
不動産を所有していた人が亡くなると、その不動産は遺族に相続されます。
ただし、その不動産は必ずしも1つの物件が1人にのみ相続されるわけではなく、財産や相続人、遺産分割協議の状況によって、複数の人が1つの物件を引き継ぐ場合も多くあります。
実は、複数の人の名義になっている物件を売却する場合、名義人が1人である不動産を売却するのに比べ、手続きなどが複雑持分です。
ここでは、相続した共有持分を売却するときの手順や、売却時にかかる税金、売却のコツなどについて徹底解説します。
目次
共有名義の不動産を売却する4つの方法
複数の人が一つの不動産を共有している、共有名義の不動産。
相続で取得した遺産が不動産の場合、そのまま自宅などで使う場合は良いですが、住んでいるところから遠い場所にあったり、利用する予定がなかったりする場合は、売却を考えることが多いでしょう。
しかし、共有財産の売却は、一般の不動産の売却と少し異なる方法や手順をとる必要持分があります。そこで、まず共有名義の不動産を売却する方法から見ていきましょう。
共有名義の不動産を売る場合に重要な持分とは
共有名義の不動産を考える場合に必要になるのが「持分」の考え方です。持分とは、その不動産の所有する権利をいくら持っているのかを示す割合のことです。
持分は不動産の登記簿などに記載されています。所有している不動産のうち、どれぐらいの面積を所有しているのかを示しているのではないので、注意が必要です。
これからお話しする共有名義の不動産を売却する方法では、持分がどうなるのかが重要となります。

共有者全員で不動産の全部を売却する方法
共有名義の不動産を売却する方法で一般的なものは、共有者全員で不動産の全部を売却する方法です。売却者は共有者全員、購入者は第三者です。
共有名義の不動産のため、1人が不動産の全てを所有している場合よりも、手続きなども多少複雑になりますが、それでも不動産の全部を売却するため、売買の交渉なども比較的スムーズに進むことが多いです。
例えば、3人で持分1/3ずつの不動産を2,400万円で売却した場合は、1人あたり800万円で売却持分したことになります。
ただし、それぞれの所有者には自分の持分しか所有権がないため、所有者のうち誰か1人が勝手に不動産全部を売却することはできません。必ず共有者すべての同意が必要になります。
不動産の一部を第三者に売却する方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、不動産の一部を売却する方法があります。これは、複数いる所有者のうち、一部の人の持分のみを売却する方法です。
不動産の一部を売却できるのかと思われる人も多いかもしれません。
不動産の一部の売却(自分の持分の売却)は、不動産そのものの売却ではなく、あくまで所有権のみを売却するので問題はなく、一般的に行われている方法です。
不動産の一部を売却する方法のメリットとしては、他の共有者の同意が必要ないということです。自分だけの事情で売却できるため、共有者への説明や同意など、売却に出すまでの労力が小さく済みます。
デメリットは、売却先が限られることです。共有者のいる物件を購入しようと考える第三者は少ないです。そのため、売却先は不動産会社などに限られることになります。
持分を他の共有者に売却(移転)する方法
自分の持分を売却できる相手は、第三者だけではありません。他の共有者に売却することもできます。実際には、第三者に売却するよりも、他の共有者に売却する方がまとまることが多いです。
基本、現金での売買となるため、購入者は現金を用意する必要持分があります。購入者と売却者で金額や引き渡し日などの売買条件を話し合い、売買を行います。
第三者への売却と違う点は、共有者全員の同意が必要ということです。
例えば、3人で共有している不動産があり、1人が自身の持分を売却する場合は、他の2人の共有者に対して、自分の持分の買い取りを提案し、同意を得る必要があります。
他の共有者の持分を買い取り、第三者に売却する方法
上記で共有者に持分を売却する方法を確認しましたが、その逆の方法が他の共有者の持分を買い取って売却する方法です。いったん、相続した不動産をすべて自分のものにし、その後、自分のタイミングで第三者に売却します。
この方法をとる場合は、先に他のすべての共有者に購入を提案し、買取を行います。
その後は自分の事情に合わせて売却時期や金額などを決められるので、自分のペースで売却を考えられるメリットがあります。
このケースで注意したいのが、無償での譲渡です。相続で共有名義の不動産を取得した場合、共有者同士は親や兄弟などの親族であるケースがほとんどです。
共有名義の不動産を第三者に売却する場合は手続きが複雑なため、先に所有権を共有者の1人にまとめておいて、その人が第三者に売却するというケースをとることがあります。
親族間でこうしたやりとりを行う場合、贈与税がかかる可能性が大きくなります。
例えば、父から相続を受けた、母と子供名義の不動産があったとします。子供が第三者とのやり取りをすべて行うため、法務局で持分移転登記を行い、母の持分を子供に移転します。
あくまで名義変更のため、お金のやり取りはありません。普通の状態と思いがちですが、この場合は母から子供への持分の贈与となってしまい、贈与税がかかります。
この場合は面倒でも、共有者全員で不動産の全部を売却する方法(売却者は共有者全員、購入者は第三者)をとりましょう。
相続した共有持分を売却するまでの手順
ここからは、相続した共有持分を売却するまでの手順について見ていきましょう。
手順1 事前準備
相続した共有持分を売却するには、まず事前準備をしっかりする必要があります。
①相場の把握や査定の依頼
売却するためには不動産業者などに頼むのが一般的です。その際に売却価額は自分で決める必要があります。売却価額の目安は業者がある程度提示してくれます。
ただし、自分でもその地域の相場を知っておいた方が話は進みやすいでしょう。そこで、複数の業者に査定を依頼します。このとき、業者によって査定価額に差が出ることもあります。
②共有者全員の承諾を得る
共有者全員で不動産の全部を売却する場合などでは、共有者全員の承諾が必要です。原則、売買契約の際には、共有者全員が揃う必要があります。
③不動産仲介業者に依頼する
複数の業者に査定を依頼し、おおよその売却金額が決まれば、不動産業者に売却の依頼を行います。不動産業者では、購入者の募集や広告、契約に関する諸々を依頼者の代わりに行います。
④必要書類を用意する
共有者全員の承諾を得れば、次に売買契約に必要な書類を用意する必要があります。
必要な書類は次のとおり持分です。
- 不動産の登記済権利書または登記識別情報
- 土地測量図や境界確認書
- 印鑑証明書、実印
- 住民票
- 本人確認書類
※必要書類は、不動産の状況などによっても異なります。必要なものを不動産業者に確認しましょう。
⑤委任状の作成
原則、売買契約の際には、共有者全員が揃う必要があります。しかし、実際には遠方に住んでいる、高齢のため外出が難しいなどの原因で、共有者全員が売買契約に出席できないケースも多くあります。
その場合は代理売買の委任状を作成し、売買手続きを他の共有者に委任します。委任状を作成すれば、代表者1人に権限を任せることもできます。
委任状には決まった形式などはないため、自由に作成できますが、おおむね次の事項を記載持分します。
- 売買手続きを委任する旨
- 委任する範囲
- 委任者と受任者の住所氏名、押印
- 不動産の所在地
共有者全員がそろう場合には、代理売買の委任状は必要ありません持分。
手順2 売買契約・引き渡し
買主が見つかれば、売買契約を結びます。売買契約書は依頼する不動産業者が用意します。売買契約書には、共有者全員の署名や押印が必要です。
通常は、契約時に手付金を受領し、全ての代金の支払いが終わってから、不動産を引き渡します。一般的に、売買代金は持分に応じて共有者で分けます。
手順3 確定申告と納税
不動産を売却して利益が出た場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をして所得税を支払う必要があります。確定申告と納税は、共有者全員が行う必要があります。

相続した共有持分を売却したときにかかる税金や諸費用
不動産を売却して利益が出た場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をして所得税を支払う必要があります。
また、所得税以外にもさまざまな税金や費用が発生します。ここでは、相続した共有持分を売却したときにかかる税金や諸費用について見ていきましょう。
譲渡所得税
共有名義の不動産を売却して利益が出た場合は、共有者各人が、期限内に確定申告を行い、所得税を納める必要があります。
不動産を売却した場合は、他の収入とは違う特別な所得や税金の計算を行います。これを譲渡所得といいます。
譲渡所得は、売却代金から不動産の購入代金や諸費用などを差し引いた利益に、その不動産の所有期間に応じた、一定の税率をかけて税金を計算します。
譲渡所得の税率は、次のとおり持分です。
国税 | 地方税 | 合計 | |
所有期間5年以下 | 所得税30%、復興特別所得税0.63% | 住民税9% | 合計39.63% |
所有期間5年超 | 所得税15%、復興特別所得税0.315% | 住民税5% | 合計20.315% |
※相続した不動産を売却した場合の所有期間は、相続した日ではなく、被相続人(亡くなった人)が購入した日から売却までの期間で判定します。
また、不動産の購入代金(取得価格)も被相続人が購入した価格となります。
※その他取得費の特例もあります。
印紙税
不動産の売買契約書には、印紙を購入して貼り付ける必要があります。実は、この印紙代(印紙税)がいくらになるかは、売却価格によって次のように決まっています。
2020年3月31日までの印紙代
契約書に記載された売却金額 | 印紙代 | |
1万円以上 | 50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え | 100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え | 500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え | 1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え | 5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え | 1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え | 5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え | 10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え | 50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産業者に支払う手数料のことで、不動産の売却が成功した場合のみ支払ういわば成功報酬です。実は、仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で次のように定められています。
例えば、5,000万円の物件を売却した場合は、5,000万円×3%+6万円=156万円(消費税別)が仲介手数料の上限になります。あくまで上限なので、仲介手数料は不動産業者によって大きく異なります。
その他の費用
その他、不動産を売却するためにリフォームした場合のリフォーム費用や、住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合の抵当権抹消登記費用(不動産1物件につき1,000円の登録免許税・弁護士費用)、引っ越しが必要な場合の引っ越し費用など、不動産の状況によってさまざまな費用がかかるので注意が必要です。
できるだけ高く共有持分を売却するコツ
不動産を売却するためには、多くの費用や税金がかかります。不動産を売却する際には、費用や税金、手元に残る金額を考えて売却価格を決める必要があります。
そのため、できるだけ高く売りたいものです。では、できるだけ高く共有持分を売却するにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
複数の不動産業者に査定を依頼する
不動産をできるだけ高く売却するうえで、重要なのが、複数の不動産業者に査定を依頼することです。実は、業者によって査定価格(売却価格)は変わります。
それは、業者が同じような物件を取り扱ったことがあるかどうかや、その不動産が所在する地域について独自のデータを持っているかどうかなどで、査定価格が異なるためです。
場合によっては、査定価格に大きな差が出るケースもあります。
売却価格を低く設定してしまうと損をしますし、売却価格を高く設定しすぎると、かえって売却できないこともあります。
重要なのは、売却できる価格の中でできるだけ高く設定することです。どのような根拠をもとに査定価格を出しているのかを尋ねて、納得のいく金額に設定することが重要です。

できるだけ早く売る
不動産を売却するときに考えなければならないのが、売却までにどれぐらいの時間がかかるのかということです。不動産を所有する期間が長くなればなるほど、修繕などの維持費や固定資産税などの税金がかかります。
早く売却できれば、経費などを差し引いた手もとに残る資金も多くなるという認識を持つ必要があります。売却価格を設定する際、売却までにかかる期間とそれまでの維持費などを考慮しましょう。

経験の高い専門業者に買取を依頼する
ここまで、不動産業者によって査定金額が大きく変わる、売却までの期間に必要な費用も考慮しなければならないということを述べました。
しかし、そのようなところまでなかなか考えることが難しいという人も少なくないでしょう。そんな場合におすすめなのが、経験の高い専門業者に買取を依頼することです。
共有持分の不動産を専門に取り扱う業者なら、一般の業者より実績が豊富で、経験に裏付けられた査定価格を算出することができます。
また買取をしてくれるので、売却までがスピーディーに進み、維持費などの費用も抑えることが可能です。もちろん1人の共有持分のみの買取も可能です。
本サイト「イエコン」を運営する株式会社クランピーリアルエステートでも買取を行っております。
弊社は税理士や弁護士などを中心とした士業とのネットワークを活かした買取を行っているので、他の共有者などとトラブルにならない方法で柔軟に対応できるという強みがあります。
共有持分の売却をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
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共有名義の土地を相続した場合は「分筆」して売ることもできる
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、分筆して売却という方法があります。この方法は、マンションや家などの建物が建っていない土地を共有名義で相続した場合に使える方法です。
ここでは、土地を分筆して売却する方法について見ていきましょう。
分筆とは
分筆とは、1つの土地を2つ以上の土地に分けることをいいます。分筆することで共有名義の土地ではなく、各人が分割した土地それぞれの単独所有者となります。
自分1人が所有する土地となるため、売却も自由にできます。
分筆は、持分に応じて土地を分けなければなりません。持分は土地の面積を示すわけではなく、あくまで所有権です。そこで、単純に持分に応じて面積を分けるわけにはいきません。
同じ面積でも、道路に面している土地とそうでない土地では価値が変わります。持分に応じた土地の価値になるように分ける必要があります。
分筆の手順
では、分筆の手順について見ていきましょう。
①境界確定
1つの土地を2つ以上に分けるということは、分かれた土地には境界が存在することになります。
そこで、その境界をきちんと確定させます。まず、土地家屋調査士に依頼し、正しい面積を測量し、境界標を設置するなどして、土地の境界を確定させます。同時に測量図も作成します。
②登記
分筆で必要な登記は、分筆登記と所有権移転登記です。分筆登記は「土地を分けました」という登記で、所有者はすべての土地でまだ共有名義のままです。
所有権移転登記は、分けた土地それぞれの所有者を単独の人にする登記です。分筆登記と所有権移転登記の両方をすることで、各人が分割した土地それぞれの単独所有者となります。
登記の順番は、まず分筆登記をし、次に所有権移転登記を行います。
分筆の注意点
分筆には次のような注意点があります。
①費用がかかる
分筆をするには、土地家屋調査士に測量をしてもらったり、司法書士などに登記を依頼したりと費用がかかります。
分筆する土地の数や面積などによって異なりますが、おおよそ30万~50万円(大きさによってはもう少しかかることも)程度かかります。
②場合によっては売却しにくくなることも
土地の売却を考えたときに、利用しやすい・使いやすい土地は需要が高く、買い手がつきやすくなります。逆に、利用しにくい・使いにくい土地は需要が低く、なかなか売却できません。
分筆した後の土地が、例えば小さすぎたり、不整形なものであったりした場合は、利用しにくい・使いにくい土地になってしまい、売却しにくくなるリスクがあります。
そこで他の共有者と分筆を協議する際には、売却のことも考えて話し合い、意見をまとめる必要があります。
まとめ
相続した共有名義の不動産を売却するには、その人や不動産の状況に応じていくつかの方法があります。大事なのは、自分に合った売却方法を選ぶことです。
専門家や専門の業者などと相談しながら、相続した共有名義の不動産をかしこく売却しましょう。