
経済的価値のない古くなった家などを解体せずに残したまま「古家付き土地」として売却を考えている人も珍しくありません。
古家の解体にかかる時間や費用が必要ないため、すぐに売却活動を始められますが、古家付き土地の売却は難しいといわれることもあります。
一方で「中古物件を安価で欲しい」「昔ながらの古家に住んでみたい」「リノベーションして賃貸物件にしたい」など、さまざまな理由で古家付き土地を購入する人もいます。
この記事では、古家付き土地の3つの売却方法とそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説するので、自分に合った売却方法を選択してみてください。
また、古家付き土地を売却するときの注意点や活用法などもわかりやすく説明していきます。
目次
古家付き土地の売却とは?
「土地を売却するけど、古家が残っています。」と表現することで、土地を探している買主に効果的に訴求できるというわけです。
また、古家付き土地として売却する場合、古家の価値は考慮されず土地のみの売却価格で販売します。
そのため、土地だけが欲しいという買主にも前向きに購入を検討してもらえる可能性が高くなるかもしれません。
古家付き土地を売却するときのメリットとデメリット
古家付き土地の売却にはさまざまなメリットとデメリットがあり、これらを理解した上で売却活動を進めていくことが大切です。
もしデメリットのほうが大きくなる場合は、売却を慎重に考えたほうがよいということもあります。
古家付き土地の売却を考えている人は、これから解説するメリットとデメリットを参考にしてみてください。
メリット
「解体費用を負担しなくて済む」
古家をそのままにしておくことで、解体工事をおこなう必要がないので解体費用がかかりません。
物件によって解体費用の金額は異なりますが、昔ながらの広い庭がある古家の場合、根が深い樹木や大きな庭石などが存在する可能性があり解体費用も思った以上に高額になる可能性もあります。
また、古い家具などをそのままにしておく場合は家具を廃棄・処分する費用もかかります。これら諸費用を負担する必要がなくなるのは大きなコスト削減といえるでしょう。
費用だけでなく、解体工事を依頼する手間も省くことが可能なので、すぐに売却活動に取り掛かることができるというのも売主の売却意欲を保つということにおいてメリットとなるでしょう。
「固定資産税や都市計画税を軽減する特例が適用される」
古家付き土地を所有している人は税金を支払う必要があります。
建物や土地にかかる税金の固定資産税や都市計画税において、土地に住宅用の家屋が建っている物件であれば「住宅用地の特例」が適用されるケースがあります。
この特例が適用された物件は固定資産税や都市計画税の負担が軽減されます。例えば、住宅用の土地に家屋が建っている場合、固定資産税1/6、もしくは1/3に軽減されます。
しかし、家屋を解体し更地にした場合は住宅用地の特例が適用されなくなり、軽減されていた税金がもとに戻ってしまいます。
そのため、物件が売れるまでの税金をなるべくおさえたい場合は、古家を解体せず残しておくとよいでしょう。
建物解体時の税金対策について以下の記事でも詳しく説明されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

「瑕疵担保責任が免責になる場合がある」
古家の中でも、法律で定められた耐用年数を経過した古家は瑕疵担保責任が免責になる可能性があります。
例えば、木造住宅の場合の耐用年数は「22年」と定められており、この期間内は住宅としての役割を果たすことができるとされているので、資産価値は大きく損なわれないと判断されます。
しかし、22年(耐用年数)以上の年数が経過すると経年劣化などによって物件にさまざまな問題が起こる可能性が高く、住宅本来の役割を果たしているとはいえない資産とされ価値が認められないことがあります。
価値が認められない物件を売却することになった場合、売却価格が上乗せされない代わりに物の寿命は瑕疵に該当しないなどの理由で瑕疵担保責任を負わないで済むケースがあります。
ただし、必ずしも瑕疵担保責任を負わないで済むということではなく、劣化部分などが建物の機能面において、どのような影響を与えているかなども慎重に考慮されます。
また、買主と売主の意思や付帯設備の有無など総合的に評価をおこなった上で判断されます。
「家を建築したときの状態をそのまま買主に伝えることができる」
古家付き土地は実際に家が建っている状態の土地です。
そのため、買主側からすると、実際に家を建てたときの日当たりやスケール感などが更地の状態よりも想像しやすいというメリットがあります。
古家付き土地はいわばモデルハウスと同じで、将来的に古家を解体し新築の家を建てることを考えている場合、暮らしをイメージすることにおいてとても有益な情報になります。
買主が求めている物件とイメージが合致すれば、古家付き土地でもすぐに購入に繋がる可能性があります。
デメリット
「解体費用を値引いた売却価格になる可能性がある」
解体費用は解体業者や作業工程などによって、見積りした金額よりも高額になる可能性があります。
最終的にいくらになるか工事完了まではっきりと分からない解体費用は売主も買主も負担したくないと思うことでしょう。
また、買主からすると、新築の住宅を建てるために土地を利用したい人は解体費用を負担してまで利用価値のない古家付きの土地を購入するメリットはありません。最初から更地の土地を選択したほうがよいと考えるのが一般的です。
ただし、解体費用の負担が無いに等しい、もしくは少額で済むということであれば話は変わってきます。解体費用が実質的に売主負担になるのであれば、安い価格で物件を購入し、自身で解体すればよいと考える人もいます。
そのため、古家付き土地を購入してもらいたい場合は、解体費用がかかっても妥当な価格に設定する必要があります。同時に売却価格はその分だけ安くなってしまうことを念頭に置いておきましょう。
「土地の調査ができない」
古家付き土地は、建物が建っているので地中の埋設物を調査できません。
廃棄物に関する決まり事が曖昧だった時代から存在する履歴の古い物件も多く、ガレキや杭などさまざまなモノが地中に埋められている可能性があります。
もし売却後に買主が埋設物を発見した場合、瑕疵に該当するケースがあるため売主に処分や撤去などの責任が課されます。
物件の履歴をしっかりと確認し調査しておくことと、瑕疵担保責任を負うかどうかの交渉や取り決めを売買契約時にしておくことが大切です。
「瑕疵担保責任が課せられる」
瑕疵担保責任は土地だけではなく建物にも適用されます。
古家付き土地は、建物と土地それぞれに瑕疵担保責任が生じますので、土地に瑕疵が無くても建物に瑕疵があった場合は同様に修繕・リフォームなどの責任が課されます。
ただし、古家付き土地は経済的価値がほぼなく耐用年数も超過している場合もあります。このような物件は、前の項目でも説明した通り瑕疵担保責任が免責となるケースがあります。
リフォーム・リノベーションをして売却するメリットとデメリット
古家付き土地を現状のまま売却するのではなく、建物のリフォームやリノベーションをしてから売却するという手段もあります。
ただし、この売却手段は一長一短な部分もあるので、リフォームやリノベーションをおこなう前によく検討してから依頼することを心がけましょう。
リフォーム・リノベーション後に古家付き土地を売却する場合のメリットとデメリットについて説明します。
メリット
「見栄えが綺麗になる」
古家は建物自体の老朽化が激しいこともあり、景観が悪いことでなかなか購入したいという意欲が湧かない物件も多いようです。
そのような物件は、新築のようにキレイにリフォーム・リノベーションをすることで、買主の興味を引くことができるかもしれません。
欠陥部分が修復され外観も新築同様になったリフォーム・リノベーション物件は、安価で中古物件を探している人のニーズに合った物件になる可能性があるので、興味を持つ人も増えるかもしれません。
また、古家付き土地が再建築不可物件に該当する場合は、あらかじめリフォーム・リノベーションをしておいたほうが買主の負担も少ないので売れやすくなるでしょう。
「古家ではなく中古物件としてアピールできる」
リフォーム・リノベーションした古家は中古物件として売却できるので、安価で中古物件を求めている人に対して積極的にアピールできます。
また、かなり築年数が経っている物件でも、昔からメンテナンスをしっかりおこなっており躯体などがしっかりしている古家であればリフォーム・リノベーションによって、この先もまだまだ使える物件に変わることもあります。
これらを売却時にアピールできれば、購入したいと思う人も増えるでしょう。
リフォーム・リノベーションした古家の中古物件は一般的な中古物件よりも売却価格が安い傾向にあるという点も、買主からすると嬉しいポイントです。
デメリット
「リフォーム・リノベーション費用がかかる」
古家付き土地をリフォーム・リノベーションする場合はもちろん費用がかかります。
劣化部分を修繕したり、新築時のキレイな状態に戻したりなど、小規模の工事で済むリフォームと、新しく冷暖房をつけたり、建物のデザインを一新する大規模な工事をおこなうリノベーションでは費用に大きな差があります。
思い切ってリノベーションするのもよいですが、多額の費用をかけても全く利益にならない場合もあるので、慎重に判断する必要があります。
「買主のニーズに合わない可能性が高い」
古家付き土地をリフォーム・リノベーションして、売りに出したとしても買主のニーズに合わなければ売れません。
特にリノベーションの場合、所有者の個性が色濃く出てしまうこともあり、他人からしたら汎用的で使いやすい住宅とはいえない物件になってしまうこともあります。
また、リフォーム・リノベーション済みの物件は、買主が自分自身でリフォーム・リノベーションをしたい人や、更地目的で物件を探している人などを取引対象からズレてしまうことになるので、購入希望者自体が少なくなりうまくマッチングすることが難しくなるでしょう。
解体工事をして売却するメリットとデメリット
古家付き土地の建物を解体し、更地にした状態で売却する方法があります。
基本的に土地を購入する人は、新たに住宅や建物を建てることを目的としている人が多いので、古家付き土地よりも更地の方が売れやすい傾向があります。
更地での売却は一般的に「更地渡し」といわれますが、この売却方法には具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのか説明します。
メリット
「買主の負担を減らし早期売却が期待できる」
更地は、新築を建てたいと考えている買主にとって無駄な手間や負担を省くことができる状態の土地です。解体作業や費用が発生しないので、すぐに建築の準備を進められます。
また、古家付き土地ではできなかった土地の調査も可能となるので、買主も安心して購入できるでしょう。
このことから、買主にとってデメリットになる要素が少ないので、古家付き土地よりもスムーズに売却できるかもしれません。
「古家付き土地よりも高い値段で売れる」
古家付き土地よりも更地のほうが、高い値段で売れるといわれます。
なぜなら、活用方法が限定される古家付き土地に対して、更地は住宅・ビル・店舗・発電施設・駐車場など多くの活用方法がある物件なので、さまざまな条件を持った買主をターゲットにできるからです。
そのため、活用の幅が広い更地にすると必然的に需要は高まり、購入希望者の多い更地の場合は売却価格が競り上がります。
「建物の瑕疵担保責任が発生しない」
更地は建物を解体した後の状態なので、建物に対する瑕疵担保責任が発生しません。ただし、土地に対する瑕疵担保責任はあるということをおさえておきましょう。
土地の瑕疵担保責任はあるといっても、更地は土地の調査によって瑕疵などの不安要素が払拭されて売却されることが多いので、売却後にトラブルになることは少ないと考えてよいでしょう。
一方で、古家付き土地の場合は建物の劣化や老朽化などの欠陥が比較的に多く、売却後に瑕疵担保責任が問われる可能性があります。
土地の調査もできないので、もしも土地に瑕疵があった場合、建物と土地の両方の瑕疵担保責任が問われるおそれがあります。
瑕疵担保責任について不安がある場合は、更地にして土地の調査をおこなった上で売却をしたほうがよいかもしれません。
デメリット
「建物の解体費用などを負担する」
解体費用や廃棄物の処分費用などの諸費用は工事の内容によって、予想した金額よりも高額になる可能性があります。
同時に建物の滅失登記手続きも必要となり、土地家屋調査士に依頼する場合は依頼費用もかかります。
また、解体後の土地に埋没物などがないか調査する場合は、地盤調査の費用もかかり、埋没物が発見された場合は撤去費用なども発生します。
このように、古家付き土地を更地にして売却するためには、さまざまな費用がかかることを知っておきましょう。
苦労して費用を捻出し解体工事などをおこなったとしても、必ず売却できるという保証はないので、解体にともなう売主の経済的負担はとても大きいといえるでしょう。
解体費用の相場などを知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

「固定資産税の負担が増える」
古家付き土地の古家を解体し更地にしてしまった場合、前の項目でも説明した住宅用地の特例制度が適用されなくなり、軽減されていた税負担がもとに戻ります。
すぐに売却できる物件ならよいですが、更地を売れずに所有している間は税金を支払っていく必要があります。そのため、売れない期間が長くなるほど固定資産税や都市計画税の負担は積み重なって大きくなります。
ただし、更地にすることで税負担が少なくなる場合もあります。
古家の解体し更地にすると、建物にかかる固定資産税や都市計画税の負担がなくなります。その結果、負担するのは土地にかかる税金のみとなるので、総合的にみると税負担額が少なくなったというケースもあります。
固定資産税、都市計画税の計算方法はとても複雑で、構造や設備などさまざまな観点から評価され、税額が算出されます。
建物の固定資産税などが高額な場合は、更地にしたほうが負担を減らせるかもしれません。
古家付きの土地が「再建築不可物件」なら要注意!
古家付き土地は昔から存在するものも多く、現在の建築基準法に適合していない可能性があります。
建築基準法を満たしていない物件の建物を解体した場合、新しく建物を建築できない可能性があります。このような物件を「再建築不可物件」といい、古家付き土地と同様に売却や活用が難しい物件のひとつです。
古家付き土地が再建築不可物件だった場合、古家をリフォームして売却するか、更地にして隣地者に買い取ってもらうなどの売却方法が考えられます。
また、建築基準法を満たすための手段(敷地のセットバックなど)を取り、建物を再建築可能な物件にもできますが、それなりの労力と費用がかかります。
再建築不可物件の場合は、増築や改築などの大規模なリフォームが認められていません。そのため、小規模の修繕程度しかできず、リフォームしたとしても築年数には影響がないので資産価値を上げることもできません。
このような物件を売却したい場合、不動産会社に相談して売却できる方法はないかなどを聞いてみるのがよいかもしれません。
再建築不可物件について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

売却検討中なら「古家付き土地の活用法」も知っておこう!
古家付き土地を売却するのではなく、うまく活用できる方法を考えるのも一つの手段です。
まず、自身が所有する古家付き土地にはどのような魅力や強みがあるのかを理解すると、活用方法の幅が広がるかもしれません。
賃貸物件として活用する
古風で田舎の良さを感じられる古家ならば、賃貸物件として活用できそうです。
田舎暮らしに憧れを持っている人は意外と多く、古家に住んでみたいという需要は少なからずあります。そのような人に物件を賃貸し収入を得るという活用方法もあります。
人に物件を貸すことで空き家にならず、さまざまなリスクを減らすことができます。所有者がリフォームの手間や費用をかけずに、収入を得ることができる一石二鳥の活用方法となるでしょう。
物件を放置することのリスクは、以下の記事で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。

また、賃貸契約では、ある程度の範囲ならば好きにリフォームしてよいなどの取り決めをするのもよいでしょう。
賃貸契約では、個人間ではなく不動産仲介業者に仲介してもらうと、トラブルにもなりにくいはずです。
更地にして駐車場として貸す
古家付き土地が所在する場所によっては、車を定期的に駐車できる場所を探している人が多いなどで駐車場の需要があるかもしれません。
そのような場合、所有している古家付き土地を思い切って更地にし、駐車場として貸し出すという活用方法もあります。
物件がなかなか売れずに悩んでいる場合、駐車場の賃貸契約によって収入を得ながら売却活動をおこなうという手段も効率的です。
駐車場の賃貸契約時には、駐車場として利用できる期間を定めることや、土地の売買が決定した場合は定めた期間内に退去するという特約をつけるなど、あらかじめ契約書などに記載し取り決めておくとよいでしょう。
売却が決まったときに、自分と賃貸契約者の間でトラブルにならないためにも、契約内容をしっかり定めておくことが大事です。
古家付き土地の売却は不動産会社に相談
実際に古家付き土地を所有している人は、価値はあるのか、どのくらいで売れるのか、売るときはどのようなことに気をつければよいのかなど、さまざま不安や悩みがあると思います。
そのようなときは、まず不動産会社に相談することが大切です。不動産会社の査定や見積りは、売却活動に必要な指標になります。
物件の買取販売を数多くこなしている不動産会社は、古家付き土地など特殊な物件の取引実績もあるでしょう。このような物件の取引の流れなども事前に教えてもらいつつ売却活動をしたほうが安心かもしれません。
特に、買主との交渉が多く発生しそうな古家付き土地は、不動産会社のサポートが必要になります。
土地売却で不安なことや悩み、トラブルなどがある人は、以下の記事で紹介している不動産売却における専門家の力を借りるとよいでしょう。

まとめ
古家付き土地は売却しにくい物件とよくいわれていますが、全く需要がないわけではありません。
安価で中古物件が欲しい人、DIYやリフォーム好きな人、物件がある地域が好きな人など、古家付き土地を必要としている人は意外と少なくないようです。
これらの需要と、自身が所有する物件の特徴がうまくマッチングすれば、古家付き土地でもすぐに売却することができるかもしれません。
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