不動産を売却したいときは、一般的に仲介業者へ依頼します。仲介業者は、売主の代わりに買主募集をおこない、売買契約の締結をサポートする不動産会社です。
不動産売却で頼りになる存在となる一方、仲介業者を原因とするトラブルが起こっているのも事実です。不動産流通推進センターの2022年調査では、不動産取引の苦情紛争相談件数は年間1,163件もあります※。
※参照:公益財団法人不動産流通推進センター「2022 不動産業統計集」
トラブルの予防や対応に必要なのは、知識の把握と事前の準備・心構えです。この記事では、不動産仲介業者を原因とするトラブル例を解説するので、ぜひ売却前の参考にしてください。
なお、トラブルを避ける一番重要な対策は、優良な仲介業者を見つけることです。コンプライアンスを守り、売主のことを親身に考えてくれる業者なら、スムーズな高額売却を実現できるでしょう。
仲介業者の選別は、複数業者を比較することが最短かつ確実な方法です。まずは一括査定を使い、複数の仲介業者に査定を依頼してみましょう。
不動産仲介業者を利用した売却のトラブル例14選
不動産仲介業者を利用した売却のトラブルには、契約内容に関するものや金銭に関するものなど、さまざまな種類があります。
不動産仲介業者との直接的なトラブルだけでなく、ずさんな売却活動のせいで買主とのトラブルに発展するケースもあり、場合によっては訴訟問題になることもありえるでしょう。
トラブルを防ぐためには、まず「具体的なトラブルの内容」を知っておくことが大切です。知識として把握しておくことで、悪質な仲介業者に引っかかる確率を下げられます。
代表的なトラブル例14個を詳しく紹介していくので、トラブルのない不動産売却を実現するため、ぜひ参考にしてください。
仲介手数料に関するトラブル
不動産の売却を仲介業者に依頼した場合、成約時に仲介手数料を支払います。
仲介手数料には「売却活動の経費」と「不動産会社の利益」が含まれており、仲介業者への支払いは原則として仲介手数料のみとなります。
仲介手数料の上限額は国土交通大臣に決定権があり、2022年12月現在は次のように定められています。
売買価格のうち200万円以下の部分 | 売買価格×5%+消費税 |
---|---|
売買価格のうち200万円超~400万円以下の部分 | 売買価格×4%+消費税 |
売買価格のうち400万円超の部分 | 売買価格×3%+消費税 |
参照:国土交通省「宅地建物取引業法関係 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
例えば、売買価格が1,000万円だった場合、計算式は次のようになります。
また、売買価格が400万円以上の場合は、「売買価格×3%+6万円+消費税」という速算式で計算することも可能です。
売買価格が1,000万円だった場合、特別な事情がなければ39万6,000円以外の金銭は一切支払う必要がありません。
不必要に金銭を騙し取られないよう、上記にあげた計算式を理解し、仲介手数料の上限を把握しておきましょう。
例外として、売主から特別なサービス(追加広告や遠方への出張)を依頼した場合、売主の合意を得たうえで経費を上乗せすることが可能です。また、400万円未満の空き家などを売買する場合、上限額は一律で18万円+消費税となります。
媒介に関する書面のトラブル
不動産仲介業者に売却を依頼することを「媒介契約」といいます。仲介業者は契約内容について書面を使った説明の義務がありますが、その内容が不十分だとトラブルに発展します。
媒介契約に関する書面で、重要となるポイントは以下の通りです。
- 物件の所在
- 査定額とその根拠
- 媒介契約の種類(一般・専任・専属専任)
- 有効期間・解除要項
- レインズ※への登録の有無
- 報酬
- 契約違反したときの措置
※レインズ:不動産業者が物件の売買・賃貸情報を共有するネットワークシステム。
仲介業者の説明が不適切だと、「レインズに登録されず売却が長引いた」「他の仲介業者にも依頼するつもりが1社にしか依頼できないようになっていた」などのトラブルが起こります。
トラブルを避けるためには、上記にあげたポイントを参考に、どのような内容で媒介契約を結ぶのかしっかり確認しておきましょう。
囲い込みに関するトラブル
前の項目でも少し触れましたが、媒介契約には「一般・専任・専属専任」の3つがあります。
媒介契約 | メリット | デメリット |
---|---|---|
一般媒介契約 | ・同時に複数の不動産会社へ依頼できる ・自分で買主を見つけても良い |
・不動産会社にレインズへの登録や状況報告の義務なし |
専任媒介契約 | ・不動産会社は7日以内にレインズへ登録する義務がある ・2週間に一度以上、必ず状況報告がある ・自分で買主を見つけても良い |
・1社にしか仲介を依頼できない |
専属専任媒介契約 | ・不動産会社は5日以内にレインズへ登録する義務がある ・1週間に一度以上、必ず状況報告がある |
・1社にしか仲介を依頼できない ・自分で買主を見つけるのは不可 |
上記のうち、専任媒介や専属専任媒介で依頼する場合、「囲い込み」に注意が必要です。囲い込みとは、仲介業者が自社で買主を見つけるため、他社からの購入申し込みを遮断する行為をいいます。
自社で買主を見つければ、仲介業者は売主・買主の双方から仲介手数料をもらえるので、囲い込みをおこなうことで自社の利益を大きくできます。
しかし、売主にとっては売却の機会を減らすことになり、デメリットしかありません。半年、1年と、売却期間が長引いてしまうのです。
囲い込みをされていないか確認するためには、次の点をチェックしてみましょう。
- 物件になんの問題もないのに売却期間が長引いていないか
- 内見希望が少なくないか、他社を介した申し込みがあるか
- レインズの取引状況が「公開中」になっているか
とくに、買主が見つかっていないのにレインズの取引状況が「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」となっている場合、囲い込みをされている可能性が高いでしょう。
重要事項説明に関するトラブル
不動産の売買では、成約前の「重要事項説明」が義務付けられています。重要事項説明とは、仲介業者から買主に対して、物件の重要な情報や契約条件などを説明するものです。
説明内容は正確でなければいけませんが、仲介業者の説明が不十分でトラブルになることがあります。
重要事項説明の内容に間違いがあると、買主から「契約不適合責任」を問われ、損害賠償などを請求されるかもしれません。
売却物の品質や数量などが契約内容と合わないとき、売主が負うべき責任範囲を定めたもの。損害賠償のほか、代金減額や追完(修繕や補填)、契約解除を請求される場合がある。
トラブルを避けるためには、売主側も重要事項説明の書面を確認し、内容に記載もれや間違いがないかチェックすることが大切です。
とくに、物件の瑕疵(欠点や欠陥)がある、もしくはその疑いがある場合は、買主と認識のすり合わせができているか確認しましょう。
不動産の瑕疵に関するトラブル
前の項目でも触れた「瑕疵」とは、物件の欠点や欠陥を指す言葉です。不動産売却時はどのような瑕疵があるかを買主に告知する義務があり、その説明を仲介業者がおこないます。
仲介業者の説明が不十分だとトラブルになるのはもちろんですが、売主が瑕疵を隠すことで揉めてしまうケースもあります。
査定時に問題となる瑕疵は調査されますが、売主自身も瑕疵を隠さず、正直に伝えることが大切です。
なお、瑕疵はその内容によって、次のような種類に分けられます。
瑕疵の種類 | 内容 |
---|---|
物理的瑕疵 | 雨漏り・白アリ被害・家の傾きなど、物理的な問題がある物件 |
心理的瑕疵 | 自殺物件・孤独死物件など、心理的に嫌悪感が発生する物件 |
環境的瑕疵 | 騒音・日照障害・嫌悪施設など、周辺環境に難点がある物件 |
法的瑕疵 | 再建築不可・使用制限など、法律上の規制対象となる物件 |
買主に瑕疵を説明するときは「物件状況等報告書」という書類が作成されるので、売主としてその内容を確認しておきましょう。
また、ホームインスペクション(住宅診断)で瑕疵を調査しておけば、買主へより正確に瑕疵を説明できるので、トラブルの可能性を下げることができます。
売買契約の書面に関するトラブル
買主が決まれば仲介業者が売買契約書を作成しますが、その内容にも注意が必要です。必須事項が記載されていなかったり、内容が間違っていたりすると、トラブルが起きてしまいます。
売買契約に関する書面で重要となる記載事項は、次の通りです。
- 売主・買主の氏名や住所
- 不動産を特定する表示(所在など)
- 売買代金や支払い時期・支払い方法
- 物件の引き渡し時期
- 移転登記の申請時期
- 建物の構造上主要な部分等の状況
- 契約解除について
- 契約不適合責任について
- 租税公課の負担について
- 天災・その他不可抗力による損害の負担について
- 損害賠償や違約金について
- 住宅ローン特約・買い戻し特約について
これらは法律で定められた記載事項ですが、仲介業者のミスで不備があったり、悪意をもって異なる内容を記載していたりするケースがあります。
契約締結後に修正することは困難なので、署名捺印をする前に記載内容を隅々までチェックしましょう。
契約解除に関するトラブル
売買契約の締結後でも、一定の理由があれば契約を解除できる場合があります。
解約できる理由として代表的なものは、次の通りです。
- 契約不適合責任
- 契約不履行(相手方の履行遅滞や履行不能)
- 解約手付(買主は手付金の放棄、売主は手付金の倍額返還)
- 買い戻し特約(売主に一定期間内の買い戻しを認めた特約)
- ローン特約(買主のローン不成立時に無条件での解約を認めた特約)
上記のうち、契約不適合責任や契約不履行は「法定解除」といい、事前の取り決めがなくても解約を請求できます。残りの3つは「約定解除」といい、契約で事前に定められていることが必要です。
契約解除を巡る仲介業者とのトラブルとしては、次のようなケースがあげられます。
- 法定解除ができるのに「契約で定めていないから」と解約を認めないケース
- 契約には定められていない解約金を騙し取られるケース
- 仲介業者の説明不足で、解約条件の認識が売主と買主で異なっていたケース
トラブルを防ぐためには、売買契約書をチェックするとき、売主・買主双方の視点で解約条件を確認することが重要です。
管理規約に関するトラブル
売却物件がマンションの場合、買主へ管理規約の説明がおこなわれますが、仲介業者の説明不足からトラブルになることがあります。
管理規約はそれぞれのマンションが独自に定めるため、住民もすべて把握していないことが多く、間違いが起こりやすいのです。
例えば、楽器の使用制限やバルコニーでの布団干し禁止など、細かい規約を説明せず買主からクレームが入るケースも少なくありません。
管理規約は、管理組合やその理事に相談すれば、最新のものが手に入ります。売主のほうで取得し、仲介業者を通して買主へ渡すとよいでしょう。
誇大広告などに関するトラブル
買主を探すときは物件の広告をだしますが、その内容は「宅建業法」と「不動産の表示に関する公正競争規約」で規制されています。
主な広告の規制内容は、次の通りです。
- 誇大広告の禁止(実際より優良であると誤認させる行為の禁止)
- 広告開始時期の制限(開発許可や建築確認のない物件の広告禁止)
- 取引態様の明示(媒介なのか、不動産会社が直接販売しているのか明記)
- 表示の基準(面積や駅徒歩距離など記載すべき事項の定め)
- 用語の規制(「最高」「格安」などの言葉を根拠なく使用することの禁止)
これらの規制を守らない仲介業者はコンプライアンス意識の低い業者なので、なるべく関わらないようにしましょう。
契約時期の制限に関するトラブル
仲介業者は、未完成物件の売買によるトラブルを防ぐため、建築確認や開発許可の終わっていない物件の売買・媒介が禁止されています。
宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物につき、自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない。
中古住宅のように既存の不動産を売るときは問題ありませんが、新築・建て替え中の建物であったり、田畑から宅地へ開発中の土地などを売るときは、先に建築確認や開発許可を済ませなければいけません。
一般的な仲介業者はこうした制限も踏まえたうえで売却活動をおこないますが、知識やモラルの低い業者だと制限を無視して売り始めることもあります。
未完成物件の売買は「完成予想図と違った」「引き渡しが遅れたせいで損害が出た」といったトラブルが多いため、しっかり制限を守る仲介業者に依頼することが大切です。
相手方の保護に欠ける行為のトラブル
「相手方の保護に欠ける行為」とは、仲介業者が売主・買主に対してやってはいけない行為のことです。
具体的には、
- 事実を隠す、事実と異なる情報を告げる
- 不当に高額の報酬を請求する
- 契約を急かしたり強制したりする
といった行為があげられます。
売主自身が被害に遭うことも重大な問題ですが、買主に対して上記のような行為をおこないトラブルを起こすケースもあります。
売主にとって都合の良いことを言う仲介業者でも、買主とトラブルを起こすようだとスムーズな売却ができません。
不動産会社を選ぶときは、しっかりとコンプライアンスを守れる仲介業者を選ぶことが大切です。
申込証拠金・手付金・中間金などの返還に関するトラブル
必ずではありませんが、不動産売買では買主が申込証拠金・手付金・中間金といった金銭を支払うことがあります。
- 申込証拠金:購入申し込み時に支払い、後から現れる購入希望者より優先してもらうための金銭。
- 手付金:売買契約を締結したことを示すものとして支払う金銭。
- 中間金:売買代金の一部を先払いした金銭。
これらは仲介業者が預かり、売買代金の一部として精算されるのが一般的ですが、解約となった場合は基本的に返還されます(解約手付を除く)。
しかし、仲介業者が返還を拒むことで、買主とトラブルになる場合があります。上記の金銭を仲介業者から受け取っていた場合、売主もトラブルに巻き込まれてしまうでしょう。
売主としてトラブルを防ぐためには、物件引き渡しまでに受け取る金銭がどのような名目であるかや、返還が必要な可能性はあるかなどを、仲介業者に確認することが大切です。
個人情報などの漏洩に関するトラブル
不動産売買では多くの個人情報を扱うため、情報漏洩のリスクがあります。SNSに投稿されたり、他の企業に流出されたりすることで、精神的苦痛を受けることもありえるでしょう。
一度情報が漏洩すると対処がむずかしく、損害賠償を請求しようと思ってもそれほど多くの金額を取れないケースが大半です。そのため、業者選びの時点で遵法意識の高い仲介業者を選ぶことが大切です。
具体的には、どのような情報を取得し、その情報がどのように使われるのか、媒介契約を結ぶ前にしっかり確認しておきましょう。説明が不十分だと感じたら、その仲介業者には依頼しないことをおすすめします。
不動産仲介業者の倒産に関するトラブル
売却活動中、依頼した仲介業者が倒産してしまう可能性もゼロではありません。仲介業者が倒産した場合、進行中の売却活動は破産管財人が事務処理をおこない、媒介契約を解除するか、契約通り業者に仲介を続行させるか選択します。
管財人が媒介契約の解約を選んだ場合、仲介手数料をすでに支払っているときは、返還請求することで手数料を取り返すことが可能です。
一方、管財人が仲介の続行を選んだ場合、媒介契約の内容通り買主を見つけてもらい、仲介手数料を支払うことになります。
また、一旦媒介契約を解除したうえで、倒産した仲介業者の親会社などに売却活動を引き継ぐ場合もあります。
いずれにしろ、「契約解除」か「仲介の続行」のどちらかになるため、手付金が無駄になるなど金銭的な不利益はないでしょう。
不動産仲介業者とトラブルになったときの相談先
不動産仲介業者を利用したときのトラブル例を紹介しましたが、実際にトラブルが起こってしまった場合、どこへ相談すればよいのかわからない人も多いでしょう。
具体的な相談先としては、次の4つがあげられます。
- 弁護士
- 国民生活センター・消費者生活センター
- 不動産会社の業界団体
- 不動産公正取引協議会
それぞれどのような相談窓口なのか、詳しく見ていきましょう。
弁護士
弁護士は、法律的な相談全般に的確なアドバイスを出し、解決まで親身になってサポートしてくれます。
損害賠償請求や返金請求など、具体的なアクションにすぐ取り掛かりたい場合は、最初に弁護士へ相談しましょう。
ただし、弁護士にも得意な法律ジャンルがあるので、ホームページなどで不動産関連のトラブル解決を打ち出している法律事務所へ相談するのがおすすめです。
国民生活センター・消費者生活センター
国民生活センターや消費者生活センターは、消費者の安心・安全を守るための組織です。問題解決に向けた助言や斡旋のほか、必要に応じて問題のある業者へ処分・指導などもしてもらえます。
不動産売買だけでなく、消費生活で起きたトラブル全般の苦情相談を受け付けているので、困ったことがあれば気軽に相談してみましょう。
なお、国民生活センターは国、消費者生活センターは都道府県を管轄していますが、連携を取っているのでどちらに相談しても大丈夫です。相談窓口の連絡先などは、国立生活センターのWebサイトで紹介されています。
不動産会社の業界団体
業界団体とは、同業企業が集まって業界の発展や健全化を進めるための組織です。不動産業界では次の4団体があり、それぞれ加盟業者の指導・育成をおこなっています。
トラブル相手の仲介業者が所属する業界団体に相談すれば、直接注意をしてもらえることもあるので、スムーズに問題解決できる可能性があります。
不動産公正取引協議会
不動産公正取引協議会とは、不動産広告の適性化を推進するための組織です。全国に9つの組織があります。
不動産広告に関する被害の相談対応が主ですが、仲介業者の出す広告内容に対して「違法ではないか?」という疑問があるときにも活用してみましょう。
各地域の管轄については、不動産公正取引協議会連合会のWebサイトから調べることができます。
不動産仲介業者とのトラブルを避けるための予防策
どんなトラブルも未然に防ぎたいものですが、不動産取引に慣れていないと、事前にトラブルの兆候を判断するのは困難です。
そこで、トラブルの確率を下げられるような予防策として、次の7つを紹介していきます。
- 複数の仲介業者を比較する
- 仲介業者の免許を確認する
- 担当者の人柄や能力を確認する
- 業者と積極的にコミュニケーションを取る
- 自分の希望を押し付けすぎない
- 契約書などの内容は隅々までチェックする
- 書類関係はすべて保存しておく
これらの予防策を押さえておけば、不動産売却が初めてという人でもトラブルに巻き込まれにくくなるでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
複数の仲介業者を比較する
もっとも確実なトラブル回避の方法は、実績のある優良業者を選んで依頼することです。悪質業者や能力の低い業者を避ければ、自然とスムーズに売却を進められます。
そして、優良業者を見極めるために重要なのは「複数業者の比較」です。1社だけしか見ないと判断基準がわかりませんが、複数の仲介業者を見比べれば各社の特徴がわかります。
まずはいくつかの仲介業者に査定をしてもらい、査定額やその他の売却条件、レスポンスの早さなどを比べましょう。そのなかから優良業者を選り分ければ、トラブルのない不動産売却が可能です。
一括査定で優良業者を探すのがおすすめ
「仲介業者を比較することが大切」といっても、具体的にどうやって比較すればよいかわからない人も多いでしょう。1社ずつ下調べして連絡を取るというやり方だと、時間がかかって非効率的です。
そこでおすすめなのが、オンラインから申し込める「一括査定サイト」の利用です。一括査定サイトなら複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるので、手間なく仲介業者を比較できます。
例えば、下記のリンクから利用できる「イエウール」では、サイト運営者のほうでも悪質業者の排除をおこなっているので、安心して査定申し込みが可能です。
大手不動産会社から地元密着型の企業まで2,000社以上の優良業者が揃っているので、トラブルなく高値で不動産を売るために、ぜひ活用してみましょう。
仲介業者の免許を確認する
不動産の売買を取り扱う業者は、必ず宅地建物取引業免許証を受けなければいけません。無免許で宅建業をおこなうと犯罪となり、懲役や罰金などの処罰を下されます。
逆にいえば、宅建業免許をもっていれば国や自治体に認可された企業であり、一定の信用があるといえます。
宅地建物取引業者(宅建業の免許を受けた業者)は国土交通省のWebサイトで調べることができるので、依頼前に免許を受けているか確認し、業者の信用性をチェックしてみましょう。
ただし、免許をもっていながら悪質行為をする悪徳企業もいるので、免許の有無だけで優良業者を見極められるわけではありません。あくまで目安の1つとして考えましょう。
担当者の人柄や能力を確認する
企業としての信頼性があっても、直接やり取りする担当者に問題があると、売却がスムーズに進みません。
顧客に対する態度、質問に対する返事の早さや的確さ、売却活動を進めるための提案内容などから、信頼に値する担当者を見つけることが重要です。
信頼できない担当者にあたってしまったときは、会社のほうへ直接相談し、場合によっては担当者を替えてもらうこともお願いしてみましょう。
業者と積極的にコミュニケーションを取る
初めての不動産売却では、「仲介業者にすべて丸投げしてしまう」という失敗に陥りがちです。確かに、仲介業者は売却活動のほとんどを進めてくれますが、すべての最終決定権は売主にあります。
売却活動の方針も、最終的な売却価格も売主が決めることなので、仲介業者の言いなりにならず自分の意思をしっかり伝えるようにしましょう。
すべてを丸投げしていると、自分の意向とは違う形で取引が進んでしまいます。また、囲い込みなど仲介業者の都合で売却活動が阻害されても、すぐには気がつけません。
自分から積極的にコミュニケーションを取り、業者と一緒になって売却活動をおこなう意識が大切です。
自分の希望を押し付けすぎない
自分の意思をもって売却にあたることは重要ですが、あまりにも自分の希望にこだわりすぎると、売却活動に支障が出てしまいます。
仲介業者は、不動産の管理状態や市場動向など、さまざまな要素を考慮して最善のアドバイスをしてくれます。ときには耳を貸し、自分の希望条件から妥協できるところを探してみましょう。
また、仲介業者との関係性が悪化してしまうと、売却期間が長引く恐れもあります。担当者としても、良い買主には良い売主をあてたいものなので、「厄介な売主」と思われると、物件を放置されるかもしれないのです。
自分の意見をもつことも大切ですが、状況を冷静に分析し、柔軟に対応していくことがスムーズな売却のコツとなります。
契約書などの内容は隅々までチェックする
先にも何度か述べましたが、契約書などの書面はしっかりと読み込み、間違いがないか確認しましょう。
契約は契約書に書かれた内容が最終的なルールになるため、後から「話が違う」と主張しても修正は困難です。事前の取り決めと矛盾がないかや、抜け・漏れがないかなど、入念にチェックしましょう。
自分で確認するだけでは不安ということであれば、司法書士を雇うのも1つの方法です。司法書士は法律書類の専門家なので、契約書に不備があれば指摘が可能です。
書類関係はすべて保存しておく
不動産売買にはさまざまな書類が作られますが、それらをすべてまとめておき、いつでも確認できるよう保存しておきましょう。
書類が残っていれば、後からトラブルが起こってもどのような取り決めだったかがすぐにわかります。万が一調停や訴訟になった場合、証拠として使えるかもしれません。
どの書類が必要になるかはわからないので、細かい金額の領収書など、一見不要なものでも念のため取っておきましょう。
まとめ
不動産仲介業者を利用すると、さまざまなトラブルが起こるリスクもあります。
しかし、実際のトラブル件数は全体から見てごく少数ですし、正しい知識をもっていれば予防や対応もできます。神経質になりすぎず、協力して売却活動にあたることが大切です。
仲介業者は不動産売却に欠かせないパートナーなので、なるべく高値で売るためにも、一括査定を使うなどして慎重に選びましょう。優良業者と出会えれば、トラブルのないスムーズな売却が可能です。
不動産仲介業者とのトラブルについてよくある質問
仲介手数料には「売却活動の経費」と「不動産会社の利益」が含まれているため、原則として仲介手数以外に支払う必要はありません。ただし、売主が特別なサービス(追加広告や遠方への出張)を依頼し、事前に費用について合意しているのであれば、追加請求は合法となります。
本社に連絡して担当者を替えてもらうか、依頼する仲介業者自体を替えてしまいましょう。企業としての体質自体が合わない場合もあるので、信頼できないと感じたら早めに切り替えることをおすすめします。
国民生活センター・消費者生活センターや、仲介業者が所属する業界団体が代表的です。弁護士も、初回相談無料の事務所や法テラスを利用することで、お金をかけずに相談できます。
複数の仲介業者を比較して、優良業者を見つけることが効果的です。他には、業者と積極的にコミュニケーションを取ったり、書類は隅々までチェックするなどの予防策があります。
基本的には、仲介手数料や司法書士報酬など、消費者としてサービスを利用する際の費用に課せられます。ただし、課税事業者として収益物件を売る場合、個人でも納税義務が発生し、確定申告で不動産の売却代金にかかる消費税を納めなければいけません。