【不動産を相続放棄する方法】注意点や手続きの流れなどを詳しく解説!

不動産 相続放棄

相続財産のなかに不動産があり、その取り扱いに困っている人は少なくありません。不動産の維持・管理はコストが大きいため、利用価値のない不動産であれば相続放棄を検討する人も多いでしょう。

相続放棄をすれば、不動産の面倒な管理業務を避けられます。しかし、他の相続財産もすべて放棄する必要があるなど、必ずしもおすすめできる方法ではありません。

相続放棄を検討するときは、債務超過になるかどうかを判断基準にするとよいでしょう。財産以上の債務も相続してしまうと、差額の分だけ損してしまいます。

しかし、単に不動産がいらないということであれば、一旦相続してからすぐに売却するのがおすすめです。相続放棄に金銭的リターンはありませんが、売却すればまとまった現金が手に入ります。

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目次

不要な不動産は相続放棄できる

不動産を含むすべての相続財産は、相続人の意思で放棄が可能です。理由は問われないため、例えば「他の相続人と関わりたくない」「相続する不動産が自宅から遠い」といった理由でも相続放棄ができます。

民法では、相続放棄について下記のように規定されています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(後略)出典:e-Govポータル「民法第915条」

上記の条文を見ると、相続人は相続開始を知ってから3か月以内に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選ぶ必要があるとわかります。

単純承認 相続財産と一緒に、借金などの債務もすべて相続する方法。一般的な相続方法。
限定承認 相続財産の限度で借金などの債務を相続する方法。債務超過の場合は±0になる。
相続放棄 すべての相続財産と債務を放棄する方法。

相続の種類

相続放棄を選択すれば、不動産に関する義務はすべてなくなります。管理責任を負う必要はなくなり、相続税や固定資産税を支払う必要もありません。

相続放棄の申告期限は「相続を知ったときから3か月以内」が原則

先に解説したとおり、相続放棄をするときは相続開始を知ったときから3か月以内に申告する必要があります。「相続開始を知ったとき」は、被相続人の死亡日を基準にするのが一般的です。

相続放棄の期限

3ヶ月以内に相続放棄の申告をしないと、単純承認をしたとみなされます。期限が過ぎると相続放棄は原則できず、例え期限があると知らなかったとしても修正はできません。

ただし、相続人が「相続財産はない」と信じてしまう状況にあった場合は、例外的に死亡日より後を申告期限の起算日にするケースがあります。

例えば、昭和59年4月27日の最高裁で、死亡日から1年近く経った日を申告期限の起算日とした判例があります。
この判例では、一家離散で被相続人と相続人の交渉が10年以上なかったこと、死亡当時の被相続人は生活保護を受けていたこと、生前の本人から資産や債務について説明がなかったことなどから、相続人は「相続財産が全く存在しないと信じる相当な理由があった」とみなされました。

参照:裁判所「昭和59年4月27日判決」

申告期限は延長の申し立てができる

相続財産の調査に時間がかかっていたり、法定相続人のうち所在不明の人がいたりなど、3ヶ月以内に相続放棄の判断をするのがむずかしい場合もあります。

このようなケースでは、家庭裁判所に申し立てることで期限の延長が可能です。申し立てができるのは相続人や利害関係人、検察官などで、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

ただし、必ず延長が認められるわけではなく、「客観的に見て3か月以内の相続放棄がむずかしい」とみなされなければいけません。

申告期限の延長が認められるかどうかはケースバイケースなので、申し立てる前に弁護士や司法書士へ相談するとよいでしょう。

参照:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

自分の相続分だけ相続放棄することも可能

相続放棄は、各相続人がそれぞれ単独でおこなえます。単独で相続放棄をする場合、他の相続人から同意を得る必要はなく、後から通知する義務もありません。

しかし、相続放棄は遺産分割に大きな影響をおよぼすため、義務はなくても事前に通知しておくほうがよいでしょう。通知を怠って他の相続人と揉めてしまえば、無駄な労力が生まれます。

通知の方法には決まりがないため口頭でも可能ですが、後から「言った」「言わない」でトラブルにならないよう、書面でおこなうのがおすすめです。

とくに、内容証明郵便を使えば裁判でも通用する公的な証拠となるので、通知したことを確実に証明できます。

相続放棄した相続分は他の相続人のものなる

先の解説でも触れましたが、自分以外に相続人がいる場合、放棄した相続分は他の相続人に分けられます。より正確にいうと、相続放棄した人は「最初から相続人ではなかった」という扱いになります。

相続放棄した人は「最初から相続人ではなかった」とみなされる

例えば、相続人の組み合わせが配偶者と子供2人の場合、法定相続分は「配偶者1/2」「子供1/2(さらに2人で割るので1人あたり1/4)」となります。
このとき、配偶者が相続放棄をすると「子供2人で全相続財産を分ける」ことになるため、相続分はそれぞれ1/2となります。一方、子供Aが相続放棄した場合は「子供の相続分をすべてBが取得する」ことになるため、配偶者と子供Bのどちらも1/2の相続分となります。配偶者の相続分が増えることはありません。

上記からわかることは、相続放棄ではだれに自分の相続分を譲るか選べないということです。

もしも特定の誰かに相続分を譲りたい場合は、遺産分割協議でそのように話し合うか、一旦相続してから贈与する方法を取りましょう。

参照:国税庁「相続人の範囲と法定相続分」

相続人がいなければ国庫に帰属される

自分以外に相続人がいない場合、もしくは相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産は国庫に帰属され、国の管理となります。

ただし、国庫への帰属は自動的におこなわれるものではなく、相続放棄とは別に「相続財産管理人の選任」が必要です。

相続財産管理人を選任して国庫に帰属されるまでは、相続人に財産の管理責任が残るので注意しましょう。

例えば、相続放棄した不動産が倒壊し、近隣の人になんらかの被害を与えた場合、損害賠償を請求される恐れがあります。

他に相続人がいない場合は、相続放棄と合わせて速やかに相続財産管理人の選任をおこないましょう。選任方法については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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相続放棄することでどんなメリットがある?

相続放棄をおこなうメリットは主に以下の2つです。

  • 借金や債務の相続を免れる
  • 相続トラブルに巻き込まれない

マイナスの財産を引き継がずに済み、遺産分割で他の相続人と揉めることを回避できるのがメリットです。それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

メリット1.借金や債務の返済義務を免れる

遺産相続においては、貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく借金や債務などのマイナスの財産も相続しなければなりません。

場合によってはマイナスの財産がプラスの財産を上回ってしまい、相続することで赤字になってしまうこともあります。

ですので、まずはプラスの財産とマイナスの財産がそれぞれどのくらいあるのかを調査しましょう。

マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続放棄することで借金などの返済を免れることが可能です。

メリット2.相続トラブルに巻き込まれない

相続放棄することで相続人ではなくなるため、相続人同士の争いや相続トラブルに巻き込まれずに済みます。

例えば「兄弟の仲が悪いので、顔も見たくない」という場合もあるかもしれません。

また「なるべく多くの財産を相続したい」という気持ちから、遺産の分け方がいつまでも決まらず、話合いが泥沼化してしまう恐れもあります。

このような場合、もし遺産相続することよりも相続トラブルを避けたいと考えているのであれば、相続放棄するとよいでしょう。

相続放棄すれば、親族間でトラブルが起きた場合も一切関係なくなり、そうした連絡自体も取る必要がなくなります。

不動産を相続放棄する前に知っておきたいこと

相続放棄は相続問題を手間なく解決できる方法ですが、注意点もいくつかあります。

例えば、相続放棄は特定の財産や債務だけ放棄することができないため、一部だけ相続したいという人には向いていません。

また、特定の行為で相続放棄ができなくなるケースもあるため、手続きが完了するまで注意を払う必要があります。

上記を含めた注意点を解説していくので、相続放棄をする前にしっかり押さえておきましょう。

不動産だけでなく「すべての相続財産」を放棄するのが原則

相続放棄をする場合、不動産だけでなく現金や証券など、あらゆる相続財産を放棄しなければいけません。

相続放棄をすると相続に関する一切の権利を失うため、特定の財産を選択して放棄できないのです。

「不動産は要らないけど他の財産は相続したい」という場合は、一旦すべての財産を相続して、後から不動産のみ売却するようにしましょう。

また、相続人が複数いるのであれば、遺産分割で不動産以外の財産をもらえるよう交渉するという方法もあります。

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法改正で土地のみ放棄できるようになる【2023年4月27日から】

原則としてすべての相続財産を手放す相続放棄ですが、2023年4月27日から施行される「相続土地国庫帰属法」では、土地のみ相続放棄できるようになります。

土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。出典:e-Govポータル「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」

この法律は、近年増えている「所有者不明の土地」の発生を抑制する目的で制定されました。相続で不要となった土地を国庫に帰属させることで、処分も活用もできない土地の発生を防ぐ狙いです。

ただし、通常の相続放棄と違い、その土地の所有者全員で申請する必要がある点に注意しましょう。複数人で相続したり、相続前から共有名義で共有者がいる場合は、所有権をもつ全員で申請しなければいけません。

要件もいくつか設定されており、下記のいずれか1つにでもあてはまれば申請はできない決まりです。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用・収益の権利(借地権など)が設定されている土地
  • 通路など他人に使用される土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界や所有権など権利関係に争いがある土地

また、下記の要件にあてはまる場合は、申請しても却下されてしまいます。

  • 崖地にあって管理に多大な費用・労力が必要な土地
  • 管理・処分の邪魔になる車両や樹木などがある土地
  • 除去が必要な埋設物がある土地
  • 隣接地の所有者などと争訟が必要な土地
  • 上記以外で管理・処分に多大な費用や労力がかかる土地

申請が承認された場合、30日以内に負担金を納入する必要があります。負担金は10年分の土地管理費用相当額が基準とされますが、具体的な金額は土地の状況次第です。

上記のように超えなければいけない要件は多いですが、選択肢の1つとして覚えておきましょう。

相続放棄ができないケースがある

3ヶ月以内に相続放棄の申告をしないと単純承認をしたとみなされますが、それ以外にも単純承認をしたものとみなされる行為(法定単純承認)が2つあります。

  • 相続財産の全部もしくは一部を処分した場合
  • 相続財産の全部もしくは一部を隠匿した場合

申告期限を過ぎた場合と同じく、上記の行為をした時点で相続放棄はできなくなり、この決まりを知らなかったとしても後から修正はできません。

それぞれどのような行為なのか、具体的な内容を見ていきましょう。

1.相続財産の全部もしくは一部を処分した場合

相続財産を処分した場合、相続放棄はできなくなります。処分とは、売買や贈与といった法律上のものと、解体などの物理的なものに分けられます。

不動産でいえば、建物の大規模なリフォームや建て替えも処分行為にあたるため、相続放棄前は不動産に手を加えないようにしましょう。

ただし、財産の現状維持に必要な保存行為については、相続放棄への影響はありません。不動産では、損壊や劣化した箇所を修繕する行為は、保存行為になります。

2.相続財産の全部もしくは一部を隠匿した場合

相続財産の全部もしくは一部の存在を知りながら隠したり、私的に消費した場合なども、相続放棄はできなくなります。

例えば、洋服や貴金属など一定の財産価値があるものを勝手に持ち去る行為や、被相続人の口座から現金を引き出す行為は、隠匿や消費とみなされます。

相続放棄をしたいなら、相続財産を隠さず、手続きが完了するまでは勝手に使わないようにしましょう。

ただし、下記にあげるケースでは隠匿や私的な消費にあたらず、法定単純承認は適用されません。

  • 葬儀や仏壇・墓地の費用を相続財産から支払う
  • 被相続人の債務で支払い期限がきたものの弁済を相続財産からおこなう
  • 財産価値の少ない品物の分配(形見分け)

却下された相続放棄は再申請できない

相続放棄を申請できるのは一度きりであり、裁判所に却下された場合、再申請はできません。

そのため、書類の不備や申請書の記載漏れで却下されないよう、書類は細かくチェックしましょう。

ただし、結果に不服があれば、審理が終わってから2週間以内に即時抗告することで、高等裁判所で再審理をしてもらえます。

即時抗告をしたからといって結果が変わるとは限りませんが、どうしても審理結果に納得できない場合は検討してみましょう。

参照:裁判所「即時抗告」

相続放棄が受理されると撤回や取消しはできない

一度受理された相続放棄は、原則として撤回や取り消しができません。

例えば、遺産の合計がマイナスになると思って相続放棄した後、高価な財産が見つかり結果的にプラスになるというケースでも、撤回や取り消しは不可能です。

このような事態を避けるためにも、相続が発生したら被相続人の財産調査をおこなうことが大切です。

相続放棄する前には「亡くなる前の被相続人には、財産と借金がどのくらいあったのか?」をしっかりと確認しておきましょう。

他の法定相続人がいないときは「相続財産管理人の選任」をしないと管理責任が消えない

先に解説したとおり、相続放棄された相続分は、他に相続人がいなければ国庫に帰属されます。ここで問題になるのが相続財産管理人の選任です。

詳しくは関連記事で解説していますが、相続財産管理人の選任には数十万~100万円超の予納金と、10ヶ月以上の期間が必要です。

相続財産が不動産であれば、その期間の管理は相続人の責任です。日々の手入れや修繕など、コストが発生してしまうでしょう。

このように、相続放棄は費用と手間がかかる上、手続きが完了するまでのリスクも背負うことになります。

相続でスムーズに不動産を処分したい場合は、一旦相続してから売却するなど他の方法も検討してみましょう。

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不動産を相続放棄する方法と流れ

相続放棄の手続きは、おおむね次の流れで進みます。

  1. 必要書類を準備する
  2. 家庭裁判所へ相続放棄の申述をする
  3. 照会書に回答して受理通知書を受け取る

すべての手続きが完了するまで、最短でも20日はかかります。先に解説した相続財産管理人の選任もおこなう場合、合計で1年以上かかるケースも珍しくありません。

なるべくスムーズに相続放棄を済ませたければ、弁護士や司法書士に代行を依頼しましょう。代理人として、面倒な手続きをほとんど任せられます。

1.必要書類を準備する

相続放棄にあたって必ず提出が求められる書類は次の3つです。

必要書類 入手先
相続放棄の申述書 裁判所のホームページ
被相続人の住民票除票又は戸籍附票 被相続人の本籍地の自治体窓口
相続放棄する人の戸籍謄本 本籍地の自治体窓口

上記に加えて、相続放棄する人の相続順位に応じて必要になる書類もあります。

申述人が被相続人の配偶者の場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
申述人が第一相続順位(子供)もしくはその代襲相続人(孫、ひ孫)である場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
申述人が第二相続順位(親もしくは祖父母)である場合
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している人がいる場合、その人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本※被相続人の父母が死亡しており、祖父母が相続人となる場合
申述人が第三相続順位(兄弟姉妹)もしくはその代襲相続人(甥・姪)である場合
・ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・第一相続順位もしくはその代襲相続人で死亡している人がいる場合、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・第二相続順位の人の死亡が記載されている戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

転居などで本籍地を変更している場合、複数の都道府県で戸籍謄本を取得する必要があるため時間がかかります。取得申請は郵送でも可能なので、具体的な方法は各都道府県に問い合わせてみましょう。

参照:裁判所「相続の放棄の申述」

2.家庭裁判所へ相続放棄の申述をする

書類を準備できたら、家庭裁判所へ相続放棄の申述をおこないます。申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

以下のリンクから、全国の裁判所を調べられるので参考にしましょう。

裁判所「裁判所の管轄区域」

郵送でも申述は可能ですが、書類に不備がないか不安な場合は、裁判所に直接出向いて窓口で提出するとよいでしょう。記載漏れや書き間違いなど、その場で指摘してもらえます。

なお、相続放棄をする人が未成年の場合、本人ではなく法定代理人(親など)が代わりに申述する必要があります。

3.照会書に回答して受理通知書を受け取る

裁判所に申述した後、およそ10日ほどで裁判所から照会書が届きます。照会書に必要事項を記載して返送しましょう。

記載事項は簡単な確認や氏名のみなので、それほど時間はかかりません。返送期限はおおむね2週間程度ですが、忘れないようになるべく早めに返送しましょう。

照会書を返送してから更に10日ほど経てば、裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。この通知をもって、相続放棄の手続きは完了です。

相続放棄の費用はどれくらい?

相続放棄にかかる費用は、手続きを自分でおこなうか、専門家に依頼するかで変わります。自分ですべての手続きをできるなら、かかる費用はおよそ3,000~5,000円です。

弁護士や司法書士といった専門家に依頼する場合は、その報酬が上乗せされます。統一されたルールはありませんが、相場はおよそ3万~10万円です。

さらに、自分以外に相続人がいない場合は相続財産管理人の選任が必要となるため、その費用として100万円以上かかる場合もあります。

それぞれの内訳を、さらに詳しく見ていきましょう。

自分で手続きする場合は3,000~5,000円程度が目安

自分で手続きする場合、必要となるのは家庭裁判所に納める収入印紙と連絡用の郵便切手、そして必要書類の取得費用です。

収入印紙は申述人1人につき800円と定められており、郵便切手は300円分程度です(地域によって異なる)。

必要書類は自治体によって取得費用が異なりますが、住民票はおおむね300円、戸籍謄本や除籍謄本は450~750円程度になります。

必要となる書類の数や取得先にもよりますが、これらすべてを合わせておよそ3,000~5,000円程度と考えましょう。

弁護士や司法書士に依頼すると3万~10万円程度かかるケースが多い

弁護士や司法書士に依頼する場合、書類の取得費用などに加えて報酬を支払う必要があります。

弁護士や司法書士は事務所ごとに独自の料金体系を設定しているため、費用に明確な基準はありません。傾向としては司法書士に依頼したほうが安くなり、おおむね3万~5万円が相場です。

一方、弁護士は5万~10万円程度が相場で多少高くなりますが、司法書士より業務上の権限が強いため、よりスムーズに手続きを進められます。

相続財産管理人の選任が必要な場合は100万円以上かかることもある

相続財産管理人を選任するときは、相続放棄とは別に費用がかかります。具体的な内容は下記の通りです。

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:およそ300円分
  • 官報公告料:4,230円
  • 予納金:数十万~100万円超

予納金は相続財産管理人の報酬や財産の管理費用にあてられ、金額は個別の事情で変わります。相続財産に現金があればそこから支出できるので、それほど多くはかからないでしょう。

破産管財人の業務が終了したとき(国庫への帰属が完了したとき)に予納金が余っていれば、申述人に返還されます。

しかし、業務終了までに使い切ってしまえば当然返ってきませんし、仮に返ってくるとしても高額の予納金を納めるのは大きな負担です。

相続放棄をするときは、費用面もしっかりと準備しておく必要があります。費用の準備が難しい場合は、放棄せず一旦相続してから処分することも考えてみましょう。

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不動産を相続放棄すべきか迷ったときは「債務超過するかどうか」で決める

「不動産はいらないけど相続放棄すべきか迷っている」という人も少なくありません。不動産以外の財産だけ欲しいというケースや、思い出のある家を処分するのは気が引けるケースなど、人によって理由もさまざまでしょう。

相続放棄をすべきか悩んだときの判断は、債務超過になるかどうかが重要です。相続財産をすべて処分しても債務を完済できない場合は、損失を受けないためにも相続放棄をおすすめします。

なお、債務は借金やローンだけでなく、慰謝料や損害賠償請求などもチェックしましょう。相続すると、これらの支払い義務も引き継ぐことになります。

債務が正確にわからない場合は「限定承認」も検討してみましょう。限定承認は相続財産の限度で債務を相続する方法のため、債務超過があっても自腹で穴埋めすることにはなりません。

一方、単に不動産がいらないということであれば、相続してから処分するとよいでしょう。売却が難しい物件でも、適切な不動産業者に相談すればスピーディーな売却が可能です。

築古のボロ家や郊外の物件でも売却は可能

不動産の相続放棄を検討するときに多いのは、次のような理由です。

  • 築年数が古くボロボロの状態
  • 郊外や田舎にあり不動産の利用予定がない
  • 雨漏りや事故物件などなんらかの問題がある

いずれも利用価値がなく、売却も難しいという問題が根底にあります。

しかし、ボロ家や郊外の物件であっても、それらの取り扱いに慣れている不動産業者に相談すれば、高額・スピーディーな売却が可能です。

相続放棄は不動産の管理責任を避けられるという点が大きなメリットですが、その代わり相続で得られるはずだった利益は一切なくなってしまいます。

そのため、すぐに相続放棄するのではなく、まずは相続財産の不動産がいくらで売れるのか調べてみましょう。しっかりと不動産業者を選べば、想定より高値で売れるかもしれません。

「弁護士と連携した不動産業者」なら相続登記前の相談もOK

相続問題がからむ不動産の売却は、権利関係や法手続きが複雑になるため、一般的な不動産業者では取り扱いが困難です。

そのため、弁護士と連携した不動産業者に相談し、相続問題のことも一緒に相談してみるとよいでしょう。法律面のサポートが手厚くなるので、相続登記前の物件であっても安心して相談できます。

当サイトを運営するクランピーリアルエステートも、相続不動産の買取実績が豊富にあるため、個々の事情に合わせた具体的なアドバイスが可能です。

無料相談も受け付けているので、相続にあたって不動産の売却を検討する際はお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

相続放棄は、不要な不動産の相続を回避するのに便利な制度です。債務があって相続すると赤字になるようなケースでは、相続放棄をしたほうがよいでしょう。

ただし、相続放棄は費用や手間がかかりますし、金銭的なリターンもありません。債務超過にならず、不動産に少しでも売値がつくようならば、相続してから売却したほうがお得です。

スムーズに不動産を処分したいのであれば、弁護士と連携した買取業者に相談してみましょう。相続問題から不動産売却まで、スピーディーかつ的確なサポートを受けられます。

不動産の相続では、コストやリターンを踏まえてベストな方法を選択することが大切です。個別の事情に合わせて、もっともメリットの大きい選択肢を取りましょう。

不動産と相続放棄についてよくある質問

相続財産のうち、土地や建物だけ相続放棄することはできますか?

相続放棄では、特定の財産だけ放棄することはできません。不動産だけでなく、現金など他の相続財産もすべて放棄する必要があります。

相続放棄に期限はありますか?

「相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内」が期限です。一般的には、被相続人が亡くなってから3ヶ月となります。

放棄した相続分はどうなりますか?

他の相続人のものになります。他の相続人がいない場合は、国庫に帰属され国の管理となります。

相続放棄をすれば、不動産の管理責任はなくなりますか?

基本的にはなくなりますが、他の相続人がいない場合は「相続財産管理人の選任」が必要です。相続財産管理人が選任されるまでは、財産の管理責任が残るので注意しましょう。

相続放棄にかかる費用はどれくらいですか?

自分で手続きする場合は3,000~5,000円程度、弁護士や司法書士に依頼すると3万~10万円程度が目安です。相続財産管理人の選任が必要な場合は、さらに数十万~100万円超かかることもあります。

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