
農地の広がる自然環境が豊かなエリアには、田畑に水を引くための水路が張りめぐらされています。
それらの水路に面した土地は、建物を建てるときに制限があったり、水害を受けたりする可能性があったりで、なかなか売却できないというケースも珍しくありません。
水路に面した土地をもつ人には、
・水路に面していることで、具体的にどんな影響が土地にあるの?
・水路に囲まれた土地を売りに出しているのに、購入希望者がなかなか現れない
・水路に囲まれた土地を売るにあたって、なにかすべきことはある?売りやすくする方法があれば知りたい!
というような悩みや疑問を抱えている人も多いでしょう。
この記事では「水路に面した土地を売りたい人」のために、不動産専門家の観点から解説し、疑問やお悩みを解決します。
具体的には、
・水路に面している土地のデメリット
・水路に面している土地の売却方法
・水路に面している土地の売却における注意点
の順番に重要なポイントだけを紹介していきます。
この記事を読めば、水路に面している土地が抱えるリスクをしっかりと理解し、適切な対処を取ってスムーズに売却できるようになります。
最後まで読んで、ぜひ参考にしてみてください。
目次
水路に面している土地のデメリット
土地はいずれかの面が道路に面しているのが一般的です。しかし、農地が広がる自然豊かなエリアでは、道路ではなく水路に面している土地もあります。
水路とは、用悪水路とも呼ばれており、かんがい用または排泄用の水路を指します。田畑を潤すための水路(用水)と使用後の水を排泄するための水路(悪水)の2つの水路があるのです。
使用後の水を排泄するための水路は、衛生上の観点から地下を通っているのが一般的です。そのため、道路に面しているのは、ほとんどが田畑を潤すための水路といえます。
田畑を潤すための水路であれば、衛生上の問題もないため、土地を売却する際にもほとんど影響がないと思われがちです。
しかし、水路に面した土地にはデメリットが潜んでいるので注意が必要です。
水路に面した土地のデメリットについて、くわしく見ていきましょう。

建築不可の可能性がある
土地が水路に面している場合、建物を建設できない可能性があります。
水路に面している土地は、建築基準法の接道義務を満たしておらず、建物を建設すると建築基準法違反になるからです。
つまり、建築確認の際に許可が下りないため、接道義務を満たしていない土地上には建物を建設できません。
接道義務とは、建築基準法で定められている幅員が4m以上の道路、特定行政庁が指定した区域内では、幅員が6m以上の道路に接していなければならないという義務です。
例えば、一般国道、都道府県道、市町村道などの公道は建築基準法の定める道路ですが、私道は建築基準法の定める道路ではないので注意が必要です。
しかし、接道義務があるといっても、これらの道路にいずれかの面が全て接している必要はありません。接道義務を満たすには、建築基準法で定める道路に2m以上接している必要があります。
そのような接道義務を満たした土地であれば、問題なく建物を建てることが可能です。

再建築不可の可能性がある
水路に面している土地で接道義務を満たしていない場合、建築不可の可能性がありますが、既にマンションや戸建て住宅などが建設されている土地もあります。
そのような物件は、建築基準法の改正前に建設されており、建物が建設された時点では建築基準法を満たしていたことから既存不適格建築物として扱われます。
既存不適格建築物であっても、すぐ建物を壊さなくてはならないというわけではありませんが、既存不適格建築物を壊して新しく建て直そうとする場合には、最新の建築基準法が適用されるので再建築できません。
そのため、接道義務を満たしていない建物付きの土地を購入しても、老朽や自然災害の影響で建て直しが必要な場合でも再建築不可なので価値の低い土地といえます。
つまり、水路に面していて接道義務を満たしていない土地は、売却する場合には建物が建築できない土地、建物付きの土地を売却する場合には再建築できない土地として、どちらも制限が加わります。
そのため、買主がなかなか見つかりにくいといえるでしょう。

軟弱地盤の可能性がある
土地が水路に面していれば、土地の水分量が他の土地よりも多いです。
水分量が多い土地は地盤が弱くなるため、建物を建てる際には補強工事が必要になります。
買主が土地の購入後に建物を建てようとする際は、補強工事の費用を買主が負担するため、買主の費用負担が大きくなります。
そのため、一般的な土地の相場よりも価格を下げないと、なかなか買主が見つからない可能性があるので注意しましょう。
また、契約後に軟弱地盤であることが発覚して、補強工事が必要になった場合、瑕疵担保責任を問われる可能性もあります。
買主とのトラブルを避けるためにも、売主は水路に面している土地であることをしっかりと告知しておいた方がよいでしょう。

水路から水が溢れる可能性もある
水路は川からの分流であることが多く、雨が降って流量が多くなった場合は、水路から水が溢れる可能性もあります。
そうなると、建物が建っている場合は浸水被害が生じる可能性もあるため、なかなか買主が見つかりにくいです。
上記のようなデメリットがあるため、水路に面している土地は一般的な土地と比べると売却価格を下げる必要があり、買主もなかなか見つからないため、売却時に苦労することが予想されるでしょう。

水路に面している土地の売却方法
水路に面している土地は売却価格が安くなりやすく、買主も見つかりにくいですが、売却方法を工夫すれば相場に近い価格での売却も可能です。
水路に面している土地を売却する方法として以下の2つが挙げられます。
- 居住用ではない土地として売却する
- 橋をかけて住居用の土地として売却する
それぞれの売却方法について、具体的に解説していきます。
居住用ではない土地として売却する
土地を求めている人が必ずしも居住用の土地を求めているとは限りません。
もしかすると、田畑が隣接している場合は物置小屋を設置したり、駐車場として利用すれば、居住以外の方法で活用できる可能性もあります。
そのため、居住用ではない土地として売却すれば、買主が見つかる可能性は比較的高いです。
しかし、居住用ではない土地として売却する場合、買主が農家や駐車場オーナーなどに絞られてしまいます。
すぐ買主を見つけて売却したいと考えていても、なかなか買主が見つからず苦労する可能性が高いでしょう。
田畑として売却する
水路が残っているエリアは、他のエリアよりも田畑が残っている可能性が高いです。
そのため、田畑が隣接している場合には、田畑として売却するという選択肢もあります。
現状が田畑の場合にはそのまま売りに出せますが、一度整地している場合に田畑として売り出すのは容易ではありません。
土地として売り出す際は、居住用ではない土地として売りに出すのか、田畑として売りに出すのか、現状や需要などを考慮しながら決める必要があるでしょう。
橋をかけて住居用の土地として売却する
接道義務を満たしていない水路に面した土地は、建築基準法の要件を満たしていないため、基本的に建物を建設できません。
しかし、道路との間口が2m以上ある橋をかければ接道義務の要件を満たすため、建築基準法の要件を満たした土地として売却できます。
しかし、水路の所有権も土地の所有者に付随しているわけではないため、勝手に水路に橋をかけられません。
では、どのような手順で水路に橋をかければよいのでしょうか?
橋をかけて住居用の土地として売却する手順は以下の3つです。
- 水路の専有許可を取得する
- 水路の占有許可を承継できるか確認する
- 建築時の条件について確認する
水路の占有許可を取得する
水路は国や都道府県、市町村といった行政が管理しているため、橋をかける場合には水路の専有許可を申請しなければなりません。
基本的には、市町村に水路の専有許可を申請しますが、占有料が発生する可能性もあるので注意が必要です。
例えば、京都市は水路の占有料として1㎡あたり年間750円支払わなくてはなりません。
自治体によっては占有料が無料の自治体もあるため、いくら占有料がかかるのか確認しておきましょう。
水路の占有許可を承継できるか確認する
水路の占有許可を取得して道路に2m以上接する橋をかけた場合、建築基準法の接道義務を満たした土地といえます。
しかし、その土地を購入した買主に水路の占有許可が承継されるか確認しておかなくてはなりません。
承継できない場合、建築基準法の接道義務を満たした土地ではありますが、不法に水路を占有していることになるため、後で買主が自治体とトラブルに発展する可能性があります。
第三者に承継できない場合は、買主が次に水路の占有許可を取得するのにどんな手続きが必要なのかヒアリングしておけば、買主も安心して土地を購入できるでしょう。
建築時の条件について確認する
水路に面している土地に橋をかけて建築基準法の接道義務を満たしても、一般的な敷地と同様の建築条件が適用されるとは限りません。
宅地として認められても、容積率、建ぺい率、道路からのセットバックなど、何らかの制限が加わる可能性があります。
また、田畑が広がるような水路に面している土地は、都市計画区域内ではあるものの、用途地域の定められていない市街化調整区域で建物の建築に制限されていたり、隣地との境界が不明瞭といった問題が潜んでいる可能性もあります。
「建てられる住宅が制限されていると事前に知っていれば契約しなかった」いったトラブルを防ぐためにも、事前に土地に関する建築条件を確認しておきましょう。
水路に面している土地の売却における注意点
水路に面している土地の売却は、一般的な土地の売却とは異なるため、以下の2点に注意しましょう。
- 橋をかけると費用がかかる
- 制限がある場合は告知義務と瑕疵担保責任がある
それぞれの注意点を1つずつ見ていきましょう。
橋をかけると費用がかかる
橋をかけることによって、道路と面することになるため、建築基準法の接道義務を満たしたことになることは既に触れました。
しかし、橋をかけるには、水路を管理する行政の許可が必要になるだけでなく、橋をかける費用がかかります。
橋のスペースを利用して車を停める、橋の上を車が通過して自宅の駐車場に停めるなどのケースでは、橋の耐久性を上げる必要があります。
また、通路橋として歩くだけの場合でも、橋の両側に転落防止用の柵を設置しなければなりません。
水路の幅によって費用は大きく異なりますが、費用が数百万円かかる恐れもあるため、橋をかけるのに必要な費用を確認しておいた方がよいでしょう。
制限がある場合は告知義務と瑕疵担保責任がある
橋がかかっておらず、接道義務を満たしていない状態の土地を売却する場合、宅地だと勘違いして購入しないように、買主に対して告知する必要があります。
買主に瑕疵があることを告知しないまま土地を売却した場合、売主は瑕疵担保責任を負うことになります。
それが原因で買主が目的を達成できない場合、契約の解除または損害賠償を請求される恐れもあるため、売買契約が成立する前に必ず告知しましょう。

なかなか売却できない場合は買取業者へ依頼
水路に面している土地を売却するため、一般的な不動産会社に査定を依頼しても、制限のある土地ということで査定結果が低くなる可能性が高いです。
買主がなかなか見つからないと、その間も固定資産税や都市計画税などを負担し続けなければなりませんし、少しでも買主を見つけやすくするために橋をかけるにも費用がかかります。
費用を売出価格に上乗せして回収しようとしても、その分の費用を回収できる保証はなく、無駄な支出で終わってしまう可能性も十分あります。
水路に面している土地をうまく売却できない場合は買取業者に依頼するとよいでしょう。
不動産の買取業者の中には、特定のジャンルを専門としている買取業者がいます。
買取業者に依頼すれば、すぐ不動産を買取してくれるため、買主が見つかるまでの時間や手間を省けます。
また、売買契約を締結する際に不動産会社を仲介しないため、仲介手数料を抑えられます。なかなか売却できずに困っている場合、買取業者に相談するとよいでしょう。
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まとめ
水路に面している土地は他の道路に面している一般的な土地と比べると、小魚やザリガニなどを目にする機会も多く、生活環境が良いと思われがちです。
しかし、水路に面している土地は建築基準法の接道義務を満たしていない土地が多く、売却時にトラブルに発展する可能性もあるため注意しましょう。
接道義務を満たすためには、建築基準法で定められている道路に2m以上接していなければなりません。橋をかけて接道義務を満たせば、建物の建築制限が解除されますが、水路は公共物なので勝手に橋をかけることはできません。
水路に橋をかける際は自治体の許可が必要になる、橋をかける費用として数百万円程度の費用がかかる恐れもあります。
そのまま土地として売るという選択肢も挙げられますが、買主が限られる、売却価格が低くなるのが一般的です。また、制限があるにもかかわらず、告知せずに売却すると瑕疵担保責任に問われる恐れもあるため注意しましょう。
水路に面している土地を売るのは容易ではないため、そうした物件の売却を専門とする不動産会社や買取業者に相談することをおすすめします。