遺産分割が成立しない!解決するための対処法とは

遺産分割

遺産分割には、大なり小なり揉め事がつきものです。どうしようもなくこじれてしまい、家族としての関係が破綻してしまった例も少なくありません。

では、遺産分割について、また遺産分割が成立しない時の対処法について解説します。

「普通の家庭」ほど、遺産分割でもめるケースは多い

遺産分割
遺産分割についての争いは、意外にもごく普通の家庭で多く起こっています。しかし、「うちには遺産というほどの立派な財産はないから、遺産分割のことなど心配いらない」と考える方はとても多いものです。

実際には、遺産分割において家庭裁判所での裁判手続きにまで発展するほどの大きな争いは、大部分が5000万円以下の比較的少額な遺産を巡って起きているのです。平成26年度の司法統計を参考にすると、遺産分割に関する裁判手続きにおいて、争点となっている遺産の規模が5000万円以下のケースが約4割、1000万円以下のケースも約3割に達することが分かります。

5000万円以下であれば、自宅などの不動産と預貯金、死亡退職金などを合わせれば一般家庭でも十分達してしまう遺産額でしょう。1000万円以下になると、不動産と若干の預貯金だけでも超えてしまうかもしれません。揉めるほどの遺産ではないからこそ、相続人がそれらを取り合って争うことになってしまいます。また、揉めるはずはないと過信して被相続人が遺言を遺していないケースが多いことも、争いが大きくなる原因となっています。

では、一般人から見ると大層揉めそうに見える多くの財産を所有するお金持ちの場合は、なぜ争いが大きくなりづらいのでしょうか?それは「財産が多い」ことが最大の理由でしょう。つまり、相続人それぞれに十分分配してあげられるだけの財産があるため、相続人同士での取り合いも生じにくいということです。

例えば、不動産を相続する相続人、車や骨董・美術品を相続する相続人、預貯金を相続する相続人、また他の相続人は有価証券など、遺産がたくさんあることで相続人それぞれが自分の取り分に納得する場合が多いため、それほど大きく争うこともないのです。

またお金持ちの場合は、財産を円滑な仕方で分割するために遺言を遺す場合がほとんどです。法的に有効な遺言があれば、原則としてその内容通りに遺産分割が行われます。遺産分割協議を開く必要がないため、相続人同士が自分の主張をぶつけ合うこともありません。また、遺言の内容に相続人が異議を唱えたとしても、それに配慮を払う必要性は低いため、裁判での争いには発展しにくくなるでしょう。

遺産分割協議を実施するためのルール

遺産分割協議
遺産相続で被相続人の遺言書がなかった場合は、遺産分割協議を開く必要があります。遺産分割協議は、相続人が複数いる場合に限って行われます。

遺産分割協議とは、遺産相続で共同相続人となる人たちが参加し、誰がどの遺産をもらうか、分けにくい遺産をどのように分割するかなどについて、話し合って決めることです。実際にひとつの場所に集まって協議することもできますし、電話やメールなどでコミュニケーションを取りつつ進めることもできます。

重要なのは、遺産分割協議の内容について相続人全員が合意してくれるかどうかです。それさえ可能であれば、連絡方法は問われません。

遺産分割協議において特に留意したい点は、必ず相続人全員と意思疎通をし、協議した内容に関する合意を得ることと、一度成立した遺産分割協議は、一部の相続人の判断では取り消すことができないことです。

多くの人が遺産分割の難しさを実感するのは、遺産分割協議においてでしょう。相続人それぞれが遺産に対する自分の主張を遠慮なく述べることで衝突してしまい、お互いに一歩も譲らなくなることもよくあります。

相続人全員の参加と、代理人などの選任が必要

遺産分割協議には、いくつかルールがあります。そのひとつは、先ほども述べたように相続人が全員参加しなければならないということです。

そのためには、相続人が誰なのかが確定してから遺産分割協議を行う必要があります。相続人を確定させるには、被相続人のすべての戸籍をたどり、自分たちが知らない血族がいないかどうかを確かめる必要があります。

注意したい点として、相続人のうちの誰かが欠けた状態で遺産分割協議をしても、それは無効となってしまいます。ですから「被相続人の家族構成はすべて把握しているはず」と思いこまず、必ず相続人調査を行わなければならないのです。

また、相続人の中に十分な判断能力がない人がいる場合も、そのままでは遺産分割協議ができません。判断能力が十分ない人とは、未成年の子どもや認知症の人、知的障害がある人などです。このような相続人がいる場合、その人達の遺産分割を手伝ってくれる代理人が必要です。まずは、家庭裁判所で代理人や成年後見人の選任をしなければなりません。

代理人や成年後見人の選任は、そのような人を必要としている相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てることになります。

未成年の相続人には「特別代理人」が必要ですが、基本的には親が代理人となることができます。ただし遺産相続では、未成年の子どもが相続人になるということはその親も共同相続人になっている可能性が高く、この場合は親が代理人となることはできません。共同相続人である子どもとの間に遺産相続における利害関係が生じているため、代理人としてはふさわしくないと判断されてしまうためです。ただし、親が相続放棄をする場合については、利益相反関係にならないので、未成年である子どもの代理人になることができます。

認知症や知的障害の相続人には、「成年後見人」が選任されます。成年後見人の場合も、認知症や知的障害の相続人の子どもや親、配偶者などが選任されることが多くなります。しかしやはり、遺産相続において共同相続人となっている家族は、成年後見人になることができません。

相続人の中に行方不明者がいる場合にも、その人を除外して遺産分割協議を行う訳にはいきません。家庭裁判所へ「不在者財産管理人の選任申立て」を行うか、その人はすでに死んだものとみなす「失踪宣告」のどちらかを申立てる必要があります。ただし、いくら長いあいだ行方不明だとしても、生存していることが何らかの形で判明している場合については、失踪宣告で死んだものとみなすことはできません。

分割対象の遺産がすべて把握できている必要がある

遺産分割協議を行う上でのもうひとつのルールは、分割対象となる相続財産の範囲と、その評価額の確定です。どの遺産が分割されようとしていて、それらがいくらなのかが分かっている状態でなければ、分割することはできないためです。

土地や建物、有価証券など、遺産の種類によって評価額の計算方法は異なります。ほとんどの遺産に共通していることは、原則として遺産分割協議を行う時点での時価が反映されることです。

とは言っても、「土地の評価額を計算しなさい」と言われて、パッと計算できる人は多くありません。遺産の種類が多かったり評価額が調べにくい遺産があったりすると、手を焼いてしまうでしょう。しかし、分割対象の遺産の正確な把握と正確な評価額の算定は遺産分割協議のために必要不可欠です。

しかしこれには相当な手間がかかるため、不動産会社などの専門家に任せてしまうと非常に楽になるでしょう。

正しい仕方で遺産分割協議書を作成する

遺産分割に関して相続人全員が合意したら、協議した内容を「遺産分割協議書」という書面にしておきましょう。遺産分割協議書の作成は義務ではありませんが、必要性の高いものです。

例えば遺産分割協議書があれば、遺産分割協議が成立してから相続人の誰かが協議内容について異議を唱えたとしても、その主張を無効とする証拠として提示することができます。

さらに遺産分割協議書は、相続財産の名義変更の時に提出を求められる書類でもあります。例えば不動産の相続登記や、被相続人の預貯金の解約・名義変更、相続税の税額軽減措置を受ける際などに、必要書類のひとつとして提出が求められます。

重要書類ともなる遺産分割協議書ですから、間違いなく有効なものとなるように作成方法には注意しなければなりません。

遺産分割協議書を作成する点で非常に重要な点は、「誰が何を相続するのか」が、第三者にさえ分かるほと簡明かつ詳細に記載することです。

例えば、不動産は登記簿謄本に記載された通りの書式で記載します。登記情報は長々としており、普段あまり使わないような言葉が多く使われていたりしますが、必ずすべてをその通りに記載します。勝手に省略したりしないように気をつけましょう。

預貯金であれば、銀行名や支店名、口座番号や残高までを正確に記載します。有価証券は、株式の銘柄や株数を正確に記載します。こうすることで、誰が見てもどの財産のことを言っているのかが明らかに分かる遺産分割協議書になります。

遺産分割協議書は、正しい書式で書くことも重要です。正しい書式とは、住民票などの公的な書類のように記載するということです。例えば住所表記などで「1-1-1」と書いても一般的には大丈夫ですが、遺産分割協議書では住民票のように「1丁目1番1号」などの書式で記入します。

遺産分割協議書が有効なものとなるために絶対欠かせないのは、相続人全員の署名と実印の押印です。

これらのポイントを守れば、有効な遺産分割協議書が完成するでしょう。

ちなみに、遺産分割協議書は弁護士などの資格者でなければ作成できないわけではありません。もちろん依頼することは可能ですが、必要事項がきちんと記載されていて相続人の署名捺印などがあれば遺産分割協議書として有効に成立します。

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遺産分割協議が滞るなら「遺産分割調停」へ

調停
一生懸命遺産分割協議を行い、相続人全員が納得するように遺産を分けようとしても、どうしても成立までこぎつけない場合もあります。一部の相続人が身勝手な要求を主張して曲げなかったり、遺産分割協議を妨害する目的でわざと参加しない相続人がいる場合もあります。遺産の一部を隠し持っている相続人がいるケースもあるでしょう。

このように相続人の間では解決できなくなった遺産分割問題は、家庭裁判所での調停手続きに持ち込んで解決を試みることになります。

ただし場合によっては、遺産分割調停の前に別の手続きをしなければならない可能性もあります。まずは、遺言書の有無の確認です。本来なら遺産相続の開始後すぐに遺言書の捜索はなされているはずですが、万が一まだ行っていないなら、調停より先に遺言書を探しましょう

また、遺産分割の対象だと思っている遺産の中に、被相続人以外の名義のものがあるでしょうか?名義のはっきりしない財産を遺産分割で分けてしまうと、大きなトラブルの原因となってしまいます。よく確認し、もし被相続人名義ではない財産があったなら、名義に関する「遺産確認の訴え」という裁判手続きを先に行い、それが終了してから遺産分割調停に入りましょう。

また、相続人のうちの誰かが遺産を勝手に取得したりしたことで、その遺産の所在を確かめるために遺産分割調停を行おうとしているでしょうか?この場合も、「不当利得返還請求」という裁判手続きを先に行い、決着がついてから遺産分割調停を行いましょう。

遺産分割協議に反対し続ける相続人をどうにかできないのか

遺産分割協議は、親族間の溝が深いと何年協議を続けても話が進みません。また反対する理由についても、感情的な部分が大きくなってきます。場合によっては、遺産分割の手続きを妨害してくることもあるようです。このような遺産分割協議に反対し続ける相続人を、何らかの罪に問うことはできないのでしょうか。

結論から言うと、多少の嫌がらせ程度では罪を問うことはできないようです。よって、反対し続ける相続人がいる場合は、早い段階で遺産分割調停に移行した方が良いでしょう。

遺産分割調停の開始から終了までの流れ

遺産分割調停は、次のような流れで進んでいきます。

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1.遺産分割調停申立書の作成および申立て

まずは、申立てです。遺産分割調停申立書を、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所か、相続人同士で決めた家庭裁判所へ提出して、調停の申立てをします。

2.家庭裁判所へ出頭し、話し合う

調停でも、相続人同士の意思疎通は必要です。そのため、所定の期日には家庭裁判所へ出頭しなければなりません。調停では、相続人同士が顔と顔を突き合わせて話し合うことはほぼありません。家庭裁判所の裁判官や、裁判所が選任した調停委員が相続人の間に入り、双方の言い分を聞きながら遺産分割の解決を目指します。調停では、弁護士を伴っていくと大変心強いでしょう。不利な状況にならないよう、助言してくれるためです。

調停での話し合いは1回だけではなく、相続人の合意が得られるまで何回も回数を重ねていくこととなります。解決までの話し合いの回数の平均は、平成26年度の司法統計を参照すると約4~5回となっています。

3.調停成立

遺産分割調停によって遺産分割の方法が決まり、相続人全員が合意すると、解決となります。その後、調停調書が作成されて調停は終了します。調停調書は、単に調停の内容を書いただけの書類ではありません。調停で合意に至った通りの方法で遺産分割を実行するよう相続人に強いる、法的な拘束力を持っています。

4.調停不成立

調停では解決の糸口が見えず、これ以上進展しないと思われる場合には、調停は不成立となります。その後、調停のさらに上の段階「審判」へ進みます。

まとめ

「遺産分割で何か問題が起こったら、その時弁護士を頼ろう」と考える方も多いかもしれません。しかし、遺産相続に関して一度トラブルが生じると、家族や親族でもある相続人との間に修復不可能なほどの感情的亀裂が生まれる場合も少なくありません。

自己流で対処しようとするよりも、何のトラブルもないうちから弁護士に相談しておく方が、何倍もスムーズに遺産分割を進められることは間違いありません。

遺産分割協議がこじれると、10年、20年と訴訟が続くことも少なくありません。そしていったんこじれてしまうと、もとに戻すにも多くの時間がかかってしまいます。

遺産分割協議のサポートについては、弁護士費用をかけるだけの効果が必ずあります。遺産相続がスタートしたら、早めに弁護士へ相談しましょう。

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