不動産投資は、将来の資産形成や節税に役立つというメリットがありますが、物件選びや管理、税金などに関する知識や経験が必要です。
これから不動産投資を始める人にとっては、「何をすれば良いのかわからない」「どうすれば優良物件を選べるの?」といった疑問や不安を持つ人が多いでしょう。
そこで、不動産投資を始める前に、専門家や経験者から相談を受けることが大切です。不動産投資の相談窓口は、様々な種類がありますが、それぞれに得られる情報やメリットが異なります。
この記事では、不動産投資を始めるときの代表的な相談窓口と、それぞれの特徴を紹介します。また、押さえておくべき相談ポイントや、信頼できる不動産投資会社の特徴も解説するので、ぜひ参考にしてください。
なお、信頼できる不動産投資会社を見つけるには、なるべく多くの会社を比べて、特徴や相性の良さを確認するのが最も大切です。下記の「イエベスト」を使って、優良業者をまとめて比較してみましょう。
不動産投資の相談窓口5つ
不動産投資を始めるにあたって、相談すべき窓口は以下の5つが挙げられます。
- 不動産投資会社
- 不動産投資経験者
- ファイナンシャルプランナー
- 税理士
- 地場の賃貸管理会社
それぞれ異なる側面からアドバイスをもらえるので、セミナーや無料相談会、直接の問い合わせなどを駆使して、話を聞いてみましょう。
どのような情報が期待できるか、1つずつ解説します。
不動産投資会社・・・物件選びから賃貸経営の悩みまで
不動産投資会社は、不動産投資に関する全般的な相談・委託ができる会社です。投資物件の紹介や選定、資金計画の相談や賃貸経営の悩みまで幅広く相談ができます。
ただし、物件探しで相談する場合は、どのような物件が欲しいのか明確にしておいたほうが良いでしょう。自分の希望や条件をしっかり伝えることで、具体的なアドバイスをもらいやすくなります。
例えば、「文京区内の駅近マンションで予算は5,000万円以内」という具合です。つまり、投資物件は無数にあるため、どんな物件が欲しいかを明確にしなければ、相談が具体化しにくいので注意します。
また、希望を明確化することは、本気度アピールとしても有効です。本気で投資を考えている人に対しては、担当者も本腰を入れて対応するため、より優良な物件を紹介してくれる可能性があります。
希望を明確化するためには、自分の投資目的をはっきりさせておくことが大切です。「老後に備えたい」「節税したい」など、まずは不動産投資で達成したい目的を固めておきましょう。
不動産投資会社への相談は、投資事業全体の仕組みや流れ、実際の物件紹介を受けることで不動産投資を実現させる第一歩となります。話しが具体化することで、購入後の管理の不明点、出口戦略、税金対策など幅広く疑問点も湧いてくることでしょう。
【point】不動産会社への相談は複数にするのが好ましい
不動産会社への相談は、複数社にすることが望ましいでしょう。その理由は、仮に1社のみの相談となると、偏った見解や知識で不動産投資を進める危険性、不動産会社が悪徳であった場合に被害に遭うおそれがあるからです。
医療においてもセカンドオピニオンが重要視されていますが、投資事業を成功に導くときにもさまざまな専門家の見解を聞くことで、自らの情報を精査していくことが重要となります。
よって、不動産会社への相談は、面倒でも最低3社は受けることがおすすめです。
不動産投資経験者・・・オーナー視点のリアルな経験談
不動産投資経験者は、オーナーとしてのリアルな声が聞ける相談先です。不動産投資会社と違って営業的側面がないので、正直な意見を期待できます。
例えば、今後不動産投資を始めるうえで、必ず向き合うべき事項についての相談と実際の経験談を聞けます。
- 投資物件購入時に付き合う不動産会社の選び方
- 物件設定の仕方
- 金融機関から借入したときの不安や対処法
- 家族への説明はどのように進めていけばよいのか など
他にも、これやって成功したことや反対に実際に投資物件を運営して想定外であったこと、事前に対処しておくべきだったと反省する点など、実際に投資物件を運用している人の活きた話しも聞けるでしょう。
実際に相談する際は、「どんな物件が収益に繋がったか」「どんなトラブルに遭ったか」など、今まで成功したことや失敗したことを中心に聞いてみましょう。経験にもとづいた、リアルなアドバイスをもらえます。
なお、身近で不動産投資経験者を見つけることが難しければ、オーナーが集まるWEB上のコミュニティツールを使ってみるのもおすすめです。一度試してみてはいかがでしょうか。
参照:「全国大家の会」
ファイナンシャルプランナー・・・資産形成シミュレーションについて
ファイナンシャルプランナーは、資産形成についてアドバイスを行うプロフェッショナルです。ライフプランニングや、その内容を実現するための資金計画について、的確なアドバイスをもらえます。
また、ファイナンシャルプランナーは、利害関係のない第三者的な立場となります。将来的な資産形成で不動産投資を検討するなかで、個人に寄り添ったさまざまなアドバイスも期待できます。
実際に相談する際は、「◯歳までに◯◯万円の預金を作りたい」「月々◯万円のキャッシュフローを得たい」など、目標や予算を設定しておくと、より詳細な見立てをしてもらえるでしょう。
不動産投資を始める前であれば、自らの経済状況などを伝えた上で以下のようなアドバイスをもらえるはずです。
- 現在の収入や貯蓄、家族構成などから算出される収支などから考えて適正な投資金額の範囲
- 投資物件の想定収支から考えられる資産形成のシミュレーション
- 投資物件を始めるために実生活で削減すべき支出は何か(生命保険などの見直しなど)
ファイナンシャルプランナーから適正な予算額のアドバイスを聞けることで、投資したい物件を絞れます。また、支出の無駄をなくすことで、投資物件の運営開始後の破綻も回避しやすくなるでしょう。
また、ファイナンシャルプランナーは不動産投資以外の投資商品についても詳しいため、幅広い選択肢を検討可能です。自分の目的やリスク許容度を踏まえて、ベストな投資方法を選びましょう。
税理士・・・節税効果について
税理士は、節税や税申告について相談できる窓口です。投資目的が節税の場合や、法人で不動産投資をする場合、確定申告を控えている場合などに頼れる存在です。
税理士は、物件や自分の状況に応じて、控除対象の経費や利用可能な特例について教えてくれるので、運用中の強い味方となります。税金について疑問や不安があれば、とりあえず相談してみるのがおすすめです。
なお、税理士に相談すると以下のような情報を聞けます。
- 不動産投資で見込める節税効果の見通し
- 投資事業の運営で確定申告時に経費計上できる項目
また、不動産投資に詳しい税理士なら、他の顧客の成功事例を聞ける場合もあります。自身が不動産投資を行っている税理士に相談できれば、より実践的なアドバイスをもらえます。
地場の賃貸管理会社・・・特定のエリアに特化した事情について
最後は、地場の賃貸管理会社です。地場の賃貸管理会社は、地方都市や都市圏で「○○駅」周辺などと、ピンポイントエリアの不動産事情を知りたい場合に便利な相談窓口となります。
特定地域の不動産市場や事情を最も把握しているのは地場の賃貸管理会社で、しかも古くからの付き合いで地域のオーナーとも密接に繋がっているケースも多く、リアルな情報を引き出せる可能性があります。
よって、不動産投資を行う際には、投資したいエリアを決めておくことで深堀した情報を聞き出せます。
プロはこう聞く!不動産投資会社との相談で聞きたい内容
不動産投資を始めるにあたって、特に重要なのは不動産投資会社との相談です。不動産投資会社には物件選びから管理・運用までサポートしてもらうことになるため、しっかりとした共通認識を構築する必要があります。
しかし、初心者だと「具体的に何を聞けば良いかわからない」という人も多いでしょう。そこで、「不動産投資のプロが不動産投資会社に相談する内容」として、以下を紹介します。
- 物件の家賃下落リスクについて
- 物件の選定理由について
- どのような修繕費がかかってくるか
- 物件のあるエリアに関する様々な情報
これらの質問は、信頼できる不動産投資会社か判断する指標にもなるので、しっかりと確認しておきましょう。
物件の家賃下落リスクについて
不動産投資の成功を左右する要因の1つが、家賃下落リスクです。家賃下落リスクとは、物件の需要が減って家賃を下げざるを得なくなることです。
家賃下落リスクは、どのような物件でも起こり得るものですが、その可能性や影響度はそれぞれ異なります。いくつもの要素が複雑に絡み合い、地域の特性や需要によって、どの要素が強く影響するか変わるためです。
家賃下落に影響する要素としては、以下のような例が挙げられます。
- 築年数
- 立地
- 間取り・設備
- 競合物件
優れた不動産投資会社なら、家賃下落に影響する要素を総合的に判断し、将来的なシミュレーションが可能です。
不動産投資会社との相談で、物件の家賃下落リスクについて説明できない担当者は、知識が足りない可能性があります。物件によほど魅力がない限り、その担当者との取引は避けたほうが良いでしょう。
物件の選定理由について
不動産投資会社に物件選びを相談すれば、おすすめの物件を紹介されます。このとき、なぜその物件をおすすめしているのか、理由を聞いてみましょう。その物件に秘められたポテンシャルなど、シンプルに自分の知らない情報を引き出せる可能性もあります。
物件の選定理由には、物件自体の特徴だけでなく、市場動向や競合状況なども重要です。「このエリアは人口増加が見込まれる」「周辺よりも家賃相場が高い」といった理由を挙げられる物件なら、高い収益性を期待できます。
プロ視点の選定理由を聞くことで、自分では思いもよらないようなメリットを知れるかもしれません。物件選びの判断基準を養う意味でも、詳しく聞いておきましょう。
また、不動産会社がただ物件を捌きたいなどの意向であれば、おそらくつじつまの合わない話しも出てくることでしょう。よって、物件の選定理由を聞くことで物件情報だけではわからない部分についても把握できるので、正確なジャッジを下すことができます。
どのような修繕費がかかってくるか
修繕費は、物件の維持・改善に必須となる費用なので、資金計画をシミュレーションするためにもしっかり把握しておく必要があります。自分で調べることも大切ですが、担当者にもしっかり確認しておきましょう。
代表的な修繕費の項目は、以下の通りです。
- 外壁塗装
- 屋根補修
- 水道管交換
- 給湯器交換
- エアコン取替
例えば、築年数が進んだ古いアパートの場合です。購入時の取得費が安く済むことで利回りの高さ魅力ですが、一方で将来的な修繕費用は最も気になるポイントです。仮に修繕費用が多額に掛かる見込みの物件であれば、将来的に利回り低下のリスクもあります。
また、修繕費の確認で物件に付帯されている具体的な設備がわかり、シミュレーションもしやすくなります。さらに、自らのシミュレーションと不動産会社のシミュレーションに剥離があれば、原因を追究する必要もあるでしょう。
これらを担当者に聞くことで、物件に対する理解度や対応の丁寧さをみる指標にもなります。
設備の内訳や管理状況を知るためにも重要なので、修繕が必要になる時期や費用について、具体的な内容を押さえておきましょう。
物件のあるエリアに関する様々な情報
不動産投資では、物件だけでなくエリアも重要です。エリアに関する様々な情報を聞くことで、物件の収益性や将来性を判断する材料にできます。
特に重要なのは、エリアによる需要や競合状況の違いです。「そのエリアで人気の物件タイプは何か」「そのエリアで空室率が高い物件は何か」といったことがわかれば、物件を選びやすくなります。
また、単身者やファミリーなど、どのような層が多いか知ることも大切です。地域のニーズを把握し、確実に収益が得られる物件を選びましょう。
不動産投資会社の良し悪しを見極めるポイント
一貫したサポートを受けられるからこそ、不動産投資会社の選び方は重要です。いかに優良な会社に相談できるかが、不動産投資の成否を左右します。
優良な不動産投資会社を見つけるためには、複数の会社を比較することが大切ですが、まずは比べるための基準を持たなければ選びようがありません。
ここでは、不動産投資会社を見極めるポイントについて、良い会社の特徴と、悪い会社の特徴をそれぞれ紹介します。
信頼できる不動産投資会社の特徴
信頼できる不動産投資会社の特徴としては、以下の要素が挙げられます。
- 10年以上の業績がある
- デメリットを説明してくれる
- 事務所はグレードの高いビルにある
優良業者を探すときの目安として、上記のポイントを参考にしてみましょう。
10年以上の業績がある
不動産投資は長期的な視点で行うものなので、将来的にも長い付き合いができるかどうかが重要です。その点、10年以上の業績がある不動産投資会社は、長い間営業してきたという安心感があります。
また、長い間営業している会社なら、物件の仕入れルートや様々な投資事例について、ノウハウが蓄積されています。豊富な情報網から、優良物件の紹介や手厚いサービスを受けられるかもしれません。
また、過去の取引件数などの多さで金融機関からの信頼を勝ち得ていれば、不動産投資会社経由のほうがローンは借りやすい状況となります。
10年未満でも優良業者はいるかもしれませんが、業績というはっきりとした根拠があれば、より信頼できる可能性が高くなります。
デメリットを説明してくれる
不動産投資には、空室リスクや家賃下落リスクなど、様々なデメリットがあります。これらは不動産投資をするうえで避けられない要素であり、いかに対策するかが重要です。
しかし、不動産投資会社のなかには、自社の業績を優先して、これらのデメリットを説明しない場合があります。逆に言えば、デメリットをしっかりと伝えてくれる不動産投資会社は、信頼を置けるということです。
優良業者であれば、顧客の納得感まで考えて対応してくれます。あとからデメリットに気づいても遅いため、気になるところはしっかりと質問し、真摯に回答してくれるかチェックしましょう。
事務所はグレードの高いビルにある
不動産投資会社の事務所がどこにあるかも、その会社の信頼性や安定性を見分ける判断材料になります。
都心の一等地や駅近、オフィス街にあるようなビルは、審査基準も厳しく、家賃も高くなります。そのようなビルに事務所を構えるには、一定の業績と信頼性が必要です。
事務所の場所だけで優良かどうかを見極めることはできませんが、事業が順調であることはわかるので、候補を絞り込む際の指標として利用できます。
気をつけたい不動産投資会社の特徴
信頼できない会社や悪徳業者を避けるためには、以下の特徴を持つ不動産投資会社に注意しましょう。
- やたら急かしてくる
- ノーリスクを押してくる
- 事務所がない
- 宅建業免許がない
これらの特徴に気をつければ、不動産投資会社選びで失敗する確率を下げられます。
やたら急かしてくる
物件の購入は早い者勝ちですが、あまりにも急かしてくる不動産投資会社は、注意が必要です。
顧客第一の会社であれば、検討する時間を十分に取ってくれます。「確実に儲けられる」「いま買わないと絶対後悔する」などと急かしてくる場合、営業成績重視で、顧客のことを考えていない可能性があります。
また、問題を抱えている物件を、無理やり押し付けようとしている場合があるため、安易に購入してしまうのは危険です。
焦って契約してしまうと、判断を誤る恐れがあります。一度冷静になって、物件や会社についてよく調べることが大切です。
ノーリスクを押してくる
不動産投資にリスクは付き物ですが、事前の対策や、余裕にある資金計画のシミュレーションなどで、ある程度対応が可能です。
しかし、不動産投資会社の中には、一見有利な条件を強引に勧めて、契約を取ろうとする会社もあります。ノーリスクを強調された物件が、実際にはいくつもの問題を抱えていたというケースが少なくありません。
ノーリスクの要素としては、以下のようなアピールポイントが代表的です。
- 家賃保証付き
- 買取保証付き
- 頭金なし
- クーリングオフ可能
これら個々の条件自体は、必ずしも悪いわけではありません。仕組みを理解して利用すれば、大きなメリットになる可能性もあります。
しかし、世の中に100%うまい話はなく、メリットの反対にデメリットが潜んでいる場合もあります。例えば、「家賃保証付き」の場合、家賃保証料が高くて収益性が低い場合や、家賃保証会社が倒産する場合があるかもしれません。
ノーリスクばかり押してくる不動産投資会社は、顧客のリスク意識を低くさせて、不良物件を買わせようとしている恐れがあります。甘い勧誘に騙されないよう、慎重に判断しましょう。
事務所がない
正規の宅建業者であれば、事務所は必ず持っています。事務所がない不動産投資会社は、宅建業者としての許可を受けていないと判断しましょう。
事務所がない業者は、インターネットや電話で物件を紹介し、商談を喫茶店などで行うこともあります。このような業者は、物件の詳細や契約内容を確認できないことも多く、高確率でトラブルに巻き込まれます。
そのため、不動産投資会社に相談する場合は、まずWebサイトで事務所の所在地を確認したり、現地に行って所在を確認するようにしましょう。事務所が存在しない業者とは、関わらないほうが無難です。
宅建業免許がない
宅建業免許とは、不動産売買や仲介を行うために必要な免許です。正規の宅建業者であれば、国土交通大臣か都道府県知事の宅建業免許を取得しています。
宅建業免許がない不動産投資会社は、違法に営業している業者です。トラブルが起きても責任を取らなかったり、詐欺的な契約を結ばされたりするので、関わらないようにしましょう。
宅建業免許は、事務所等に掲示する義務があるため、事務所に行って確認できない場合は違法業者とわかります。
また、宅建業免許を取得している業者は、国土交通省のWebサイトでも確認できます。会社名や所在地などから検索できるため、事前に調べておきましょう。
よくある不動産投資相談9選
不動産投資相談には、様々な種類がありますが、その中でも「よくある相談内容」があります。
ここでは、代表的な相談内容として、以下の9つを解説します。
- 不動産投資に自己資金はどれくらい用意すべきか?
- 不動産投資ローンはいくらまで借りられるのか?
- 物件購入資金以外にどのような費用がかかる?
- 新築と中古はどちらが良いか?
- 区分と一棟はどちらが良いか?
- 避けた方が良いエリアや物件は?
- 利回りの目安や最低ラインは?
- 物件購入後にやることは?
- 成功率を高めるためにやるべきことは?
上記の相談内容をあらかじめ押さえて、スムーズに不動産投資を始めましょう。
不動産投資に自己資金はどれくらい用意すべきか?
不動産投資で自己資金はどれくらい用意すべきかという悩みは、不動産投資に興味を持ち始めたら最初に抱える疑問です。自己資金が多いほど、投資運用は楽になりますが、貯蓄に時間がかかります。
一般的には、不動産投資の自己資金は物件価格の15%程度、できれば30%あると安心です。
自己資金を入れた方が良い理由は、以下に挙げたとおりとなります。
- ローン返済額を抑えるため
- 返済額を抑えることで収益性を上げて資金のストックを作るため
- 万が一の売却時にローンを完済できるようにするため
ただし、自己資金を貯めるまで時間がかかりすぎる場合、借入比率を上げて早めに運用を始めたほうが、効率は良くなります。物件の値上げやローンの金利上昇といったこともあり得るため、時間ロスは無視できないリスクです。
収入や物件によっては、少なめの頭金でローンを組める場合もあります。必ずしも割合にこだわることはなく、家計や運用に無理のない範囲で自己資金を用意しましょう。
不動産投資ローンはいくらまで借りられるのか?
不動産投資ローンの借入可能額は、年収の10倍前後が一般的な目安です。例えば、年収700万円の人であれば、借入額は約7,000万円が目安です。ただし、投資物件の収益性がローン会社に評価されなければ、多額の借入は難しくなります。
借入可能額を決めるのは、「債務者の返済能力」と「物件の担保価値」です。返済能力については、下記の項目で審査されます。
- 年収
- 年齢
- 健康状態
- 保有資産
- 職業・勤務先・勤続年数
- 他の債務状況・滞納歴の有無
上記と物件の資産性・収益性を考慮し、総合的な判断で借入可能額が決まります。
また、借入後の返済比率も重要です。返済比率は、満室時の家賃収入に対する返済額の割合のことで、一般的には50%以下に抑えるのが良いとされています。
返済比率を50%以下に抑えれば、その他のランニングコストを差し引いても、収支はプラスになると考えられます。月々の返済比率も考慮して、無理のない金額で借り入れましょう。
住宅ローンは、個人の属性のみが審査項目となるので年収の5倍~8倍程度までの借入となりますが、不動産投資ローンでは投資物件の収益性が加味されるため年収の10倍前後までの借入が可能です。
物件購入資金以外にどんな費用がどれくらいかかる?
物件購入資金以外に掛かる費用は、以下に挙げたとおりです。
- 印紙代
- 登記費用(所有権の移転登記費用とローンがあれば抵当権の設定費用)
- 仲介手数料
- 火災保険料と地震保険料
なお、諸費用は物件価格に対してローンがある場合は8%程度、現金購入の場合は4%程度が目安となります。
印紙代
印紙代は、売買契約時と不動産投資ローン利用時の金銭消費貸借契約時に掛かります。印紙税額は、以下に示したとおりです。
契約金額(税抜) | 印紙税額 |
---|---|
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 6万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 |
参照:「国税庁 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
登記費用
登記費用は、新築物件の取得であれば所有権の保存登記費用、中古物件の取得であれば所有権の移転登記費用が掛かります。
また、不動産投資ローンがあれば抵当権設定の登記費用が掛かります。各々、「登録免許税+司法書士の報酬」が登記費用の内訳です。
【建物】登録免許税一覧
用途 | 内容 | 課税標準 | 登録免許税の税率 |
---|---|---|---|
所有権の保存登記(新築) | 売買 | 不動産価格 | 4/1000 |
所有権の移転登記(中古) | 売買 | 固定資産税評価額 | 20/1000 |
抵当権の設定登記 | 売買 | 債権金額 | 1/1000 |
【土地】所有権の移転登記時の登録免許税
内容 | 課税標準 | 登録免許税の税率 |
---|---|---|
売買 | 不動産価格 | 4/1000 |
仲介手数料
仲介手数料は、不動産取引を仲介する不動産会社がいる場合に、取引成立の成功報酬として負担します。宅建業法では以下に示す、仲介手数料の算出式にて計算される金額以下で自由に設定できます。
〇仲介手数料(成約価格400万円超の場合の速算式)=(成約価格×3%+6万円)×1.1【消費税】
例えば、投資物件を5,000万円で取得した場合の仲介手数料は、以下に算出される金額以内にて不動産会社が設定できます。
仲介手数料=(5,000万円×3%+6万円)×1.1=171万6千円
火災保険と地震保険料
建物分にかける火災保険料と地震保険料(オプション)も負担します。
なお、火災保険は不動産投資ローンを組む場合は必須、現金購入の場合は任意です。また、地震保険は火災保険加入時に同時に入る必要があり、火災保険運用期間中に途中から附帯することは原則できません。
実際の費用については、保険商品を提供する保険会社により異なるため、商品性などを見比べる主旨で複数社への見積もりの取得がおすすめです。
その他
その他に掛かる費用は、不動産投資ローンがあれば保証料とローンの手数料、固定資産税等の精算金、などが掛かります。投資物件の取得では、本体価格以外に原則諸費用分の現金が必須です。
新築と中古はどちらが良いか?
「新築・中古のどちらが良いか?」は、不動産購入における永遠のテーマと言っても過言ではありません。どちらにもメリットとデメリットがあるため、状況によって答えは変わります。
以下は、新築と中古のメリット・デメリットを表にまとめたものです。
新築 | 中古 | |
---|---|---|
メリット | ・設備や構造が新しく、故障や修繕の心配が少ない。 ・入居者のニーズに合わせた間取りや設備が選べる。 ・家賃相場が高く、収益性も高い。 |
・物件価格が安く、初期投資を抑えられる。 ・節税効果が高い(中古かつ木造で築22年以上だと理想的)。 ・周辺環境や入居率などの実績が分かりやすい。 |
デメリット | ・物件価格が高く、初期投資が多くなる。 ・減価償却費が少ないため、節税効果が低い。 ・周辺環境や入居率などの実績が分かりにくい。 |
・設備や構造が古いため、故障や修繕の心配がある。 ・間取りや設備が入居者のニーズに合わない可能性がある。 ・家賃相場が低く、収益性も低い。 |
例えば、安定した収益が目的なら、新築のほうが有利です。一方、節税目的なら、中古物件のほうが良い場合もあります。
固定資産の購入代金を、資産ごとに設定された耐用年数で分割して経費計上したもの。新築ほど耐用年数が長いため、1年毎の減価償却費が細かくなる。反対に、築古ほど耐用年数が短いため、1年ごとの減価償却費を多く計上できる(その年の節税効果が大きくなる)。
一概にどちらが優れているとは言えないため、自分の目的や予算に合わせて選ぶことが大切です。
区分と一棟はどちらが良いか?
マンションやアパートの不動産投資では、一部屋ずつ購入する「区分投資」と、一棟全体を購入する「一棟投資」の2パターンがあります。
それぞれのメリット・デメリットをまとめると、以下のようになります。
区分 | 一棟 | |
---|---|---|
メリット | ・物件価格が安く、初期投資が少ない。 ・管理会社に任せれば手間がほとんどかからない。 ・空室リスクを分散できる。 |
・物件の資産価値が高い。 ・家賃設定や入居者選びなどを自由に行える。 ・物件ごとの投資効率が高い。 |
デメリット | ・相対的に物件の資産価値が低い。 ・家賃設定や入居者選びなどに制限がある。 ・物件ごとの投資効率が低い。 |
・物件価格が高く、初期投資が多い。 ・・管理や改装の手間が多い。 ・空室リスクを一括で負担する。 |
区分投資は、相対的に費用が安く、管理の手間も少ないのが特徴です。一方、一棟投資はリスクやコストは多い反面、投資効率や自由度は高くなります。
初心者や自己資金が少ない人は区分投資、不動産投資に慣れている人や自己資金が多い人は一棟投資がおすすめです。
避けた方が良いエリアや物件は?
どのエリア・物件で投資を始めるかは、不動産投資の成功を左右する重要な要素です。エリアや物件の選び方次第で、得られる収益が大きく変わります。
エリアについては、賃貸需要の少ないエリア(少なくなっていきそうなエリア)を避けましょう。具体的には、以下のようなエリアが挙げられます。
- 人口が年々減少しているエリア
- 田舎立地や過疎化が進んでいるエリア
- 最寄り駅の乗降客が減少しているエリア
- 周辺物件の稼働率が低いエリア
- 最寄り駅から遠いなど、公共交通機関が乏しいエリア
物件の場合は、競合に対して不利な物件を避けるべきです。例えば、以下のような特徴が挙げられます。
- 大規模な修繕のかかりそうな物件
- 周辺の相場より家賃が高すぎる物件
- 入居者のニーズに合わない間取りや設備の物件
一見すると魅力的な物件でも、詳しく見ると何らかの問題を抱えている場合があります。立地や管理状況など、細かいところもしっかり確認しておきましょう。
利回りの目安や最低ラインは?
利回りとは、物件の収益性を表す指標です。一口に利回りといっても、種類がいくつかありますが、ここでは表面利回り(年間家賃収入÷物件価格×100)を基準にします。
利回りの最低ラインは、5%を目安とするのが一般的です。5%以上を確保できれば、ローンの返済や諸経費を差し引いてもおおむねプラスになります。
ただし、利回りの目安は物件や地域にもよるため、個別の判断が重要です。特に、周辺の物件と比べて、大幅に乖離している場合は避けたほうが良いでしょう。
例えば、築古で資産価値が低い物件でも、家賃を高く設定すれば利回りは高くなります。高い利回りにつられて購入しても、空室率が高かったり、高額の修繕費用がかかったりするかもしれません。
利回りだけで判断するのではなく、投資用物件としての安定性や将来性で選ぶようにしましょう。
物件購入後にやることは?
物件を購入したら、入居者探しから始まり、建物のメンテナンスや家賃の回収、クレーム処理など様々な業務が発生します。
しかし、不動産投資では基本的に管理会社を入れるため、業務のほとんどは委託できます。実際にオーナーが手を動かすことは少なく、手間はほとんどかかりません。
ただし、管理会社に任せたとしても、空室が生まれないよう工夫し続ける必要はあります。例えば、物件のリノベーションや最新設備の導入、家賃見直しの検討などです。
完全に任せきりだと、不動産投資の経験が蓄積されませんし、気付かないうちに問題を抱えてしまう恐れもあります。管理会社と連携を取り、提案や気になることは積極的に伝えるようにしましょう。
成功率を高めるためにやるべきことは?
不動産投資は成功率の高い投資方法ですが、確実に利益を得たいなら、コツを押さえることが大切です。
まずは不動産投資について勉強し、明確な道筋や判断基準を自分のなかに持っておきましょう。何でも他人任せにしてしまうと、失敗するリスクが高くなります。
また、じっくり時間をかけるなら、自己資金を多く貯めておくことも大切です。借入額や金利を抑えられるので、運用に余裕が生まれます。
すでに物件探しを始めている段階であれば、とにかく多くの物件を見て比較するようにしましょう。物件選びは最も重要なポイントなので、妥協せずにこだわることをおすすめします。
しっかりと準備を整え、目的に応じた手段や物件を選ぶことが、不動産投資を成功させる秘訣です。
まとめ
不動産投資に関する疑問や不安は、不動産投資を始める前や、実際に取り組むなかで、様々なものが生まれます。なかには、自分一人で悩みを抱えてしまい、解決の糸口が見つからない人もいるでしょう。
しかし、不動産投資には長い歴史があり、法制度もしっかりと整備されているため、疑問や不安のほとんどに明確な回答があります。気になることがあれば、積極的に専門家へ相談するのがおすすめです。
各相談窓口を活用しつつ、しっかりと知識を身につけて、不動産投資を成功させましょう。
不動産投資の相談先についてよくある質問
代表的なのは、不動産投資に関する全般的な相談・委託ができる「不動産投資会社」です。そのほかには、オーナー視点のリアルな経験談が聞ける「不動産投資経験者」や、ライフプラン全般の相談ができる「ファイナンシャルプランナー」、特定エリアの詳しい事情が聞ける「地場の賃貸管理会社」が挙げられます。また、節税・税申告については「税理士」に相談しましょう。
不動産投資会社に関しては、無料のセミナーや相談会等を開いている会社がほとんどです。その他の相談窓口についても、無料で相談を受けられるケースは少なくありません。ただし、会社によって実際の対応は異なるので、ホームページや直接の問い合わせでしっかり確認しておきましょう。
物件を紹介された場合は、なぜその物件をおすすめしたのか、選定理由を聞きましょう。プロの視点で選んだ理由を聞くことで、不動産投資の知見が広がります。また、家賃下落リスクがどのくらいあるかや、修繕費用の見通し、エリアに関する様々な情報について聞いておくと、不動産投資の成功に近づきます。
ある程度の知識を学び、投資目的や希望する物件を明確にしておいたほうが、より有意義なアドバイスをもらえます。とはいえ、あまり難しく考える必要はなく、「老後に備えたい」「節税したい」など、おおまかな希望の状態でも大丈夫です。