不動産投資における「消費税還付スキーム」とは?

消費税還付

不動産投資は、投資用物件を購入するところから始まります。投資スタート後のキャッシュフローを安定させることも非常に肝要な点ではありますが、手元のキャッシュにできる限り余裕を持たせておくことが命綱となる不動産投資では、物件購入時に支払った消費税はぜひとも還付してもらいたいものです。国は、幾度も税制改正を繰り返し、消費税還付を封じようとしてきました。しかし現在でも、合法的に消費税還付を実現する方法はあります

そこでこの記事では、不動産投資に絡む消費税還付スキームについて解説していきます。

不動産投資における消費税還付の重みとは

消費税還付
消費税は名前の通り、消費する行為に対して課税される税金です。国内の課税事業者による商品やサービスの販売には、基本的に消費税が課税されています。不動産投資用の物件の購入も、消費行為として消費税の課税対象になっていますが、不動産投資に関係する消費税には特徴があります。それは、納税額の大きさです。数千万円、数億円といった巨額のお金を払って、投資用物件を購入する投資家は珍しくありません。平成30年9月現在の消費税率は8%ですから、もし5,000万円の物件を購入したとすれば400万円、1億円の物件には800万円もの消費税を支払っていることになります。消費税はどうしてもかかるのだから仕方ないと特に気にも留めずに支払っているかもしれませんが、よくよく考えるとこれは見逃すことのできないお金です。

例えば、土地を含めれば1億5千万円の投資用物件を購入したとしましょう。土地は消費税非課税ですので、購入価格だけを計算に入れることとします。1億5千万円の投資金額に対し、800万円の消費税が占める割合は、約5%です。投資物件の利回りは、地域にもよりますが平均して5%前後と言われており、10%台にもなればお宝物件と言っても過言ではないでしょう。仮にこの物件の利回りが10%だったとすれば、800万円という金額は年間のローン返済や諸経費、税金などを支払っても、半分以上は手元に残るほどの金額です。つまり、物件購入時に支払った消費税は、年間収入の約半分に匹敵するかもしれないお金だ、ということです。何もせずに手放してしまうのは、あまりにもったいないことではないでしょうか。

不動産投資を始めて間もないうちは特に、まとまったお金を必要とする場面に遭遇します。購入した物件に不具合が見つかれば修繕しなくてはいけませんし、保険や管理会社、税理士などとの契約にもお金が必要です。やっと一息ついたように思えた頃には、不動産取得税の納付書が届きます。ここでもし消費税の還付が受けられていたとしたら、初期にありがちな大きな出費のための心強い財源となってくれるに違いありません。消費税は、払って当然の税金ではあります。しかし不動産投資を円滑に進めるという面において、還付を受けておくのとあきらめてしまうのとでは、天と地ほどの差が生じるのも事実です。

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現在も通用する消費税還付スキームの流れ

税務署
かつては消費税還付のための方法として、「自販機スキーム」と呼ばれる手法が流行っていました。しかし国に問題視され、封じ込めのための税制改正が繰り返されたことによって、現在ではまったく通用しないスキームとなっています。では今は、どのような手順を踏めば消費税還付が受けられるのでしょうか?現在でも通用する消費税還付スキームの流れをご紹介しましょう。

1.投資用物件の購入前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する

消費税還付を受ける前提として、自分自身が消費税の納税義務者でなければなりません。そのためには、投資用物件を購入してしまう前に、消費税課税事業者選択届出書を税務署へ提出する必要があります。

2.投資用物件の引き渡し月に、課税売上だけを計上する

投資用物件の引き渡し月の行動には慎重になりましょう。非課税売上が発生してしまわないように細心の注意を払って下さい。引き渡し早々に入居者が決まりそうでも、引き渡し月に契約がかぶると非課税売上である賃料収入が発生してしまいます契約時期はしっかりコントロールするようにしましょう。また、他の事業などで課税売上を上げておくことも忘れないようにします。

3.課税売上割合の変動率が50%を超えないようにし、変動差も5%以内にする

平成28年の税制改正後、消費税還付の条件として「調整計算」をクリアすることが追加されました。簡単に言うと、課税事業者になってから3年間の課税売上割合のバランスを一定に保たなければならないということです。課税売上割合の変動率が50%、変動差が5%を超えてしまうと、課税売上割合が「著しく」変動しているとみなされ、せっかく還付された消費税も取り上げられてしまいます。これを不動産投資に当てはめて考えると、課税事業者になってからの3年間は、非課税売上である賃料収入よりも課税売上の額を多くしておくというのが、調整計算クリアの秘訣となるでしょう。

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消費税還付スキームとして「金売買」が注目される理由

ゴールド
先ほど解説した調整計算は、不動産投資家にとって消費税還付の難易度を格段に引き上げる要因となりました。不動産投資のかたわら、賃料収入を少し超える程度の課税売上を上げ続けるということは難しいためです。課税売上のコントロールに加えて、パーセンテージを意識するほどの微調整もしなければならないのですから、容易なことではありません。

金(ゴールド)の売買取引を取り入れた消費税還付スキームが注目されているのは、そのためでしょう。金は消費税の課税対象であり、誰でも容易に売買ができます。不動産投資家が金の売買をすれば、課税売上を自在かつ合法的にコントロールすることが可能になるというわけです。

金売買の注意点とは

消費税還付スキームにおける救いの手のように感じてしまいそうな金売買ですが、注意点もあります。ここでは、3つほどの注意点を取り上げましょう

1.価格相場が変動するリスク

金は、相場によって価格が変動する資産です。確率的には低いものの、突発的な事象による急な値動きの可能性もあるため、長く保有するほどリスクが高い資産になります。購入してすぐさま売却すれば変動リスクはほぼありませんが、租税回避行為の証拠とされてしまう可能性が高くなるので、お勧めはできません。

2.税理士報酬が高額になりがち

平成28年の税制改正以降に消費税還付を試みることは、ほとんどの税理士があきらめているのが現状です。金売買を活用した消費税還付スキームには、多くの不動産投資家からの熱視線が注がれてはいるものの、難易度もリスクも高いことに変わりはありません。当然、このスキームを操ることのできる税理士はごく少数です。需要と供給のバランスで言えば、需要に対して供給が著しく少ない世界ということになります。ですから、税理士報酬はかなりの高額になることを覚悟しなければなりません。

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3.租税回避行為を指摘される場合も

消費税還付のための金売買は、「租税回避行為」とみなされる可能性があります。租税回避行為がどういった行為なのかについて法律上の定義はありませんが、一般的には「異常な、合理的でない取引によって税負担を回避しようとする行為」のことを指して用いられている言葉です。行為自体は合法なので脱税ではないが、節税とも違う。そんな微妙なニュアンスの概念と言えます。消費税還付を受けようとしている不動産投資家が行う金売買は、脱税のような犯罪行為ではないものの、税負担を回避しようとして行われる行為であることは明白です。

一昔前までは、税務調査が入った時に租税回避行為を指摘されたとしても「でも、違法行為はしていませんよね」と言えば調査員を黙らせることができていたようです。しかし現在では、税務当局から否認されてしまう事例も数多くあり、租税回避行為が見逃されない可能性は高くなっています。ちなみに、課税売上割合の調整に金売買を利用することについて、消費税法ではまだ何の規定も設けられていませんが、今後は変わる可能性があります。そして消費税還付を請求した場合は、かなりの確率で税務調査が入ることも覚えておきましょう。

まとめ

不動産の消費税還付を取り巻く環境は、刻々と厳しくなっています。税務のプロフェッショナルであるはずの税理士すら、消費税還付の依頼は受けられませんと言って手を引くほど厳しいのです。そうであれば、税務の素人が独学で消費税還付を達成するという目標がいかに無謀なものか、想像がつくことでしょう。

消費税還付を受けようとする人を、税務署は快く思っていません。税理士を付けないで消費税還付を受けることはほぼ不可能です。消費税還付を得意とする税理士に相談して、自分に最適なプランを練ってもらうようにしましょう

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