不動産会社に仲介を依頼すると仲介手数料を支払う必要があるので「自分で買主を探して不動産の個人間売買をおこないたい」と考える人も多いのではないでしょうか。
不動産の個人間売買は法律的に問題ありませんが、自分で手続きをおこなうので手間や時間がかかる上、専門家を介さないのでトラブルが発生しやすいデメリットもあります。
そのため、トラブルなく不動産を売るなら個人間売買にこだわらず、価格査定・必要書類の作成だけなど、部分的にでも不動産会社を利用することをおすすめします。
この記事では、不動産の個人間売買におけるメリット・デメリットや実際の流れなどを解説します。
不動産の個人間売買でよくあるトラブルもわかるので、トラブルなく個人間売買を成功させたい人はぜひ参考にしてみてください。
目次
不動産の個人間売買は法律的にも可能
不動産を売却する際は不動産会社に仲介を依頼するのが一般的ですが、不動産会社を介さずに個人間売買をおこなっても法律的には問題ありません。
なぜなら、不動産売買を業としておこなう場合は宅地建物取引業の免許が必要ですが、個人がマイホームを売買する程度であれば、宅地建物取引業法には違反しないからです。
宅地建物取引業法 第2条2
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
不動産の個人間売買を考える人の多くは「仲介手数料を節約したい」と考えているとおり、不動産会社を介さずに個人間売買をおこなえば仲介手数料を支払わずに済みます。
以下のように買主・売主の両者が見知った関係である場合、不動産会社を介さずに不動産の個人間売買をおこなうケースが多いです。
- 所有地を隣人に売却する
- 貸している土地を借主に売却する
- 借地権者に相手の家が建っている底地を売却する
ネットを通じて不動産の個人間売買ができる「個人間売買専門サイト」もあるので、不動産の売主・買主を探している人は利用してみるとよいでしょう。
不動産の個人間売買におけるメリット
不動産の個人間売買をおこなうメリットは以下のとおりです。
- 仲介手数料や消費税がかからない
- 当人同士で契約内容などを自由に決められる
- 内覧や引き渡し等のスケジュールが組みやすい
不動産の個人間売買をおこなう最大のメリットは、仲介手数料や消費税がかからない点で、不動産会社に仲介を依頼する場合より費用を節約できます。
また、不動産会社を介さずに売主・買主間で契約内容やスケジュールを自由に決められるので、自由度が高い点もメリットといえるでしょう。
この項目では、不動産の個人間売買におけるメリットを解説します。
仲介手数料や消費税がかからない
不動産の個人間売買をおこなう場合、不動産会社を介して売買する場合とは異なり、仲介手数料・消費税がかからない点がメリットです。
仲介手数料は不動産会社がおこなう売却活動に対する報酬ですが、個人間売買では不動産会社に売却活動を依頼しないので支払う必要がありません。
消費税は事業者が不動産売買をおこなう場合に課税される税金であり、個人がおこなう不動産売買は資産の譲渡と見なされるので消費税が課税されません。
不動産の個人間売買をおこなう場合、以下の仲介手数料・消費税を負担せずに済むので、出費を抑えて不動産売買をおこないたい人におすすめです。
種類 | 金額 |
---|---|
仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
消費税 | 建物部分の売却価格×10% |
当人同士で契約内容などを自由に決められる
不動産の個人間売買をおこなう場合、知人や親族といった顔見知りが取引相手になるケースが多いため、当人同士で契約内容などを自由に決められる点もメリットです。
仲介で不動産売買をおこなう場合、不動産会社の担当者からアドバイスを受けながら価格や条件などを決めますが、取引の自由度が失われてしまう欠点もあります。
個人間売買では取引内容を売主・買主間で全部決めるので、売却する物件の価格・売買契約の条件など、不動産会社の介入を受けずに当人同士で自由に決められます。
ただし、売主・買主間で契約内容を自由に決定できる反面、トラブルが起きるケースも多いので、売買契約書を作成して必ず契約内容を書面に残すようにしましょう。
内覧や引き渡し等のスケジュールが組みやすい
不動産の個人間売買をおこなう場合、知人や親族といった顔見知りが取引相手になるケースが多いため、内覧や引き渡し等のスケジュールが組みやすい点もメリットです。
一般的な不動産売買は不動産会社を介して連絡するため、やり取りに時間がかかりますが、個人間売買は直接連絡を取り合うのでスムーズに話が進みやすいです。
具体的には、現地確認や内見・契約日や引渡し日のスケジュール調整だけでなく、契約内容や価格交渉の話し合いにかかる時間も短縮できます。
例えば、不動産会社に仲介を依頼する場合は定休日だと対応できませんが、個人間売買は当事者同士のスケジュールが合えば素早いスピード感で不動産売買がおこなえます。
不動産の個人間売買におけるデメリット
不動産の個人間売買をおこなう場合、次のデメリットも伴います。
- 住宅ローンの利用が困難(買主側)
- 売却までの準備に手間と時間がかかる(売主側)
- 物件の適正価格を判断できない
- トラブル発生時の対処が難しい
不動産の個人間売買をおこなう最大のデメリットは、売却の準備を売主が全部おこなわなければならない点で、不動産会社に仲介を依頼する場合より手間や時間がかかります。
また、不動産会社という専門家がおらず、不動産の適正価格や法律に詳しい人物が不在の状態で不動産売買をおこなうため、トラブルが発生しやすい点もデメリットです。
この項目では、不動産の個人間売買におけるデメリットを解説します。
【買主】住宅ローンの利用が困難
住宅ローンを組んで不動産を購入する買主もいますが、不動産の個人間売買をおこなう場合は買主側の住宅ローン審査が通りにくい点がデメリットです。
なぜなら、銀行は住宅ローン審査時に不動産会社が作成する重要事項説明書の提出を求めるため、個人間売買では重要事項説明書がないので融資を受けられないからです。
不動産の専門家ではない銀行は売買対象の価値を査定できないため、適正な不動産価格を証明するために、不動産会社が作成した重要事項説明書の提出を求めてきます。
重要事項説明は宅地建物取引士だけがおこなえるため、個人間売買で住宅ローンを利用する場合は、不動産会社に依頼して重要事項説明を実施してもらう必要があります。
【売主】売却までの準備に手間と時間がかかる
不動産売買では必要書類や手続きの準備が必要ですが、個人間売買の場合は不動産会社のサポートが受けられないので、売却までの準備に手間や時間がかかります。
不動産売買では、登記簿謄本・公図といった数多くの必要書類を用意する必要があり、不動産の所在地を管轄する法務局・市区町村役場の窓口で取得しなければなりません。
不動産会社に仲介を依頼する場合、必要書類の取得を不動産会社に任せることも可能ですが、個人間売買では売主自身が法務局や市区町村役場で取得する必要があります。
とくに、法務局は土日祝日の受付をしておらず、平日働いている人は有給などを利用しないと必要書類を用意できないので、非常にハードルが高いといえます。
他にも、売買契約書も自分で作成する必要があるので、手間や時間をかけずに不動産を売りたい人は個人間売買ではなく不動産会社に仲介を依頼しましょう。
物件の適正価格を判断できない
不動産の個人間売買では売主・買主ともに不動産の専門家ではないため、売買する物件の適正価格を判断できずにトラブルが起こりやすいです。
不動産会社に仲介を依頼する場合、類似物件の成約価格・不動産市場の動向などを参考に専門家が適正価格を算出してくれるので、提示された価格に納得しやすいです。
一方、個人間売買では売主・買主ともに不動産の適正価格を把握しておらず、お互いに根拠のない価格を提示するので、価格の話し合いがまとまりにくい傾向にあります。
相場よりも著しく低い金額で不動産を売却すると、贈与税が課税される恐れもあるので、仲介を依頼しない場合でも不動産会社の無料査定で適正価格を確認しておきましょう。
トラブル発生時の対処が難しい
不動産の個人間売買をおこなう場合、売主・買主ともに不動産に関する法律知識が少ないので、トラブル発生時の対処が難しい点もデメリットです。
不動産会社に仲介を依頼すれば、トラブル発生時でも不動産会社が第三者視点から法的根拠をもった意見を述べてくれるので、スムーズにトラブルを解決しやすいです。
個人間売買では売主・買主ともに不動産の専門家ではないので、契約不適合責任や売買価格に関するトラブルが起こりやすく、トラブル解決にも時間がかかる傾向にあります。
最悪の場合、売買契約の解除に発展する恐れもあるので、トラブルなく不動産売買をおこないたい人は双方の主張を調整する役割として、不動産会社に仲介を依頼しましょう。
不動産個人間売買の流れ
不動産の個人間売買は以下の流れでおこないます。
・売却する不動産の価格と相場を調べる
・必要書類を用意
・売却価格を決める
・買主を探す(決まっていない場合)
・買主の内覧と価格交渉・条件決め
・売買契約書の作成
・物件の引き渡しと所有権移転
一般的には、仲介で不動産売買をおこなう場合、不動産会社と媒介契約を結んだ後に買主を探すので、売却までに約6ヶ月程度はかかるといわれています。
一方、個人間売買なら既に買主を見つけていれば売却活動をおこなう必要がなく、売買契約の条件・価格などの話がまとまり次第すぐに不動産を売却できます。
ただし、不動産会社に仲介を依頼する場合と異なり、上記の手続きをすべて自分でおこなう必要があるため、ミスがないように流れを覚えておきましょう。
売却する不動産の価格と相場を調べる
まずは、インターネットを利用して、売却する不動産の価格と相場を調べましょう。
目的 | 方法 |
---|---|
価格・相場どちらも調べたい | 不動産一括査定サイト |
相場を調べたい | レインズマーケットインフォメーション |
土地総合情報システム |
適正価格・価格相場の両方を調べたい場合は「不動産一括査定サイト」を利用して、複数の不動産会社の査定額を一気に確認することをおすすめします。
売買する不動産の価格相場だけを調べたい場合は「レインズマーケットインフォメーション」や「土地総合情報システム」で類似物件の成約価格を確認する方法もあります。
とはいえ、類似物件の成約価格が自分の物件に近いとは限らず、類似物件を探す手間や時間もかかるので、基本的には「不動産一括査定サイト」を利用するとよいでしょう。
必要書類を用意
つづいて、不動産の個人間売買をおこなう際の必要書類を用意しましょう。
不動産の個人間売買において、用意する必要書類は以下のとおりです。
種類 | 入手場所 |
---|---|
登記済権利証 | 売主保管 |
登記識別情報 | |
登記簿謄本 (登記事項証明書) |
所在地管轄の法務局 |
公図 | 所在地管轄の法務局 |
地積測量図 | |
建物の図面 | |
固定資産税納税通知書 | 市区町村役場の担当課 |
購入当時の売買契約書・重要事項説明書など | 売主保管 |
印鑑証明書 (3ヶ月以内の発行のもの) |
市区町村役場の窓口 |
本人確認書類 | 売主保管 |
建築確認済証および検査済証 (一戸建ての場合) |
売主保管 |
管理規約・維持費に関する書類 (マンションの場合) |
売主保管 |
ローン残高証明書 (ローン返済中の場合) |
売主保管 |
境界確認書 (一戸建て・土地の場合) |
売主保管 |
必要書類の大半は売主側で保管している場合が多いですが、足りない書類は不動産の所在地を管轄する法務局・市区町村役場の窓口で取得する必要があります。
不動産会社に仲介を依頼する場合と異なり、個人間売買では必要書類を売主・買主が自分で全部揃える必要があるため、必要書類に不備がないように注意しましょう。
売却価格を決める
必要書類を用意したら、個人間売買における不動産の売却価格を決めましょう。
不動産の売却価格は高過ぎても買主が売買契約を締結してくれませんし、安過ぎても得られる利益が少ないので、高過ぎず低過ぎない適正価格に設定する必要があります。
適正価格で不動産を売るには「この金額で売却したい」という上限価格と「この金額までなら値下げしてもいい」と妥協できる下限価格を決めておくことをおすすめします。
とはいえ、上限価格・下限価格を決めるにも価格相場を把握しておく必要があるので、不動産一括査定サイトを利用して複数の不動産会社の査定額を確認しておきましょう。
買主を探す(決まっていない場合)
個人間売買の取引相手が決まっていない場合、不動産の買主を探す必要があります。
「隣人に土地を売却したい」など、売却先が決まっていれば買主を探す必要はありませんが、取引相手が見つからない場合は自分で探さなければなりません。
不動産の個人間売買をおこなう場合、次のような相手に打診してみるとよいでしょう。
- 実家を子供や親族に売却する
- 所有地を隣人に売却する
- 貸している土地を借主に売却する
近年では、インターネットを介して不動産の売主・買主をマッチングする「個人間売買サイト」もあるので、売却先が決まらない人は利用してみることをおすすめします。
買主の内覧と価格交渉・条件決め
不動産の買主が決まったら、内覧対応や売却価格・条件の交渉をおこないましょう。
中古住宅の場合、内覧前にハウスクリーニングを施して清潔感を高めておくと、購入希望者に良い印象を与えられるため、早期売却や高額売却の可能性が高まります。
不動産売買においては、購入希望者からの値下げ交渉を受ける場合が多いため、実際の売却価格は売主側の希望額よりも多少安くなると考えておくのが無難です。
「隣の家のせいで日当たりが悪い」や「既にある建物の解体が面倒」などの欠点を理由に値下げを要求してくるので、物件の長所・短所を把握しておくことをおすすめします。
値下げ交渉に応じると買主からの印象もよくなり、不動産を売却できる可能性が高まるので、値下げ交渉を想定して売り出し価格を多少高く設定しておくとよいでしょう。
売買契約書の作成
不動産の売却価格・条件などの話し合いがまとまったら、売買契約書を作成します。
売買契約書の書式については、不動産売買に関する書籍やインターネットに掲載されているひな形を参考にしながら、売買契約書を作成するとよいでしょう。
最終的には、売買契約書の内容や契約約款を読み上げた上で最終確認をおこない、契約書にサインと押印をした段階で、正式に売買契約を締結したことになります。
ただし、売買契約を締結した後でも、手付金を支払えば買主・売主どちらも売買契約を解除できるので、確実に不動産を売却できるとは限らない点に注意が必要です。
また、買主がローンを組んで不動産を購入する場合もありますが、売買契約締結後に買主がローン審査に落ちると売買契約を解除されてしまうため注意しましょう。
物件の引き渡しと所有権移転
売買契約書を作成した後、買主から売却価格を受け取る代わりに不動産を引き渡します。
ただし、売買契約を締結しても不動産の所有権が自動的に買主へ移る訳ではなく、法務局で所有権移転登記をおこない、所有権の移転を法的に証明しなければなりません。
具体的には、以下の書類を用意した上で買主と売主が一緒に法務局に出向いて、所有権移転登記の申請をおこないます。
名称 | 取得費用 | 取得場所 |
---|---|---|
登記識別情報または登記済証 | 無料 | 登記時に法務局が発行 |
印鑑登録証明書 (発行後3ヶ月以内) |
1通300円程度+郵送料 1通200円程度(コンビニの場合) |
市区町村役場 |
固定資産評価証明書 | 400円程度 | 市区町村役場 |
代表者事項証明書または会社登記簿謄本 | 600円(窓口の場合) 500円(オンライン申請で送付の場合) 480円(オンライン申請で窓口受け取りの場合) |
法務局 |
所有権移転登記は売主・買主が自分でおこなうことも可能ですが、必要書類の準備や手続きが複雑かつ面倒なので、専門家である司法書士に依頼する方法が一般的です。
不動産の個人間売買でよくあるトラブル
不動産を個人間売買する場合、よくあるトラブルは以下のとおりです。
- 金額設定時に当事者同士が揉める
- 契約内容の不備による取引後のトラブル
- 物件瑕疵の見落としによる契約不適合責任
- 突然の契約破棄による取引不成立
1番多いのは価格に関するトラブルで、売主と買主の意見が相反する上、個人間売買では適正価格を判断できる不動産会社がいないため、価格の妥協点が見つかりにくいです。
その他にも、不動産に関する知識の少ない素人同士で売買をおこなうので、契約内容の不備や物件瑕疵の見落としによる法律トラブルに発展するケースも少なくありません。
この項目では、不動産の個人間売買でよくあるトラブルを解説します。
金額設定時に当事者同士が揉める
売買契約締結時には不動産の金額を決める必要がありますが、金額設定時に売主・買主間で揉めるケースが多いです。
なぜなら、売主は不動産を高く売りたいですし、買主は不動産を安く買いたいと考えるため、意見が相反して両者が納得できる妥協点がまとまりにくいからです。
売主・買主ともに価格交渉をおこなう際は、類似物件の成約価格といった根拠を提示した上で値上げ・値下げを交渉することをおすすめします。
売主・買主間で価格が決まらない場合、不動産会社に査定を依頼して第三者視点による忖度のない価格を提示してもらい、それを参考に価格を決めるとよいでしょう。
契約内容の不備による取引後のトラブル
不動産の個人間売買をおこなう場合、売買契約の内容を細かく定めておらず、不備による取引後のトラブルが発生するケースも少なくありません。
例えば、自己資金だけで物件を購入できない買主はローンを組むケースも多いですが、売買契約締結後に買主がローン審査に落ちると、売買契約を解除しなければなりません。
そのため、買主がローン審査に落ちた際に売買契約そのものを解除して契約を白紙に戻せる「ローン特約」を売買契約の内容に加えておく必要があります。
取引後のトラブルを防ぐためにも、契約内容の不備がないように以下のような点を売買契約書に細かく明記しておき、法的に契約内容を証明できるようにしておきましょう。
[open title=’売買契約書で確認しておく点
(クリックで展開)’]
項目 | 解説 |
---|---|
契約全体 | 自分の希望条件は記載されているか? |
自分にとって無理のある条件はないか? | |
不明確な条件はないか? | |
消費者に不利な契約でないか? | |
売買物件の表示 | 売却物件の表示に誤りはないか? |
買取価格・支払日 | 買取価格・手付金などの金額に誤りはないか? |
不動産会社からの支払日はいつか? | |
どのような性質の手付金か? | |
土地の実測・土地代金の精算 | 土地の実測はおこなうのか? |
面積の増減に応じて買取価格の精算をおこなうのか? | |
所有権の移転と引き渡し | 所有権の移転を確実におこなえるスケジュールか? |
負担の消除 | 売却物件を完全な所有権で引き渡せるか? |
賃借権など引き継ぐ場合はその内容が明確か? | |
危険負担 | 引き渡し前に物件が天災等により滅失・毀損した場合の取り扱いは明確か? |
手付解除 | いつまで手付解除が可能か? |
手付金の金額は妥当か? | |
契約違反による解除 | 違約金や損害賠償の予定額は適当か? |
契約不適合責任 | 契約不適合責任の期間は適切か? |
付帯設備などの引き継ぎ | 引き継ぐべき付帯設備などは明確か? |
公租公課等の精算 | 精算方法と金額を把握したか? |
ローン特約 | 買主が無理なく住宅ローンを返済できるか? (買主に住宅ローンの利用予定がある場合) |
その他 | その他に定めておく事項はないか? |
参照:公益財団法人不動産流通推進センター「売買契約のチェックポイント」
[/open]
物件瑕疵の見落としによる契約不適合責任
不動産の個人間売買で専門家を介さない場合、物件の瑕疵を見落としたまま売却してしまい、後から契約不適合責任を追及されるケースも多いです。
契約不適合責任が認められる場合、買主は売主に売買契約の解除や損害賠償を請求できるため、不動産売買が白紙に戻ったり余計な出費が生まれる恐れがあります。
とはいえ、契約不適合責任は物件の不具合に気づいてから1年以内に買主側から通知がなければ免責となるので、永遠に責任を負う訳ではありません。
契約不適合責任を回避したい場合、以下のような対策を施しておくとよいでしょう。
- 売買契約書に契約不適合責任を限定する文言を明記する
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入しておく
- 買取業者に不動産を売却する
突然の契約破棄による取引不成立
不動産の個人間売買をおこなう場合、売買契約締結後でも契約解除することが可能なので、取引が不成立に終わるケースも存在します。
多くの場合、不動産の売買契約締結時に買主から売主へ手付金を支払う代わりに、手付解除期日までなら買主が手付金を放棄することで売買契約を解除できるのが一般的です。
つまり、手付解除期日の前であれば理由を問わずに買主側から一方的に売買契約を解除できるので、売買契約を締結しても不動産を確実に売却できるとは限りません。
手付金の支払いがある限り、買主からの売買契約の解除は防げないため、売買契約を解除されたら不動産会社に相談して、次の売却先を探すようにしましょう。
不動産の個人間売買を成功させるポイント
不動産の個人間売買でトラブルなく損せずに売りたい場合、以下の点を意識しましょう。
- 適正価格相場を把握する
- 契約書作成など部分的に不動産会社へ依頼
- 契約不適合責任の追及内容を理解してから売る
- 買主がいない場合は不動産個人間売買専門サイトも活用
- 登記手続きなどは司法書士へ依頼する
不動産の個人間売買でトラブルを防ぐには、やはり専門家の手を借りるのが効果的で、価格査定や書類作成だけ依頼するなど、部分的に助力を得ることをおすすめします。
媒介契約を結んで不動産売却の仲介を依頼しなくても、物件の価格査定や必要書類の作成だけ依頼することも可能なので、気軽に無料相談を利用するとよいでしょう。
この項目では、不動産の個人間売買を成功させるポイントを解説します。
適正価格相場を把握する
不動産の個人間売買では、売主・買主間で価格に関するトラブルが多いため、売買する不動産の適正価格相場を把握することが大切です。
不動産の価格指標には税金算出時の評価額などもありますが、不動産売買時は不動産会社の査定額を参考にすることをおすすめします。
相続税評価額・固定資産税評価額はあくまで税金算出時の不動産評価額なので、実際の不動産売買における価格とはかけ離れてしまうケースが多いからです。
不動産会社の一括査定を受ければ、複数の不動産会社の査定額を比較して適正価格相場がわかるので、気軽に査定を受けてみるとよいでしょう。
契約書作成など部分的に不動産会社へ依頼
不動産の個人間売買をおこなう場合、契約書の作成・必要書類の準備でミスが起きるケースも多いので、契約書作成を部分的に不動産会社へ依頼するとよいでしょう。
個人間売買のサポートを不動産会社に依頼すれば、契約書の作成を任せられるほか、必要書類の種類も具体的に教えてもらえるので、不動産売買におけるミスを防げます。
不動産売買では仲介から不動産会社に依頼する必要があると考えている人も多いですが、自分で取引相手を見つけた上で書類作成などを部分的に依頼することも可能です。
売買契約書や重要事項説明書などの作成だけであれば、広告作成などの売却活動が必要ないので、一般的な仲介手数料よりも安価で請け負ってくれる不動産会社も多いです。
契約不適合責任の追及内容を理解してから売る
個人間売買は売主・買主ともに不動産知識が少なく、物件の瑕疵を把握せずに売却してしまうケースが多いため、契約不適合責任の内容を理解してから売るようにしましょう。
建物の基礎が腐食していた・地盤が弱かったなど、売買契約書に明記されなかった不具合が売却後に発覚した場合、売主は買主から契約不適合責任を追及されます。
売主・買主間の合意で特約を定めておけば、契約不適合責任を免責されるので、売却後のトラブルを避けたい場合は売買契約時に特約を定めておくことをおすすめします。
ただし、売主が物件の瑕疵を知りながら買主に伝えなかった場合など、契約不適合責任免責の特約があっても免責が認められないケースもあるため注意しましょう。
買主がいない場合は不動産個人間売買専門サイトも活用
個人間売買をおこないたいけれど、まだ買主を見つけていない場合は「不動産個人間売買専門サイト」を活用するとよいでしょう。
代表例としては、以下の不動産個人間売買専門サイトがおすすめです。
- e-物件情報
- 家いちば
- 不動産直売所
- ジモティー
- 空き家バンク
- チョクウリ・チョクカイ
上記の不動産個人間売買専門サイトはどれも物件情報を無料で掲載できますが、売買契約が成立した際に手数料の支払いが必要なサイトもあるため注意しましょう。
この項目では、おすすめの不動産個人間売買専門サイトを6種類解説します。
e-物件情報
「e-物件情報」は、個人が物件を掲載できる不動産広告サイトで、仲介手数料無料で不動産の個人間売買・賃貸がおこなえます。
2023年8月時点で約250件ほどの物件が売りに出されており、一戸建て・土地・マンション・事業用の土地建物・事業用建物の一部など、幅広い物件タイプに対応しています。
掲載時期に期限は定められておらず、物件の買主が見つかるまで無期限に掲載することも可能なので、不動産売却を急いでおらず希望条件で売却したい人におすすめです。
不動産売買をおこなう上での書類作成・物件調査などをエージェントが手伝ってくれるので、不動産知識の少ない人・手間なく売却したい人にもおすすめのサイトです。
家いちば
「家いちば」は、使い道に悩んでいる空き家・古いビルの買主を自分で探す掲示板サイトで、まだ売り出し価格が決めていない物件も売りに出せます。
売り出し価格を決める必要がないので、古くて売れるかわからない物件・まだ片付いておらず引渡しに時間がかかる物件なども掲載できる点がメリットです。
掲示板のようなフォーマットで物件情報を掲載するので、立地・面積などの物件情報だけでなく、所有者だけが知っている詳細な情報を掲載するとよいでしょう。
物件掲載のハードルが低いので「一般的な不動産市場では売れるか不安」といった、売れにくい物件の個人間売買を考えている人におすすめのサイトです。
ただし、物件情報を無料で掲載できますが、売買契約が成立した場合は以下の媒介報酬と基本料を支払う必要がある点に注意しましょう。
種類 | 金額 |
---|---|
媒介報酬分 | 売買価格の1.5%+3万円 (売買価格400万超の場合) |
売買価格の2%+1万円 (売買価格400万以下の場合) |
|
売買価格の2.5% (売買価格200万以下の場合) |
|
基本料 | 8万円 |
※=売主・買主どちらも支払います
不動産直売所
「不動産直売所」は、売りたい不動産の物件情報を無料掲載できるサイトで、不動産を売却するだけでなく有料で引き取ってもらうことも可能です。
他の個人間売買専門サイトは売主が売り出し価格を設定して、その価格で物件を購入してもらうのが一般的ですが、有料で引き取り先を探す形式で物件情報を掲載できます。
例えば「3万円お渡しします。土地を受け取ってください。」という投稿があるように、一般的な不動産売買では売却先が見つからない物件でも有償で処分できるのです。
「他のサイトでは買主が見つからなかった」や「固定資産税の支払いが迫っている」など、とにかく早く不動産を処分したい人におすすめのサイトです。
ジモティー
「ジモティー」は、不用品の売買に利用される掲示板サイトですが、不動産も売りに出せるので、不動産の個人間売買が手数料無料でおこなえます。
購入希望者とチャットでやり取りが出来るので、非常にシンプルで使いやすく、物件情報を無料で掲載できる上、売買契約成立時もサイトに費用を支払う必要がありません。
有人監視や通報機能が用意されており、疑わしいと思われる投稿は削除されるなど、掲載情報の信頼性が高いので安心して利用できる点もメリットといえます。
ただし、不動産に特化したサイトではなく、さまざまな物品の売買に利用されるサイトなので、不動産の購入希望者だけが閲覧している訳ではない点に注意しましょう。
空き家バンク
「空き家バンク」は、空き家・空き地に特化したマッチングサイトで、国や自治体から委託を受けた企業が運営しているので信頼性の高いサイトといえます。
空き家バンクによる不動産売買では、不動産会社を介さずに売主と買主が売買契約を直接結ぶので仲介手数料がかからない上、物件情報も無料で掲載できます。
空き家バンクを運営する自治体によっては補助金制度が利用できるケースもあり、改修・リフォーム費用の補助が受けられるので、買主が購入を決断しやすいです。
ただし、すべての自治体が空き家バンクを実施している訳ではなく、空き家バンクを実施していない自治体の場合、購入希望者が現れにくい点がデメリットといえます。
チョクウリ・チョクカイ
「チョクウリ・チョクカイ」は2023年にスタートした、空き家や相続不動産などの個人売買に特化した会員制の個人間売買専門サイトです。
運営元の恵比寿商会株式会社は不動産の処分や引取り専門の不動産会社であり、会員制のサイトなので不動産の購入希望者しか集まらないため、信頼性の高いサイトといえます。
土地・建物つき土地・マンションといった一般的な不動産だけでなく、山林・原野・別荘・農地・雑種地など幅広い物件タイプに対応している点もおすすめです。
新規会員登録・物件情報の掲載は無料でおこなえますが、個人間売買が成約となった場合は税込25万円を支払わなければならない点に注意しましょう。
登記手続きなどは司法書士へ依頼する
不動産の個人間売買では、所有権移転登記・抵当権抹消登記などを自分でおこなう必要がありますが、難しい手続きは司法書士へ依頼するとよいでしょう。
なぜなら、個人で難しい登記手続きをおこなうとミスが起こりやすく、登記に誤りがあると二重売買などの深刻なトラブルに発展する恐れがあるからです。
専門家である司法書士に依頼すれば、ミスなく登記手続きをおこなってくれる上、必要書類の準備なども任せられるので、売主・買主側の負担も減らせます。
司法書士費用がかかる点はデメリットですが、登記手続きでミスが起きるとそれ以上の損失を抱える恐れもあるため、登記手続きは司法書士に依頼するのが無難でしょう。
不動産の個人間売買でかかる税金と費用
不動産の個人間売買をおこなう場合、以下の税金・費用がかかります。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 司法書士への依頼費用
- 贈与税
上記のうち、必ず発生するのは印紙税・登録免許税・不動産取得税の3種類で、ケースによっては譲渡所得税・司法書士費用・贈与税が発生する場合もあります。
不動産売買において売主側が負担するのは譲渡所得税・印紙税の2種類で、残りの費用・税金は基本的に買主側が負担するケースが多いです。
それぞれの税金・費用と金額の計算方法を順番にみていきましょう。
譲渡所得税
不動産売却が黒字の場合のみ、売却で得た利益に対して「譲渡所得税」が売主側に課税されます。
不動産売却時の譲渡所得税は、次の手順で算出できます。
・課税対象の譲渡所得を求める
譲渡所得=不動産の売却益−譲渡費用−取得費
・譲渡所得に一定の税率を掛け合わせる
譲渡所得×39.63%または20.315%
中古住宅の場合は「売却した年の1月1日時点での中古住宅の所有期間が5年以内か?」によって、以下のように譲渡所得税の税率が異なります。
種類 | 短期譲渡所得 (所有期間が5年以内) |
長期譲渡所得 (所有期間が5年超) |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
わかりやすいように具体例を用いて、譲渡所得税の計算方法を解説します。
例えば、不動産の売却価格が4,000万円・譲渡費用が300万円・取得費が3,000万円で所有期間が5年以内の場合、譲渡所得税は次のように273万円と計算できます。
譲渡所得:4,000万円−300万円−3,000万円=700万円
所得税:700万円×30%=210万円
住民税:700万円×9%=63万円
譲渡所得税:210万円+63万円=273万円
譲渡所得税を課税しない場合、10年以上の懲役または1,000万円以下の罰金を科せられる恐れもあるため、不動産売買が黒字の場合は確定申告が必要です。
不動産売買が赤字の場合でも、一定条件を満たせば特例を用いて税金を抑えられるので、不動産売買時は黒字・赤字に関係なく確定申告をおこないましょう。
印紙税
不動産売買時は「印紙税」を売主と買主が平等に負担する必要があります。
次のように印紙税の税額は不動産の売買価格に応じて変動する仕組みで、売買価格が高いほど印紙税の金額も高額になります。
売買価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円〜1,000万円以下 | 1,000円 | 5,000円 |
1,000万円〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円〜10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円〜50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超える | 60万円 | 48万円 |
本来は本則税率ですが、2024年12月までは軽減税率が適用されます。
印紙税は収入印紙を売買契約書の原本に貼る形式で納税しますが、コピーは必要ないので1枚分の収入印紙を売主と買主が平等に支払う形式が一般的です。
印紙税の納付に用いる収入印紙は郵便局や法務局で購入する形が一般的ですが、金額の低い収入印紙であればコンビニで購入することも可能です。
参照:国税庁「No.7101 不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書」
参照:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
登録免許税
不動産を個人間売買する際は、買主が「登録免許税」を負担するケースが多いです。
登録免許税は土地の所有権移転や保存の登記手続きにかかる税金で、不動産を購入する側と売却する側では支払う項目が異なります。
種類 | 解説 |
---|---|
所有権保存登記(建物) | 土地と同時に建物を購入した場合の建物の保存登記 |
所有権移転登記(土地) | 土地の所有権を売主から買主に移す登記 |
所有権移転登記(建物) | 建物の所有権を売主から買主に移す登記 |
抵当権設定登記 | 住宅ローン完済時に抵当権を抹消する登記 |
軽減税率の適用期間に不動産を売買した場合、登録免許税は以下の式で計算できます。
種類 | 計算方法(軽減税率) |
---|---|
所有権保存登記(建物) | 固定資産税評価額×0.15% |
所有権移転登記(土地) | 固定資産税評価額×1.5% |
所有権移転登記(建物) | 固定資産税評価額×0.3% |
抵当権設定登記 | 借入額×0.1% |
登録免許税を納付する場合、金融機関に出向いて所定の必要事項を記入した納付書を窓口に提出して、現金で支払う形式が一般的です。
不動産取得税
不動産を個人間売買する際は、買主のみに「不動産取得税」が課税されます。
不動産取得税は登記の有無や有償・無償または売買・贈与・交換などの原因にかかわらず、不動産を取得した場合に課税される税金です。
土地・建物といった不動産を取得した際には不動産取得税がかかり、登記からおよそ4~6ヶ月後に納税通知書が届くのが一般的です。
不動産取得税の税額は以下の式で計算できます。
不動産取得税は物件の取得を税事務所へ申告した後、送付されてくる納税通知書に記載された期限までに税事務所・金融機関・郵便局の窓口から納税する仕組みです。
司法書士への依頼費用
所有権移転登記・抵当権抹消費用などを司法書士に依頼する場合は「司法書士への依頼費用」もかかります。
不動産売買時の登記申請は司法書士に依頼することも可能で、その場合は司法書士報酬を買主側が支払うケースが一般的です。
なぜなら、所有権移転登記は基本的に売主側の手続きは不要で、買主がおこなう手続きであり、登記費用も買主が支払うのが一般的とされているからです。
依頼する司法書士・登記の種類によって異なりますが、不動産売買時の登記申請にかかる司法書士報酬の相場は1万円~10万円程度と考えておくとよいでしょう。
種類 | 費用相場 |
---|---|
所有権保存登記 | 2万円〜10万円程度 |
抵当権抹消登記 | 8,000円〜3万円程度 |
著しく低い価格で売却すると贈与税が発生することもある
著しく低い価格で不動産の個人間売買をおこなうと、みなし贈与と扱われて「贈与税」が発生するケースもあります。
例えば、本来5,000万円の価値をもつ不動産があるとして、親族間だからといって500万円で売買した場合、差額の4,500万円が贈与であると見なされてしまうのです。
不動産の個人間売買に贈与税が課税される場合、基礎控除額の110万円を超える金額部分に課税される贈与税について、買主側が支払わなければなりません。
■贈与税の計算式
(1年間の贈与額 – 基礎控除110万円) × 税率 – 控除額
税率や控除額については、以下2パターンの速算表を参考にしてください。
[open title=’20歳以上で直系尊属から贈与を受けた場合
(クリックで展開)’]
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
※=平成27年以降の贈与
[/open]
[open title=’上記以外の贈与の場合
(クリックで展開)’]
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
[/open]
わかりやすいように、具体例を用いて贈与税の計算方法を解説します。
例えば、時価5,000万円の不動産を500万円で売買した場合は「差額である500万円が売主から買主へ贈与された」と扱われます。
このケースで買主が直系尊属以外だった場合、上記の速算表における3,000万円超の贈与に該当するので、税率は55%・控除額は400万円となります。
よって、以下の計算式から贈与税は2,014万円と計算できます。
(4,500万円 – 110万円) × 55% - 400万円=2,014.5万円
「不動産の売買価格が著しく低いか?」については、個々の事情に基づき判断されますが、国税庁の見解としては時価を以下のように定義しています。
時価とは、その財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。
相続税評価額ではなく一般的な不動産売買における価格相場が時価とされるので、相続税を回避するには、不動産会社の無料査定で時価を確認しておきましょう。
参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
参照:e-govポータル「相続税法第7条」
個人間売買にこだわらず不動産会社へ依頼する判断も大切
不動産を売買する場合、個人間売買にこだわらず不動産会社に依頼する判断も大切です。
- 仲介手数料を割引している不動産会社もある
- 個人間売買よりも安全でスムーズに取引が進むこともある
- 不動産買取では業者に物件を直接売ることが可能
金銭面・スピード面を理由に個人間売買を選ぶ人が多いですが、そうした人にも仲介手数料の安い不動産会社・自社で物件を直接買取している買取業者という選択肢があります。
トラブルを避けたい人には、個人間売買ではなく不動産会社に依頼する方法が向いており、専門家が介入することでトラブルなくスムーズに不動産を売買できます。
「個人間売買を選ぶか?不動産会社に売却を依頼するか?」については、以下を判断基準にして自分に向いている方法を選ぶとよいでしょう。
方法 | 向いている人 |
---|---|
個人間売買 | とにかく費用を抑えたい人 |
買主が既に見つかっている人 | |
不動産の知識・経験が豊富な人 | |
不動産仲介 | 手間をかけたくない人 |
初めて不動産売買をおこなう人 | |
不動産トラブルを避けたい人 |
仲介手数料を割引している不動産会社もある
不動産の個人間売買を考える人の多くは仲介手数料を気にしていますが、仲介手数料を割引している不動産会社を利用すれば、不動産売買にかかる費用を抑えられます。
なぜなら、不動産売買時の仲介手数料には法律で上限額が定められていますが、下限額は定められていないので、仲介手数料を無料・半額にしても問題ないからです。
費用面のせいで個人間売買を考える人も多いですが、自分で書類・手続きの準備をする必要があるため、結果的には不動産会社を利用したほうが良いケースも多いです。
一般的に仲介手数料は不動産会社の売却活動に対する成功報酬ですが、自分で取引相手を見つければ売却活動が必要ないため、仲介手数料を値引きしてもらいやすいでしょう。
個人間売買よりも安全でスムーズに取引が進むこともある
売主・買主間に専門家である不動産会社を挟むことで、素人のみでおこなう個人間売買よりも安全・スムーズに不動産売買が進む可能性が高いです。
個人間売買は基本的に売主・買主ともに不動産に詳しくない素人同士でおこなうので、不動産に関する法律を知らずにトラブルが発生してしまうケースも少なくありません。
一方、不動産会社を介して不動産売買をおこなう場合、価格・権利などのトラブルが発生しても、不動産会社が法律などの根拠を提示した上でトラブルを解決してくれます。
必要書類の準備に関しても不動産会社のサポートが受けられるので、トラブルなくスムーズに不動産を売りたい場合は不動産会社に仲介を依頼しましょう。
不動産買取では業者に物件を直接売ることが可能
不動産会社の中には自社で物件を直接買取している買取業者もあるため、場合によっては個人間売買よりも良い条件で不動産を買取業者に直接売却することも可能です。
個人間売買での不動産売却後に雨漏り・床の傾きといった瑕疵が発覚すると、契約不適合責任を追及されて、売買契約解除や損害賠償請求を受ける恐れもあります。
不動産の個人間売買をおこなう場合、売主は契約不適合責任を負う必要がありますが、不動産会社に買取してもらう場合は契約不適合責任が免責される可能性が高いです。
不動産買取であれば買主を探す必要もないので、トラブルなくスムーズに不動産を売りたい人は不動産会社に物件を直接売ることも選択肢に入れておきましょう。
まとめ
法律上、不動産会社に仲介を依頼せずに不動産を個人間売買することは問題ありませんが、トラブルが発生しやすいなどのリスクを理解した上で実施しましょう。
不動産会社が仲介に入らない場合は適正価格や不動産関連の法律がわからないため、売買価格や売買契約の内容を巡って売主・買主間でトラブルが発生しやすいです。
不動産会社と媒介契約を締結しなくても、価格査定や必要書類の作成などは依頼できるので、個人間売買でも部分的に不動産会社のサポートを受けることをおすすめします。
以下のリンクから、簡単な物件情報を入力するだけで一括査定が受けられるので、個人間売買をおこなう場合でも売却したい不動産の適正価格を確認しておくとよいでしょう。
不動産の個人間売買に関するよくある質問
不動産売買を業としておこなう場合は宅地建物取引業の免許が必要ですが、個人がマイホームを売買する程度であれば宅地建物取引業法には違反しないので、基本的に不動産の個人間売買は法律的に問題ありません。
登録免許税・司法書士報酬のみ、負担先を売主・買主間で自由に決定できます。譲渡所得税は売主が負担しますが、印紙税は売主と買主が平等に負担する必要があります。不動産取得税・贈与税は買主のみが負担します。
不動産の個人間売買をおこなう場合、売買契約書の作成は義務ではありません。しかし、トラブルを防ぐためには売買契約書を作成しておくべきです。
会員登録をおこなわずに利用できるサイトもあるため、安全とはいえません。安全性を求める人は、会員登録が必要なサイトを利用するとよいでしょう。
会員登録が必要な不動産個人間売買専門サイト「チョクウリ・チョクカイ」
各都道府県にある宅建協会の相談窓口や弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。