて物件の補修が必要になること、周囲で話題にのぼること、ネット上で事故物件として紹介されることなど、様々にあります。
B.地方の物件
地方の場合、街の構造上で駅周辺の中心街の範囲が広くなく、中心街でも意外に生活の利便性は高くないケースが存在します。
地方は車社会なので、徒歩中心の都市部の生活圏とは構造が異なって立地の良さを見極めるのが困難で、鉄道駅の有無に関係なく、新規開発によって自治体の中心街が移動してしまうという現象も起こります。
過疎化の進行の状況も、地元の知識に明るくなければ把握は難しく、前述のように値上がりを見込める確率も低いため、売買差益を出すなどの用途には向きません。
以上のような理由から、予備知識や頼れるブレーンなしに地方の物件を買うことは、難易度が高いと言えます。
C.古すぎる物件
築年数に関しては、前述のように必ずしもマイナスばかりではないのですが、古すぎる物件に関しては、建物の老朽化に伴う出費が懸念されます。
屋根・外壁・階段などの補修は、それなりの金額を想定する必要があります。
たとえば築古の物件でも、都市部の駅近の区分マンション1戸所有などであれば、内部をフルリフォームして長期にわたって回収してゆく例はあります。
しかし、郊外や地方の1棟アパートなどでは、大規模修繕をあきらめて放置されている物件がたくさん存在しています。
2.不動産投資の目的をはっきりさせておく
前半の失敗例でも触れた、不動産投資の目的ですが、これが「なんとなく」では、物件選びも難しく、運用自体も思わしくない結果となってしまいます。
まず、以下のような目的からご自身に合うものをしっかり決めておきましょう。
目的 | 選ぶべき物件 | 具体例 |
---|---|---|
専業 | 規模拡大に備え、融資を受けやすい物件 | 立地のいいワンルーム1棟 |
副収入 | オーナー稼働が少なめの物件 | 立地よりも築浅。サブリースなどもOK |
老後資金 | 一定の収入が安定して得られる物件 | 賃貸高需要エリアの戸建てやワンルーム |
売却益 | 価格上昇が期待でき、売りやすい物件 | 今後開発予定のエリアの築浅アパート |
節税 | 減価償却費がまとめて計上できる物件 | 築古めの1棟アパートなど |
相続対策 | 資産価値が維持でき、売りやすい物件 | 立地のいい区分マンションを複数 |
3.運用後は返済分だけでなくストック分も確保する
ストック分のお金の使い道こそが、不動産投資の成功のカギを握っていると言えるかもしれません。
返済以外は「すべて自分の懐に」ではなく、運用管理費としてある程度ストックし、不測の出費や集客のための前向きな改修にも充てましょう。
前述のように返済50%・ストック20%で、あとは空室補填と利得と考えるのがスタート時の基本です。
4.各種リスクへの対策・引き出しを持っておく
様々なリスクへの対応策については、いざという時にどのようにすればよいか、事前に知識や準備の引き出しを持つことで、傷も浅く、回復も早くできるようになります。
A.空室リスク
物件選びに際しては、なるべく駅近の立地の良い物件や、対象顧客数の多いワンルーム物件を選ぶことで、空室リスクは下がります。
すでに運用中の物件では、募集の広告宣伝に力を入れる、物件に特色のあるサービスを付加する、賃料を見直すなどを通じて、空室を埋めるための活動をします。
6月から9月までの間は新入学、就職、転勤、異動などの人の動きが少なく、空室を埋めるのは労力を要しますので、それ以外の期間で決めてしまうというのが基本です。
さしあたって大切なこととして最低限「何部屋空くと、返済の月額を割り込むか」を把握しておく必要があります。
◆物件選びは立地を重視。ワンルームが客付けしやすい。
◆募集は広告宣伝に力を入れ、賃貸繁忙期に決める。
◆物件を特色づけるサービスを検討する。
B.滞納リスク
じつは家賃滞納の金銭補償については、保証会社が責任をもって代位弁済し、手続きを進めてもらえる例がほとんどです。
問題となるのは、滞納が進んで契約解除・退去となるケースです。
家賃滞納をする人には2種類あり、「経済的困窮に陥った人」と「だらしない、責任感のない人」です。
後者の方が対応は厄介であり、退去につながるケースも多いのですが、その場合、退去までの督促を法に則って行うこと、裁判、夜逃げによる残置物の保管や処分など、オーナーも関与し、労力と時間を要する状況が待っています。
最近は保証会社が賃料収納代行も兼ねていることが多く、不動産管理会社もすぐに賃料の遅れを把握できないケースがありますので、注意が必要です。
滞納のリスク回避には、入居審査をしっかり行ったり、保証会社以外に連帯保証人を立ててもらうのが有効です。
以下のデータは約1000人のサンプルですが、全国平均で常に5%もの滞納があるということになります。
首都圏 | 4.1% |
---|---|
関西圏 | 8.2% |
その他 | 4.8% |
全国 | 5.0% |
※賃貸住宅市場景況感調査2020年下期(日本賃貸住宅管理協会)
◆入居審査を厳正に行う
◆入居時に保証会社加入以外に連帯保証人を義務付ける
◆滞納が始まったら管理会社と連携して素早く対応する
C.災害リスク
災害リスクは、地震、洪水、火災などによって建物が損傷・倒壊するなどが考えられ、どこで不動産投資をしたとしても、災害リスクを避けることはできません。
災害によって人の住めない状態では、賃料収入がゼロになるのは言うまでもありませんが、さらに復旧のための出費も捻出する必要があります。
近年水害も増加傾向にありますが、床上浸水した場合、家財を動かして乾かすだけでなく、表面の床材や水に浸かった壁材は張り替えとなります。
復旧費用については火災保険や地震保険への加入が防波堤となりますが、加入状況によっては、すべての被害が完全に保証されるわけではない場合がある点、要注意です。
保険は、ちょっとした特約の設定次第で保証内容が変わりますので、入りっぱなしではなく、一度確認や問合せを行っておきましょう。
災害リスクに備えるには、購入時の保険加入のほかにハザードマップの確認、物件の耐震性の強化を検討してください。
◆火災保険や地震保険に加入
◆ハザードマップを確認しておく
◆耐震性の高い物件を選ぶ
◆耐震診断や耐震補強工事をする
◆複数の物件を所有する場合は地域を分散させる
D.物件価値下落リスク
物件価値の下落リスクはおもに、以下の理由で進行します。
- 老朽化によって人気度が下がる
- 周囲に新しく優位な物件が増える
- 周辺環境が寂れてニーズが減少する
- 事故物件化する
立地の良い物件なら人気度は下がっても、ニーズ自体を保持し続けることはできますので、立地が良く将来的にもニーズの減らない物件を選ぶことが、根本的な対策です。
「人口の増加」「再開発が進む、あるいは予定がある」「生活上の利便性が良い」などをリサーチします。
競争激化の対応については、賃料の調整や独自の魅力を付加するなどの対策が必要となります。
事故物件化などの対策については、IoT家電などによる見守り設備の利用や、地域の民生委員との連携などを進めておくとよいでしょう。
◆購入時に立地にこだわる
◆設備やサービスなど、物件独自の強みを作る
◆見守り設備の導入や民生委員との連携をしておく
E.老朽化リスク
老朽化のリスクについては繰り返し述べていますが、お部屋を借りる人の好みについて考えると、解決の糸口が見えてきます。
古い団地やマンションを程よくリフォームし、ヴィンテージ感を売りにした物件が人気を集めています。
和室は立ち・座りが増える関係で、最近では高齢の方に人気がないですが、若い人や子育てする人にはむしろ都合がよく、和室を活かした和のインテリアをセールスポイントにすることもできます。
居住性を考えれば設備の更新なども大切ではありますが、好みという視点も対策になりえます。
また、現状回復のオーナー負担については、古い物件の方がむしろ新しい物件より費用は少なめです。
◆古くてもそれを活かした内外装を企画する
◆水回りの設備などは時流に合わせて更新する
F.金利上昇リスク
物件購入後に不動産投資ローンの金利が上昇すると、経営を圧迫することになります。
不動産投資ローンは居住用より返済期間が長めになる傾向がありますので、長い目で見た負担は重いといえます。
固定金利が選択できていれば問題にはなりませんし、変動金利でも利幅上昇の制限や、据え置き期間が5年あるというルールもあり、すぐに深刻な影響が出ることはありません。
しかし、金利上昇の可能性が盛んに言われる今、どのように対処したらよいのか、金利が上がると返済総額がどのように増えるか分かるようにしておくのは大切です。
金利上昇を意識する場合は借入額を減らすか、繰り上げ返済を考えましょう。
◆自己資金を増やし、借入の総額を減らす
◆計画的な繰上返済をする
5.不動産会社選びも慎重に行う
不動産投資に失敗しないためには、パートナーとなる不動産会社選びも重要です。
投資物件の売買、賃貸管理においての実績はもちろん、修繕、賃料設定、空室募集、売却などさまざまな分野で、細かい話まで相談に乗ってくれるかがポイントとなります。
実績と経験の豊富な不動産会社なら、物件選びから運営の相談まで安心して頼れますので、チェックしておきましょう。
まとめ
不動産投資をめぐる失敗例やリスク、その対策についてお伝えしました。
不動産投資といえばお金がお金を生むイメージで、不労所得である反面、その運用については不可抗力な要素が多いと考えるところですが、それは違います。
ほかの種類の投資同様、勉強やリスクへの備えがよい結果につながるだけでなく、オーナー自身が投資の顧客=賃借人に喜んでもらえる工夫をし、結果を出すことができます。
失敗しないための勉強は必要ですが、頼れるパートナーである不動産会社とともに、物件オーナー業に取り組むことの素晴らしさを、一人でも多くの方が感じて頂けたらと思います。
不動産投資での失敗に関するよくある質問
要約すると以下の点3です。
●事前に不動産投資の基礎知識を勉強する
●月当たりの収支を明らかにする
●目的に合った物件を買う
以下であることが多いです。
●投資専業
●副収入
●老後資金
●売却益
●節税
●相続対策
不動産投資の勉強を怠る、リスクを考慮しない、ストックを作らないの3点です。
売主側に対して確認する内容は以下です。
●空室数
●現状設定されている月額賃料・管理費
●固定資産税、都市計画税
●管理費と修繕積立(マンションの区分所有の場合)
●管理委託費用
●その他、月単位でかかる費用
これに加え、新しくかかる費用として管理委託費用、火災保険、地震保険、所得税、住民税などがあります。