築30年になるマンションは、希望どおりの価格では売れないのではないかと不安に感じる方も少なくありません。
実際に、築30年のマンションは外観や設備が劣化していたり、競合物件が多かったりして高く売れないといわれていますが、コツを押さえれば高く売ることも可能です。
この記事では、築30年のマンションを所有しており、そろそろ売却を考えている方向けに、売却相場や高く売るためのコツ、売却時の注意点を解説します。
マンションは築年数が経過するほど売りにくくなるため、築30年のマンションをなるべく高く売却したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
築30年のマンションの売却相場は2275万円
不動産取引のネットワークシステム「REINS」を運営している東日本不動産流通機構の調査によると、築26~30年の中古マンションの売却相場は2,275万円です。
価格(万円) | 面積(㎡) | ㎡単価 | |
---|---|---|---|
築0~5年 | 6,136 | 64.84 | 94.63 |
築6~10年 | 5,538 | 66.86 | 82.83 |
築11~15年 | 4,886 | 70.38 | 69.41 |
築16~20年 | 4,685 | 72.80 | 64.35 |
築21~25年 | 3,746 | 69.24 | 54.10 |
築26~30年 | 2,275 | 61.23 | 37.15 |
築31年~ | 2,040 | 57.28 | 35.61 |
(参考:REINS TOPIC「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」)
対して、築0~5年のマンションの売却相場は6,136万円であり、築26~30年のマンションの価格は新築の約37%にまで減っていることがわかります。
また、不動産は築年数が経過するほど売却価格が下がるといわれているように、築31年超のマンションはさらに価格が下がり相場が2,040万円です。
上記の価格はあくまでも平均であり、建物の構造や立地条件などにより売却価格は大きく変わります。
しかしながら、築年数が経過するごとに価格が下がる傾向であることは事実であるため、マンションは売ると決めたら早めに行動に移しましょう。
築30年のマンションが売れないといわれる理由
「築30年のマンションは古くてもう売れないのでは」と考える方も多いかもしれません。
築30年のマンションが売れないといわれる理由には、主に以下のような点が挙げられます。
- 外観や設備が劣化している
- 住宅ローン控除が受けられない
- 競合物件が多い
それぞれ詳しく解説します。
外観や設備が劣化している
築30年のマンションが売れないといわれる第一の理由は、外観や設備の劣化です。
マンションの建築から30年経てば、外壁の色も年季を感じる見た目になり、デザインにも古さが感じられるでしょう。
また、どのように居住していたかにもよりますが、室内の壁や床、天井にキズやシミがあり、古さや生活感が気になる方もいるかもしれません。
設備については、お風呂の給湯器やガスコンロ、インターフォンなどが劣化していたり、旧型で使い勝手が悪かったりするのではないかと心配する人もいます。
住宅設備はおおむね築15~20年で不調が出始めるといわれるため、築30年のマンションの古さは、購入後にかかる維持管理費用のことを考える買い手の購入意欲を低下させる要因となります。
さらに、築30年のマンションは築浅マンションと比べて、オートロックや監視カメラがないなど、セキュリティ面を不安に感じる人もいるでしょう。
住宅ローン控除が受けられない
2022年の税制改正までは、築25年以内の物件しか住宅ローン控除を受けられなかったため、築30年のマンションは住宅ローン控除を受けられず、売却の大きな障害となっていました。
現在では、住宅ローン控除の築年数要件が撤廃されたため、築30年のマンションを購入した際も、条件に当てはまれば住宅ローン控除を受けられます。
しかし、以前のイメージのままで築25年超のマンションでは住宅ローン控除を受けられないと考える人も多いです。
住宅ローン控除は、マンションなどの購入で銀行から10年以上のローンを借りている場合、決まった額が一定期間所得税から控除される特例のことです。
控除額が大きいため、住宅の買い手にとって住宅ローン控除を受けられるかどうかは、物件選びにおける大きな要素となります。
住宅ローン控除が適用される条件の主なものは、以下のとおりです。
- 中古住宅の取得の日から6か月以内に居住していること
- 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 住宅の床面積が50㎡以上であり、かつ床面積の2分の1以上を事故の居住のために使用していること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
現在では、これらの条件を満たせば、築30年のマンションを購入した際も住宅ローン控除を受けられるため、以前より売りやすい状況といえるでしょう。
競合物件が多い
前述の東日本不動産流通機構の調査によると、売買が成立したすべての中古マンションの中で、築26~30年の割合は8.1%であるのに対し、築31年以上の割合は29.7%です。
(参考:REINS TOPIC「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」)
すなわち、築30年を超えると競合物件が大幅に増え、売却が難しくなることがわかります。
また、中古マンション市場における築31年以上の新規登録物件は44.7%であるのに対し、成約物件は29.7%であることから、築31年以上の物件は売れ残りやすいといえます。
一方、築26~30年だと、新規登録物件は全体の10.1%、成約物件は全体の8.1%とあまり差がありません。
このように、築30年を超えると競合物件が増え、売れ残りやすくなることがデータからもわかっています。
築30年のマンションを高く売るためには、できるだけ早いうちから、売却戦略をしっかりと練る必要があります。
築30年のマンションを高く売るコツ
築30年のマンションは、いくつかのコツを押さえて戦略を立てれば、高く売ることも不可能ではありません。
築30年のマンションを高く売るコツには、以下のようなものが挙げられます。
- 複数の不動産会社に見積もり依頼する
- 築古マンションの売却実績が豊富な業者に依頼する
- 中古物件を狙う投資家顧客にアピールする
- 築年数をカバーする魅力をアピールする
- スケジュールに余裕を持って売却する
それぞれ詳しく解説します。
複数の不動産会社に見積もり依頼する
マンションの売却相場は、複数の不動産会社に査定依頼しなければわかりません。
マンションの査定額は、各不動産会社が売れると考える価格であり、数十万の差が出ることもあるため、1社だけに見積もり依頼し査定価格を鵜呑みにするのは危険です。
1社の査定価格しか知らない状態だと、その価格が相場より大幅に安くても、そうと知らないまま売り出してしまうおそれがあります。
相場を把握するためには、一括査定サイトが便利です。
複数社から見積もりをもらうことで、ある程度平均的な相場がわかります。
不動産売却一括査定のイエコンなら、厳選された1,600社の不動産会社の中から、最大6社の査定を所要時間2分で知ることができます。
住所と物件の種別を入力するだけなので、ぜひお気軽にご利用ください。
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築古マンションの売却実績が豊富な業者に依頼する
不動産会社の中には、個人売買を得意とする会社もあれば、賃貸アパートや駐車場を取り扱う会社もあり、得意なジャンルはさまざまです。
築30年のマンションを売却する場合は、築古マンションの売却に強い不動産会社を選びましょう。
築古マンションの売却実績が豊富な不動産会社なら、買主の予算感にも通じているため、信用できる査定額を出してくると考えられます。
一括査定で目星をつけた不動産会社が築古マンションの売却に強いかどうかを確認するためには、以下のようなことを質問してみることをおすすめします。
- 築古マンションの売却実績はどのくらいあるか
- 査定額の根拠は何か
- どのような販売活動を行う予定か
いくつかの不動産会社に同じ質問をしてみて、納得のいく回答を得られた会社に任せるようにしてください。
中古物件を狙う投資家顧客にアピールする
想定しているマンションの買い手を、自身が住むためのマンションを探している人に限らず、投資用マンションを探している人にまで広げるのもよいでしょう。
築30年のマンションは、新築や築浅マンションより価格が安いのはもちろん、築40年のマンションとは異なり新耐震基準をクリアしているため、投資家にとって魅力的な物件といえます。
築古の中古物件を狙う投資家顧客とつながりのある不動産会社に売却を依頼するのも、築30年のマンションを高く売るための一つの方法です。
築年数をカバーする魅力をアピールする
築30年のマンションを高く売るためには、物件の魅力を余さず伝える必要があります。
自分ではそれほど重要と思わないことが、買い手には魅力的に感じられることもあるため、ささいなことでもリストアップしておきましょう。
たとえば、以下のような要素が物件の魅力になります。
- 日当たりがよい
- 近くに病院、学校、公園、コンビニ、スーパーなどがある
- 駅、バス停から歩いて○分
- 夜は静かで治安がよい
内覧に来てくれた方には、「近くの○○というスーパーが安くておすすめ」「近くに落ち着けるカフェがある」など、住んでいる人しかわからない情報を教えてあげるのもおすすめです。
また、築年数が古いほど立地のよい場所に建てられていることも多く、築年数をカバーするメリットとなります。
このように、築年数をカバーするためには、物件の魅力をすべて洗い出し、買い手にアピールすることが重要です。
スケジュールに余裕を持って売却する
築30年のマンションを高く売るためには、スケジュールに余裕を持ち、売却期間を1年ほどみておきましょう。
スケジュールに余裕がないと、早く買い手を見つけようとして、仕方なく安い値段で売ることになってしまいます。
築30年のマンションは需要が少なく、すぐには売却できない可能性が高いです。
問い合わせの数も少ないため、「これを逃したらもう売れないのではないか」と気持ちが焦ってしまい、無理な値引き交渉に応じてしまうこともあるかもしれません。
売却期間に余裕を持っていれば、徐々に売却金額を下げたり、購入希望者としっかり交渉したりでき、安く買い叩かれることを避けられます。
築30年のマンションを売る際の注意点
築30年のマンションを売る際には、物件の古さをカバーするため、以下のような点に注意しましょう。
- リフォームが必要か検討する
- 売り先行か買い先行か検討する
- 瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対策をする
- 高すぎず相場に合った価格設定にする
一つずつ解説します。
リフォームが必要か検討する
築30年のマンションを売るときは、リフォームやハウスクリーニングで室内をきれいにしてから売りに出したほうがよいのではと考える方も多いでしょう。
確かに、リフォームして見た目をきれいにしてから売るほうが高く売れる可能性がありますが、リフォーム費用の元が取れるという保証はありません。
リフォーム費用を売却金額に上乗せすると、相場より高くなり、競合物件より割高と感じられる可能性もあります。
また、買い手の中には自分好みの内装にしたいと考える人も多いため、リフォームしていない物件を好む人もいます。
自分の物件にリフォームが必要かどうかは、状況にあわせて不動産会社と相談することがおすすめです。
売り先行か買い先行か検討する
築30年のマンションから他の物件に住み替える場合、「売り先行」と「買い先行」のどちらかの方法をとることになります。
売り先行は、先に居住中のマンションを売却してから新居を購入する方法で、買い先行は先に新居を購入してからマンションを売却する方法です。
売り先行と買い先行のメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
売り先行 | ・売却益を新居の購入にあてられる ・売り急ぐ必要がない |
・仮住まいが必要になる |
買い先行 | ・引っ越しが一度で済む ・マンションを空室にしてから売却できる |
・マンションと新居で二重ローンになる可能性がある |
売り先行と買い先行のどちらがよいかは、個々人の状況によって異なります。
以下の記事でマンションの住み替えのコツを解説していますので、ぜひ参考にしてください。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対策をする
瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは、建物の引き渡し後、契約時に伝えられていない傷や不具合(瑕疵)があった場合、売主が一定期間追うべき責任のことです。
築30年のマンションは、以下のようなポイントを押さえて、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対策をしておくとよいでしょう。
- ホームインスペクションを行う
- 瑕疵担保保険を検討する
ホームインスペクションとは、住宅診断士(ホームインスペクター)が第三者的な立場から、住宅の劣化状況や不具合の有無などを調査することです。
マンションの売り出し前にホームインスペクションを行うことで、物件のコンディションを詳細に把握してから取引に臨めます。
また、ホームインスペクションの調査結果は書面で残るため、調査時の状態を第三者に記録に残してもらえて安心です。
瑕疵担保保険は、売却後、物件に瑕疵が発見された場合、補修費用が下りる保険のことです。
新築住宅では引き渡しから10年間の契約不適合責任が保証されていますが、中古住宅ではそのような統一的な基準がないため、それを補うために瑕疵担保保険の制度があります。
瑕疵担保保険をつければ、売却後1~5年間の保証つきでマンションを売却できるため、マンションの付加価値になります。
瑕疵担保保険がついていることで、買い手は築30年のマンションでも安心して購入できるのです。
高すぎず相場に合った価格設定にする
高く売りたい一心で、相場と大きく乖離した価格で売り出すとなかなか売れません。
適切な価格を設定するためには、同じような築年数や立地、間取りのマンションの相場を調べることが重要です。
また、大きなマンションである場合は、同じ建物の別の部屋で角部屋など、より条件のよい物件が売り出されている可能性もあります。
相場観をつかむためには、複数社に査定を依頼する、大手の不動産ポータルサイトやREINS Market Informationで類似物件を調べるなどの方法がおすすめです。
類似物件は、最寄り駅が同じで、築年数や駅からの距離、部屋の面積などが似ている物件と比較することがポイントです。
また、売り出してから問い合わせがほとんどない場合は、やはり価格設定が相場より高すぎる可能性があります。
そのような場合は、競合物件の価格を踏まえて、タイミングをみて価格を見直しましょう。
マンションを売却する流れ
ここまで、築30年のマンションを高く売るためのコツを紹介してきましたが、実際にマンションを売却する際の流れを押さえておきましょう。
マンションの売却の流れは、以下のとおりです。
- 不動産会社の査定を受ける
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 物件の売却活動で買主を探す
- 買主との売買契約を締結する
不動産会社の査定は、一度で複数の会社に査定申し込みができる一括査定がおすすめです。
一括査定で査定額の高い不動産会社を絞り込み、各社のホームページでマンションや中古物件の取引実績が豊富かを確認しましょう。
任せたい不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。
媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
マンションを早く売りたい人は専属専任媒介契約、自力で買主を見つけられる可能性のある人は専任媒介契約、売却に時間がかかってもかまわない人は一般媒介契約を選ぶとよいでしょう。
マンションを売りに出した後は、内覧希望者に売主として対応するなどの売却活動を経て、買主が見つかったら、売買契約を締結します。
マンション売却の流れは、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
築30年のマンションは、外観や設備が劣化しており、競合物件も多いことから売れないと思われがちです。
実際に、築26~30年のマンションの成約価格の平均は2,275万円であり、新築マンションの価格の37%にまで減っています。
しかし、住宅ローン控除の築年数要件が撤廃され、現在では築30年のマンションでも条件を満たせば住宅ローン控除を受けられるようになったため、築30年のマンションは以前より売れやすくなっているといえます。
築30年のマンションを高く売るためには、複数の不動産会社に見積もり依頼をして相場観をつかみ、適切な価格を設定することが重要です。
一度の入力で複数の不動産会社の査定を受けられる「一括査定」なら、忙しい方でも簡単に複数社に見積もり依頼ができます。
査定額の高い不動産会社の中から、築古マンションの売却実績が豊富な業者を選んで契約を結びましょう。
よくある質問
マンションは築50年前後のものでも売れますが、築55年になるとかなり厳しくなります。
築50年を超えるマンションでも、大規模なリフォームを施すことで再販売できるため、立地がよい物件、維持管理のよい物件は売れやすいといえます。
マンションを早く売りたい場合は、不動産会社が仲介役を担い、買主を見つけて売却する「仲介」ではなく、不動産会社に物件を買い取ってもらう「買取」を検討しましょう。
買取とは、不動産会社が物件を買い取り、リフォームを行い転売することを目的としており、売却相場は仲介の70~80%といわれます。
買取は、仲介より売却相場が低くなりますが、早く確実に売れる点がメリットです。
築30年のマンションなら、買取を希望する不動産会社も多いため、早く売りたい方は買取を検討してみましょう。
マンションの売却価格を決める要因には、主に以下のポイントが挙げられます。
・築年数
・建物の構造
・間取り
・立地
・周辺環境
不動産の価格を査定する際に、基本となる要素が築年数です。
一般的に、新築時の価格がもっとも高く、築年数が経つごとに価格が下がっていきます。
また、建物の構造も不動産の売却価格を左右する要素です。
同じ築年数のマンションであれば、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造のほうが、鉄骨造より査定額が高くなりやすいとされます。
間取りに関しては、ワンルームならバスとトイレが一緒の物件や、ファミリー向けならリビングが狭い物件などの査定額が下がる傾向にあります。
その他のマンションの売却価格を左右するポイントについては、以下の記事で詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。