個人事業主で不動産投資をするのは有利?法人化のメリットも解説

個人事業主

不動産投資を検討している方の中には、不動産投資によって得た収入が給与所得に上乗せされると「税率が高くなるのでは?」と不安に感じている方も多いと思います。確かに日本では、所得が増えるほど、個人の所得税の税率が高くなる累進課税が採用されているため、所得の増加はうれしい反面、徴収される税金が多くなるので複雑です。そこで登場するのが不動産投資を個人事業主で始めるという方法です。個人事業主として不動産投資を始めると、融資や節税といったメリットが期待できますが、本当にそうなのでしょうか?

この記事では、個人事業主で不動産投資を始めるメリット・デメリットのほか、法人化して不動産投資を始めるメリット・デメリット、不動産投資で成功し続けるために大切な3つのポイントについて解説します。

不動産投資を始めるならまずは個人事業主になる

個人事業主
安定した家賃収入が期待できる、老後の私的年金になるなどの理由で注目を集める不動産投資。資産運用の選択肢の1つとしてサラリーマンにも人気がありますが、収入が増えると税率が高くなって損をする可能性があります。そこで、不動産投資を行う際には、まずは個人事業主になることをおすすめします。なぜ、個人事業主になることをおすすめするのでしょうか?個人事業主とは何なのか、また個人事業主になるメリット・デメリットなどについて見ていきましょう。

個人事業主とは

個人事業主とは、個人で事業を行っている人です。サラリーマンなどの会社員は、勤務先と雇用契約を結んでいますが、個人事業主は企業や団体などとの雇用関係がありません。個人事業主の代表的なケースとして飲食店の経営者や事務所を設立した税理士・弁護士などが挙げられます。

個人事業主になるには、税務署に開業届を提出して事業開始の申請をするだけでいいので誰でも簡単に個人事業主になることが可能です。では、個人事業主と法人にはどんな違いがあるのでしょうか?法人は法人として税務署に開業届を提出して事業開始をする、売上を個人の事業所得ではなく法人の所得として申告するという違いがあります。

本業がサラリーマンでも個人事業主登録をした方がいい

「個人事業主になる=独立する・退職する」と考えている方が多いかもしれませんが、必ず独立や退職しなければならないというわけではありません。本業がサラリーマンでも個人事業主登録をすることが可能です。

なぜ、個人事業主登録をした方が良いのでしょうか?その理由は、個人事業主登録をすれば税制上の優遇があるほか、経費として計上できる項目がサラリーマンとして不動産投資を行うよりも多くなるというメリットがあるためです。個人事業主で不動産投資をする際のメリットやデメリット、注意点を見ていきましょう。

個人事業主で不動産投資をするメリット・デメリット・注意点

個人事業主で不動産投資を始める際は、メリットだけでなくデメリット、注意点もあるのでそれらをしっかり押さえた上で不動産投資を始めることが重要です。個人事業主として不動産投資をするメリット・デメリット・注意点についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

個人事業主で不動産投資をするメリット

個人事業主で不動産投資をするメリットは以下の4つです。

・融資を受けやすい
・家族への給与収入を経費にできる
・65万円の特別控除を受けられる
・経費にできる項目が増える

会社を独立もしくは退社して個人事業主で不動産投資をする場合は、信用が低下するので融資を受けにくい傾向があります。しかし、サラリーマンを続けながら個人事業主で不動産投資をする場合には、信用が保たれているので融資を受けやすいです。家族への給与は、専業専従者給与として扱われるため、白色申告の場合で配偶者は86万円、配偶者以外は50万円、青色申告の場合は届け出た所得額が妥当な範囲であればその範囲が給与所得控除の控除額です。

また、不動産投資で生じた所得に対して最高65万円の特別控除を受けることができます。建物の経年劣化に伴う減価償却費や火災・地震などの自然災害で生じた損失や回収不能になった家賃も必要経費に計上することが可能です。不動産所得が赤字になると、翌年以降の3年間繰り越せるようになるため、節税効果がさらに大きくなるでしょう。

個人事業主で不動産投資をするデメリット

個人事業主で不動産投資をするデメリットは以下の3つです。

・事業税の支払いが生じる
・配偶者控除・扶養控除が受けられなくなる
・複式帳簿が必須になる

個人事業主になると、各都道府県から事業税の納税通知書が送られてきて、8月と11月の2回に分けて事業税を納付する必要があります。事業専従者給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなるため、給与の額によっては損をすることになります。

また、65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式帳簿による記帳が必須になるほか、貸借対照表と損益計算書を作成しなければなりません作成した帳簿も原則7年保管する義務が生じるなど、時間と手間がかかることを覚えておきましょう。

個人事業主で不動産投資をする注意点

不動産投資が事業的規模を満たしていなければ、上記のメリットを享受できない可能性があるので注意が必要です。事業的規模の基準は明確になっていませんが、独立した貸家では5棟以上、マンションやアパートでは独立した室数が10室以上あることが基準と言われています。ただし、基準を満たさなくても不動産の規模や不動産所得の額などによっては認められる可能性があります。個人事業主で不動産投資をするメリットを享受するためにも、税務署に相談してから不動産投資を始めるようにしましょう。

個人事業の開業届の出し方

開業届は、開業してから1カ月以内に提出しなければなりません。2部作成してから所轄の税務署に提出します。1部は控え用の開業届なので、税務署で受付印を押してもらった後に受け取ります。開業届を作成する際のポイントは以下の通りです。

・書類のタイトル:開業に〇を付ける
・納税地:個人事業主の住所を記載
・税務署:納税地に記載した住所の所轄税務署を記載
・提出日:書類の提出日を記載(受領印に日付が入るので記載しなくても問題なし)
・氏名:本名を記載
・個人番号:通知カードまたは個人番号カードの番号を記載
・職業:該当する職業を記載
・屋号:屋号がない場合には省略可能
・届出の区分:開業に〇を付ける
・所得の種類:該当するものがあればチェックする
・開業日:開業した日を記載

開業届を提出する際は、本人確認書類が必要になる場合があります。個人番号カードを所有している場合には1枚、通知カードしか所有していない場合には写真付きの証明書である免許証やパスポートが必要になるので持参しておきましょう。

個人事業主で不動産投資をする際の節税ポイント

個人事業主で不動産投資をする際は、家族への給与を経費にできる・65万円の特別控除を受けられる・経費にできる項目が増えるといったメリットがありました。これらは所得税を減らすことができる要因であるため、大きな節税効果が期待できます。

しかし、65万円の特別控除を適用するには、不動産投資が事業的規模である、複式帳簿で記帳するなどの条件を満たす必要があります。条件を満たさないまま確定申告を行っても、10万円の白色事業者控除しか認められません。そのため、65万円の特別控除を適用したい場合には、帳簿の知識を付けるまたは税理士に依頼するなど、事前の準備が必要になるでしょう。

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所得が増えてきたら法人化すると有利

法人化
不動産投資を始める場合には、個人事業主で始めるという選択肢のほか、法人化するという選択肢も挙げられます。しかし、法人化には、個人事業主よりも時間と手間がかかるため、不動産所得を含めた所得が増えたなど、何らかのきっかけに合わせて行うことをおすすめします。とは言っても、どのくらいの所得になってから法人化すればいいのでしょうか?法人化の基準と具体的なタイミング、法人化までの流れや費用について詳しく見ていきましょう。

個人での課税が法人税の23.3%を超えたら法人化を考える

法人税の税率は法人の区分によって異なっていますが、最大でも23.2%となっています。一方、個人の所得税率は最大45%で、いくら法人税や地方税、法人事業税が加わっても、その差は歴然です。

そのため、個人での所得税率が法人税の23.2%を上回る23.3%を超えたら、法人化を検討するとよいと言えます。累進課税では、課税所得金額が695万円を超えて900万円以下で税率が23%、900万円を超えて1,800万円以下で33%となります。課税所得金額900万円を超えるタイミングが法人化を考える1つの目安と言えるでしょう。

属性による法人化の具体的なタイミング例

法人化のタイミングとして課税所得金額900万円超が1つの目安と言いましたが、どんな目安がほかにあるのでしょうか?これから不動産投資を始める人やアパートを既に1棟持っている人、区分所有している人の法人化するタイミングについて見ていきましょう。

これから始める人

これから不動産投資を始める人に、法人化はあまりおすすめしませんその理由は、融資を受けにくいためです。法人を立ち上げてから不動産投資を始めようとすると、過去の実績がないことから信用が低いと判断されて融資を受けにくい可能性があります。

そのため、これから不動産投資を始める人は、まずは個人事業主で不動産投資を始めてから金融機関などと信頼関係を築いた上で法人化を考えた方が良いと言えます。しかし、不動産投資を始める前は比較的時間を取りやすいとも言えます。法人化には時間と手間がかかるため、忙しくなる前に法人化し不動産投資を始めるというのも1つの選択肢と言えるでしょう。

アパート1棟持っている人

アパート1棟を既に持っている人は、個人での課税が法人税の23.2%を超えるタイミングに合わせて法人化するのが最適と言えます。また、出口戦略の一環で、短期での不動産売却を考えている場合には、売却益に対してかかる譲渡税が2倍近く生じるため、なるべく早めに法人化しておいた方が良いと言えます。

個人事業主で不動産投資をする際は経費に計上できる項目が限られますが、法人は多くの項目を経費として計上することが可能です。経費を多く計上して節税につなげたいときは、なるべく早めに法人化した方が良いと言えるでしょう。

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区分所有している人

区分所有している人の方がアパート1棟持っている人よりも不動産所得が少なくなるのが一般的です。個人での課税が法人税の23.2%を超えない可能性が高いため、法人化による所得税の節税効果は複数の部屋を所有しない限り、あまり期待できません。そのため、区分所有している人が法人化するタイミングは、複数の部屋を運用して個人での課税が23.2%を超える、経費を多く計上して節税につなげたいときと言えるでしょう。

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法人化して不動産投資をするメリット・デメリット・注意点

法人化して不動産投資をする際も、個人事業主で不動産投資をする際と同様に、メリットやデメリット、注意点をしっかり押さえた上で不動産投資を始めることが重要です。

法人化して不動産投資をするメリット

法人化して不動産投資をするメリットは以下の3つです。

・税率が低い
・経費を多く計上できる
・損失を繰り越せる期間が長い

法人税の税率は法人の区分ごとに異なりますが、最大でも23.2%です。個人事業主が給与所得に不動産所得を加えて税率が高くなることを考えると、法人化した方が得と言えます。また、法人化して不動産投資をすると、個人事業主で不動産投資をするよりも多くの項目を経費として計上できることから節税効果が期待できます。損失を繰り越せる期間が個人事業主は3年間であるのに対して、法人は9年間繰り越せることを考えると、法人化は節税効果が高いと言えるでしょう。

法人化して不動産投資をするデメリット

個人事業主で不動産投資をするデメリットは以下の3つです。

・法人設立費用が発生する
・赤字でも法人住民税の支払いが必要になる
・会社として社会保険料を支払う義務が生じる

法人化には節税効果が高いというメリットがある一方、法人設立費用が最初にかかるほか、法人住民税の支払いが発生します。また、会社経営になるため、社会保険料の支払い義務が生じるなど、コストが多く発生することがデメリットと言えるでしょう。

法人化して不動産投資をする注意点

個人事業主で不動産投資を始める際は、税務署に開業届を提出して事業開始の申請をするという比較的簡単な手続きで済みました。しかし、法人化にはいくつか手順を踏む必要があるため、時間と手間がかかるというデメリットがあります。法人化の手続きに時間がかかっていると、不動産投資のチャンスを逃す可能性もあるのでスムーズに法人化を進めることを心がけましょう。

法人化するまでの流れ・費用

法人化するまでにどのような手続きが必要で、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?法人化するまでの流れと費用について見ていきましょう。

法人化までの流れ

法人化には以下の5つの流れがあります。

・定款作成
・定款認証
・登記書類の作成
・資本金の払い込み
・会社設立登記

定款には事業目的や所在地、出資金などを記載して、公証人役場でチェックしてもらいます。認証を得た後は、登記に必要な申請書や印鑑届出書などの書類を作成します。その後、資本金を払い込んでから法務局に会社設立登記を提出します。登記には、15万円または資本金の0.7%の費用がかかるので覚えておきましょう。

法人化にかかる費用

法人化にかかる費用には以下の7つがあります。

・収入印紙代(定款用)
・定款認証手数料
・謄本交付手数料
・登録免許税
・印鑑作成費用
・登記簿謄本発行手数料
・交通費

法人化に必要な手続きは、自ら行わなくても専門家に依頼することも可能です。行政書士や司法書士などの専門家に依頼する場合には依頼料もかかるので覚えておく必要があります。資本金とは別に、25万~30万円程度の費用を想定しておきましょう。

不動産投資で成功し続けるために大切な3つのこと

セミナー
不動産投資は、不動産管理会社に管理を委託していれば、サラリーマンでも働きながら取り組むことが可能です。しかし、何でも不動産管理会社に任せればいいわけではありません。不動産投資で成功し続けるためには、現在の不動産市場がどうなっていて、どのような出口戦略を立てるべきかについてしっかり考えることが重要です。不動産投資に関する知識を身につける方法として以下の3つが挙げられます。

・不動産関連書籍を読む
・ネットで情報収集をする
・セミナーに出る

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不動産関連書籍を読む

1つ目は不動産関連書籍を読むという方法です。本屋さんに並んでいる不動産投資の書籍や経済関係の書籍など、不動産に関連している書籍を読みながら次にどのような戦略を練る必要があるかを考えます。

この方法のメリットは、著者がハッキリと分かるため、情報の信憑性が高いという点です。ただし、発行から時間が経過していると、掲載されている情報が古いというデメリットがあります。また、書籍は購入費用がかかってしまうこともデメリットと言えるでしょう。

ネットで情報収集をする

続いてはネットで情報収集をするという方法です。ネットには、不動産会社が掲載している情報やサラリーマン大家さんのブログなど、数多くの不動産情報が掲載されています。

この方法のメリットは、スマホやパソコンがあれば、手軽に知りたい情報だけを調べられる、基本的に無料で情報を入手できるという点です。ただし、誰がネットに掲載したのか出所がハッキリせず、情報の信憑性が低くなることがデメリットと言えるでしょう。

セミナーに出る

最後はセミナーに出るという方法です。セミナーは、不動産会社や金融機関、サラリーマン大家さんなどが主催しており、さまざまなテーマで開催されています。

この方法のメリットは、不動産市場がどうなっているかというリアルタイムな情報を入手できる、市場に出回らない物件情報が得られる点です。ただし、セミナーは、日程や場所が決まっているため、開催場所までが遠い・時間を確保できない場合には参加できないことが大きなデメリットと言えるでしょう。

まとめ

安定した家賃収入が期待できることから、不動産投資を検討しているサラリーマンの方も多いと思います。しかし、個人では所得が増えれば増えるほど所得税の税率が高くなる累進課税が適用されるため、所得が増えたことで損をする可能性があります。そこで登場するのが個人事業主で不動産投資をするという方法です。個人事業主で不動産投資をすれば特別控除や経費などによる節税効果が期待できます

また、個人事業主という選択肢以外にも法人化するという選択肢もあります。法人化には税率が低い、経費に計上できる項目が多いというメリットがある一方、法人化に必要な手続きが複雑というデメリットがあります。それぞれのメリットとデメリットなど基礎知識をしっかりと身につけてから収益物件の賃貸経営を始めましょう

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